東方幻創弾 〜Phantasm memories from Buster.〜   作:蒼いなんでも屋

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 鈴仙と星羅のメモリ回。

 うどんげ掘り下げには月の皆さんが関わりがち。
 別の回でやろうか検討中ですが、たぶんやらないかも。

 仄めかすのが筆者の仕事ですから(自分でハードル上げるなよ)。

 今回もお付き合いくださいませ。





030. 狂気の瞳

 迷いの竹林を焼き尽くさんと現れた火力特化型の機怪、《バーナー》。

 バーナーは炎のみならず、なんと幻覚を操る力も持っていて、鈴仙や星羅を大いに苦しめ、あの妹紅すら追い詰めた挙げ句、てゐが連れ去られてしまう。

 さらにバーナーからは、明日の夜9時までに倒せなければ連れ去ったてゐと兎たちを返さない、と挑戦状を叩きつけられてしまった。

 

 

 この危機に、永遠亭はどうするのか……?

 

 

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「……予想以上に、深刻ね」

 

 

 

 永琳は悔やんだように呟くと、星羅の腕に包帯を巻いた。

 

 

「ここまでの相手なら、私も出れば良かったわ……ごめんなさいね」

「お師匠様は悪くありません!……私達の実力が及ばなかったから……」

「違うよ、鈴仙ちゃん。永琳もわかってんだろ?……なんせ奴らは見知らぬ敵、しかもスペカルールなんぞガン無視の連中だ。それこそ永琳のような策略を練られる人が前線にいないと、幻術でかき乱してくる奴らには対抗できない」

「……妹紅」

「……とにかく今は休もう。猶予を寄越したんなら、盛大に使ってやらないとな」

 

 

 

 駆けつけた霊夢と魔理沙のおかげでなんとか帰ってきた星羅、鈴仙、そして妹紅。

 しかし、鈴仙は軽傷、星羅は複数箇所に火傷を負った。

 

 何故か能力を無視する幻術に、手も足も出なかった二人。

 対抗策無しでは、あの機怪――バーナーには勝てない。

 そのことは皆重々承知していた。

 

 

「……鈴仙で相殺できない力なんて、妙ね」

 

 霊夢がふと呟いた。

 

「鈴仙なら波長を弄って、認識を消すことができるんでしょ?それでなんとかならなかったの?」

 

 彼女の問いに、鈴仙は救急箱を運びながら答える。

 

「通用するのかしら」

「やってみてないの?」

「……奴らからは波長が曖昧に感じ取れるのよ。だからはっきり捉えられない……からくりだからかしら」

「ふーん……面倒臭いわね……」

 

 

 

 

「んで?てゐはどうすんだよ」

 

 

 

 妹紅の言葉に皆が振り向く。

 

 

「曲がりなりにも、アイツはここの一員なんだろ?もちろん助けるつもりだが、どうやって取り返すんだ」

 

「あの幻術を打破できればいいんだけれど」

 

 鈴仙の言葉に、皆唸る。

 

 鈴仙の幻覚攻撃は、霊夢や魔理沙は対峙した事もあってよく知っていた。

 あの時は純粋に弾幕ごっこだったのもありなんとか見破って突破できたものの、今回はそんな相手ではない。しかも、“てゐの救出”と“竹林火災の未然防止”も同時並行で行わなければならない。

 

 

 

「ちょっと待って妹紅……星羅、まだ話していなかったわよね」

 

「?どうしたんですか、輝夜さん」

 

 

 ふと話し始めた輝夜に、星羅が首を傾げると、

 

 

 

「……戦いに向かう前に、私達についてよく知っておくべきよ」

 

 

 

と、いつになく真剣なトーンでそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしかしたら、機怪が狙っているのは――

 

 

 

月の技術、かもしれないから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 輝夜や妹紅は、星羅に自分達が「蓬莱の薬」を服用して不老不死となっている身だということを伝えた。

 輝夜は薬の作成者は永琳であり、月から逃げてきた身だ、とも。

 妹紅は色々あって成り行きで飲んだ、とも。

 

 そして、鈴仙もまた、月から逃げ出してここへやってきた存在だと知らされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……姫様と妹紅が……不死身……?それに鈴仙ちゃんが、月の出身なの……?」

「だいたいコイツのせいだけどな」

「勝手に飲んだのはあなたでしょ」

「あー、姫様に妹紅落ち着いて」

「……えーと??」

 

 案の定理解が追い付いてない星羅だったが、

 

 

「……うーん、だいたいわかりました」

 

