東方幻創弾 〜Phantasm memories from Buster.〜   作:蒼いなんでも屋

21 / 54
 門番さん美鈴と星羅のお話。

 めーさく要素あり?
 念の為ご注意を。


017. 虹色の華人小娘

 紅魔館の主レミリアに、咲夜との関連性を視たと言われた星羅。

 

 パチュリーはそんな星羅の「幻想入り」「記憶喪失と記憶媒体システム」「能力不詳」というキーワードを元に、大図書館から条件に当てはまる物を皆で探す事にする。

 

 

 のだが……

 

 

_________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ……疲れたわ! 少し休憩させてくれるかしら?」

 

 

 レミリアはあまりにも地道かつ進展のない作業から、一時的に抜けた。

 

「お嬢様……」

「本来の言い出しっぺが休まないでよ……レミィ」

「私はあくまで咲夜との関連性を言っただけよ、パチェ?」

「あのねぇ……はぁ、レミィったら」

 

 パチュリーは少しだけ咎めると、本を再び漁った。

 

「咲夜さーん……私も疲れました」

「美鈴! と言いたいけど流石に本といつまでもにらめっこしていると、目も疲れるわね……」

「ここあ、どう?」

「だめだよお姉ちゃん……本当にあるのかなー」

 

他の面々にも、徐々に疲労が溜まってきている。

 

 

 だがそんな中で、一人だけ真面目に取り組む者がいる。

 

 

「……ちっ(・・)、これじゃないか……くそ(・・)、これでもない……なんだよ(・・・・)……こいつもか……」

 

 

 星羅だ。

 素早く本を見極めてはパラパラと読み、次々に本の山を作っていく。

 

 

「……っ、だめだだめだ、これでもないのかよ(・・・)……あーもう……」

 

 

 だが……

 その一言一言に、どこか、感じ方に抵抗がある。

 

 

「……星羅?」

 

 

その独り言に、咲夜だけは違和感を感じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はあ、みんな一旦止めましょう。言い出しておいてアレだけど、予想以上に効率が悪過ぎて終わらないわ……」

 

 

「はーい」

 

 

 

 

 

 パチュリーの一声で、皆は出していた本を片付けて彼女の机に集まった。

 

 

 

「進展、無し。これじゃ今日中に見つけるは無理だわ」

 

 まぁそのつもりは無いけど、とパチュリーはため息をつく。

 星羅は思わずうつむいた。

 

 パチュリーは本をばばっとめくりながら続けた。

 

「もう少し、絞り出すことが出来れば、具体的な本のテーマも絞れて探しやすくなるんだけど」

「そもそも記憶喪失ですもんねぇ」

 

美鈴の言葉に頷く一同。いくつか上がっているものの、抽象的なものばかりで実際には手掛かりが無いも同然なのだ。

 

「星羅。……悪いけど、今日は一旦諦めてくれるかしら。このまま闇雲に探しても進展がまるで見えないわ」

「パチュリーさん……」

「……まぁ、でも……」

 

 パチュリーは人差し指を立てて言う。

 

 

「なにはともあれ、ダメ元で探しておいてあげるわ」

 

「……えっ」

 

 パチュリーの意外な言葉に、皆は視線をパチュリーに注ぐ。

 

「パチェ? 急にやる気になったの?」

「レミィ、何言ってるのよ」

 

レミリアの方を向くと、

 

 

「私はただ……彼女に興味を持っただけ。そう最初に言ったのはあなたじゃなかった?」

 

 

と、微笑んだ。

 

 

「……ふふ、そうだったわね、パチェ。……星羅、光栄に思いなさい。こういう時はこの私たちに任せておいて構わないわ」

「……は、はい!」

 

 

 パチュリーの笑みとレミリアの励ましを受け、星羅も元気になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

________________

 

 

 

 

 

 

 

「はーぁ、流石に疲れたわ。咲夜、少し早いけれどお茶にしましょうか」

「わかりましたお嬢様。用意してきますね」

「咲夜、私のもお願い」

「こあも!」

「ここあの分もお願いします!」

「お任せを」

 

