東方幻創弾 〜Phantasm memories from Buster.〜 作:蒼いなんでも屋
番外短編。
オカルトが苦手な星羅の、夏のある一日の出来事です。
こいしの日に上げようとしたんですが、間に合いませんでした。てへっ。
なので、地霊殿編の前日譚的立ち位置になりました。
といっても、これを読まなくてもちゃんと楽しめる内容にはなっています。
早苗編を読み終わってからお読みになることをおすすめします。
星羅は、元・高校生という事実が明かされた。
そのせいか、彼女の記憶の片隅に、高校にいた頃のビジョンがいくつかあった。
特に早苗との邂逅後は、イメージがつかなかったものもより鮮明に浮かぶのであった。
そして、欠けていたモノを取り戻す代償の一つに……
「……こっわ……」
……弱点、苦手なものを呼び覚ましてしまうこと、
要はトラウマの再発があるのである。
あれから数日が経ち、山へお礼の挨拶回りをしていた星羅だったが、すっかり遅くなってしまったのである。
今星羅は夜中の小道をひとり歩いている。
片手にはバスターが光っている。懐中電灯代わりだろう。
しかし星羅の足取りはすごく重い……というか、進んでない。
そう。
真っ暗闇の中一人で歩くことに、心底ビビっているからだ。
「もーやだ!!早く帰りたいのに……」
言いながら星羅は文のメモリを取り出し、バスターを起動した。
「……疾風迅雷、真実の光!……こんな時に使っていいのかなー……?」
竜巻の風で空中へ発射された星羅は、その勢いのまま博麗神社へ飛んでいった。
一刻も早く、帰りたかったのである。
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「……はー、はー、ようやっと着いた…………」
博麗神社の鳥居の前に、星羅はへたんと崩折れた。
流石に道のど真ん中に座るのは気が引けたので端に座っているが。
バスターからメモリを排出させ、解除する。
「なんでこんな暗いのよ、夏場って……」
ここまでかかることを考えていなかった星羅は、くたくたであった。
何かごはん食べなきゃなぁ……たぶん霊夢は寝てるだろうけど、とぶつぶつ言いながら、星羅は鳥居を潜ろうとした。
と、その時。
「もっしもーし?」
「ひっ!?」
「今、あなたの……後ろにいるの」
背筋が凍りついた。
心臓が一瞬止まったかと思った。
声にならない叫びを上げた。
恐る恐る声のした後ろを振り向くと、そこにはいつの間にやら、ちょっと自分より小さいくらいの少女が立っていた。
「……えっ?」
「えへへ、驚かせちゃったー? わたしは
「……えっ?」
星羅の驚愕を塗りつぶした困惑を他所に、こいしと名乗った彼女はずんずかと鳥居をくぐると、星羅の小屋――にとりが改築した「なんでも小屋・せーら」を指さして言った。
「ねーねー、アレ君のお部屋でしょ? おじゃましてもいいよね?」
「…………えっ??」
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「家に上げてしまった……霊夢、寝ててくれよ…」
「ひろーい、あかるーい、
「……案外って……」
自分の家にとりあえず入れた星羅だったが、こいしは入ると部屋中をとことこと歩いては、置いてある色んなものを興味津々に観察していた。
そんな彼女を、星羅はぼうっと眺めていた。
暗いためさっきは分からなかったが、髪は緑がかった銀髪のセミロングヘアだった。
ハートボタンと黒フリル袖の黄色い服を纏い、スカートは緑色。頭には黄色いリボンを巻いた鍔付き帽子を被っている。
そしてなにより目立つのは、足のあたりから伸びて彼女を取り巻く……管?のようなもの。
紫色で、一部はハートの形にうねりながら彼女を取り巻いており、それらは小さな「目」に繋がっていた。
しかしその「目」は、何故か閉じている。
瞬きどころか、しばらく見ても開くことすらない。
不思議がって見ていると、
「あ、そうだ。ねーねー、あなたはなんて名前なの?」
とこいしが唐突にこちらを見てきた。
「そっか、初対面だもんね。私は幻島 星羅。星羅でいいよ。よろしくね」
「星羅かー、たぶん覚えとくねー」
「たぶん?」
笑みを絶やさぬこいし。
薄気味悪く思っていると、彼女はサードアイを撫でながらこう言った。
「わたしさー、無意識だからさぁ。君のこと、覚えてられるかわかんないんだよー」
「無意識?」
イマイチ理解に苦しんでいると、彼女は明後日の方向を向いて続けた。
「わたし、次に何をするのかがわからないの。
家を抜け出すかもしれないし、何かごはんを食べちゃうかもしれない。突然、星羅ちゃんに突撃するかもしれないからね」
「それは勘弁」
「言われてもな~、無意識だから無理」
「……無意識、って何なの?」
眉を細めた星羅。
すると、こいしは少しかがんで……
