東方幻創弾 〜Phantasm memories from Buster.〜 作:蒼いなんでも屋
数ヶ月空くとかどうなってんじゃい。
……リアルが忙しくて、不定期にかさ増しし続けているんです。いつか安定してうpできるようにしたい。
というわけで早苗編、ようやっと完結です。
やっと折り返し地点ですよ。
山を滅ぼそうと現れた超巨大機怪・アサルト。
圧倒的な火力とバリア機能、更に高速自動修復機能まで備えた鉄壁の身体に為す術ない星羅達。
決死の攻撃も、謎の機能によって逆に利用され、山に降り注ぐ。
絶望的なアサルトの攻撃を、たったひとりで防ぎ切った星羅のバスターからは……
彼女の「血」が、漏れ出していた。
星羅がダメージを負った中でも、少女達は反撃を試みる。
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「神奈子!! 星羅が!」
「何…!?」
諏訪子に呼ばれて、神社を飛び出し空を見上げた神奈子。
飯綱丸もそれに続くが、言葉を失った。
「……なっ…馬鹿な…!? あれだけの攻撃を受けて無傷だなんて……!?」
「…違う……あいつ、みんなの攻撃を“瞬間移動”させて向きを変え、こっちに降らせてきたんだ」
「……つまり、博麗の巫女らの攻撃を自分のものとしてカウンターしたってことか!?」
「そゆこと……私達も行こう。早苗達だけじゃなくて、この山そのものを守るために」
「あぁ諏訪子、私も全く同意見さ。この幻想郷の大地を、好き勝手荒らされる訳にはいかないからね…!」
「……私も行く。大天狗として、山を守る義務くらいは果たそう」
2人の神と大天狗は飛び立つ。
自分達の山を守るために、そしてその山を覆う巨大な敵影を討つために。
「飯綱丸様……御武運を。私にも何かできるかなぁ…っと」
それを見ながら、典も動き出そうとする。
「……あー、典。ちょっと頼まれてくれないか」
と、戻ってきた飯綱丸に呼び止められて、彼女はUターンした。
「はい、仰せとあらばなんなりと」
「天狗と河童、あと山の妖怪を可能な限り集めてほしいんだ。……やりたいことがある」
「……察しました。おまかせを」
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「う……あ……っ」
「……まさか、腕にダイレクトに反動が行っているとは……」
射命丸が星羅の傷を見ながら呟いた。
切り傷のように右腕に走っていた血は、さっき椛が持ってきた包帯で止血されてはいるものの、じわりと滲んでいた。
「早苗、どーにか回復できないの?」
「今やってます……!」
横では早苗が祈祷の姿勢で星羅に力を送っていた。
魔理沙が上を見上げて呟く。
「アイツ、流石に力を使いすぎたのか知らねーが…止まったな」
上空では、バリアこそ張ったままだが、機能を止めているアサルトが浮遊していた。
弾幕の位相をずらしたあの攻撃を放つには、相当なエネルギーを食うらしい。
射命丸が言う。
「攻撃チャンスといえばチャンスですが……あのバリアを結局破ることはできませんでしたから、どうすればいいのでしょうね……」
「一か八かやってみたのに全く意味を成さなかったものね」
霊夢もそう言いながら、アサルトに突き刺さったように飛び出たバリア発生機を見つめる。
「なんとかあの中に入って、直接叩ければ良いのに……」
「……なら、入ってみるかい?」
そこへ現れたのはにとり。
若干土に汚れたままの頬を拭って、星羅へ近付いた。
「おぉ、これはひどいや。時間稼ぎが必要だとは思ってたけど」
「にとり……アンタねぇ、そんなこと言ってる場合じゃないのよ。わかってんの?」
「流石にわかってるよ。今すべきことは、奴が動けない内にバリアを破壊して、攻撃が通るようにすること。だろう?」
リュックサックを展開し、にとりは明らかに入らなそうなサイズの巨大な「何か」を取り出した。
