東方幻創弾 〜Phantasm memories from Buster.〜 作:蒼いなんでも屋
そりゃあ夜中に執筆してたら寝れないわな。
……というわけで、これから地道に投稿頻度を戻していくつもりです。よろしくおねがいします。
タイトルでお察しの通り、あいつの出番です。
星羅の過去の人格・来是。
浮いているものを制御下におき、黒霊夢を一捻りしてしまう彼の正体は“星羅が遡る前の人格が独立したもの”であった。
しかし来是が表立って話す時間が限られている彼は、
“星羅は来是と同一の存在であること”
“黒い霊夢は来是が星羅として存在していた頃の時空から何らかの理由でこの幻想郷に飛んできたこと”
“機怪の狙いは星羅本人よりも、来是としての人格を成す記憶であること”
と告げて、その意識を内に戻してしまう。
一方、今の今まで眠りについてしまった星羅だったが……。
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……
…………
………………?
声が響く。
――〈いらっしゃい〉
『……う……』
――〈ぐっすり眠れた?〉
『…………えっ?』
薄紫と、赤い交差が走る空間。
奥には窓の光だけがにじむ、街のような遊園地のような建物が並んでいた。
どこか儚く、どこか非現実が漂うこの場所の一角で、星羅は目を覚ました。
また声が響く。
〈……
朧気な視界、目の前にいるのは、やたら不敵な笑みをたたえた少女。
パジャマに近い、黒地に白いポンポンのついた服装、それに周囲に浮かぶ桃色の球体がやたら映えるのは気の所為だろうか。
頭にはサンタ帽を引き伸ばしたような紅白の長いナイトキャップを被り、青い髪がはみ出ている。
『……あなたは?』
『私の名前は、ドレミー・スイート。……“夢の世界”の支配者です。以後、お見知り置きを』
『……ドレミー、さん?』
ドレミーは宙に浮いていたその身を、ふわりと床に着けた。
それを見て、星羅が自分の居場所に気付く。
『……って、あれ? このベッド……私、あのとき……?』
『ここは夢の世界よ。あなたの意識は眠ったままなのよ。床に放置するのは流石にアレだったから、用意させて貰ったわ。あと枕も。「スイート安眠枕」っていうのよ。快適でしょう?』
桃色の布団をかけられ、謎の安眠枕でベッドに寝かされていたらしく、星羅はそっと布団を直してから降りる。
『人のベッドは使ったらしっかり元に直さなきゃ……』
『まぁ、偉いわね』
感心してみせたドレミーに、星羅は首を振った。
『……褒められるようなことじゃ、ありませんよ』
『……ほう?』
『それくらいの敬意と、感謝はいつでもしなきゃ。人として』
『……そういう心は大切よ。幻想郷の人々はクセしかないから、あなたみたいな人は珍しいのよ』
『はぁ』
ドレミーは何かを取り出す仕草をしてから、指を弾いた。
『さ、そこに座って』
すると、いかにもな「ボワン」という音が響き、椅子が1つ現れた。
言われるままに、そこに掛ける。
『……何でもあるんですか? ここ』
『……私次第ってところね』
『?』
ドレミーは後ろを振り返って、続けた。
『……薄々勘づいているんじゃあない? ここが、非現実だって、ね』
『……』
『改めてここは、夢の世界。幻想郷の人々が夢見たものが形になって象られる場所。人々の夢、欲望、なりたいカタチ。それらが“夢の世界の住人”として顕現して世界を造る。それがこの世界よ。それを管理してるのが私……ということね。今は私が新しくあなたのための夢を創って、直接あなたを連れてきている状態よ』
『……はぁ』
『それと、私について言い表すなら……そうね、夢を見せ、夢を創り、夢を食べる……
『あー、なるほど…………え?』
『ふふ、似ても似つかないわよねぇ。それはあなたが“現実の概念、外の固定概念”に囚われてるからよ。ここは仮にも幻想郷なのよ。まぁこんな毛玉ポンポンの白黒に言われても説得力ないかもしれませんけどね』
星羅はただ頷くしかなかった。
ちなみに動物の獏と妖怪のバクは厳密には別物である。星羅は知る由もなかったが。
