東方幻創弾 〜Phantasm memories from Buster.〜 作:蒼いなんでも屋
白魔理沙の持つその力の一端が明かされます。
もうひとりの自分、白魔理沙。
彼女もまた、黒霊夢や来是同様、過去を変えるために未来からやってきた存在だった。
白い理由について、彼女は衝撃的な事実を伝える。
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「……」
魔法の森、上空。
霧雨魔法店を見つめる一人の影。
「……っ」
睨みつけるように目を細め、彼女は地に降り立った。
「……
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「……死んでる、って……未来の幻想郷で、私……死ぬのか!?!?」
驚きと困惑、焦りが混じった声音で、魔理沙は思わず叫んでいた。
「……信じられないだろ? 本当なんだ。……それを変えるために、ここへ来たんだけどな」
隣の白魔理沙はただ頷く。
彼女は、既にこの世にはいない幻影なのだというのである。
よく見ると、ほんの僅かに彼女の周りをノイズらしきものが覆っており、本来曲がりなりにも「普通の人間」である魔理沙ではないことを表していた。
「……ウソ、だろ……私……なんで……!?」
大きく混乱する彼女に、口を開いた。
「……霊夢を守って、死んだ」
「………………えっ?」
「……機怪によって殺されそうな霊夢を……私が庇った。
庇って、最後の力で奴らに決定打を叩き込んで……幻想郷はギリギリ崩壊を免れたんだ。
……紫と、霊夢……そして、来是以外の命と引き換えに。当然その“命”には……私も含まれてる」
衝撃的な真実に次ぐ真実に、魔理沙は身体が震えた。
「……」
「最期に見た、あいつの……今にも泣き崩れてしまいそうな顔を……とても、鮮明に覚えてる」
その手をぐっと握りしめ、彼女はひとつひとつ、零していった。
「……もっと霊夢に並べていれば、もっと私がちゃんとしていれば。もっと……強ければ。
そんな後悔をしながらも……霊夢を守れた誇らしさは、あの時たしかにあった」
「……そう、なんだな」
魔理沙は不思議と否定はできなかった。
「……たぶん、
言い切れない魔理沙だったが、なぜだか確信はどこかにあった。
「なんでなんだろう……私は、あいつを……」
「……」
白魔理沙は目を閉じ、呟く。
「……その気持ちの理由、知りたいか?」
「えっ? 知ってるのか?」
俯いていた顔が上がった。
……が、
「……うーん……やっぱりやーめた」
「はぁ!?」
白魔理沙はにんまりとした笑みを浮かべて答えた。
「私ってひねくれてるからな。そう簡単には教えてやらないぜ」
「な、なんなんだよー……!」
脱力する魔理沙を見て、白魔理沙はケラケラと笑った。
しばらくして、こほん、と咳払いをつく。
「本題に戻るぞ。
……全てが滅んだ結末を変えるために、今際の紫は来是を過去に戻すことを決めた。あいつがやってきた頃まで。
時空の境界を一時的に破壊して――過去まで、来是を送るために。
追っ手である機怪に悟られぬように、記憶を一旦無くさせて、名前も“星羅”にした。
……ま、意味は……あんまり無かったみたいだけどな」
今までひっそりと見ていたのだろうか、ここまでの出来事を知っているような口ぶりをしたが、魔理沙はそれは聞かなかった。
……それよりも。
「……私達が、あいつと面識があるような気がしていたのも……機怪が、私達のことを知ってるのも……星羅が、機怪に対して特効になる武器を持ってるのも……」
「あぁ。全て、“今は過去になった”未来で、一度起きたからなんだ」
そこまで答えられ、魔理沙はふと1つの疑問がよぎった。
「……ん……ちょっと待て……」
「…どうした? 聞きたいことがあるなら今のうちだぜ?」
「…お前……白い私は、どうして……死んでるのに、ここにいるんだ?」
「…………、ちょっと、やらなくちゃならないことがあって」
「……やらなくちゃならないこと?」
魔理沙が聞き返そうとした、その時。
