東方幻創弾 〜Phantasm memories from Buster.〜   作:蒼いなんでも屋

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 番外短編。
 オカルトが苦手な星羅の、夏のある一日の出来事です。

 こいしの日に上げようとしたんですが、間に合いませんでした。てへっ。
 なので、地霊殿編の前日譚的立ち位置になりました。
 といっても、これを読まなくてもちゃんと楽しめる内容にはなっています。

 早苗編を読み終わってからお読みになることをおすすめします。



EX 2. 無意識の本怖少女

 

 

 

 

 妖怪の山襲撃事件の解決から、数日。

 一連の出来事を経て、星羅についていくつかの事実が発覚した。

 その中で、彼女は外来人……幻想郷の外からやってきた存在であることが確定事項となり、そして元・高校生であるという過去も明かされた。

 

 そのせいか、彼女の記憶の片隅に、高校にいた頃のビジョンがいくつかあった。

 特に早苗との邂逅後は、イメージがつかなかったものもより鮮明に浮かぶようになっていたのであった。

 

 

 そして、欠けていたモノを取り戻した代償の一つに……

 

 

 

 

 

 

「……こっわ……」

 

 

……弱点、苦手なものを呼び覚ましてしまうこと、

要はトラウマの再発があるのである。

 

 

 あれから、山へお礼の挨拶回りをしていた星羅だったが、今日はすっかり遅くなってしまったのである。

 

 今星羅は夜中の小道をひとり歩いていた。その片手にはバスターが光っている。懐中電灯代わりなのだろう。

 しかし星羅の足取りは重い……というよりも、殆ど進んでいない。

 

 そう、真っ暗闇の中一人で歩くことに、強い恐怖心を抱いてしまっているのだ。

 要は怖がりなのである。

 

 

「もーやだぁ!!早く帰りたいのに……」

 

 言いながら、星羅は文のファンタズムメモリを取り出し、バスターを起動した。

 

「……疾風迅雷、真実の光!……こんな時に使っていいのかなー……?」

 

 竜巻の風で空中へ発射された星羅は、その勢いのまま博麗神社へ飛んでいった。単独で空を飛ぶ能力を持たない彼女は、文のメモリを使っている間のみ、浮遊ができる。

 わざわざそれを使ってでも、星羅は一刻も早く、帰りたかったのである。

 

 夜風を切り裂きながら、星羅は神社を目指した。

 

 

 

 

 

___________________

 

 

 

 

 

 

「……はー、はー、ようやっと着いた…………」

 

 

 仮にも幻想郷最速の少女の記憶。ものの数分で、博麗神社へ到着した。

 星羅は神社の鳥居の前にふらふらと進むと、無事に辿り着くことができた安心感故か、へたんと崩折れた。流石に道のど真ん中に座るのは気が引けたので端に座っているが。

 

 バスターからメモリを排出させ、解除する。

 

「なんでこんな暗いのよ、夏場って……」

 

 ここまでかかることを考えていなかった星羅は、それまでの疲れに恐怖心が上乗せされて酷く疲労していた。

 それでもずっと座り込んでいるわけにはいかない。

 何かごはん食べなきゃなぁ……たぶん霊夢は寝てるだろうけど、とぶつぶつ言いながら、星羅は鳥居を潜ろうと立ち上がる。

 

 

……と、その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もっしもーし?」

 

 

 

 

 

「ひっ!?」

 

 

 

 

 

「今、あなたの……後ろにいるの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 背筋が凍りついた。

 

 

 心臓が一瞬止まったかと思った。

 

 

 声にならない叫びを上げた。

 

 

 

 

 

 恐る恐る声のした後ろを振り向くと、そこにはいつの間にやら、ちょっと自分より小さいくらいの少女が立っていた。

 

 

 

 

「……えっ?」

 

 

 

 

 

「えへへ、驚かせちゃったー? わたしは古明地(こめいじ) こいし!よろしくおねがいしまーす」

 

 

 

 

「……えぇ??」

 

 

 

 

 星羅の驚愕を塗りつぶした困惑を他所に、こいしと名乗った彼女はずんずかと鳥居をくぐると、星羅の小屋――にとりが改築した「なんでも小屋・せーら」を指さして言った。

 

