東方幻創弾 〜Phantasm memories from Buster.〜 作:蒼いなんでも屋
妹紅と輝夜が殺し合いしてるとたまに起きるらしいですね。よく燃え広がらないなぁ……?
……熱い。
目の前で、全てが燃えていく……。
私は、どうしたらいいの?
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「設備は整ってるわ、座って」
「…………いや、いきなりそんなこと言われても困りますよお師匠様」
永琳の言葉に、鈴仙が真っ先に抗議した。
永琳が用意したのはなにかの読み込み装置とヘッドギア。
心理的な検査でもするのだろうか。
「星羅、突然だけれど、スペルメモリを貸してもらえるかしら?」
「ほえ?何をするんですか、これから」
星羅の問いに、永琳は顔を引き締めて答えた。
「あなたの記憶を、できる限り取り戻す治療よ。まぁ、治療と言えるかは微妙だけれども」
思ったよりも単刀直入な解答に、皆はハッとした。
「そんなことがてきるのか、永琳?」
妹紅が訝しむが、
「……確実に、できるとは限らないわ。それに星羅がやらないなら取りやめるつもりよ」
ときっぱり答えた。
「……永琳」
「星羅の記憶は現状、断片的なものばかり。少しでもそれらを補完するには取り戻すしかないわ。もちろん……思い出したくないだろう記憶も、酷だけどおそらくは戻ってくることになる」
「代償はそれってことね」
「……だから星羅、あなたがやるかどうか決めなさい。用意はしたけれど、判断は委ねるわ」
あくまでも本人の意見を尊重する。
医師らしい賢明な判断だ。
そんな永琳に、星羅は
「……やってください」
やたら低いトーンで、しかしはっきりと。
「記憶を呼び戻せるならやってください!!
私の本当の姿を知れるならやってください!!
……私、これ以上……みなさんに、霊夢に、魔理沙に……みんなに迷惑をかけたくないんです!!!」
と、いつになく真剣な表情で、そう応じた。
「……いいのか、さっき以上に苦痛になるかも知れないんだぞ」
妹紅が聞き直すが、星羅は大きく頷いた。
「うん。一瞬の痛みくらい、元に戻れる事に比べたらなんてことないよ」
「……だとよ。お医者さん」
「…畏まりました。……それじゃあ、集まって」
永琳も彼女の意を汲み、頷いた。
「今からあなたのスペルメモリに記録されているデータを、あなたに移し替えるわ」
「えっ?」
「これらは河童製だけど、稼働試験はしてあるわ。これを使って、メモリに封印されているかもしれないあなたの記憶を引き出すのよ。使うとは思ってなかったけれど……あるものは使いましょう」
「なるほど」
「まぁメモリーカードっていったら、なにかを記録しておくもんらしいし、な」
慧音が言ってた、と妹紅は付け加えた。
「鈴仙は助手をお願い。姫様と妹紅は外で待ってて。てゐ、あなたは悪いけどもう少し見回り頼めるかしら」
「はーい」
「わかった」
「わかったわ永琳」
「ちぇ〜、折角戻ったのにー」
妹紅、輝夜、てゐは部屋を出ていき、鈴仙は支度を始めた。
「先に行っておくけれど、外傷や手術は一切しないわ。その代わり、始める前に念の為、簡単にテストさせてくれるかしら。もちろん嫌だったらやらないわ」
「……お願いします。やってください」
と、星羅は気丈にも答えた。
「確実に成功させてください。それならテストもなんでもやってください」
「……星羅」
鈴仙が呟く。
星羅の目には迷いが無かった。
永琳はヘッドギアを取り、宣言した。
「……それでは……始めるわよ」
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『記憶を呼び戻せるならやってください!!私の本当の姿を知れるならやってください!!……私、これ以上……みなさんに、霊夢に、魔理沙に……みんなに迷惑をかけたくないんです!!!』
「……なんつーか、健気だな。あいつ」
外で永琳のテストを待ちながら、妹紅は呟いた。
横の輝夜が彼女を見る。
「本当の姿を知って、どうなるのか分かったもんじゃないのに。あいつは自分から知りに行った。なんか……すごいな」
「珍しいわね。あなたがそんなことを言うなんて」
「まぁな……それに」
妹紅と輝夜は、襖越しに鈴仙を見やった。
「あいつもなんか感じたようだしな。星羅の特別さを」
「そうね。永く生きてきたのに、世の中まだまだ不思議が多いわね」
「……はっ、そうだな」
__ふと、妹紅が顔を上げた。
「……ん?なんか……焦げ臭い気がする」
「……火事!?妹紅っ」
「はいはい」
妹紅は言われるより前に飛び出した。
「輝夜、あいつらを頼む」
「言われなくても頼まれてやるわよ!」
輝夜はそう言い襖を開いた。
竹林を駆けながら、妹紅は思った。
(…………霊夢や魔理沙に迷惑をかけたくない……か)
「……鈴仙ちゃんなら、きっとなんとかしてくれる……そうだろう、輝夜……」
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その数分前。
「まずは一枚目。【プラズマチャージショット】、ね」
読み込みスロットにメモリをはめてみる。
だがなぜか上手く入らない。