「…………っ!」
――白魔理沙が振り返って立ち上がった。
「……伏せろ!」
「……んなっ!?」
直後。
家の一部が盛大に消し飛び、霧雨魔法店は派手な爆発をあげた。
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「……あの爆発……!」
霧雨魔法店へ向かうアリスは、その方角から立ち昇る爆炎を見て、一瞬青ざめた。
「……実験の失敗なら、いいんだけど……!」
念のため、アリスはその足を速めた。
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「……」
夢想封印の輝きに照らされながら、黒霊夢が降り立つ。
黒煙をあげる霧雨魔法店へ近づく。
「…………!」
その足が止まった。
「……よう。久しぶりじゃねーか」
そこには魔法陣を展開し無傷でこちらを見つめる白魔理沙と、何が起こったのかようやく理解した魔理沙がいた。
真っ赤な視線を、白魔理沙はその目に受け止める。
「……へっ。……変わっちまったな、霊夢」
「……変わった? ……それはアンタのほうでしょ?」
キッと睨みつける黒霊夢。
体勢を立て直した魔理沙が叫んだ。
「……おい! お前が星羅の言ってた、黒霊夢ってのか! ……私の家を吹っ飛ばしておいて、なんのつもりだ!?」
「……これから殺すのに、答えるわけがないでしょ」
「な、何だと!?」
「……いや、待ってくれ。今から話す」
「…!」
白い自分に制され、思わず視線を向ける魔理沙。
ひとりでに飛来した帽子から八卦炉を取り出し、彼女は告げた。
「……下がってろ、私。あいつはお前じゃ止められない」
「……ど、どういう意味だよ!? 確かに、霊夢達はやられたらしいけど……!」
「今、あいつに私達の邪魔をさせるわけにはいかないんだ。任せてくれ」
「……くっ! 言ったからにはどうにかしてみせろよ…!」
霊夢や星羅から聞いた、相手の……黒霊夢の、底知れぬ強さ。言葉だけだったが、それ自体は魔理沙も分かっていた。
ひとまず奥へ退避し、白い自分が構えるのを見つめる。
一歩前に出た白魔理沙は、黒霊夢に向かって告げた。
「……霊夢。
お前の、くだらない八つ当たりを止めに来たぜ」
「……八つ当たり……? ……まさか!?」
魔理沙は何かを察したが、その時には黒霊夢は動いていた。
「……いま、さら……遅いのよっ!!」
逆鱗に触れたように、赤い眼光が白魔理沙を突き刺す。
彼女は一度に凄まじい量の弾幕を放った。
それを、白魔理沙は展開した魔法陣を以て、無言で受け止めた。
爆散する弾幕越しに、彼女は続ける。
「お前とどんだけ長く、一緒にいたと思ってる。……効かねーよ」
「……うるさい!!!」
黒霊夢は再び、その昏い虹を纏う。
「……霊符!!【夢想封印】っ!!!」
しかし、白魔理沙は動じなかった。
「……妖器【ダークスパーク】! 虹符【スターダストレヴァリエ】!!」
黒き閃光が幾本の星々に包まれ、放たれる。
ものの数秒で全てを相殺した。
「……なっ……霊夢の夢想封印を、全部封殺した!?」
自分のスペカで対等に戦う自分を見て、魔理沙が驚愕する。
絶対の力を持つ夢想封印ばかりはかわせないと思っていたのだ、無理もない。
「夢符……【封魔陣】!!」
立て続けに札を放ち、白魔理沙の周囲を覆う黒霊夢。
しかし、彼女は動じない。
「……星符! 【サテライトイリュージョン】!!」
「……何!?」
8つの輝く魔法の光球が展開され、動きを封じようとする札を全て弾き飛ばす。
「まだまだ! 彗星! 【ブレイジングスター】!!!」
そのまま光を纏って高速突撃。
結界越しに、黒霊夢を吹き飛ばした。
「……くぅっ!?」
「…………」
その光景を、信じられないという思いで、魔理沙は見つめていた。
……互角以上に戦えてる……なんでだろう?
私は霊夢といつも一進一退なのに、こいつは……もうひとりの私は、どうして私のよく知る霊夢以上に強いハズの黒霊夢相手に戦えているんだ?
……何か、からくりでもあるのか?
