東方幻創弾 〜Phantasm memories from Buster.〜   作:蒼いなんでも屋

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 この小説作ってる途中で禍霊夢をしりますた。
 先に言っておくと本作の黒い霊夢とは関係ありません()

 あやや編ラスト。
 妖怪の山に現れた彼女の正体とは……?


038. 妖かし堕とす、昏い瞳

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 塗りつぶすような黒。

 

 充血かと言わんばかりに深紅に染められた眼。

 

 そして……突き刺すような、貫くような視線と、禍々しく放たれるそのオーラ。

 

 

 

 赤黒い巫女服に身を包んだ、もうひとりの霊夢は、息を呑む星羅らの前に、まさに“降臨”とでも言うかのように佇んていた。

 ――否、今にも攻撃して来そうな気迫はあった。

 

 

 

 

「……霊夢さんのコスプレ……なんかでは無さそうですね」

 

 

 幣を握りしめ、早苗がつぶやく。

 

 

「アレが……前々から射命丸さんが言っていた」

「そのとおり……黒い巫女。黒い……霊夢さんですね」

 

 

 椛は一旦納めていた大剣を抜き直し、射命丸も表情を引き締めた。

 

 

 

 ――そして、

 

 

 

「…………真っ黒な……私……?」

 

 

 

 

 霊夢は、眼前の“自分自身”に、唖然としていた。

 

 

 

 

 

 

「……まさか、こいつらの指揮官は」

 

 星羅がつぶやくと、黒い霊夢は言った。

 

「……えぇ、さっき消し飛ばしたわ。証拠がコレ」

 

 

 おもむろに取り出したのは、炭化した“残余”。

 

 もはや言われなければ機怪だとわからないまでに無残に壊された、ただの屑鉄だった。

 

 それを後ろへ放り投げ、再びその視線を星羅へ向ける。

 

 

「……あなたのせいで私は……私達は……」

 

「……えっ」

 

 

 皆が身構えた直後。

 

 

「……この場で、全員纏めて殺してやる!!!」

 

 

 その深紅の瞳が昏く光り、黒霊夢が動き出した。

 

 

 

 

 目にも留まらぬ速度で御札が展開され放たれる。

 地味にある程度誘導してくるせいで、回避が遅れたら間違い無く当たる。

 

「っく!」

 

 星羅はさっきから発動しっぱなしのバスタードアイギスを振り回して防いだ。

 一方の早苗は弾幕、椛は盾、射命丸は自慢の機動力でそれぞれ回避した。

 

 だが、わざわざ回避行動をせずともそんなものに当たる霊夢ではない。

 星羅からしたら驚異でしかない程に、すれすれを駆け抜けていく。

 

「自分の攻撃に当たるほど鈍ってないわよ! 星羅、下がってて!!」

「で、でも!」

 

 星羅が言い終わらぬ内に、彼女は弾幕を放ちながら後退していく黒霊夢を猛追していった。

 

 

「何が目的かは知らないけど、ご所望なら相手になってやるわよ!」

 

「……うるさい! そんな言葉、二度と吐けないようにしてやる!!」

 

 

 

 

 

「……やれやれ、こういうときに限って、困った巫女だ」

 

 射命丸はそれを見送った後、星羅の背を再び掴んだ。

 

「……あなたも、黙って見ているような人ではないですよね」

「えっ」

 

 

 瞬間、世界がぐんと後ろへ流れ出した。

 

 

「さて、ちょこっと本気を出させてもらいますか!」

 

「おわぁ〜!?」

 

 

 加速した射命丸は、星羅を離さぬようにしながら、二人の霊夢目掛けて羽ばたいた。

 

 

 

 

 

「……早苗さん。先に…皆のところに、行ってください」

 

 

 一連の光景を見ていた早苗に、椛は言った。

 

「えっ? 椛さんは?」

「ついていきたいところは山々なのですが……私は、この通り怪我してますから」

 

 言って視線を落とす椛。

 

 射命丸が巻き付けた布に、かなりの血が滲んでいる。

 かなり無理していたのだろうか。

 

 よく見れば椛の額には、苦痛からか汗が見え隠れしていた。

 

 

「……万全の状態でなきゃ、足手まといです。それに相手の強さは明らかに未知数、しかも博麗の巫女と瓜二つ……偽りが無ければ、凄まじき強さを持っている。そんなのに今の私が挑んでも勝ち負けは明白です」

「しかし、私達がついてますよ! カバーならできます! 数だって多い方が……」

 

 食い下がる早苗に向かって、椛は叫んだ。

 

 

 

「早苗さん! 今守るべき人は私ではなく……星羅さんです!!