端子が異なるようだ。
「……テストしておいて正解だったわ、まさか端子から合わないなんて……」
「お師匠様、どうするんですか?」
「私は別に機械いじりできるわけではないし……河童を呼ぼうかしら」
「うーん……」
……えぇ、と星羅は内心焦った。
被るヘッドギアは別に某SF作品みたいなヤバい機能があるとかではなく、単に脳波チェッカーらしい。
仕組みは(星羅にとっては)わからないが、どうやら測定結果により記憶がどれくらい蘇っているのかをある程度把握できるようだ。
だがテスト結果は「そもそも端子が合わない」。
始まってすらいない実験。
これでは色々と無駄に終わってしまう。
自分のためになにかしてくれているのに、黙って見ているわけにはいかない。
星羅は必死に考え、数分後、やっと一つの結論を導いた。
「……そうだ!」
「星羅、どうしたの?」
鈴仙の問いに、彼女は外しておいた腕時計を掴む。
「バスターにしか読み込めないなら、バスターから記憶を持ってこれるんじゃないんですか?」
「……やってみましょうか」
永琳は納得したように、コードを持って、そう微笑んだ。
「ここかしらね」
それっぽいソケットにコードを差し込み、電源を入れる。
すると例の読み取り装置が動き出し、ピコピコとなにかを計測し始めた。
「……うぅっ……!」
同時に星羅にもなにか蘇ってきているのか、微かにうめき声をあげる。
「大丈夫星羅?無理は絶対しないでよ」
「うん……っ」
鈴仙の言葉に、痛みからなのか顔を歪ませたまま彼女は答えた。
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沈黙の中で、星羅は“何か”を垣間見た。
霊夢や魔理沙、妖夢、咲夜、鈴仙、文、そしてまだ見ぬ者たち。
それらと楽しそうに話しているのを。
みんなと共に空を駆け巡り、
時々弾幕ごっこをしたり、
いろんな場所を巡ったり……………………
………………あれ?
ちょっと待ってよ……?
私……以前にみんなに会ってた、の?
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そして、しばらくの沈黙の後、読み取り装置は停止し、星羅も落ち着いた。
「一つ目の記憶……何だったのかしら」
永琳が問うと、星羅は
「…………………………私自身についての、記憶でした」
と、流石に直ぐには受け入れられなかったような声で、ぽつりと答えた。
「……でも、やっぱり断片的ですね」
「えっ?」
「……それでも断片的!?」
続けて放たれた言葉に、二人は動揺した。
「……昔から私はこんな感じで、お人好しで、優しくて、みんなと楽しそうにしていた……そんな記憶でした」
「……えっ?みんな、と?」
鈴仙が問う。
「見間違いじゃなきゃ、霊夢や魔理沙……それに鈴仙もいたよ」
「私も?」
「……つまり、あなたはこの世界にいたってこと?」
「……それでは私達に星羅の記憶がないのはなんででしょうか」
「……それは私にもわからないわ、うどんげ……」
矛盾。
星羅はすでに多くの幻想郷の仲間たちに会っていたようだ。
起こった謎に、二人が悩んでいると……
「みんな、大変よ!!また火事だわ!!」
輝夜が血相変えて駆け込んできた。
「今は妹紅が先に行ってるわ」
「ならまだ安心ね、うどんげ、あなたも行きなさい」
「え、でも星羅は?」
永琳の判断に問うと、
「……今の私達ではどのみち星羅についてはこれ以上分析できないわ。それに……今更だけれども、無理矢理思い出させるのも、医者としても人としても良くないわ」
と言って、バスターからコードを引き抜いた。
「星羅、あれこれ頼んで申し訳ないけれど……うどんげについて行ってもらえるかしら」
「……任せてください!!」
星羅は快く承諾、鈴仙とともに永遠亭を飛び出していった。
「……あの子、他人事のはずなのに……あんなにも快く……」
永琳がふとそう零す。
それに対し、輝夜は言った。
「違うわよ、永琳。言ってたじゃない。
お人好しで、優しいって」
「……そうね、そうですよね。姫様」
輝夜の笑みを、永琳は心の中の自身の確信へと繋げるのだった。
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「……なんだ、なんなんだよ……!?」
どこまで燃えてる?
どこが安置なんだ!?
こいつは……まるで…………!?
[……サァ、燃えつきろ。
早くワレワレを何とかしないと、本当に焼き尽くされてしまうよ?]
……私は傷付いたてゐを抱えながら、
不気味に揺らめく炎の中、全てを焼き尽くさんとする「侵略者」に相対していた――。
冒頭のセリフは誰のでしょうか!?
すでに察した方は天才。
この中で、番外編やってほしいのは?
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紅魔館組
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レイマリ
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うどみょん