 

「ねーねー、アレって君のお部屋でしょ? おじゃましてもいいよね?」

 

「…………えぇえっ???」

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

 

「家に、上げてしまった……霊夢、寝ててくれよ…」

 

「ひろーい、あかるーい、案外(・・)きれ~い!」

 

「……案外って……」

 

 

 

 目の前の恐怖の塊…もとい謎の少女に言われるがまま、自分の家にとりあえず入れた星羅だったが、その少女・こいしは堂々と入るやいなや、部屋中をとことこと歩いては、置いてある色んなものを興味津々に観察し始めた。

 恐怖心からやっと落ち着いた星羅は、そんな彼女をぼうっと眺めていた。

 

 外がほぼ真っ暗だったため先程は分からなかったが、部屋の明かりに照らされた彼女の髪は、緑がかった銀髪のセミロングヘアだった。

 ハートのボタンと黒フリルの袖の黄色い服を纏い、スカートは緑色、頭には黄色いリボンを巻いた鍔付き帽子を被っている。

 

 そしてなにより目立つのは、足のあたりから伸びて彼女を取り巻く……管? のようなもの。

 血管のようなそれは紫色で、一部はハートの形にうねりながら彼女を取り巻いており、それらは球状の小さな「目」に繋がっていた。

 しかし、その「目」は何故か眠るように閉じていた。

 瞬きどころか、しばらく見ても開くことすらない。

 

 不思議がって見ていると、

 

「あ、そうだ。ねーねー、あなたはなんて名前なの?」

 

とこいしが唐突にこちらを見てきた。

 

「…あ、あぁ、そっか。初対面だもんね私達。私は幻島 星羅。星羅でいいよ。…よ、よろしくね」

「星羅かー、たぶん覚えとくねー」

「たぶん…って?」

 

 笑みを絶やさぬこいし。しかしその表情とは裏腹に、星羅には彼女の感情が全く読めなかった。

 薄気味悪く思っていると、彼女はサードアイを撫でながらこう言った。

 

 

「わたしさー、無意識だからさぁ。君のこと、覚えてられるかわかんないんだよー」

 

「……無意識?」

 

 イマイチ理解に苦しんでいると、彼女は明後日の方向を向いて続けた。

 

「わたし、次に何をするのかがわからないの。家を抜け出すかもしれないし、何かごはんを食べちゃうかもしれない。突然、星羅ちゃんに突撃するかもしれないからね」

「それは勘弁かなぁ…」

「言われてもな~、無意識だから無理」

「……ねぇ、こいしちゃん。無意識、って何なの?」

 

 眉を細めた星羅。

 

 

 すると、こいしは少しかがんで……

 

 

 

 

 

 

 

「……突然、切りかかるかも……ってこと」

 

 

「……っ!?」

 

 

 

 

 

首元に突然、ナイフを当ててきた。

 

 

 が、背の方を向けていたので切れはしない。所謂、峰打ちだった。

 それでも、刃物を突きつけられた星羅は酷く焦った。

 

「……ちょ、どういうことなの!?」

「あは、ごめーん。切らないから安心してー」

 

 さっきの気迫(無意識なのでそもそも気配がないが)はどこへやら。にへへ、と笑みを浮かべたこいしはナイフをどこかへさっとしまい、くるんとその場で一回転。人差し指を立て、こう答えた。

 

「わたし、元々……サトリ妖怪って言ってね。心が読めた(・・・)の」

「……心を、読めるの!?」

「うん。でもねー、わたし……疲れちゃってさぁ」

「つ…疲れた? ……もしかして、その力に?」

「うん。だから自分で封印したの。コレを」

 

 そう言い、自身の管に繋がれた紫の瞳を、星羅の眼前へ差し出す。

 

「……」

「触っていいよー。感覚無いからね」

「…………じ…じゃあ…失礼します……っ」

 

 恐る恐る触れると、とても冷たかった。

 まるで、血管に血が流れず冷えてしまった死体のように。

 

