東方幻創弾 〜Phantasm memories from Buster.〜   作:蒼いなんでも屋

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 あたしら反旗の三妖精。

 博麗神社で過ごす星羅が神社の先客に出会う話です。
 あうんちゃんやクラピは本編でちゃんとした形で出そうかな……と思ってますのでまだ出番はありません。しばしお待ちを。



EX 2. 光の三妖精

 

 

 

 

 

「…………ルナ、スター、見て見て。アレが噂の、神社に来た新入りの人間だよ」

「……本当だ」

「いかにも外来人って感じの格好してるね…」

 

「ここに来てそれなりに経ってるようだし…ここらでそろそろ、あっと驚かしてみない?」

「…いいね。今なら博麗の巫女…霊夢さんもいないみたいだし」

「でも、どうする? これまでこっそり観察してきたけど、結構肝据わってるよあの子」

「うーん……」

 

「……サニー。私達の能力なら、バレずに近づけるよ。たぶん」

「そっか! その手が! …よーし、気を緩めたタイミングを見計らって突撃だー!」

「大声出したらバレるよ…」

「ふふっ…どんな顔してくれるのか楽しみ……」

「……スター、怖いよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 幻想入りして早くも数週間。

 慣れというものは恐ろしいもので、星羅は霊夢との共同生活にもかなり順応していた。日中は人里に降りて何でも屋として人助けに奔走しているので、四六時中一緒にいるわけではないのだが、最初は素っ気なかった霊夢もだいぶ丸くなったように星羅は感じていた。

 

 そんな、ある日の朝──

 

 

「霊夢、おはよ…ぅ?」

 

 いつもより少しだけ遅く起きた星羅は、神社の中に霊夢がいないことに気が付いた。

 上がってみると、ちゃぶ台にメモが書き置かれているのが分かる。

 

『今日は朝から人里に見回りに行っているから

朝ご飯食べてなさい

台所は好きに使ってね』

 

「……そういえばそうだった。うーん、せめて出る前に一声かけてくれてもよかったのに…」

 

 寝ぼけた頭を瞬きと背伸びで強引に醒まし、昨晩の会話を思い出す。晩御飯の傍ら、確かにそんなことを話していたっけか……。

 嘆いたところで、霊夢が帰ってくるわけがないことは分かっている。彼女の本業は巫女なのだ、いくら普段が気怠げでも仕事にはストイックな姿も知っている。

 

「仕方ない、大人しく留守番すっかぁ」

 

 霊夢のことなので、神社が無人になっても気にしなさそうだが、なんとなく気が引ける。それに、今は機怪という脅威もある。神社周辺に現れないとは限らないのだから。

 星羅は手早く朝ご飯を済ませると、箒を取り出し、境内の掃き掃除をはじめた。今日の何でも屋の仕事は、博麗神社の留守番に決定だ。

 

「…ふぅ」

 

 この世界に来たばかりの頃は不安ばかりだったが、事件を解決したこともあって、少しずつ自信がついてきた。記憶が無いので、自信満々、とは行かないが。

 無意識のうちに、ため息が漏れ出た、その時だった。

 

 

 ──ガサッ……

 

 

「…えっ?」

 

 ……不意に、なにかの気配を感じ取った。

 しかし、周りを見渡しても人影や原因らしきものは見つからない。気の所為だったのだろうか。

 

「……いやそんなわけ」

 

 と、再び正面へ向き直った時だ。

 

 

「バレてないバレてないバレてない……」

「サニー落ち着いて」

「大丈夫、音はルナの能力で消してる。ぬきあしさしあし……」

 

「……………………???」

 

 

 羽を付けた、ちびっこ3人……赤い子と白い子と青い子が、こちらへ向かってゆっくりと迫ってきている。動揺を押し殺し、目線を反らして見なかったことにしつつ、聞き耳だけは立てておく。

 会話を聞くに、どうやら彼女達の能力でこっそり近付いているつもりらしいが……。

 

(えーっと……もろバレなんだけどなぁ……?)