「コイツでアレをぶっ壊す。これにかけるしかない」
出てきたのは、光り輝く一対のドリル。
後部にはロケットブースターが装備されており、単体でもにとりが背負っても飛べるようになっている。
「……こんなので壊せるのか?」
魔理沙が訝しむと、射命丸がこう言った。
「……先程、私達の攻撃を一点集中させられれば、あれを破壊できるかもしれない、と言いましたよね」
「あぁ」
「このドリルならば……効率よく、かつ素早く、一点に凄まじい馬力の攻撃を継続して当てることができます。一点突破を狙うならば……現状、これが最も最適だと思うのです」
「……なるほど、な」
弾幕では、どうしても弾同士の間隔が開いたり、ある程度バラけてしまったりする。
しかし、ドリルならば先端部分に出力が集中するため、一点をとことん狙うのにはもってこいなのである。
「……穴を掘るのにも、ドリルは効果抜群ですからね」
早苗が頷いた。
「ならさっさとそれでぶち抜いてやりましょ」
霊夢も同意し、皆が再び空をみやった時だった。
「……ただ、問題なのは……」
と、にとりがやや申し訳無さそうに告げる。
「コイツの出力が……アレを破るのに足りるかどうかってこと」
仮にも全員の攻撃をたやすく防ぎ、なおかつそれらを自身のものとしたあのバリアを突破するためには、奪われる前に破り切るだけのスピードと、さっき以上の大ダメージで突撃する威力が要る。
いつものにとりらしからぬ、自信なさげな表情をしていると、
「何いってんだよ発明カッパ。
私に任せろ」
魔理沙が親指で自身を指しながら、ニヒッと笑ってみせた。
「魔理沙……?」
「パワーが足りないんだったら、足せば良いだろ?」
「……よし。ミニ八卦炉のセット完了っと」
にとりに背負われたツインドリルに、ミニ八卦炉が取り付けられた。
「良いかにとり。まずはお前の推進力で敵の弾幕を突破して、ヤツのバリアに突っ込む。激突を確認次第、私が遠隔でミニ八卦炉を起動して、そのまま破ってもらう。そしたらバリア発生器を叩き壊してやれ」
「言われなくてもそのつもりさ。ありがとう魔理沙」
「礼を言うには早すぎるぜ。さ、行ってこい! 霊夢、サポートを頼むぜ!」
「任せて!」
「それじゃあ、行くぞ……!
3……2……1……発進!!!」
すべてを阻む壁に、希望を背負った銀の衝角を唸らせて、にとりは飛び立った。
「おおおおおおおおおーー!! 戦機!【飛べ!三平ファイト】ーーーっ!!!」
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「……あれは」
気を取り戻した星羅が、飛び立ったにとりを見て、起き上がった。
――私が壊せなかったバリアを、代わりに……
「……私も、行かなきゃ………っぐ…!」
言い聞かせるように呟いた彼女は立ち上がろうとして、力の入らない足がもつれて倒れ込んでしまう。
「っ!? ダメです、星羅さん!」
すかさず早苗がそれを抱え、そして止める。
「早苗ちゃん…!? でも……!」
「……みんな、星羅さんのために……時間を稼いでくれているんです。だから今は万全を期させてください!」
「……でも…」
言いかけて、早苗が何をしているのかに気が付いた。
そして、包帯の巻かれた自分の腕を見る。
やがて呟いた。
「…わかった。
……私と早苗ちゃんは……私達にできることをやる。そういうことなんだね」
「……その通りです。大丈夫ですよ、あの霊夢さんや魔理沙さん、そして我らが誇るにとりさんなんですから」
その場にしゃがみ、そして星羅は空を見上げた。
「みんな…頑張って……!」
「うおおおおおおおーーー!!」
敵機怪軍団の弾幕を、そのドリルで消し飛ばし、時にかわしながらも、にとりはその視線を変えることなく突撃し続けていた。
追随する霊夢のアシストもあり、一発も被弾することなく、にとりはバリア目前まで迫った。
