氷の剣士と姉妹蝶   作:ラーメンは美味しい

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最終話

 上弦の弐を退けた後も只管走り回っていた。

 その間、複数の上弦と交戦した。

 

『上弦の参』である『猗窩座』。

 

 彼奴にはいつかの夜の借りがあったので、しっかり返しておいた。

 

 にしても冨岡さんは言わずもがなだけど、竈門君もあそこまでできるとは思わなかった。上弦の参を倒せたのは彼の尽力あってこそと言っても過言では無い程の活躍を見せてくれた。

 やはり彼には・・・いや、彼らには何かあるのだろう。この闘いを終わらせられるかもしれない程の何かが・・・。

 

 そのまま彼らと行動をともにできればよかったのだが、不運にもまた何処か別の場所に飛ばされ、そこには何やら只者ではない雰囲気を放つ鬼の気配を纏う六つ目の剣士。その眼の中には『上弦』と『壱』の文字。

 

 いやー、この上弦の壱がまたとんでもなく強かったんだわ。『月の呼吸』とかいう聞いた事も無いような呼吸を使うし、すげー反応速度だし。

 あの場に悲鳴嶼さんに不死川さん、それに時透君といった柱の面々やそれに近しい実力を持つ不死川さんの弟君がいたから何とかなったんだよな。俺だけだったらマジで倒せるか分かんなかったわ。

 そういえば、闘ってる最中なーんか体が熱くなったんだよな。そこからは思った以上の動きができるようになったし。

 そんで、()()()()・・・。全てが透けて見えたあの感覚・・・。今までの闘いでは感じた事が無かった。だからといって、何か害がある訳じゃなくむしろ、凄い闘いやすかった。相手の動きが手に取るように分かったし。最初は戸惑ったけど、あの感じのオンオフもできるようになった。あれができるとすげー闘いが楽になるからこっちとしては嬉しい誤算ってやつだな。

 ・・・これで後はあの琵琶の鬼と無惨だけだ。他の上弦の撃墜報告は鎹烏からあがってる。奴等を倒せばこの闘いも終わる。もう少しの辛抱だ。

 

 

 


 

 

 

 俺たちは無惨の下へ向かうため、鎹烏の指示に従って只管進んでいた。

 琵琶女は現在、他の柱が交戦中らしい。

 

 ・・・それにしても、明雪。なんて野郎だ。

 

 俺は隣を走る同じ柱である『氷柱』の明雪白夜をちらと見る。

 奴は視線に気づいたのか不思議な顔をしていたが、その顔にイラッとしたのですぐに目線を前へ向ける。

 

 ・・・こいつ、俺たちがあれだけ苦戦してた上弦の壱をほとんど一人で相手取ってやがった。

 上弦の壱のとんでもねぇ剣技を全部捌き切って斬り合って、しまいにゃ俺たちを守って闘ってやがった。

 

 ちくしょう・・・。俺もまだまだって事かよ・・・。

 

 にしても彼奴・・・。『痣』の事、聞いてねぇのか?

 痣が出てる事教えてやったのに、何か変な顔してやがったしな・・・。

 

 もしかして、知らねぇんじゃねぇだろうな・・・?

 

※忘れてます。

 

 


 

 

 

「・・・・・・・・・!」

「おい!どうなってんだ、こりゃあ!」

 

 鎹烏の指示に従って進んでいた俺たちを突如、巨大な揺れが襲う。

 そして、揺れと同時に辺りが崩壊を始める。

 

 えぇ!?これヤバくない!?いくら、柱といえど瓦礫の下敷きはどうにもならない・・・・・・いや、いけるか?

 

 最悪の事態を想定して対策を練っている間にも崩壊の速度は増していく。

 

 ヤバい!マジで思いつかない!!どうする!?どうしたらいい!?あ、ヤバい!テンパりすぎて自分が何言ってるのかも分かんなくなってきた!!

 

 俺が必死で現状を打開する策を考えていると、悲鳴嶼さんたちは崩れた瓦礫を足場にしてどんどん上に登っている。

 

 えぇ・・・。そんなのあり?足踏み外したら死んじゃうよ?・・・・・・・・・分かった!分かった!やるよ!やればいいんでしょ!!

 

 このままでは置いていかれる事請け合いなので、俺も彼らに習って脱出を試みた。

 

 

 


 

 

 

 建物からの脱出に何とか成功した俺たちを待っていたのは衝撃の光景だった。

 

 ここは・・・・・・・・・市街地!?こんな場所で闘ったりなんかしたら──────────

 

 とにかく辺りを調べてみようと思った矢先だった。背後の大通りの方で轟音が響き渡った。

 

 俺はその音が戦闘によるものだと直感的に理解し走り出す。

 そして、一本路地を抜けた俺を待ち受けていたのは──────────

 

 

 


 

 

 

 これが鬼舞辻無惨・・・!

 なんて再生力なの・・・!?

 

 頸を斬っても斬ったそばから再生してしまう。恐ろしい再生速度だ。

 さらには、奴の背中から生えている触手のようなもの。一撃一撃が速すぎて防御に徹しないとあっという間にやられてしまう。

 

「姉さん!!」

「今は自分の事だけ考えなさい!!」

 

 しのぶがこちらを気にかけてくれるが、正直私も自分の事で手一杯だった。

 

 煉獄さんを始めとした他の柱たちも鬼舞辻の猛攻に対応するだけで精一杯で反撃の一手すら掴めない。

 

 このままではいずれ全滅してしまう、そんな考えが過ぎった時だった。

 しのぶの背後から一筋の触手が襲いかかろうとしているのが見えた。

 

 ──────────しのぶは気づいていない。今から声を掛けても反応するのは不可能だろう。私もあれを防ぐ事はできないだろう。ならば・・・!