 

今は戦うことより……あの人を守らねばならないハズです!!」

 

 

 

「……っ!」

 

 

 

 

 ……そうだった。

 

 今は何よりも守らなければならない人がいる。

 そのために私がいる。

 

 椛さんは守るべきものを何よりも理解しているからこそ、ここまで言い切れるのだろう。

 

 

 早苗はようやく決心づいた。

 

 

「……わかりました! 星羅さんは、私達に任せてください!!」

 

 

 急発進していく彼女を、椛は見つめて、

 

 

 

「……早苗さん……それに、射命丸さん。後は……頼みます」

 

 

と、力なくつぶやき、ふっと落ちていった――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っと。ギリギリ間に合ったか……大丈夫か?」

 

「哨戒天狗が無理しちゃって。後は私達が引き受けるから、休んでて」

 

 

 

――のを、優しく、しっかりと受け止める者達がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 緑に染まった山の周囲を、赤と黒の閃光が駆け抜け、交差し、火花が散る。

 

 目にも留まらぬ2つの影が、青々とした背景を切り裂いていく。

 

 

 その影を、黒い烏の羽をはためかせて、射命丸は追っていた。

 

 

 時々飛んでくる流れ弾……ならぬ、流れ御札を回避し、時に扇で風を起こして弾き、時に星羅に落としてもらいつつ、見失わない程度の距離を保つ。

 

 

「幻想郷最速をナメないでもらいたい!」

 

 

「霊夢……っ」

 

 星羅が念じるように言うと、射命丸は笑った。

 

「大丈夫。あんなのに霊夢さんが負けるわけないじゃあありませんか。そしてそのために私達が今追っているのですから」

「……射命丸さん」

「それに今は、あなたにも……“翼”がある。信じていれば、答えてくれるのが、ファンタズムメモリでしょう?」

「……はい! もちろんです!」

「いい返事だ、それでこそ星羅さんです。さぁ、更にスピード上げてきますよ〜!!」

 

 

 射命丸は希望を抱えて、前をゆく赤と黒の閃光に向かって突き進んだ。

 

 

 

 ――今我々が諦めてしまえば、この希望は意味を成さないのだから……。

 

 

 そう、彼女は心でぼやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……ねぇ! 黒い私!! アンタ何が目的なのよ!」

 

 

 前の黒い自分に問う。

 

 刺すような紅い眼がこちらを向いた。

 

 

「……アンタと、アイツ(星羅)を消すこと」

「そんなことして何になるのよ! ていうか……アンタ本当に“私”なの!?」

「……そうよ、アンタは私、私はアンタ。それは避けられない定めであり運命」

 

 

 まるで一言一句諦めたような声音で答える黒い自分。

 

 

 すると突然調子を変えたように、その眼がカッと開いた。

 

 

 

 

「……でも、

 

 

今ここでアンタを殺せばその運命(さだめ)も無くなるのよ!!!!」

 

 

「意味わからないこと言わないで!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「霊符!!【夢想封印】!!」」

 

 

 

 

 

 

 同じ動き、同じ声音、同じ弾幕、同じ輝き。

 

 

 

 

 ――されど、アイツのものはどこか昏くて、哀しくて……そして、殺意に塗れたものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……死ね!! アンタなんか……平和のぬるま湯に溺れた、アンタなんかっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お互いの輝きが爆ぜて、眩く弾け飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「っく!?」

 

 

 

 

 

 目くらましかというレベルの閃光が、視界を覆い尽くす。

 

 

 流石に止まらざるを得なくなり、射命丸は急停止した。

 

 

 

 が、星羅は突然射命丸を振り解くとその光に突っ込んだ。

 

 

「どわっ……って、星羅さん!?」

 

 

 彼女は答えない。

 

 

 

 

 やっとつけた決心が、彼女を強く動かしていた。

 

 

 それを、射命丸は突然感じた。

 

 

 

「……今のあの人なら、大丈夫か」

 

 

 そして、射命丸は扇を取る。

 

 

 

「ならば。

 

それを手助けするのが、今の私の……

 

 

清く正しい私の使命ですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くっ…!」

 

 

 

 

 

 霊夢は被弾した左肩を押さえて、呻いた。

 

 

 

 さっきの一瞬のスキを突かれ、もう一発追加で放たれた夢想封印に撃たれたのだ。

 

 

 血が、白い袖に滲む。

 

 殺傷能力のあるスペカなど、スペカではない。

 

 

 ただの…………暴力だ。

 

 

 

 

「最初から加減してたの?」

 