「にとり! やっちゃって!」
「おうよ巫女さん!」
霊夢に送られて、にとりはブースターを再度ふかして突撃した。
「どりゃーーー!」
激しい火花と軋む音と共に、バリアに突き刺さる。
回転速度はリミット限界ギリギリだが、ヒビが入る様子もない。
「魔理沙ぁぁーっ! 頼む〜!!」
「わかったぜ!!」
魔理沙はその場で魔法陣を展開。
同時に遠隔操作されたミニ八卦炉が変形し、魔砲発射形態に移行していく。
「……さぁ、ぶっ放すぜ!! マスタースパーク、発射ぁ〜!!」
にとりの背中から放たれた虹色の光線が、凄まじい推力となって、彼女をバリアに食い込ませていく。
同時に放つ星型弾が敵の攻撃を寄せ付けない。
「うおおおおおおおおおお!!!」
雄叫びと共に火花が散る中、
――パリン、と。
遂にヒビが入り始めた。
「! ……霊夢!!」
「任せなさい!」
この機を逃さず、霊夢は夢想封印を発射。
ヒビの入ったところへ集中砲火する「集」を放った。
「いけ、にとりーーっ!!」
「突貫だぁぁぁぁぁっ!!!」
リミットを切り、まばゆい光を放って突っ込むにとり。
夢想封印が着弾すると共に限界まで推力を上げた。
そして。
ガシャァン、と、崩れるような音と共に、バリアが砕け散った。
「よっしゃぁーーー!!」
空中でガッツポーズを決めるにとり。
「このまま一気にバリア発生器も……!」
と、方向転換を行おうとする。
……が、
「……あっ! うわぁ!?」
ボワン、という爆発とともにドリルユニットが砕け散り、飛行ユニットを失ったにとりは落下していった。
「きゃあーー!? 強度不足だったかー!?」
「……ったく、締まらねーなお前は…」
手足をバタバタさせながら、真っ逆さまに落下するにとりを、飛んできた魔理沙の箒が引っ掛けて救った。
「んぐえっ」
「ま、十分だぜ。後は霊夢が、やってくれるさ」
言いながら見上げる魔理沙。
その先では雑兵を片付けつつ、バリア発生器を攻撃する霊夢がいた。
「……行かなくていいのかい?」
不思議に思ったにとりが問うが、彼女は笑ってこう返した。
「バリアを割る仕事は果たしたからな。あいつが発生器を壊せばあいつと私で五分五分さ。あいつに出番がなかったらふてくされるだろ?
対等な方が、面白いじゃん」
「……、そっか」
にとりはその表情に何かを見た気がしたが、すぐにハッとして下を見やった。
「……
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「……………………これで、良し……と」
早苗は“あること”を終え、その場に座り込んだ。
「流石に疲れました……でもこれで、アレに勝てることは出来そうです」
「お疲れ様、早苗ちゃん。ありがとう」
労う星羅は、ふと顔を上げた。
「……あっ、あれは…」
「ほえ?」
振り向いた早苗は、思わず息を呑んだ。
「かっ…神奈子さま!? それに諏訪子さまに……大天狗さん!?」
「……いや私は名前で呼ばれないんかい」
現れたのは神奈子と諏訪子、そして飯綱丸。
神奈子は新品のしめ縄を背負っている。
「その様子……2人の準備はいい感じかな」
「はい。あとは星羅さんがどうにか戦えれば……」
「おっけー。じゃあ私達でなんとかするよ」
「えっ?」
諏訪子は星羅に告げる。
「星羅ちゃん。今から私達の力を、ちょっとだけど与えるよ。
傷は流石に治らないけど……身体を動かす分には問題なくなるはず。私達も全力でカバーするから、あなたはあなたが成すべきことを全力でやってね。
……わかった?」
帽子の視線と共に、彼女は真っ直ぐ見つめてくる。
星羅は少しだけ間があったが、すぐに答えた。
「……心得ました」
「よろしい」
飯綱丸はこくりと頷き、そして続けた。
「……アサルトだったか? 奴は私達の攻撃を一時的に掌握して瞬間移動させ、向きを変えることで奴自身の攻撃に転じさせているようだ。