『この世界も、まぁ、人を除けば……実はあまり変わらないわ。それに全ての者が視る夢は根幹で繋がっているのよ。見知らぬ人や場所が夢に出てくるのはそれが原因。そういった、根幹の繋がりがこの世界を夢の世界たらしめているの』
『……へぇ』
『私はこの世界を管理している。夢を消したり、新しく創ってあげたりできる。夢同士の根幹の繋がりを悪用されるのを防ぐための監視も、私の仕事ね。毎日変化があるから、これでも大変なのよ』
『……こんな、広大な世界を……たった一人で?』
『えぇ。自分でいうのはアレだけれども、すごいでしょう』
『すげぇー……』
『ふふっ、いい反応ね。好きよ、そういった感情は』
常によくわからない笑みを顔に浮かべているドレミーを見て、星羅は微妙な面持ちになった。
『そうだ。夢の世界の住人の話だけど……例えば……そうねぇ』
と、ドレミーは周囲を見渡して誰かを探す。
星羅がぼうっとしていると、ドレミーは『おっ』と声を上げて、それに指さした。
『ほら、アレとか参考になるわよ?』
『……えっ?』
そこには、欠伸をしながら気怠げな表情で歩く霊夢と、元気に飛び回っては彼女の周囲でしきりに何かを話す魔理沙がいた。
遠くて声は聞こえない。
だが様子ははっきりと、その目に映った。
『……霊夢? それに……魔理沙?』
『夢の世界の二人、ね』
ドレミーが頷く。
だが、星羅は映る景色に妙な違和感を覚える。
『……本当に、あの二人……なんですか?』
『……ふふ、勘が鋭くて助かるわ』
また不敵な笑みを浮かべると、ドレミーは言った。
『……さっきも、言ったでしょう? 欲望や、夢、なりたいカタチが、この世界の住人として顕現すると。あれが、二人の内面を映し出した姿ね』
『……』
『巫女のほうはいつものんびりとしてるわ。毎日大変だから、もしかしたら疲れが溜まっているのかもしれないわよ。それも身体より……精神的な疲れが。あの白黒魔法使いのほうはどこか超人的な言動が多いのよ。そういうものに……魔女とかに、憧れているのかも?』
管理者らしく、すらすらと二人の特徴を述べてみせたドレミー。
『この夢の世界には、幻想郷はおろか全ての種族……人妖その他全ての夢世界の人格が生きている。あなたも例外ではないわ』
そう言って、左手に何やら分厚い本を取り出した。
途端に顔をしかめて、ドレミーは告げる。
『……あなたの場合は……“そもそも例外な存在”なのだけれども、ね』
ドレミーは本を開き、いくらかページをめくった。
『あなたは特別過ぎる。それはあなた自身も感じているはずよ。突然現れたのにも関わらず、こんなにもこの世界に影響を与えているなんて、普通はおかしな話だものね』
星羅は思わずうつむいた。
『…………夢主人公、ってヤツですか』
『……ご名答。思い出していたみたいね。まさにあなたは今、それに限りなく近い存在になっているのよ。あなたが現れたことで、本来現れない敵が幻想郷を攻めて、本来平和に過ごすはずの少女達が戦っている。全ては本来“部外者”だったはずのあなたを中心に世界が動いているからよ』
『……』
『その顔からして……また、思い詰めちゃったんじゃなくって?』
ドレミーの問いに、こくりと頷く。
嫌なタイミングに限って、呼び起こされてくる記憶。
そのたびに、自分のせいで事が起こっているのだと突き付けられる。
二次創作などにおいて、本来の主人公の活躍を奪う程までに存在感を放つオリジナルの主人公のことを、世間では「夢主人公」、またはとある物語の同人誌によるものから取って「メアリー・スー」などと呼ぶ。
その意味合いとしてよく用いられるのは、“痛い主人公”
突飛した強さや活躍をしたり、理由もなく周囲からちやほやされたり、やたら大きなバックを持っていたりするものを指す。
星羅は、それに見事なまでに当てはまっていることを、それなりに前から自覚していたのだ。
そして、その言葉を思い出して、改めて感じた。
『……私のせいで、この世界は……めちゃくちゃに……っ』
つぶやく星羅に、ドレミーは、
『…………なら、あなたが変わればいい。違うかしら?』
と、投げかけた。
『…………え?』