 

 普通に会話を聞き取れるし、足音も聞こえるし、その姿も全く隠せていない…ように感じる。

 自分がおかしいのか、3人が変なのかは不明だが、なんとなく言ったらかわいそうな気がして、敢えて黙って目線をそらした。

 

(一体、どちらさま? 私に用なのかな…にしては随分と慎重というか、コソコソしているけど。……ギリギリまで待ってみるか…)

 

 その仕草から少なくとも、3人──人間ではなさそうだが──が悪人ではなさそうだ、ということは察せられた。半透明の羽と小柄なその容姿から、少し前に出会ったチルノや大妖精を思い出す。

 あぁ、なるほど。彼女達は妖精…企てているのも、所謂 妖精のいたずらか。

 脳内で合点がいった星羅は、バレているならば怖くない…と、わざと3人の悪巧みに乗ってみることにした。気付かないフリで掃除を再開する。

 一応、警戒している素振りを見せるべくチラチラと辺りを見渡しつつ、集めた落ち葉を回収していく。

 そうしている内に、3人はジリジリと星羅との距離を縮めていた。

 

(…背後、取られたなぁ……)

 

 気が付くと、自分の背中側に3人の気配。少し目を離した隙にこれである。

 どうやって迎え撃つか軽く思考する。

 

「1、2の、3、で一気にかかるよ」

「分かった」

「タイミングはサニーに合わせるね」

 

 ……しかし悩んでいるヒマは無さそうだ。既に3人はいたずら発動寸前だった。

 

「任せて! 行くよ、ルナ! スター!」

 

(……うぅ。霊夢じゃないけど、こうなったらやるっきゃないな)

 

 星羅は気付かれないようにため息を付くと、3人へと身体をひねった。

 

 

「せーの! 1、2の、さ……ん!?」

 

《Buster On》

「そこまでだよ、いたずら妖精ちゃん達」

 

「「「うわーーーーーっ!?」」」

 

 

 

 星羅は今まさに驚かせる姿勢を取っていた3人へ、ライズバスターを構えた。

 いきなり銃口を向けられて、流石の3人も硬直。からの、腰が抜けてしまってその場にへたり込んだ。

 

「な、な、なんで……!?」

「私達の能力で、バレないようにしてたのに……」

「あの兎みたいに効かないタイプだった…ってこと!?」

「うさぎ……? …何のことか分かんないけど……バレバレだったよ3人とも」

「「「えぇっ!?」」」

 

 バスターを解除し3人の目線に合うようにしゃがむと、3人は信じられないという表情で星羅を見つめ返していた。

 

「……私が変なの?」

「そうだよ!! ルナの能力はね、音を消せるんだよ! んでもって私は光の屈折で姿を消すことができるの!」

「……ちなみにスターは動いてる人を察知できるの」

「だから3人合わせればいたずらには最適! だったんだけど……」

「…まさか最初っからバレてたなんて思わないじゃん!!」

「「「うぅ……」」」

「…な、なんか…ごめんね?」

 

 何故か自分が悪いことをしたような気分。

 よっぽど、自分達の能力が通用しなかった事実が堪えたらしい。

 星羅は自分のチカラを思い出した。

 

「…あぁ。そうだったそうだった。私、他人の能力効かないんだった」

「「「えぇえーっ!?」」」

「私で良ければお茶出すけど…いる?」

「「いる!」」「いる…」

「うわっすごい食い気味っ」

 

 星羅は3人を宥めつつ、神社へと連れ込んだ。

 

 

「麦茶しかないけどいい?」

「いいよー」「何もないよりは…」「大丈夫よ」

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

 

 

「改めて、私はサニー! サニーミルク! 日の光の妖精だよー!」

「…ルナチャイルド。月の光の妖精よ」

「私はスターサファイア。星の光の妖精なの」

「私達3人揃って、誰が呼んだか“光の三妖精”! 普段は神社の後ろにあるでっかい木の中に住んでるんだ! よろしくね星羅!」

「うん。よろしくね、サニーちゃんにルナちゃん、スターちゃん」 

 

 どうやら星羅よりも前からこの神社の世話になっているらしい。以前に魔理沙が言っていた、神社の裏に住む妖精達とは彼女らのことだったようだ。

 麦茶でリフレッシュした3人の自己紹介を受け、星羅は微笑む。

 

「…いきなりなんだけど。幻想郷における“妖精”って…みんな、3人みたいにいたずらっ子なの?」

「うーん、知ってる限りだと大体そうかなー。だって私達自然の化身だし?」

「化身?」

「どんな人間や妖怪だろうと、自然の力は予測不可能。私達が自由であることは、自然が自然である何よりの証明ってわけ」

「へぇ〜」

 

