東方幻創弾 〜Phantasm memories from Buster.〜 作:蒼いなんでも屋
根幹に迫る章です。黒霊夢も出てきます。
周りを立たせつつ、しっかり「東方の作品」「二次創作だけど違和感を失くしたモノ」に仕上げるのは大変だ……
と言っても今回は魔理沙の出番は控えめ。
045. 式神のお告げ
妖怪の山襲撃事件からはや2週間の時が流れた。
季節は少しずつ初夏の気温になってきており、雨も増えてきた。
「……そっか。お前もそんなにたくましくなっちまったんだな」
「やめてよ魔理沙。私なんて全然だよ。皆のおかげ」
博麗神社で、今日もひとときの平穏が続く。
……のだが、霊夢は人里で妖怪騒ぎが起きているとのことで外出中、いるのは星羅と魔理沙だけである。
ここまでの星羅の様々な出来事を聞いた魔理沙は、腕を組み、うんうんと頷いて感心してみせた。
「……やっぱりお前、すごいぜ」
「……魔理沙?」
「幽々子のしがらみをぶっ壊し、あの曲者揃いな紅魔館を味方につけ、永遠亭で皆に可愛がられ、妖怪の山の奴らにも気に入られ……ここ数ヶ月で成し遂げられるレベルの話じゃねーぞ」
「そうなの?」
言われて、星羅は改めて気付く。
やたらと事がうまく進んでいることに。
「……なんでだろうね」
「さぁな、私にもわかんね。一つだけ言えるのは、お前の記憶が全て戻ったらわかるんだろうなってことかな」
「……」
ポケットにしまったメモリを取り出し、バラッと床に並べる。
スペルメモリの充実はもちろんのこと、ファンタズムメモリも先日、射命丸と早苗の2枚分を……合計5枚を手にした。
メモリが沢山集まるということは、それだけ星羅の記憶も、戻ってきているということ。ファンタズムメモリの充実は、星羅が幻想郷のあちこちで様々なことを経験し強くなった証だ。
だが、魔理沙はそれを見て、一つの疑問を抱いた。
「…………なぁ星羅」
「どしたの?」
「…………前から、気になってたんだけど。
ファンタズムメモリってさ、お前の記憶なのか?」
「…………えっ?」
予想外の問いかけに、星羅は動揺した。
「ファンタズムメモリってさ。お前と絆を結んだ奴との間に生まれた思い出の結晶体……みたいなもんなんだろ。……だけどよ。どこまでがお前の記憶で、どこまでがお前のじゃないんだ?」
「ど、どういうこと魔理沙?」
イマイチ理解できていない星羅は問い返す。
「……つまり、どういうことなの?」
「……スペルメモリは、お前の記憶だ。
でも、ファンタズムメモリを集める理由って何なんだろうな……ってことだよ」
「……!」
陽の光でラメを輝かせるファンタズムメモリを見ながら、彼女は続けた。
「お前の記憶を取り戻すんなら、他人と関わらなきゃならない記憶なんて……そいつと接点がなきゃいけない。つまり、前に言ってた“来是がまだ星羅だった頃”の記憶なんだろう。
でもよ。あいつ、早苗の話だとスペルメモリはおろかファンタズムメモリも使えないらしい」
「……そうなの!?」
「あぁ。……だから、ファンタズムメモリは、恐らくだが来是本人の記憶じゃない可能性がある。来是が関わったことのある人物をトリガーに、お前が新しく創り上げるものなのかもしれないってわけさ」
何らかの理由で未来からやってきたのが来是である。
だが、どんな理由にせよ、わざわざ未来からやってきたのであれば、過去を変えるためである場合が多い。
魔理沙の冴えた推察に、素直に星羅は感嘆した。
「な、なるほど……ということは、ファンタズムメモリは過去を変えるために必要なもの、ってことなのかな?」
「……かもしれないな。…仮に、お前が来是とは違う新しい記憶を創っていくことで、あいつの過去が変わるなら、だけど」
ふぅ、と一息ついて、魔理沙は縁側を立った。
「……ま、どうせそのうちひょっこり来是が現れて、全部教えてくれるんだろうさ。今、あんまり私達がしんみりしてても仕方がねぇ。謎は相変わらず沢山あるけどよ……今はとにかく、どっからともなくやってくる機怪どもをぶっ倒すしかないし」
箒にまたがった彼女は振り返り、星羅に言う。