 

 

「みなさん、とっても仲がいいんですね」

 

 星羅は前を行くレミリアたちを見て、呟いた。

 

「ええ、そりゃあ勿論ですよ」

 

 美鈴が振り向いて答えてくれた。

 

「個性豊かで、いつもはこんな感じですけど……皆凄い人ばかりですよ」

 

 前を向いて、咲夜を見る。

 

 

「特に咲夜さんは……私の、私たちにとっての大切な人ですから」

「……美鈴さん?」

 

再び星羅に視線を変えると、美鈴は言った。

 

 

「ここじゃあれですから、場所を変えましょうか」

 

 

 

 

 

________________

 

 

 

 

 

 

 

 美鈴は咲夜に一声かけて、外に出た。

 

 

 

 

「わぁ……」

 

「こう見えて門番だけが私の仕事じゃありませんからね」

 

 

 

 美鈴が連れてきた場所は、館の裏庭にある花壇。

 

 日当たりの良い位置に作られた、ちょっとした憩いの場所である。

 

 

「綺麗だなぁ……」

「暇を見て手入れしているんです。お嬢様のお墨付きですよ」

「へー……すげぇ(語彙力皆無)」

 

 しばらく見とれていた星羅だったが、ふと美鈴にこんな事を聞いた。

 

「そういえば……なんでここに連れてきたんですか」

「あー、そうでしたね」

 

美鈴はわざとらしくぽんと手を叩くと、視線を少し斜め上にやった。

 

 

 

 

「……咲夜さんの話、でしたね」

 

 

 

 

 その目が、星羅にはどこか懐かしむような遠い目をしていたように写った。

 

 

「…美鈴、さん?」

 

 

「実は……咲夜さんって、昔、貧しい孤児だったんですよ」

「ほえ? そうなんですか??」

「ええ。

 

 

 

 

確かそれなりに昔、たまたまこの紅魔館を通りかかった、まだ幼い少女がいまして。

 

レミリアお嬢様が(いろいろ)あって興味を持たれ、名付けたんですよ。

 

 

 

 

十六夜の日に、少女の新たな運命が咲いた夜。

 

だから、十六夜咲夜よ、と仰っていた……はずです」

 

 

 美鈴の目が、やはり懐かしむような視線で空を見ていた。

 

 そんな事があったのか、と星羅は思わず黙ってしまう。

 

 

 

 それ以前に。

 

 美鈴の視線……否、表情がうまく読めなかった。

 

 

 

 

「それからはメイドとしてここで住み込みする事になりまして。数年はお嬢様の頼まれ事や色んな仕事に追われてましたよ」

「……」

「でも、真面目に努力し続けたおかげか、私はもちろん、パチュリー様やお嬢様からも信頼を得て行き、いつの間にか紅魔館のちゃんとした一員になっていましたね。

かけがえのない、大切な仲間として……ね」

 

 

 明後日の方向を見ながら、何かに思いを馳せるような表情をしながら。

 

 美鈴はそう言って、星羅に語り続けた。

 

「咲夜さん、今も勿論ですけど、昔から可愛かったんですよ」

「えっ?」

「昔、私が居眠りしていると、ゆさゆさと私を揺らして『美鈴ー、起きてー!寝ちゃだめだよー!』って言って起こしてくれるんですよ。たまに寝たフリしてそれを楽しんだりしたなぁ……」

「……そうだったんですね」

「あと、いつも私のためにお昼ご飯持ってきてくれたり、時々心配してくれたり。私もいつの間にか、咲夜さんの事を大切な存在だって思うようになったんですよ」

 

 まあ今は流石に厳しいですけどね、と言いながら、美鈴はあははと頭を掻く。

 居眠りについては色々ツッコミ入れたかったが、それよりも、星羅は美鈴の言う咲夜の意外な一面を知って驚いていた。

 

「すげー」

 