 見かけによらず、深い存在である。

 星羅はちょっと感心。

 

「…っていうかそんなことも知らないの?」

「ちょっとサニー!」

「あはは…良いんだ、ルナ。何も知らないのは事実だから。幻想郷初心者だし……」

「そーゆーことなら仕方ないわね! 特別大サービス、私ら妖精について伝授したげるわ! いくわよルナ、スター!」

「えっ私も?」

「また唐突な…楽しそうだからいいけど」

 

 そう言うサニーに連れ出される形で、星羅は再び境内へと出るのだった。

 

 

 

 

「……綺麗な光」

 

 3人が見せる輝きに、星羅はすっかり釘付け。

 彼女の周りを飛び回りながら、サニーは笑った。

 

「私たちは、光の力を操ることができるの。私は日の光!」

「私は月の光。で、スターが」

「星の光ってわけ。だから私たちは、光の三妖精って呼ばれてるのよ」

 

 太陽のように眩しく暖かいサニー。

 月のように優しく癒すルナ。

 星のように煌めき広がるスター。

 昼間に差し掛かって十分明るかったはずの博麗神社が、それまで以上に明るく照らされて見えた。

 

「妖精は、色々な自然から生まれるの。自然はいつも、みんなと一緒に生きてるでしょ。だから私たち、何回やられても平気なんだよ!」

「そうなの?」

「例え霊夢さんにぶっ飛ばされようが、例え魔理沙に消し飛ばされようが、私たちにとっては謂わば『一回休み』なの。しばらくしたら復活できちゃうんだからね!」

「自然の生命力…ってやつね。もちろん痛いしこわいけど」

「私たちは自然の一部。確かに弱いかもしれないけれど…何よりも強いんだから」

 

 自慢げに笑うサニーと、それを補足するルナ、スター。

 恐れを知らぬ悪戯心や見た目以上の元気な生命力は、気まぐれな自然の体現なのだ。

 すっかり納得しきっていた星羅だったが、不意にルナが近付いてきた。つられて2人も寄ってくる。

 

「にしても、まさか能力が効かない人間がいたなんて思わなかった……」

「幻想力に触れる程度の能力、かぁ」

「ずるい!」

「あぁ、さっきのね。実を言うと、まだ全容が明らかになっていないから仮なんだけどね。…何故こんな力があるのか、そもそも私は何なのか……全然分からないし」

「ふーん。…ま、あんたが何者だろうが、私らには関係ないもんね」

「え」

 

 僅かに俯いた星羅を、サニーはぐいと手を引いて走り出す。

 

「よーし、星羅! いたずらの代わりに、私達と遊びなさい!」

「へっ」

「行くよ」

「ほらほら、こっちこっち!」

「えっちょっ…待ってよ!」

 

 戸惑う彼女に対し、無邪気な笑みを見せてこう返した。

 

 

「あんたはもう、幻想郷の人間。私たちのいたずら対象なんだから!」

「そうでなくても、神社で世話になってるでしょ。これからよろしくってことで」

「霊夢さんもいないし、楽しいことしましょ! たまには良いじゃない、遊んでも!」

 

 

 下を向きかけていた心が、明るく照らされたような気がした。

 …光の三妖精、か。

 彼女達から溢れる元気を、分けてもらったような気がして、気付けば自分も笑みが溢れていた。

 

 

「…そうだね。遊んじゃおっか。いいよ!」

 

 

 羽織っていたコートを縁側に置くと、星羅は3人と共に走り出す。

 楽しげな笑いが、神社に響き渡った。

 

 

「わーい!」

「ふふ、笑顔になった」

「それじゃ何をしましょうか」

「じゃあまずはかくれんぼ!」

「いやだから私たちの能力効かないってば」

「そうだった」

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ただいまー。…って、あら? 星羅アンタ何してんの?」

 

「あ、おかえり霊夢ぅ。ちょっと…助けて……」

 

 

 やがて、空から霊夢が帰ってきた。

 境内に降り立つやいなや、星羅の様子に目を丸くする。

 

「……ぐぅ……」

「…すやぁ」

「…ん……」

 

 目の前で、縁側に座った星羅の膝の上や背中に、三妖精それぞれが寝息を立てているではないか。

 