「じゃ、私は一旦お暇するぜ。大変だろうけど、お前も頑張れよ〜、星羅」
「……う、うん。ありがとう、魔理沙」
「落ち込むなって、別にお前は何も悪くねぇだろ? お前が頑張るから、みんなもそんなお前を助けようと頑張るんだ。お前が頑張れない時は私達が支える。早苗も言ってたろ? 一人で何もかも気負う必要はないんだぜ」
「……わかった。私なりに、頑張ってみる」
優しく微笑む彼女に、星羅も微笑んだ。
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「……幻島 星羅、で間違いないかい?」
「うぇっ?」
しばらくひとりだった星羅だが、突然の来客に顔を上げていた。
どこかで見たような服装に、どこかで見たような帽子。しかしその背後には無数の尻尾が艷やかに並び、帽子もよく見ると耳が形になって現れている。
直感で星羅は察した。
「……もしかしなくても、藍…さん?」
「……え、知ってたのか?」
「話だけは、霊夢から聞いてて。九尾狐のクソ真面目式神を紫さんが連れてるって」
「おっ、おぉ……」
苦笑いを浮かべる藍であったが、すぐに真顔に戻って告げる。
「……改めて、私は八雲 藍。紫様のもとで結界管理と私用雑用を担当している式神だ。よろしく頼むよ、星羅」
「雑用…」
「幻想郷には、そういう奴らが多いから。永遠亭の兎とか、幽々子様のところの半人半霊とか、吸血鬼のメイドとか」
「はぁ……いや、こちらこそよろしくお願い致します」
思い当たる人しかいない。というか全員、メモリで繋がった人達だ。
「……心当たりがあるのかい」
「え、どうして分かったんですか?」
心を読んだかのようにそう言ってみせる藍。
隣に腰掛けると、彼女はこう言った。
「君は今、メモリを集めているそうだね。それも4つ。なんのためなのかはともかく、順調そうで何よりだ」
「………………」
黙る星羅。
が、彼女が黙ったのは他でもなかった。
「……あの、メモリ……たぶんファンタズムのほうだと思うんですけど……もう5枚目ですね」
「……えっ!? ……本当か!? ……えっ!?」
わかりやすいほどまで取り乱す藍。尻尾も揃って逆だっている。
極力平静を取り戻して藍は答えた。
「……あ! そうか……天狗のメモリがあったか……完全に忘れていたよ……すまない」
「あなたがたのことだろうから深くは聞きませんけど。監視するならせめてきちっと監視してくださいよ」
「なんて言い方を……」
「だって紫さん、この間料金スルーして突然ロープウェイに乗り込んできたと思ったら、全部知ってそうなムーブかまして、変な事言うだけ言って去ってったんですよ?」
「…………」
星羅にジト目で言われてしまい、思わず藍は俯いてしまった。
「どうしよう……私の中の紫様像が崩れてく……」
「……そんなに?」
「いや思い返してみたら案外そうでもなかったわ」
「あ、そうすか……」
ぽん、と手を叩く藍。
……だが、また俯いてしまった。
「……そんなことよりどうしよう……紫様に、4枚って言っちゃった……どうしよう……」
「……そんなことだろうと思ってました」
「な、なぜそこまでわかる!?」
「監視していらっしゃったんでしょ? あの胡散臭い紫さんが考えそうなことですよ。謎だらけな私を、あの人の宝物である幻想郷で暮らさせる以上は、自分の手で監視したいはずでしょ」
「……」
「霊夢や魔理沙、他のみんなも言ってましたから」
「……むぅ、なんか申し訳ないな。私の主が……」
すっかり幻想郷に馴染んでいるのを感じつつ、藍はぺこりと頭を下げた。
慌てて星羅は首を振る。
「やめてくださいよ、藍さん。私なんかに頭下げないでくださいよ……」
「いや、これは私のミスだから。それに、君に不信感を持たせてしまった気がして……」
「
「言わないでくれ……」
「自覚はあるんだ……」
コホン、と咳払いを一つして、藍は仕切り直した。
「……改めて。君は今、多くのメモリを集め、自身の記憶を取り戻しながら、未知の敵と戦っているというわけだ」
「そう、ですね。……機怪のこと、どうせわかってるんじゃないんですか?」