「あ、そうだ。星羅さんは確か咲夜さんらしき夢を見たそうですね」

「はい」

「具体的にはどんな夢を?」

 

 星羅はまだ言ってなかったな、と思いながら、美鈴にざっくりと説明した。

 

 

 

 

少女説明中……

 

 

 

 

「はぁはぁなるほど、懐中時計……ですか。そっかぁ……」

 

 

 美鈴は「時計」、つまり咲夜の持つ懐中時計に、何か思う事があるらしい。

 

 

「何か知ってるんですか?」

「そりゃあそうですよ。だって……」

 

 

 一呼吸置いて、美鈴は言った。

 

 

 

 

「その懐中時計……私が感謝を込めて咲夜さんに渡したものですから」

 

 

 

「……え? えええええ!?!?」

 

 

 

 

 

 

_________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「めーりん! めーぃりーん! 起きてー!」

 

「ん…あっ……咲夜さん、ごめんなさい」

「もう! レミリアお嬢様に叱られても知らないよ?」

「あはは、これでも気をつけているんですがね」

「本当なの?」

「ははは……あ、そうだ咲夜さん」

「ん?」

「はいこれ、似合うかなと思ってこっそり買ってきました」

「これは……懐中時計? どうして急に」

「咲夜さんがいつも持ってるやつ、ボロボロだったでしょう? いつもお世話になっている、私からのほんの感謝の気持ちですよ」

「わぁ……あ、ありがとう」

「えへへ、喜んていただけるなら幸いですよ。これからも一緒に頑張っていきましょう、咲夜さん」

「うん!」

 

 

「……あ、賄賂したって昼寝はだめだからね」

「うへーい……てか賄賂なんてこんな子がどこで覚えるのやら……」

「パチュリーさまが言ってた」

「えー……」

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

 

 

「それからは咲夜さん、みるみる内に信頼を勝ち取り、そしてどんどん大きくなっていって……今はあんな感じに」

 

 

 昔、とりわけ咲夜を語る美鈴の顔は、自然とほころび、笑みを浮かべていた。

 

 懐かしさなのか、それとも。

 

 

 そんな美鈴を見ながら、星羅は思った。

 

 

 

 

 

 

 人間ってのは、本当に儚い命なんだなぁ。

 妖怪のみんなには、どれぐらいの長さで写ってるんだろう……。

 

 

 

 美鈴が咲夜に会った頃、既にもうこんな姿……大人の姿だったのだろう。

 

 妖怪は命が人間に比べて遥かに長い。

 そんな事を霊夢が言ってた気がする。

 

 その事を、きっと美鈴、いやこの館の全員は気づいてる。

 

 

 

 

 

 咲夜さんは、人間……唯一の人間だ。

 

 皆との、いつか訪れるだろう別れを……

 

 あの人は、怖くないのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 あれ?

 

 

 

 そんな事を……夢で、言ってなかったっけ……

 

 

 

 

 

 

「……んで咲夜さんったら、顔を真っ赤にしてですね……って、あれ? 星羅さん? 聞いてます?」

「ええ? あっ……ごめんなさい」

「もしかして咲夜さんの事で思う事があったんですね?」

「……わかるんですね」

「その時になったら向こうから仰ってくれますよ、気にしない気にしない」

 

 

 

 心配し過ぎですよ、と美鈴は笑った。

 

 その笑顔に、星羅の悩みは一旦かき消え、それからは美鈴の面白おかしい紅魔館あれこれを聞いていた。

 

 不思議と、とても楽しい気分で居続けられた。

 

 

 

 

 

 

 流石にいつまでも外にいた(上に話し込んでいた)ので、咲夜に美鈴と星羅が叱られたのは言うまでもない……。

 

 

 

 

 




 最近一週間一回ペース(ひどいとそれ以上)ですいません。
 忙しくって……ほんとに。


 多分次にはみなさんお待ちかねのアイツが出る……。

 ……はずなので期待しててくださいね!!

この中で、番外編やってほしいのは?

  • 紅魔館組
  • レイマリ
  • うどみょん

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。