奴が再起動するのは時間の問題であろうから、これを対策せねばならない。そして君一人に守らせていてはさっきの二の舞になってしまうし、そんなことをさせるわけにも行かない。
……だから、先程、典に頼んで山の妖怪全員に協力させることにした。
自分達の住むこの場所を守るという利害の一致でな」
最後の言葉で大天狗の影響力にたじろぎながらも、星羅は頷いた。
「す、すげぇ〜……って、結局どうするつもりなんですか」
「敵が降らせる攻撃は、山の妖怪達と私達が迎撃する。
だから、君達には山を気にせず、全力で奴を破壊することだけに注力してもらう。
という算段さ」
「「おぉ〜!」」
早苗と被って星羅は感嘆した。
「早苗、やれる?」
「はい、神奈子さま。やってみせます」
「……星羅も、聞かなくても良さそうだけど、やれるね?」
「……任せてください」
「うん。大丈夫そうだな、諏訪子」
「そりゃあ私達の早苗と、早苗が認めた星羅だもん。勝てないわけがないよ」
確かめ合いながらも笑いを取るあたり、神様の余裕さを見せられて、星羅は心の底から敬意を覚えた。
「……早苗ちゃんって、素晴らしい神様と一緒にいたんだね」
「えぇ。とっても、とっても素晴らしくって、頼りになる、優しくもお強い神様です」
笑みが重なり合うその様を、飯綱丸は確かに見届ける。
「……それじゃ、私は一足先に注意を引いてくる。武運を祈っているよ、星羅!」
黒い翼はためかせて飛翔する彼女を見送り、神奈子と諏訪子が告げた。
「……じゃ、始めようか」
「君に、私達と、大地の加護を。山を護る、神聖なる力を……!」
呼び出し、その場に突き刺した小型の御柱が共鳴し、2人を輝きが包み込む。
その光を受けながら、星羅は早苗に手を差し出した。
まだ動く、左手を。
「……行こう。早苗ちゃん」
「……行きましょう、星羅さん」
「「私達がやるべき事を、やってみせよう!!」」
「妖怪が作りし、この大地に眠る力よ」
「幻想郷を形作りし、神々の力よ!」
「我らの大地を護らんとする者に、その力を貸せ!」
「そーれー!!!」
二筋の光が星羅と早苗を包み、流れ込む力に2人は目を見開く。
そして、星羅は今までしまっていたアレを取り出した。
「早苗ちゃん、そして早苗ちゃんと繋がるすべての人妖の記憶よ……
私に、みんなを護る、奇跡を……ください!!」
瞬間、翡翠の輝きが迸った。
「大天狗様でも、苦戦なさることがあるのですねぇ」
「まぁな。私やお前も、あらゆる人妖は完璧でない。だからこそ皆力や知識をつけて上に立とうとするものさ」
「こんなとこでも説教ですか、案外余裕そうですね」
「そういう射命丸こそ、平気そうではないか」
バリア発生器を叩く霊夢を援護する、射命丸と飯綱丸。話しながらも巧みに攻撃を回避し、弾幕掃射で雑兵を片付ける。
だが、おそらくアサルトから生み出されているであろう無限湧きの機怪軍団に、流石に押され気味だった。
「……巫女は、まだなのか?」
「フラグが立てば、彼女は応えてくれますよ」
そう言い切る射命丸が振り返ると、
「天狗〜! ぶっ壊したわよー!!」
…と、キック姿勢の霊夢が爆風から飛び出した。
「……あれは」
「神技【天覇風神脚】。霊夢さんの数少ない近距離格闘スペカです。脚に霊力を溜めて放つ技ですよ」
「……やはり巫女は中々乱暴だな…」
派手に砕け散るバリア発生器を見ながら、思わず飯綱丸はぼやいた。
そして、下を見やる。
「…さて、私達の時間稼ぎもそろそろ良いみたいだ。
大本命のご登場さ」
そこには、
戻った霊夢がそれを見て呟く。
「……それができるなら、最初っからやってなさいよ……」
「いくよ早苗ちゃん。一発で落とすから」
「……任せてください。ファンタズムメモリのビジョンは私にも見えました。奇跡の1つや2つ、この風祝がバンバン起こしてあげます!」