「……いや、そうでもないんだ。奴らのことはまだ完全にわかってない。むしろデータ不足、と言っても過言ではないだろう」
「紫さん達でも…わからないことがあるんですね」
不思議がる星羅に、藍は遠くを見つめて答えた。
「紫様は確かに凄まじいお力を持っておられるが……万能ではない。あのお方ひとりでは幻想郷は作れなかったし、霊夢なくして今の幻想郷もないからな」
永きに渡って、紫を支えたであろう藍だからこそ言えること。問わなくてもわかるその言葉の重みに、星羅も少し反省した。
「そっか…紫さんのこと、ちょっと勘違いしていたかも……」
「まぁ、それでも常人やそこらの妖怪達とは比較にならないお力と知恵を持っているからこそ……気味悪がられ、どこか胡散臭さを感じられてしまうんだろうけどな…無理もない」
「……なるほど……」
「……あ、今のは内緒で」
「あっ、はい」
再び咳払いを1つ。
立ち上がった彼女は振り返り、星羅を向く。
「……とにかく。なんだか脇道に逸れまくったから、そろそろ戻ることにするよ。
これからもしばらくは君のことを監視させてもらう。別に悪い意味ではないさ、何かあればすぐに駆けつけるようにしているんだ」
「……結局、そっちからは特に何も教えてくれないんですか」
「すまない、今回は個人的に会いに来ただけなんだ。紫様からある程度伏せておくように言われてて……」
「……そう、ですか」
「大丈夫。時が来たら、全部わかるはずさ。君の記憶がもう少し戻らないと……話せることも話すことができない」
「わかりました」
頷く星羅だったが、
「……え、個人的に会いに来た……って、どういう……」
そう問われ、藍は少し答えを躊躇ったが、
「……言っておくか」
と、ため息とともに、こう告げた。
「……君は、いつどこで、誰に狙われているか……とてもわからない状況下にある。念の為の確認さ。
博麗神社に来たのも、万が一……機怪どもが潜伏していたらまずいから。
それと……君が、しっかりとこの世界に馴染んでいることを、この目で見ておきたかったんだ」
「……藍、さん……?」
すると、藍はふっと微笑み、こう続けた。
「星羅、そんな顔をするな。敵がいない今この時間……一時でも構わないから、平和なこの時間を大切にしてくれ」
「……」
「霊夢や魔理沙は、少しでも君に安心していてほしいのさ。記憶も力も未知数である君が、この世界でちゃんと生きられるために」
ふわりと浮く藍。
去り際、こんな言葉を残して行った。
「……本当は全部説明して、その上で君に生きてもらいたいけれど。
きっと全てを理解した君は、君でいられなくなってしまうだろうから……
例え許可が降りても、私は言えないだろう。
見守ることしかできない私を、許してくれ」
「……藍さん!?」
思わず縁側を立った星羅の声も虚しく、藍は九尾をなびかせて飛び去った。
一人残された星羅の頭には、藍と、さっきの魔理沙の言葉が渦巻いていた。
『きっと全てを理解した君は、君でいられなくなってしまうから』
『お前が来是とは違う新しい記憶を創っていくことで、あいつの過去が変わるなら……だけど』
「…………」
――私は、どうすればいいんだろう。結局のところ…何を頑張ればいい? 何をすれば、何が起こる?
言い表せない感情に包まれ、星羅はただ立ち尽くすしかなかった。
「…………。懐かしいな」
魔法の森の一角、木々に包まれた場所に建つ小さな家・霧雨魔法店。
その戸を開ける魔理沙の姿があった。
「……どわっ……あー、そういえば片付けてなかったな、私の家」
……だが、その言動はどこか懐かしみを滲ませていた。
「足の踏み場が……足場が……無い……はは」
隙間を縫って歩く
しかしその表情には、悲しげで、優しげな笑みが……
「…………。
でも、この家は……いくらそっくりで、いくら同じようにとっ散らかってても……
……。
私も……帰りたかったなぁ。我が家に」
ゲストに藍しゃまを呼んでみました。
前回のシリアスムードから一転、ポンコツ藍しゃまも描いてみましたが……ポンコツにさせすぎたかもしれません(汗)
この中で、番外編やってほしいのは?
-
紅魔館組
-
レイマリ
-
うどみょん