「……突然、切りかかるかも……ってこと」
「……っ!?」
首元に突然、ナイフを当ててきた。
背の方を向けていたので切れはしないが、それでも刃物を突きつけられて星羅は酷く焦った。
「……ちょ、どういうことなの!?」
「あは、ごめーん。切らないから安心してー」
さっきの気迫(無意識なのでそもそも気配がないが)はどこへやら。
にへへ、と笑みを浮かべたこいしはナイフをさっとしまい、くるんとその場で一回転。人差し指を立て、こう答えた。
「わたし、元々……サトリ妖怪って言ってね。心が読めたの」
「……心を、読めるの!?」
「うん。でも、わたし……疲れちゃって」
「……その力に?」
「うん。だから自分で封印したの。コレを」
そう言い、紫の瞳を差し出す。
恐る恐る触れると、とても冷たかった。
まるで、血管に血が流れず冷えてしまった死体のように。
「……そうしたら、自分も無意識をコントロールできなくなった、ってこと?」
「うん。心を見えないようにしたら、自分の心も見えなくなっちゃったし、周りからも気づかれにくくなっちゃった」
「……」
「でも、今のところは困ってないよ〜。お姉ちゃんも気遣ってくれるし、お空やお燐もたくさん遊んでくれるし」
「……お姉ちゃん?」
「そのうち会えるよ。たぶんね」
気がつくと自分の手からサードアイは移動しており、こいしも扉の前へ移っていた。
どうやら星羅の能力を以てしても、彼女の気配は感じれないらしい。
「じゃ、そろそろお暇しまーす。勝手にお邪魔してごめんねー! 早く寝ないと、こわーい妖怪に襲われちゃうよ?」
「心配ありがとう。こいしちゃんは?」
去ろうとする彼女へ問うと、こんな答えが帰ってきた。
「うーん……さぁ?
ここに戻ってくるかもしれないし、家に帰るかも。
次の瞬間の、わたし次第。
どこへ行って何するかなんて決めなくたって、勝手にきままにやるだけだもん。
何もかも決めてくと、困ったときに変えられなくて大変だよ。気の向くまま、やりたいことを思いついたときにやる。それで十分。
君だってそうなんじゃないの? 自分のやりたいことをやろうとするなんて、人間も妖怪も関係ないんじゃないかなぁ?」
これも、きっと無意識に言っているのだろう。
……でも、どこかそんな気がしなかった。
突然の深い言葉に呆気にとられていると、彼女は戸を開けて手を振った。
「それじゃまたね~、ばいばーい」
「……」
結局、特に何をするまでもなく、こいしは夜闇に消えていった。
……否、その夜の空気に溶けるように、その気配を無くしていった。
こいしのせいで、星羅はしばらく寝付けななった。
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「お゛は゛よ゛ー……」
「せ、星羅?? どうしたのよ……目にクマできてるわよ」
結局夜通し眠れなかった星羅は、翌朝霊夢に形容し難い顔を見せてしまった。
怖いから早く帰ったのに、奇妙な体験をしてしまったのだ。仕方ない。
こいしの話をすると、霊夢はまた面倒くさそうな顔をした。
「……こいし、ねぇ。アイツ何するかわからないから大変なのよね」
「やっぱしそうなんだ」
「今のところは異変を起こしてないし、むしろ異変に乗っかって唐突にやってくるくらいだからね。アイツのことは未だによくわからないわ。行動原理も、行く先も」
「…無意識、って大変だね」
そう言う星羅に、彼女は少し考えたあと、首を振った。
「……案外、そうでもなさそうよ」
「……えっ?」
「……たとえ誰にも見つけられなくても、自分が何をするか制御できなくても。
アイツには、帰る場所と、待ってる人達がいるからね。……一応」
地底の一角にそびえるお屋敷。
その戸を開く少女。
「お姉ちゃぁーーーん!! ただいま〜!」
そして、それを笑顔で出迎える、姉がいた。
「……おかえりなさい、こいし」
「……」
朝食後、縁側に座る星羅は、1枚のメモリを見つめていた。
濃い緑色で、どこかで見たような紫の目が描かれている。
ラメ入りであるのを察するに、ファンタズムメモリであった。
「……こいしちゃんの、メモリ……!?」
使い方はわからない。名前も知らない。
多分、「無意識に」生まれたものなのだろう。
こいしの無意識フリーダムさに、星羅は思わず頭を抱えるのであった。
「……何に使えばいいの、これ……」
ファンタズムメモリ出しちった。
本編に絡むかは不明。
この中で、番外編やってほしいのは?
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紅魔館組
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レイマリ
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うどみょん