「おっけー、それじゃあ……始めるよ!!」
星羅は緑色に染まった、輝くメモリをバスターに装填した。
「ファンタズムメモリ……セット!」
《Phantasm memory confirmed…》
同時に、早苗が輝きに包まれ、スペカを放つ結界を広げた。
[……脅威 確認…… 排除]
当然黙ってみているアサルトや機怪ではない、バリアが消された恨みと言わんばかりにありったけの弾丸が放たれた。
だが、対策は済んである。
「典っ! やれ!」
「お任せを〜。全員、一斉掃射!」
飯綱丸の声と共に、典の合図で、山のいたるところからあらゆる種類の弾幕が発射されたのである。
「……妖怪の山防衛前線、ってやつですか」
射命丸が目を見張って呟く。
「妖怪も、団結すれば凄まじい強さを誇りますからねぇ」
あっという間に、機怪が放った攻撃は相殺された。
同時に何機か雑魚機怪も撃墜され、アサルトは見るからに動揺を見せ始める。
[……味方機 被害 多数……
位相バリア 再展開……]
半透明のバリアが再びアサルトを包む。
「……なるほど。防御バリアの内側にアレを展開して、絶対に攻撃を受けないようにした、というわけですか」
「の、ようだな。だが……」
射命丸と飯綱丸は、下に見える椛に呼びかける。
「……椛、典。カラクリは明かされた。後はわかってるな!」
「私も大体察しがつきましたよ。よろしく頼みます!」
「…言われずとも、やってみせますよ!」
力強く頷き、椛は剣を構えた。
「私も人肌脱ぎますか。狐ですけど」
典もスペカの用意をする。
周囲には、種族の垣根を超えたありとあらゆる山の妖怪達が勢揃いし、上空に向けて弾幕を放つ臨戦態勢を常に保っていた。
椛が叫ぶ。
「目標! 敵大型機怪の、物質位相バリア!!
全員構えっ……撃てぇぇぇー!!!」
様々な色の弾幕が山のそこかしこから掃射され、雑魚機怪やバリアに命中していく。
バリアによって降り注ぐ形となった攻撃は次に放たれた弾幕が相殺し、山への被害を未然に防ぎつつ、こちらの攻撃を片っ端から当てていく。
「ありったけの火力! ぶちかますぞー!!」
その中にはドリルを壊されたにとりが、どこからか持ち出したありったけの発明品武器を使いまくっているのも見られた。
対策されるどころかカウンターされて、
[……何……!?]
…と、ここに来て、初めてアサルトがそれらしい反応を見せた。
[……位相バリアの…… 仕様ヲ 突いた……?
妖怪 如きが……???]
「ようやく、化けの皮を剥ぎましたね」
慄然と響く声に視線を向けるアサルト。
そこには、眩い輝きを伴い、真っ直ぐ眼光を向ける、星羅と早苗の姿が。
「ここに集まった妖怪達は……お前のせいで迷惑被ってんだ!
そんな皆の攻撃まで利用して、山をめちゃくちゃにしようとするだなんて……許せない!!」
「私達が今まで築き上げてきた山の秩序を! その中で生きてきた妖怪の命を! それらを危険に晒すならば、この私……守矢の現人神が黙ってはいませんよ!!」
言っている間に、位相バリアが勝手に消失した。
どうやら防御力と持続力自体は高くないらしい。
[……位相バリア 停止……!?]
「やっと、丸裸になったな」
「これで全力でボッコボコにできるね!!」
「いくぞ射命丸! 落とす!」
「あや、いつにもましてやる気ですねぇ! もちろん私もですけど!」
「魔理沙ー! やるわよー!」
「おう! 山とか星羅とか、諸々傷つけた事はふつーに許せねぇからな!」
神奈子が、諏訪子が、飯綱丸が、射命丸が、霊夢が、魔理沙が。
それぞれのスペカで色とりどりの輝きを放ち、山を彩り、敵を焼く。
アサルトからも凄まじい量の弾幕とミサイルが放たれたが、日頃から弾幕勝負に慣れているこちら側には傷一つ付けられない。
特に、星羅と早苗は、纏う輝きによってあらゆる攻撃がかき消されていた。
[……何故…? 何故… 攻撃が… 通らない…!?]