 

 冷徹に自分の声――否、もう一人の自分の声が響く。

 

 

「私は初めから殺す気でいたわよ」

「……なぜ、そこまでして私を……」

「気に食わないから。アンタがのうのうと生きてることが。この平和な世界で平和に生きてるアンタが。それだけよ」

 

 

 周囲を飛ぶ御札がこちらに向きを変えた。

 

 

 

「さっさと消えて。

 

 

そうすれば幻想郷も消えてなくなるでしょ」

 

 

 

 その声が、何故か哀しく聞こえた。

 

 

 そして放たれた無数の弾幕。

 

防ごうと結界を張った、その時。

 

 

 

 

 

 

「そうはいきませんよ」

 

 

 

 

 

 真横から凄まじい突風が起こり、黒い霊夢は大きく弾かれた。

 

 

「っ……! ……射命丸……!!」

 

 

「……やはり私をご存知ですか」

 

 

 珍しく本気の目つきをしている射命丸に、霊夢が問う。

 

「遅かったじゃないの」

「星羅さんを抱えていたのでね」

「……アイツを知ってるの?」

「詳しくは後ほど」

「……で、肝心の星羅は?」

 

 

 星羅がいないのを問われると、射命丸は言った。

 

 

 

「……先に準備万端にしてもらいました。

 

 

着実に黒い霊夢さんをぶち抜ける場所で」

 

 

 

「……!?」

 

 

 

 その言葉に黒霊夢が驚いた瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

「連弾!!【スパイラルブラスト】!!!」

 

 

 

 

 

 

 突如後ろからとんでもない数の――“弾幕”が、飛来した。

 

 

 

 

 螺旋を描き、霊夢を掠めたそれらは、その物量で御札を粉微塵に爆破し、ついでに黒霊夢をも攻撃。

 予想外からの攻撃に、黒霊夢も慌てて横に飛んでかわした。

 

 

 

「ようやく、弾幕の本質を理解し始めましたね。星羅さん」

 

 

 

 射命丸が笑う。

 

 

 

 

「……何!?」

「今の弾幕……まさか」

 

 

 二人の霊夢が飛来した方へ向くと、そこには。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……霊夢。

 

助けに来たよ」

 

 

 

 

 

 

 バスターを陽に反射させ構える星羅があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで私を知ってるのかはわかんないけど」

 

 

 星羅は、取り出した秋色のメモリをバスターに装填した。

 

 

 そして、撃つべき相手へその光を向ける。

 

 

 

《Phantasm memory confirmed…》

 

 

「……霊夢を、幻想郷を傷つけるなら」

 

 

 左手でチャージに震える右腕をしっかりと支える。

 

 その目で相手を捉え、強く念じる。

 

 

「その意味わからない真っ黒な思いごと……

 

ここから吹き飛ばしてやる!!」

 

 

 

 

 

 ――疾風迅雷、真実の光。

 

 

 全てを追い抜き、真実を追い求める風となれ。

 

 

 

 

「旋符・改!!【紅葉旋風砲】!!!」

 

 

 

 

 再び、巨大な弾幕旋風が放たれる。

 

 

 そう、“弾幕”の風が。

 

 

 

「くっ……!?」

 

 

 身動きが取れない程の突風が黒霊夢を襲い、旋風が直撃した。

 

 

 

「……なんで……!? 動け、ない……っ!?」

 

 

「はぁあぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 勢いを強め、星羅は叫んだ。

 

 

 

そのまま動くな(・・・・・・・)!!」

 

 

 

 暴風が黒霊夢をこれでもかと巻き込み、凄まじい量の弾幕が竜巻となった。

 

 不可抗力に縛られた黒霊夢はただ食らうことしか出来ず、やがて爆発が起こった。

 

 

 

「うあああっ!!」

 

 

 

 

 

 

「……呆気ないですね」

 

 

 その様を、射命丸はカメラに収めるのだった。

 

 

 

 

 

 

「……星羅、今のは……どうやったのよ」

 

 

 それを見ていた霊夢が、バスターをおろした星羅に問う。

 

 

「……えっ?」

「私の能力は【空を飛ぶ程度の能力】。他者の干渉を受け付けない力なのよ? それを無効化したってこと?」

「えっ??」

「いやだってさっき、アイツの動きを止めてたじゃないの。あれくらい、やろうとすればかわせるものよ」

「……確かに……?」

 

 

 無我夢中で放っていた星羅は、霊夢の言葉に首を傾げた。

 

 

 

 まだ見ぬ力が、私には眠っている……?