 

とだけ言っておいた。

 

 ふと黙っていた霊夢が問う。

 

「ところで星羅、ふぁ……ふぁ……ファ○コンメモリは?」

 

「ファンタズムメモリ!!」

 

「あーそうそれ、それで……まだ発現していないのかしら?」

 

 

 言われて星羅は、「……あ」と、空いている右手でポケットを探った。

 

 

「ファンタズムメモリってなんだ」

 

 妹紅が疑問を呈すると、即座に魔理沙が応じた。

 

「星羅の特殊なスペルメモリだ。強力無比で、なおかつ“他人との記憶共有によって生み出される”メモリだぜ」

「……え?記憶共有、だって?」

「原理はわからないが……星羅とその共有者とが一定条件下になったらメモリが覚醒して使えるようになり、星羅にはメモリに応じた記憶がもらえる……って感じか?」

「たぶん、だいたい合ってるわよ、魔理沙」

 

 霊夢が肯定、補足した。

 

「それにファンタズムメモリは、いつも機怪たちとの戦いで切り札になってる。発現していないままでは勝てない可能性もあるってことよ」

 

 

 永遠亭の各人はその特異な性質に、ポカンとしながらも肯いて納得していた。

 

 

 

 

 

 

 そんな中で、星羅がメモリを出していくと、

 

 

 

 

「いててて、傷が痛い……あっ、ブランクのメモリ」

 

 

 

と、あのときのような灰色のメモリが発見された。

 

 

「何が描いてあるんだ」

 

 魔理沙が覗き込む。

 

 

「……これは……満月?と、兎……かな」

 

 

 

「………………まさか、私?」

 

 

 

 彼女の答えに、鈴仙ははっとした。

 

「……それ、もしかして私かも知れない……?」

 

「間違い無さそうだな」

 

 妹紅も肯定、輝夜もまた頷いた。

 

 

「……それがあれば、勝てるのね?」

 

 黙っていた永琳も顔を上げた。

 

「やったな、これならいけるじゃんか」

「さすが計り知れない子ね」

 

 輝夜と妹紅も、よしとばかりに言うが、

 

 

 

 

「そう……ですね。……ただ」

 

 

 

星羅は首を振った。

 

 

「……起動するには何かしら条件が要るんです」

 

 

 

「なんだと!?」

 

 妹紅がぬか喜びだったと落胆した。

 

 

 

 

「……鈴仙との絆、でしょ?」

 

 

 

 霊夢の答えに、星羅は無言で肯定し続ける。

 

「ファンタズムメモリは相手との思いが生む力……一人じゃ成り立たないんてす」

 

 

 一日で、運用できる段階まで行けるだろうか。

 それにバーナーは、そもそも完成したとしても勝てる保証は曖昧な相手だ。

 不安がつきまとう。

 

 

 それを感じ取ったのか、

 

 

 

「……お師匠様。後で星羅と、外に行っても良いですか」

 

 

 

鈴仙は唐突にそう問いかけてきた。

 

 

「……二人で少し話したくて」

「鈴仙……わかったわ」

 

 

 永琳はもちろん、と頷き、星羅も、うん、と返した。

 

 

 

「……鈴仙ちゃん……後で休めよ」

 

 

 

 妹紅はそう言って締めくくり、皆明日へ向けての心構えを覚悟するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……そっか。月から……逃げてきたんだ」

「えぇ……あのときは、とても怖くて」

 

 

 

 

 竹林の一画にある小さな池の前に、星羅と鈴仙は腰掛けていた。

 

 話題は、鈴仙の過去。

 

 

 

「いいの?そんな話しても……悪い記憶を覚まさせたら迷惑じゃない?」

「うぅん、大丈夫よ。私……もう、吹っ切れてしまったから」

「……吹っ切れた??」

 

 

 苦笑してみせる鈴仙に、星羅はポカンとした表情をする。

 

 

「今はもう、月の兎じゃないわ。

 

地上の兎……鈴仙・優曇華院・イナバよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう言うと、鈴仙は過去を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は月の玉兎だった。

 

月の都の労働力として、雑務から戦闘までなんでもこなすのが玉兎。私はそのうちの一人、“レイセン”だったの」

 

 

 

「労働力?」

 

 

 

「奴隷みたいに聞こえる?その割にはすごく高待遇だったし、気楽なものだったわ」

 

 

 

「そうなんだ……」

 

 

 

 

「今振り返ると、私、ちょっと浮いてたな。

 

 

成績優秀だったけど……ちょっと、協調性に欠けるというか。

 

