東方幻創弾 〜Phantasm memories from Buster.〜   作:蒼いなんでも屋

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 今回は香霖こと、霖之助が初登場。

 ダンマクカグラにて香霖の中の人があの方でびっくりしています。
 ご存知でない方は調べてみるのもいいかも。





 因みに幻想郷の地理については、ウィキペディアさんや東方の本編描写などからまとめています。





002. からくりの幻創銃

「わぁ……!」

 

「綺麗でしょ?」

 

「これが幻想郷だぜ!」

 

 

 

 

 一面に広がる、大いなる自然。

 

 湖、山、里にお寺。

 

 心地よい風と空気が、肌を伝って、気分を明るく健やかなものにさせる。

 

 

 美しき幻想郷の風景が、星羅の目に焼き付いた。

 

 

 

 

 

 

 

_______________

 

 

 遡ること、数十分前。

 

 

 

 

「香霖堂?」

 

 

 星羅はお茶を飲みながら言った。

 

 

 取り敢えず一段落し落ち着く事ができた星羅は、霊夢らにこれからについて話していた。

 

 まずはここに行くべきだ、と魔理沙が挙げた場所。

 それが香霖堂だという。

 

 

「簡単に言えば、色々な珍品を並べてるお店……のようなものよ」

「外のアイテムを拾ってきて並べてる事もあるのさ」

 

 なるほど、と星羅は頷く。

 

「つまりそこに行けば、何か手掛かりがあるかも? て事だね」

「そういう事だぜ」

 

 サムズアップを見せる魔理沙。

 

「まぁ気休め程度にしかならないかも知れないけど……行かないよりはマシさ」

「行くかどうかはアンタ次第だけど……どうする?」

 

 霊夢に聞かれて、星羅は快く答えた。

 

 

「勿論! 行ってみるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「飛べないの!?!?」」

 

「寧ろなんで飛べるのか聞きたい」

 

 

 

 

 

 普通に行くと獣道をゆく事になるため、空を飛んで直接香霖堂まで向かう事になった一行。

 

 ……だったのだが、星羅は飛び方を知らなかった。

 

 

「なんか使えないの? 霊力とか、魔力とかさ」

「なんも無いのか?」

 

 慌てて色々問い出すふたりだが、星羅は首を振った。

 

「ある訳無いじゃん」

 

「だよなぁー……」

「そうよね〜……」

 

 

 うーん、と唸った魔理沙。わざわざ面倒な道をゆくのは気が乗らないし、そもそも非戦闘員な星羅を連れていけるかも怪しい。

 別に守れるだけの実力が無い訳では全く無いのだが、確証もいまいち持てなかった。

 

 と、ふと星羅はそんな彼女の箒に目をやった。

 

 

「ん?」

 

 視線に気付いて魔理沙が疑問符を浮かべると、星羅は言った。

 

 

 

 

「ねぇ! だったら乗せていってよ!」

 

 

 

 ちょっと呆気にとられたふたりは顔を見合わせ、

 

 

 

 

「「……その手があったか!!」」

 

 

 

と、ガッテン顔で星羅を見た。

 

 

「えっへん」

 

 

 星羅は何故かドヤ顔だった。

 

 自分のせいでこんな話になっているのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___という訳で、冒頭に戻る。

 星羅は魔理沙の後ろで箒に跨がり、幻想郷の美しい景色を満喫していたのである。

 

 

「ねえ空を飛ぶってどーやるの?」

「うーん…………わりぃ、……頑張れ、としか言えないぜ」

「うぇ? そーなの?」

「私は魔法で、アイツは元からできるからな」

「別に最初から飛べた訳じゃないわよ。ある程度練習させられたわ」

「確かお前、亀のじーさんに乗ってなかったか?」

「うっさいわね! もう昔の話よ!」

「へぇ……」

 

 

 

 

 __自分もいつか、飛べるようになるのかな。

 

 ふたりみたいに、自由に……。

 

 

 

 

 そんな事を思い浮かべた星羅であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幻想郷ツアーはまた今度やってあげるという事で、星羅はふたりに連れられてそのまま香霖堂に向かった。

 

 