 

 

 

「何を仰るんです。私の力だから、ですよ」

 

 横から射命丸がドヤ顔で割って入ってきた。

 

「はぁ? それは絶対ないわね」

「あやや、なんてことを……もしかしたらあり得るかもしれませんよ!?」

「私に限ってアンタのせいで負けることはないわ」

「えええ〜?」

 

と、笑い合う二人を見て、星羅も微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ふざけんな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 霊夢が、振り向く。

 

 

 

 

 

「……何、笑ってるのよ……

 

何が面白いのよ……!!

 

 

 

全てを喪った私の前で……笑うな!!!!」

 

 

 

 

 

 黒い自分が、その真っ赤な目を見開いて叫んでいた。

 

 

 

 

「! 星羅さん! 霊夢さんっ!!」

 

 

 

 何かを察して射命丸が割って入る。

 

 

「ちょっ、射命ま……」

 

 

 霊夢が言い終わらぬうちに、

 

 

 

 

 

 

 

 

「消え失せろっ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

射命丸の身体に、針が数本突き刺さった。

 

 

 庇った代わりに、射命丸は苦痛に顔を歪ませる。

 

 

「うあっ!」

 

 

 霊夢が妖怪退治に用いる専用の針だ。

 

 射命丸のような強力な妖怪だろうと通用する。

 

 

「ぐぅっ……!」

 

「しゃ、射命丸さん!!」

「射命丸!」

 

 

 近付く星羅を、腹を抑え、射命丸は制した。

 

 

「今すぐ離れて!! 早くっ! 狙いはあなたなんですよ!!!」

 

「で、でもそれじゃ射命丸さんが……!」

 

 

 

 

「遅い」

 

 

 

「!!」

 

 

 ――だが、既に星羅の後ろには……

 

 

 

「消し飛んで」

 

 

 

――その殺意を真っ直ぐ向けてきた、黒霊夢が浮かんでいた。

 

 

 

「星羅っ!!!」

 

 

 

 霊夢が何かをしようとした……が、もう間に合わない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霊符、【夢想封印】……!!!」

 

 

 

 

 至近距離で、冷酷非情な封印の弾が、

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

全弾、無防備な、たった一人の人間を弾き飛ばした。

 

 

 

 

 

 それを目で追っていた黒霊夢は、視線を戻した。

 

 

「……さ、あとはアンタだけよ」

 

 

 

 まるで雑魚を散らしたような声音に、霊夢が叫ぶ。

 

 

 

「アンタ……ただで済むと思ってるの!?」

「そっちこそ、既に左手をやられている身で何を言うつもり」

「……っ……!!」

 

 

 射命丸は負傷、自分も万全でない。

 

 相手もそれなりにダメージは受けているが、それでも相手は自分自身そのもの。

 絶対勝てる保証はない。

 

 しかも相手は容赦なく全てを破壊してくる程に霊力が高まっている。

 

 認めたくはないが……今の霊夢より明らかにあっちのほうが強くなっている。

 

 

 

 

「……大人しく、私の前から消え去って」

 

 

 

 無情な声と共に、再び封印の光が収束し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……このままじゃ、死んでしまう。

 

 霊夢が戦慄した、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「御柱、【メテオリックオンバシラ】っ!!!」

 

 

「神具!【洩矢の鉄の輪】!!!」

 

 

 

 

 突然飛来する、巨大六角柱の嵐。

 

 

「何!?」

 

 

 

 油断しきっていた黒霊夢はまたもすれすれでかわす。

 

 

 だが、幾本もの柱の合間を反射(・・)してくる、別のスペカには対応出来なかった。

 

 

「!!! あ、合わせ技!?」

 

 

 かわすのを見越して放たれていた、反射による予測困難な軌道を描く鉄の輪。

 見事に黒霊夢に激突した。

 

 ごいん、という重たい音と共に弾き出される黒霊夢。

 

 

 そこに容赦なく、弾幕と御柱攻撃が重なった。

 

 

「くぅっ……!! そんな馬鹿な……!?」

 

 瞬時に防戦に回され、黒霊夢は思わず焦りをこぼした。

 

 

 

 

 

 その一連の出来事に、霊夢が空を見上げた。

 

 

「……まさか」

 

 

 

 

「すまなかった、博麗の巫女。ちょっと出遅れてしまったよ」

 

「妖怪の避難を優先してたんだー。ま、おかげで美味しいところは持っていけたけどね」

 

 

 いつもの堂々とした神奈子と、飄々とした諏訪子だ。

 自信に満ち溢れながらも、神としての尊厳を保つ独特の笑みを浮かべた、守矢の二神だ。

 