『今の自分の姿が嫌なら、変わればいい。世界をめちゃくちゃにしてしまったなら、もう一度正しく変えればいい。自分を変える事も、時には必要よ。……夢のあなたはそれを望んでいるわ』
そう言って、ドレミーはあるページを見せる。
『……これは、来是。あなたの裏の人格。現にあなたがいる間、あなたの夢世界での存在を成している、本来のあなたよ』
ドレミーがスケッチしたのだろうか。
星羅にそっくりで、左目が緑色にマーカーされた人物が描かれていた。
『……らいせ……? 私の、裏……?』
『まぁ、そろそろ目覚めの時だから、霊夢達にでも聞きなさい。多分、来是が話してくれているはずよ』
『……』
『記憶うんぬんは流石に私の専門外だけれど、私からアドバイスを1つ。
ヒントなら幾らでも転がっているのだから集めてみなさい。何か答えが得られるわよ、きっと』
本を閉じ、どこかにしまうドレミー。
『……人は簡単に在り方を変えられる生き物よ。あなたにはまだ、迷える時間がある。
……望んだ通りに、生きてみなさい。
それが、あなたが心の奥底で願っている“夢”への近道よ。
世界を変えたいって願うなら、自分が変わらなきゃ』
『……はい』
今自分が何をすべきなのか。
それを改めて認識させられた気がして、星羅は快く頷いた。
『……それじゃあ、いっときのお別れね。また何かあったらいつでも来なさい。あと、安眠枕もよろしくね。
それじゃあ……
意識が落ちる寸前、視界に映ったのは。
三度笑みを浮かべたドレミーと、曖昧な世界の暗く眩しい風景だった。
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「おっはよーーございまーーーーっす!!!」
「うぎゃあぁあぁ!?」
「……もっと穏便な起こし方はなかったの?」
「……ガクッ」
「ほらまた夢の世界に行っちゃうわよ」
「わーわー、ごめんなさいごめんなさい!起きて〜!!」
現に帰った星羅だったが、目が覚めて即刻、早苗のメガホンによるモーニングコールによってまた夢に戻されるところであった。
そして、星羅はあれから丸一日寝ていたこと、なんとか博麗神社まで運んでもらったこと、そして来是のこと、もう一つの能力のことを、霊夢と早苗に聞かされた。
丸一日寝ていた故に空っぽのお腹に味噌汁を入れながら、星羅は言った。
「……そっか。私……そんな過去があったんだね」
「まだ理解が追い付けてないわ、私達も。逆にわかったこともあるけれど」
霊夢は味噌汁のおかわりを注ぎながら、早苗に問う。
「早苗。どうするの」
「とりあえず山の皆さんには、最大限の警戒態勢を敷いてもらいました。特に天狗と河童の皆さんが中心になっているようです。それと、射命丸さんには黒霊夢の捜索も頼みました」
「結構根回ししてあるじゃないの」
「あとは都合よくあの人が来ればなぁ」
そう言って後ろを向き、鳥居の方を見やる早苗。
星羅が首を傾げていると、鳥居の奥から誰かがぱたぱたと走ってくるのが見えてきた。
「霊夢っち、早苗っち〜! おまたせ〜!!」
白いリボンのつば付き帽子に学生服、なにかの文字が描かれたマント、赤い眼鏡。
一瞬でそれらを呼び起こすほど既視感のある少女に、星羅はハッとした。
「……あの子は……?」
「ふぅ、着いたぁ。あっ、君が星羅ちゃん、だよね。私は
ビシッと決めポーズを取る少女――菫子。
「……!!」
その風貌に、星羅は過去の思い出を重ね、
「……………………外の世界の、人間……だよね。
お願い。聞きたいことが山程あるんだ」
と言った。
――そして、振り返って彼女にもまた言った。
「……早苗ちゃん。
あなたにも……聞きたいことがある」
菫子ちゃんは星羅と同世代だと思う。多分。
早苗も合わせてJK三人娘ってところです(おい)。
また菫子ちゃんの二人称の呼び方ですが全部カタカナだと読みにくいかもしれないため今作ではあえて漢字使います。
ただもしかしたら「レイムッチ」に戻す可能性もふつーにあるので戻っても悪しからず。
この中で、番外編やってほしいのは?
-
紅魔館組
-
レイマリ
-
うどみょん