 香霖堂は魔法の森の入口付近に建つ、道具屋の様な店である。

 店主が幻想郷各地で時々拾ってくる、外から流れ着いた珍品やリサイクル品、果ては心底何に使うのかよく分からないもの、香霖のコレクションでそもそも売る気が無いものまで並んでいる。

 他の場所とは比較的現代っぽい(外の技術っぽい)アイテムが多く、外の世界の何かを参考にする際は霊夢達はよくここにやってくるのだ。

 

 

 最も、その店主__

 

 

 

「いらっしゃい。……って、なんだ魔理沙か」

 

「なんだってなんだよ!」

 

 

__森近 霖之助(もりちか りんのすけ)は、霊夢と魔理沙の昔からの知り合いで、特に何もなくても勝手にふたりがやって来る事が多いのである。

 

 髪は銀髪、背はそこそこ大きく、青色の着物を着ている。幻想郷では珍しく、眼鏡をかけた男でもある。

 

 霖之助__通称、香霖は、真っ先に入ってきた魔理沙に即悪態をつくと、続いて入ってきたふたりに目をやった。

 

「霊夢もいらっしゃい。君も来たのか」

「まぁ色々あって」

「それで、そこの子は?」

 

「あ、幻島 星羅です。幻想入りした身でして……色々あってふたりにお世話になってます。これからよろしくおねがいします」

 

 言われてすんなり応答する星羅。

 しっかり礼までしてきたものだから三人はちょっと驚いた。

 

「あ、あぁ。よろしくね星羅。僕は森近 霖之助。ここの店主さ」

「星羅礼儀正しいな」

「まあね〜」

 

 星羅はえへ、と笑って見せる。

 

 

「……それで、何があったんだい?」

 

 香霖が話題を振ったので、

 

「まぁ、面倒くさい事情があってだな……」

「順を追って説明するわ」

 

霊夢、魔理沙は大まかに伝える事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女説明中…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど……記憶喪失か。これは確かに面倒な事になったな」

 

 香霖は眼鏡を直す仕草をしながら、ふむ、と星羅を見た。

 

 幻想郷の住人でそういう者は滅多に見かけない。

 

 そもそも幻想郷自体忘れられたものが集まる場所。自分から記憶を無くさない限り、つまり人為的以外には失う事は難しい。

 単に記憶喪失の人物を見た事がないってだけかも知れないが。

 彼女がそこらの危険な場所ではなく、博麗神社のすぐ近くに倒れていて良かった。記憶が何ひとつ無い状態でそんな風に放り出されたら危なすぎる。

 

 

「という訳で、霖之助さん、なんか関係ありそうなもの持ってないの?」

「そんな事言われてもなぁ……。まぁ、探してはみるよ。今から探していたら日が暮れるし、時間をくれ」

「わかったわ。何かあったら教えて」

「頼んだぜ香霖」

「おねがいします」

「任せておいてくれ」

 

 全会一致で、決まった。

 やれやれ、これから忙しくなりそうだ、と香霖は心の中でこっそり思った。

 

 

 

 

 

「……ん」

 

 

 

 ふと、香霖は視線を星羅の腕に向けた。

 

 

「……ねぇ、星羅ちゃん」

「はい?」

 

 視線に気付いた霊夢が、腕をとった。

 

「香霖?もしかしてこれ?」

「あぁ」

「……腕時計ですが?」

 

 香霖の方に向けてかざしてみせると、香霖はそれを少し見つめ、

 

 

 

 

「……これは、ただの時計じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………これからの脅威に対抗するための、

 

 

 

 

銃だ」

 

 

 

 

 

 

と、衝撃的な事を言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

「なに!?」

 

 霊夢、魔理沙が驚きの表情を浮かべた。

 

 

 そして何より、

 

 

 

 

「……じ、銃……!?」

 

 

持っている本人、星羅が最も驚いていた。

 

 

 

 

 

 

「星羅、君は能力ってわかるかい?」

「え、才能とか実力とか、そういう意味……ですか?」

「うーん、合ってるけど、少し違うかな」

 

 お茶を淹れてきた香霖は、三人にそれをそれぞれ渡しながら、星羅に尋ねていた。

 いまいち質問の意味を掴めていない星羅を見て、ふたりに問いかける。

 