「…、まさか目を閉じた結果……チカラを封印した結果、自分をコントロールできなくなった、ってこと?」

「うん、正解〜。心を見えないようにしたら、自分の心も見えなくなっちゃったし、周りからも気づかれにくくなっちゃったの」

「……そんな」

「でもね、今のところは困ってないよ〜。お姉ちゃんも気遣ってくれるし、お空やお燐もたくさん遊んでくれるし」

「……お姉ちゃん?」

「そのうち会えるよ。たぶんね」

 

 

 気がつくと自分の手からサードアイは移動しており、こいしも扉の前へ移っていた。

 どうやら星羅の能力を以てしても、彼女の気配は完全には感じられないらしい。

 

「じゃ、そろそろお暇しまーす。勝手にお邪魔してごめんねー! 早く寝ないと、こわーい妖怪に襲われちゃうよ?」

「心配ありがとう。こいしちゃんは?」

 

 去ろうとする彼女へ問うと、こんな答えが帰ってきた。

 

 

 

「うーん……さぁ?

ここに戻ってくるかもしれないし、家に帰るかも。

 

次の瞬間の、わたし次第。

どこへ行って何するかなんて決めなくたって、勝手に気ままにやるだけだもん。

 

何もかも決めてたら、困ったときに変えられなくなって大変だよ。気の向くまま、やりたいことを思いついたときにやる。それで十分。

君だってそうなんじゃないの? 自分のやりたいことをやろうとするなんて、人間も妖怪も関係ないんじゃないかなぁ?」

 

 

 

 これも、きっと無意識に言っているのだろう。

 ……そう分かってはいても、どこかそんな気がしなかった。

 

 突然の深い言葉に呆気にとられていると、彼女は戸を開けて手を振った。

 

 

「それじゃまたね~、ばいばーい」

 

「……」

 

 

 結局、特に何をするまでもなく、こいしは夜闇に消えていった。

 ……否、その夜の空気に溶けるように、その気配を無くしていった。

 

 こいしのせいで、星羅はしばらく寝付けなった。

 

 

 

 

「………。何だったんだろう、あの子……」

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 

 

「お゛は゛よ゛ー……」

 

「せ、星羅?? どうしたのよ……目にクマできてるわよ」

 

 

 結局、夜通し眠れなかった星羅は、翌朝霊夢に形容し難い顔を見せてしまった。

 怖いからと早く帰ったのに、帰った先で奇妙な体験をしてしまったのだ。無理もない。

 

 顔を洗ってどうにか気を取り直し、食卓でこいしの話をすると、霊夢は案の定、面倒くさそうに眉間にしわを寄せた。

 

「はぁ……こいし、ねぇ。アイツ何するかわからないから大変なのよね」

「やっぱしそうなんだ」

「今のところは異変を起こしてないし、むしろ異変に乗っかって唐突にやってくるくらいだからね。アイツのことは未だによくわからないわ。行動原理も、行く先も」

「…無意識、って大変だね」

 

 そう言う星羅に、彼女は少し考えたあと、首を振った。

 

「……案外、そうでもなさそうよ」

「……えっ?」

 

 

 

 

「……たとえ誰にも見つけられなくても、自分が何をするか制御できなくても。

 

アイツには、帰る場所と、待ってる人達がいるからね。……一応」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗い、暗い、地の底の、

 

 地底の一角にそびえるお屋敷。

 

 その戸を開く少女。

 

 

 

 

 

「お姉ちゃぁーーーん!! ただいま〜!」

 

 

 

 

 

 そして、それを笑顔で出迎える、姉がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おかえりなさい、こいし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いつの間に!?」

 

 

 

 朝食後、縁側に座る星羅は、1枚のメモリを見つめていた。

 

 

 濃い緑色で、どこかで見たような紫の目が描かれている。

 ラメ入りであるのを察するに、ファンタズムメモリであった。

 

 

「まっ…まさか、……こいしちゃんの、メモリ……!?」

 

 

 使い方はわからない。名前も知らない。

 多分、「無意識に」生まれたものなのだろう。

 

 こいしの無意識フリーダムさに、星羅は思わず頭を抱えるのであった。

 

 

 

 

「……何に使えばいいの、これ……」

 

 

 

 

 

 

 

 




 ファンタズムメモリ出しちった。
 本編に絡むかは不明。

この中で、番外編やってほしいのは?

  • 紅魔館組
  • レイマリ
  • うどみょん
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