「……うーん、じゃあ答えの代わりに、コイツを食らわせてあげるね。
殲滅することだけに頼ってる、機械な奴らに言っても、通じない“力”だから!!」
2人の手に支えられたバスターがアサルトに向けられる。
「一発逆転……奇跡の光!!」
収束した輝きが、解き放たれる。
星羅と早苗の声が重なり、それは宣言された。
「「奇術・改!!【グレイソーマバスタージ】!!!」」
直後。
一筋の翡翠の輝きがアサルトを貫いた。
そして、爆ぜた。
[……ナ……内部からの 致死量級の ダメージ……だと!?
一体ドウヤッテ…… アサルト の 装甲は……貫けない……筈なのに……!?
何故…… 何故…… 何故なんだ……!?]
アサルトの内側から、グレイソーマタージの輝きが飛び出しては吹き飛ぶ。
そう、内側から、である。
「早苗ちゃんの奇跡の力と、私の弾幕制御能力。
これを繋いだんだ」
「最初の一撃で敵の装甲を貫き、その一撃にグレイソーマタージを込めることで、内側から解き放つ! ……という、一連の“起こり得ないような事象”を、“奇跡に変換して”、起こしました。
これが私達の力です。ありえない事象をあり得るようにして、起こり得ない事実を起こす。よりわかりやすく、より強くした……純粋な奇跡です。
……確率やデータでは表せない力を知らない貴方がたには、きっとわからないでしょうけどね」
白煙を上げるバスター越しに告げる、星羅と早苗。
爆散寸前、アサルトは告げた。
[……わからない……
理解、不能だ……
だが…… アサルトに 理解出来なくとも……
マスターには理解出来たのだな]
「…………………………え?
ちょっと…どういう意味――!?」
突然浮上した疑問に、答えは帰ってこなかった。
爆炎という花火が、山一帯を鮮やかに照らしたのは、そのわずか数秒後のことである。
_______________________
「妖怪諸君! 皆のおかげで、山の平和は保たれ、侵略者は去った! 今宵は無礼講で構わない、戦勝会だ! 乾杯!!!」
神奈子の元気が良すぎる挨拶と共に、勝利の宴が山中で始まった。
霊夢が酔っ払い、魔理沙が踊って、にとりも何やら様々な機器を無尽蔵に披露していた。
河童達は勝利の花火を打ち上げまくった。
七色の閃光が山を照らし、各々の笑顔を彩った。
椛と射命丸も今宵ばかりは盃を交わした。
「お疲れ様でした、椛」
「ええ、こちらこそ。……借りができてしまいましたね」
「仇で返さないでくださいよ、非常に面倒くさいですので」
「元から返す気なんてありません」
「うわー、それは流石に傷付きますね〜」
一方ではこんな声も。
「えっ、約束違うじゃないかー!」
「私はただ使ったらどうですかって言っただけですよ〜、嘘は言っておりません〜」
「ぐぬぬ、このメギツネ〜!!」
「何とでも言ってくださいな、この私には効きませんからねぇ」
「くそー!!」
……どうやら先程の戦いでにとりに武器を使いまくるように言ったのは典だったらしい。
何やらにとりの怒りを買っているようで、彼女に追われながらも典は余裕の表情を崩さなかった。
「……典、その辺にしておけよ」
「やれやれ、あんたのとこの管狐も困ったものだな」
「有能なのは認めるけどさ、異変以外であんまり周りに迷惑かけ過ぎないでよ」
「はっは、考えておこう」
「「今すぐやって!!」」
その様子を、笑いながら見守る飯綱丸と、ツッコむ神奈子、諏訪子であった。
そんな喧騒から少し離れた場所で、星羅は早苗にもらったみかんジュースを飲んでいた。
2人ともお酒はまだ飲めない(早苗は飲むとやばい)ので、そっと2人で離れていたのだ。
打ち上がる花火を眺めながら、早苗が切り出した。
「……お疲れ様でした、星羅さん」
「……うん。お疲れ様」
「……あの」
「ん?」
「……怪我されてまで、私達のために頑張ってくださったのに……私……」