「いやどういう状況?」

「遊び疲れたっていうから休んでたら3人まとめて寝ちゃったみたいなんだけど…全然起きなくってぇ」

「ハァ……いつもなら私が来ただけで慌てて逃げてくくせに。しばらくそうしててあげて」

「えぇっ、助けてよぉ!?」

「無理無理。自然現象までは私どうにかできないからね」

「それとこれとは別じゃないかな!?」

 

 呆れて首を振る霊夢に、星羅は嘆く。

 しょうがないわねぇ、と霊夢はお祓い棒を取り出した。

 

「そい、そい、そい」

「いてっ!?」

「きゃっ!?」

「あたっ!?」

「うわぁ鬼巫女……」「やかましいわ」

 

 引きつる星羅をよそに、物理的に叩き起こす。

 程なく3人は頭を擦りながら霊夢を見上げた。サニーだけはむすっと頬を膨らませている。

 

「あっ、霊夢さん!? おはようございます! あと叩くことないじゃん!」

「おはよう。あと星羅が困ってるでしょ。さっさと退きなさい、次は針でしばくわよ」

「ひえー……」

「こらっルナ、怖気づいちゃ駄目よ! こーなったら……必殺!」

「はっ?」

 

 すると、サニーの掛け声で3人がなにやら構え始めた。まだ星羅からは離れきっていない。

 悪寒が走る星羅をよそに、サニーは叫んだ。

 

「逃げるが勝ちーーっ!!」

「ぐええっ!?」

 

 ──背中に寝ていたサニーが勢いよく飛び出し、反動で星羅は薙ぎ倒された。そのまた反動で飛び上がったルナとスターは、羽を使って飛翔し後に続いていく。

 

「結局これなのね…」

「それじゃあね、星羅。また遊びに来るわ」

「あっコラ待ちなさい三馬鹿!!」

「待てと言われて待つ妖精はいませーん! じゃあねー星羅、また遊ぼー!」

「えっあっ…うん。またね、みんな!」

「ちょっと下手に出りゃあいつらはッ!」

「まぁまぁ霊夢さん落ち着いて」

「星羅(アンタ)には“さん”付けされたくないわよ!」

「それさそれで嬉しい」

 

 どうやら、能力を発動させて霊夢の前から姿や気配を消し、逃げ去るつもりらしい。見当違いの方向に大幣を振る霊夢の反応から、星羅は察しが付いた。

 瞬く間にどこかへ飛んでいく3人を見送っていると、肩を落とした霊夢が戻ってきた。

 

「…やれやれね、全く。逃げ足だけは立派なんだから」

「いつもあんな感じなの?」

「まぁね」

 

 身体を起こして塵を払うと、星羅は妖精達が消えていった森の奥を見つめた。

 霊夢が訝しそうな目線を向ける。

 

「……どうしたの?」

「うぅん。サニーちゃん達に、ちょっと色々教えてもらっちゃってさ」

「はぁ? アイツらに教わることがあったの?」

「それがあったんだよね。…まだまだだな、って思ってさ。私」

 

 3人の元気な姿を思い出して、星羅は微笑む。

 きっと彼女らにその気は微塵もないのだろうが、それでも星羅は確信していた。

 

 

「ありがとう、サニーちゃん。ルナちゃん。スターちゃん。……元気をくれて、ありがとう」

 

 

 彼女らが輝きとして放つ、大自然の優しさが、自分を励ましてくれたのだろう…と。

 満足気な笑顔を浮かべた星羅に、霊夢もまた、ふっと笑みが溢れた。

 

「…よく分からないけど、アンタが楽しかったんなら良いんじゃないかしら」

「…霊夢」

「さ、お昼にしましょうか。魔理沙が里で待ってるわ。アイツらと遊んで疲れたでしょ、アンタも来なさい」

「やったあ」

 

 上機嫌なスキップをしながら、星羅は霊夢の後を追って、神社を降りていくのだった。

 

 

 この日以来、星羅は度々遊びにやってくる三妖精と戯れるようになる。

 

 

 





 星羅は純粋なので突然いたずらされたら本気で落ち込みそうではある

 番外編は本編の補完やあまり登場しないキャラ、小数点作品のキャラ等を扱っていく予定です。
 番外くらいギャグに走りたいものですが……自分の悪い癖ですね、上手くいかないものです。

この中で、番外編やってほしいのは?

  • 紅魔館組
  • レイマリ
  • うどみょん
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