 

 

 

そんなある日、私は外の世界の人間が月にやってくるって話を聞いた。

噂は玉兎たちみんなにあっという間に広まった。

 

 

 

 

侵略行為じゃないのか、って」

 

 

 

 

「……月……月進出……?」

 

 

 

「今は下手に思い出さなくていいわよ。

 

 

 

 

私はその時、すごく恐怖したの。

 

 

ただただ、怖かった。

侵略戦争が起こることが、戦いが起こることが。

 

 

 

 

 

気付けば私は、月を離れ、地上に降り立っていた。

 

 

仲間であるはずの皆を残して、たった一人、逃亡したの。

 

 

 

 

 

……そうして迷い込んだ幻想郷で、お師匠様や姫様が拾ってくださったのよ。

 

 

 

 

姫様やお師匠様は聞いたことはあった。元々月の民だったのよ。

妹紅は……姫様の残した薬のせいで不死になったひと。

そしててゐはここの管理人を自称してる、兎角同盟の仲間。

 

 

そんな彼女たちと、私は生きていくことになったの」

 

 

「兎角同盟?」

 

 

 

「端的に言えば兎をもっと大切にしなさいって啓発する組織みたいなものよ」

 

 

「なるほど」

 

 

 

 

 

 

 

 星羅はそこまで聞くと、最も疑問に思っていた事を問いだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ、さっき“吹っ切れた”って……」

 

 

 

 

 

 

 

「そう。

 

 

今はもうそんなこと気にしないことにしたのよ。

 

 

 

永遠亭のみんなとの経験、月の皆との戦い、そして……幻想郷にいる、本当に個性豊かな人々。

それらが、なんというか……私を変えてくれた。

 

 

過去のしがらみに囚われた私から……

 

 

 

 

 

 

 

 

一人の、幻想郷に生きる地上の兎として」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………地上の月兎、てことね」

 

「まぁそういうこと。だからもう気に病んでないし、むしろ誇りに思ってるわ」

 

 

 

 そう言って空を見上げる鈴仙。

 

 その表情に、迷いはなかった。

 

 現在(いま)を生きる喜びが垣間見える、そんな笑顔だった。

 

 

 

 

 

「……過去のしがらみを絶つ、かぁ」

 

 

 

 

 星羅は思わず呟く。

 

 

「……私は過去に囚われてばっかりだな」

 

 

 

 

「大丈夫よ、星羅」

 

 

 そんな彼女に、鈴仙は言った。

 

 

 

 

「過去は、受け入れなくちゃ前に進めないわ。自分を受け入れ、前に進む……決して過去を捨てたわけじゃないわ」

 

「……」

 

「記憶が戻ったら、きっと星羅も……より、私の気持ちがわかるはずよ。……大丈夫。あなたならできるわ、きっとね」

 

「鈴仙……ちゃん」

 

「だって、私の幻覚が通じないんだもの。自信もって」

 

「……理由そこ?」

 

 

 

 二人は笑い、そして空を見上げた。

 

 

 雲に見え隠れした、満月に限りなく近い月があった。

 

 

 

「こーゆーの、朧月っていうんだっけ」

「明日は満月ね」

 

 

「安心して見られるように、頑張ろう!

 

……鈴仙!」

 

 

「……もちろん!!」

 

 

 

 

 

 

二人の決意を、ほんのりと月がより光って照らし出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう星羅、話したらだいぶ心に整理がついたわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そりゃあ、こちらこそだよ。

 

 

 

 

 

 

もちろん、証拠(あかし)もあるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 竹林の一角に秘密基地を構える、バーナーたち。

 

 雑魚たちは忙しなくなにかを準備している。

 

 

 そして、彼らの足元にはてゐをはじめとした妖怪兎たちが縛られている。

 

 

 

 

 

 

「……いくらお前たちがこんなところに基地を作ったところで……どうせ鈴仙や妹紅にバレるよ」

 

 痛みに耐えながらてゐが言うも、バーナーはちらりと見返し、しかしまるで聞く耳を持たない。

 

 

[ほざけ。……朝になったガ……奴らがワレワレの居場所を特定するのは不可能……何故なら……]

 

 

 

 

そう言い、勝ち誇ったように続けるバーナー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……が、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「幻覚で見えないように位相をずらしたから、でしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[…………ナニ!?な、なぜココが分かった……!?]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに、慄然とした声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この中で、番外編やってほしいのは?

  • 紅魔館組
  • レイマリ
  • うどみょん
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