星羅の右腕には、しっかり結ばれた包帯と、お守りが巻かれていた。守矢神社の加護があるというお守りである。
星羅はそれに触れながら、首を振った。
「大丈夫だよ、早苗ちゃん。無理をしたのは私だもん」
「でも…」
「それに、早苗ちゃんがいたから、これくらいで済んだんだよ」
星羅はメモリを取り出して続ける。
「……奇跡だよ。きっと」
「?」
「早苗ちゃんに会えたのも、みんなで力を合わせて敵を倒せたのも。もっと言えば……霊夢や魔理沙に会えたのも。きっと……小さな奇跡の連続なんだよ」
「……星羅、さん……!」
感極まったのか、早苗は思わず星羅に寄り添った。
「……早苗ちゃん?」
「すみません……私、嬉しくて……」
「……嬉しいのは私もだよ、早苗ちゃん。だからさ……今日は色々忘れて、思いっきり楽しまなきゃ」
「……そう、ですね。楽しみましょう!」
ぐしぐし、と涙を拭って、早苗は笑顔を向けた。
「……星羅さん。ありがとうございました。これからも……改めて、よろしくお願いします!!!」
直後、花火が広がった。
緑の光に照らされた、彼女の笑みに、星羅も自然と笑っていた。
「……うん。よろしくね…早苗ちゃん!!」
「ったく……2人で何の話してるのかと思いきや……」
と、突然乱入してくる人影が2つ。
だいぶ酔ってる霊夢と魔理沙であった。
「うっわ、2人ともベロベロだねぇ…」
「わたしゃ嬉しいよ星羅ー、出会えたことが奇跡だなんて言ってくれるなんてぇ〜!」
「嬉しすぎて涙ちょちょ切れちまうぜ〜!!」
「……聞かれてたし…」
がばっと抱きつかれ、星羅は慌てる。
「ちょ、酔ってるからってやりすぎはよくないよー!」
「今日は無礼講だぜ〜、楽しまなきゃ損、損!」
「みんな、今日の立役者を待ってるわよ〜」
「うわわぁー! 引っ張らないで〜!」
そのまま、ずるずると宴会会場に連行される星羅。
早苗はその様子を苦笑しながら見ていたが、自分も混ざることにした。
「じゃ、私も行きますか!」
「おう早苗〜、一緒に楽しみましょ〜」
「お前も今日のヒーローだぜぇ!」
「…え、早苗ちゃん、お酒……」
「大丈夫大丈夫! 奇跡でどーにかなります!」
「そういうもんじゃないよね? ね??」
花火が山中を彩る中、星羅はしばらく色んな人妖に絡まれ続けることになるのであった……。
そんな山を、遠くから見つめる者がひとり。
無数の金色の尾を夜風になびかせ、両腕を組みながら静観する、どこか“主”によく似た姿をしている「式神」。
九尾の狐の妖怪、
「……これで、彼女が手にした“過去の記憶”は、4つ。
あと“半分”……か」
眉間にしわを寄せていた藍だったが、しばらくして後ろを振り返った。
空間に切れ目が現れ、リボンと共に開眼のように開いた異空間から現れたのは、
「……紫様」
「夜遅くまでお疲れ、藍。星羅の様子はどう?」
さっきまで寝ていたのか、帽子を直しながら問う紫に、藍は頷きながら答える。
「今日の戦いで怪我をしたとはいえ……ここまで、4つの記憶を順調に取り戻してきたようです。あと“半分”取り戻せば、彼女は……」
「……その通りね。でも、
「そうなのですか?」
彼女の問いには敢えてすぐに答えず、スキマに寄っかかりながら、紫は呟いた。
「パラドックスが彼女を襲う前に……やらなきゃならないことがある。
藍。黒い博麗の巫女を見つけ次第……私を呼んでちょうだい。すぐ行くわ」
「……はっ。承りました」
夜空に浮かんでいた2つの影は、風に溶けるように、ふっと消えていった。
Continued to the next Phantasm…
早苗編、完ッ!
……長かった(遅くなって大変申し訳無い)。
以降も超亀更新続くと思いますが、何卒よろしくです……。
5/5追記
→決め台詞追加。入れ忘れてて大変申し訳ない……
この中で、番外編やってほしいのは?
-
紅魔館組
-
レイマリ
-
うどみょん