「おい二人とも、何で話してないんだよ」

「え?」

「話したぞ」

「……あー、【空を飛ぶ】とか【魔法を使う】とか、そっちの“能力”ですか?」

「なんだわかってるのか。そう、そっちの“能力”さ」

 

 気を取り直し、香霖は切り出す。

 

 

「僕の能力は、【道具の名前と用途が判る程度の能力】。見ただけでその道具の正体が判る力さ」

 

 

 星羅が外した腕時計を手に取り、香霖は続ける。

 

 

 

 

「その力によれば、君のその腕時計は何かしらすれば銃になる。それも、未知の脅威を滅ぼす程の力を宿したモノに……ね」

 

 

 

 そう言うと、「まぁどうすれば使えるのかまではわからないけどね」と付け加え、その時計をしげしげと眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、しばらく皆で時計を見てみたものの、気になるところは特になかった。

 左側ボタンは二個。それぞれ横に『time』、『Alarm』とあった。恐らく時刻調整機能とアラーム設定機能だろう、と香霖は言った。

 

 怪しい箇所を強いて言うならば、右側にある三つのボタン。

 

 このボタンには使い道が書いてなかった。

 

 

「これ実際に使ってみねーとわからないだろ?」

「ちょっと魔理沙、下手に押したら壊れるかも知れないわよ?」

「なんかテキトーにボタン押せばいいだろ? 星羅、ちょっとやってみな」

 

 魔理沙に言われるままに、星羅は時計を手に取って、

 

 

「うーん……こう、かな」

 

 

直感で、右側の三つのボタンを、上から順々に押してみた。

 

 

 

 

 

 

《One…》

 

 

《two…》

 

 

《three…》

 

 

 

 

「…ん?」

 

 

 

 と、その時。

 

 

 

 

《……Buster-on》

 

 

 

 

 響き渡る機械音声と同時に、腕時計は光り輝き四散した。

 

 

 

 

 

「うわぁ!?!?」

 

 

 

 

 光り輝くそれらは無数の小さな薄水色の結晶体に分裂、星羅の右腕へと、渦を巻くように装着されていった。

 

 

 

 

「わわっ」

 

「ま、眩しいぜ……!」

 

 

 その際霊夢と魔理沙の横を駆け抜け、ふたりは光に目を伏せてしまう。

 

 

 

 

「な、なんだぁ〜!?」

 

 

 …香霖が一番驚いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、徐々に“それ”が姿を現してきた。

 

 

 

 結晶同士は互いに合体、腕を覆う大きな銃へと変貌した。

 

 

 現れた四角柱の蒼い銃身に、いくつかの結晶がまとまったウイングが4枚、一面ずつに装着され、ウイングが蓋のように、装着面の排熱ダクトを覆った。

 

 そして、前方に銃口が合体。

 それは先端に向かって絞る円錐形の先っ穂を切ったような形状で、くり抜かれたように、その中に銃口が覗いていた。

 

 何かのスロットと、時計のパネルが出現し、“それ”はついに完全な姿となった。

 

 

 

 

 

 

《Rise-Buster,Ready…!》

 

 

 

 

 

 

 その音声と同時、ブシュー、とつんざくばかりの排熱を伴って。

 

 

 

 

 

 

 

「……………………思い……出した」

 

 

 

「え……?」

 

 

「星羅?」

 

 

「まさか……!」

 

 

 

 

 その言葉と同時、星羅は何かを取り戻した様に顔を上げて。

 

 

 

 

 

 

「……これは、幻創銃。

 

 

 

 

…………【ライズバスター】……!」

 

 

 

 

 

 

 その銃__幻創銃【ライズバスター】は、

 

幻想郷に顕現したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 香霖描きずらくて大変です……
 こいつくらいしか男の子いないんですもん。

 一応これからも時々、要所要所で香霖はでてくる予定です。……多分。

 とうとうライズバスター登場。
 こいつはこれからのカギでっせ!


 次回、ついに!やっと!侵略者現る!
 戦闘シーンを描いていきます!



この中で、番外編やってほしいのは?

  • 紅魔館組
  • レイマリ
  • うどみょん

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