「ああああああっ!!!」
なりふり構わず突っ込んでくる黒霊夢。
空を切る大幣が、凄まじい速度で振るわれる。
「……」
それを、最低限の回避でいなし続ける白魔理沙。
まるでどこから飛んでくるかがわかっているように。
かざした手のひらが重なり、光が迸る。
「「!!」」
お互いに放った弾幕が至近距離で爆ぜ、距離を置く。
後退しつつも、牽制し合う。
「私の邪魔をしないで! わかるでしょ魔理沙!? アンタだって……私と同じ立場になったら、絶対こうする!!」
「あぁ、そうだな。……だが、例え私だろうがお前だろうが……お互いにお互いを止めようとするさ」
手のひらに魔法陣を形成し、再び振るわれた幣を受け止める。
「…なっ」
「……だから私はお前を止めるために、わざわざこの世界にやってきたんだ!!」
――反対の手には、ミニ八卦炉が握られていた。
「……!?」
「食らえ。
恋符【マスタースパーク】!!!」
恋色の光が一閃。
防御したとはいえ、黒霊夢を大きく弾き飛ばした。
「……うわぁあっ!?」
森を抉る土煙が一直線に発生し、衝撃で巻き起こった突風が、白魔理沙をなびかせる。
帽子を抑えながら、彼女は吹き飛ばした方へと歩き出していく。
「……」
魔理沙は、それを見つめ、そして呟いた。
「……霊夢に、マスパを……」
「……はぁ……っ……はぁ……」
不意を突かれた黒霊夢。
そこへ、白魔理沙が八卦炉を構えたまま近付いた。
「……霊夢。お前、自分のためだけに世界をめちゃくちゃにするようなやつじゃなかっただろ。
……異変解決者が、異変起こしてどうする?」
「……っ……」
黒霊夢は、逃げるように背を向け、答えた。
「……アンタにはわからないわよ……
一度アンタを失った……あの時の、私の気持ちなんか」
「……霊夢……!」
森の奥へ消えていくその背を、白魔理沙は追わなかった。
「……わかってるからこそ……わざわざ……会いに、来たんだろ……」
……代わりに、震えるような声を出して。
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「…………行っちゃったのか?」
黒い自分……いや、過去の自分に尋ねられ、白魔理沙は振り返った。
その目には、自分が映る。
目の前の自分にそっくりな自分が。
亡霊と化した、白い「私」が。
そこに映る自分は、悲しげだった。
彼女は八卦炉を取り出して、告げた。
「……なぁ。お前のその力は、どこから来てるんだ?」
「……わざわざ、聞く?」
意外そうな顔をして、白魔理沙は答える。
「同じ私なら、察しが付くって思ったんだけどな」
「……すまん、わかんないぜ」
「……無理もないか」
ふぅ、とため息をついて、彼女は言った。
「……宿題」
「……は?」
「明日、また来る。それまでに、自分なりの解答を用意しておくこと。良いな?」
「…ちょ、なんでだよ!? 教えてくれよ……!?」
目を見開き慌てる魔理沙に、彼女は続けた。
「努力は私“達”の専売特許だろ? 同じ私なら、絶対気づくはずさ。頑張って見つけてくれ」
「お前なぁ……!」
「……流石にノーヒントじゃつらいか?
じゃあこの魔理沙さまが一つだけヒントをやるよ」
白魔理沙は指を立て、そして告げる。
「……星羅に会ってこい。
……あいつがきっと、カギを持ってる。私の力の理由も、あいつにあるはずさ」
「……星羅に?」
「ま、頑張れよ。こう見えて……私もあんまりゆっくりしてられないみたいだからな。同じ魔理沙同士……必ず気付いてくれるって、信じてるぜ」
直後、白い光が彼女を包む。
「……じゃあな」
「…………ちょっ、待てって!!」
転移魔法なのか、それとも亡霊の成せることなのか。
白魔理沙は突如白い光を発して、歪むようにその場から消えた。
「……」
いなくなった後の、残った光を、魔理沙は呆然と見つめていた。
空を見上げ、呟く。
「……やっぱり私って、ひねくれてるぜ」
「何を当たり前なことを言ってるの?」
凛とした声に振り返ると、アリスがそこにいた。
上海も蓬莱も連れている。
「あ、アリス……!」
親指で後方を指し、彼女は言った。
「……中々派手にぶっ飛んだわね、あなたの家。何があったのか説明してくれる?」
「……あぁ。……いいぜ」
……後で、アリスも連れて……博麗神社に行くか。
魔理沙は迷いを振り払うように首を振って、損壊した自宅へ向かおうとした。
だが、再びあの言葉が頭をよぎる。
『一つだけヒントをやるよ。星羅に会ってこい。……あいつがきっと、カギを持ってる。私の力の理由も、あいつにあるはずさ』
『ま、頑張れよ。こう見えて……私もあんまりゆっくりしてられないみたいだからな。同じ魔理沙同士、必ず気付いてくれるって信じてるぜ』
「……」
……そういえば、アリスにも言われたっけ。
『あなたは星羅と比べて、あなた自身のこと、どう思ってるの?』
私は、星羅と……どう向き合ってるんだろう。
「……りさ? 魔理沙ー?」
上海と蓬莱にほっぺをつままれ、魔理沙は我に返った。
「シャンハーイ?」
「ホラーイ」
「……あ、ごめん。……ちょっと考えごとしてた」
「らしくないわね。……なんとなく、察しはつくけど」
そう言い、彼女を進ませるように、崩れた壁へ駆け出していくアリス。
魔理沙も、今度こそ区切りをつけ、その後を追っていくのだった。
今回星羅の出番がありませんでした。やっちまったぜ。
この中で、番外編やってほしいのは?
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紅魔館組
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レイマリ
-
うどみょん