 だが、今回ばかりは、少し霊夢にも凛々しく見えた。

 

 

 

「……もう、どいつもこいつも遅いのよ……」

 

 言いつつも、霊夢は微笑んだ。

 

 

 

「さぁ、形勢逆転だぞ。黒い巫女よ」

「大人しく引き下がってくれたら私達も攻撃しないよ」

 

 

 そう言われ、流石に満身創痍の黒霊夢は、踵を返した。

 

 

 

 

「……わかったわ。……次は全員消してあげる」

 

 

 

 

 それだけ言い残し、彼女は遠くへ飛び去ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「射命丸さん!! あれだけ言っといて、何故あなたが負傷してるんですか!?」

「あやや……不覚……です」

「全くもう……」

 

 

 神社に戻った四人は、先に待っていた椛に合流。

 椛は腹に針をぶっ刺したままの射命丸に速攻突っ込みをいれながらも、さっさと手当を済ませた。

 

「……これでよし、と。……針で良かったですね。幸いにも、数は多かったですが大した傷にはなってませんよ」

「とほほ……申し訳ない」

「謝る必要はありませんよ。どうせこれでお互い様です。私も気をつけるので、あなたもおあいこということで」

「……そうですね、椛」

 

 そう交わす二人の声音には、お互いにお互いを労る思いが込められていた。

 

 

「……そうか。この幻想郷と星羅、そしてお前に、殺意を……」

「アイツの行動原理はだいたいわかったわ。でも……」

「でも?」

「……悲しさが滲み出ていたのは、気の所為かなって」

 

 霊夢は諏訪子に肩に包帯を巻いてもらいつつ、先程まで戦っていたもう一人の自分を語った。

 

 怒りと悲しみが混ざっていたような言動だったという彼女に、神奈子と諏訪子は顔を見合わせ、目を細める。

 

「……真意はまだわかっていない。何故この世界を滅ぼそうとしているのかが。だから今は様子を見よう」

「……」

「そのうち奴から姿を現すハズだ。その時に、問出せばいい」

 

 神奈子は霊夢にそう言いつつも、「……聞き出せるなら、だけどね」と付け加え、ため息をついた。

 

 

 

 

「ねぇ。早苗と星羅は?」

 

 

 ふと、諏訪子が辺りを見渡して言った。

 

 ハッとして、霊夢が顔を上げる。

 

「そういえば……星羅は、アイツに叩きのめされて、どこかに吹き飛んでいったけど……どこに……」

 

 

 射命丸と椛も、顔をしかめた。

 

 

「とりあえず、皆の態勢をを立て直したらすぐに捜そう。たぶん早苗も星羅を捜してくれているだろうから、後で合流だ」

 

 

 神奈子は言って、空を見上げて思った。

 

 

 ……勝ちはしたが、

 

結局残ったのは、謎と不安だけか……。

 

 

 

 

 皆の疲れを労るように、涼し気な風がそよいでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……星羅さん、星羅さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は弾き出された星羅さんを見つけ、すぐに彼女の落ちていった方向に飛んでいった。

 

 倒れていた彼女を介抱していると、神奈子さまと諏訪子さまが、爆発のあった方向へ飛んでいくのを見た。

 

 霊夢さんたちは二人に任せておこう。

 

 そう判断して、私はなんとか星羅さんが起きるようにと安静な体勢にしていた。

 

 

 すると、その目が開いた。

 

 

「!! 星羅さ……」

 

 

 

 

 

 でも。

 

 

 

 

 ゆっくり開かれた目のうち……

 

 左目は、青……から、緑に、色が代わっていた(・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

「…………君は……早苗?

 

 

……そうか、“僕”は…………“星羅”が代わってくれてたのか」

 

 

 

 

「……あの……星羅、さん?」

 

 

 

 

 

「……ごめん、早苗。

 

 

今は……“僕”のことは、こう呼んでくれる?

星羅(せいら)の裏面……来是(らいせ)って」

 

 

 

 

 

 

 

「来、是……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、何故か私はその名に聞き覚えがあることを自覚して……

 

 

 

 

 

 

 来是となった目の前の人は、懐かしそうな笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Continued to the next Phantasm……

 

 

 

 

 

 

 




 闇落ちってロマンあるよね。

 光落ち? ……まぁ期待しててくださいな。



 次回からは早苗編。

 星羅の正体に、元高校生と現役高校生が迫ります。
 そう。あの子の活躍もあるよ。


この中で、番外編やってほしいのは?

  • 紅魔館組
  • レイマリ
  • うどみょん
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