 

「え・・・?」

 

 しのぶの呆けた顔が見える。

 

 ──────────防ぐ事はできない。でも・・・・・・しのぶの代わりになる事はできる。

 

 そう考えた私に迷いは無かった。大事な妹を守って死ねるなら本望だと思った。ただ一つ心残りがあるとすれば・・・

 

 ──────────しのぶ。白くんの事、お願いね?

 

「姉さん!!!」

 

 そこで私の意識は闇へと落ちていった。

 

 

 


 

 

 

 ──────────何してるんだよ、カナエ。そのままだと死んじゃうぞ?

 

 ──────────しのぶも。なんでそんな泣いてるんだよ。そんなふうにしてると・・・・・・・・・まるでカナエが死ぬみたいじゃないか。

 

 ・・・・・・・・・カナエが死ぬ?そんなのおかしいだろ。なんであいつばっかりそんな目に遭うんだよ。あいつはこんな所で死んじゃだめな人間なんだ。あいつはきっとこれから多くの人を救っていく。そういう人間なんだよ。・・・・・・なのに・・・・・・なんで・・・・・・?

 

「白くぅぅぅん!!!姉さんを助けてぇぇぇ!!!」

 

 ──────────そうだ。そんなのどうだっていい。カナエが死ぬかもしれない?だったら、俺が守ればいいだけだ。

 

 ──────────あの夜のように。

 

 そうと決まれば後は体が勝手に動いていた。

 恐らく無惨であろう鬼の攻撃とカナエの間に体を滑り込ませる。

 

『──────────氷の呼吸 玖ノ型 彩雲』

「──────────なっ!?」

 

 触手を瞬きにも満たない時間の間に斬り捨てる。

 

「あぁ・・・!」

「貴様は・・・!」

 

 気を失っているカナエを抱えながら。

 

「・・・・・・・・・お前だけは絶対に許さない。お前だけは・・・・・・・・・俺が斬る」

 

 

 


 

 

 

 ──────────優しい匂いがした。この香りに包まれているだけで身も心も溶けてしまいそうな。そんな優しい雪解けような香り。

 

 意識が遠のいて行く中で、それだけしか感じる事はできなかったけれど。

 

 でも、助けに来てくれたのは彼だという確信があった。

 

 その香りに安心した私は完全に意識を手放した。

 

 

 


 

 

 

 カナエを近くにいたしのぶに預ける。

 

「・・・・・・・・・しのぶ。一つ確認なんだが、奴が鬼舞辻無惨か?」

「・・・・・・ええ」

「・・・・・・・・・そうか。・・・・・・・・・カナエを頼む」

 

 しのぶにカナエを託し無惨に向かい合おうとするが、しのぶから声を掛けられる。

 

「・・・白くん」

「・・・・・・・・・ん?」

「・・・姉さんを助けてくれてありがとう」

「・・・・・・・・・ああ」

「・・・・・・約束破ったら許さないから」

「・・・・・・・・・分かってる。必ず生きて帰るよ」

 

 しのぶが少しでも安心できるようになるべく優しく語りかけるように伝える。

 しのぶも一先ずはそれで納得してくれたようで、まるで行ってこい、とでも言わんばかりの表情だ。

 

 ・・・・・・・・・ああ、いってくるよ。

 

「・・・・・・・・・待たせたな」

「・・・・・・貴様は私の手で葬ろうと思っていた」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・上弦ですら容易く屠る貴様だ。私でなければ始末は難しいだろう」

「・・・・・・・・・御託はいい。早く始めよう」

「──────────後悔するなよ、人間!!」

 

 無惨が無数の触手をけしかけてくる。

 

 他の柱も加勢に動こうとするが・・・

 

「手を出すな!!」

 

 俺の発言に柱たちは不可解な表情を浮かべる。

 

「な、何故だ明雪少年!一人では───────」

「頼む!!・・・・・・・・・此奴は俺が斬りたいんだ」

 

 俺の真剣な声音に柱たちは何も言えなくなってしまう。

 

「・・・・・・いいんじゃねぇか」

「不死川!?お前まで何を言っている!?いくら、明雪といえど鬼舞辻相手に一人では・・・!」

「──────────私からもお願いします」

「しのぶちゃんまで・・・」

「・・・彼は必ず生きて帰ると約束しました。今は、彼一人で闘わせてあげたいんです」

 

 しのぶの懇願に柱たちも黙り込んでしまう。

 

「・・・・・・・・・しのぶ。・・・・・・・・・ありがとう」

 

 礼はいいから約束破ったらどうなるか分かってるのか、って顔はやめてくれ。

 ・・・・・・・・・大丈夫。ちゃんと分かってるよ。

 

『──────────氷の呼吸 玖ノ型 彩雲』

 

 迫ってきていた触手をひとつ残らず斬り捨てる。

 

「・・・・・・あまり時間は掛けたくない。すぐに終わらせる」

「思い上がるなよ!人間!!」

 

 無惨は残りの触手を全て使って攻撃を行う。

 

 しかし、それらを全て一刀両断する。

 

「貴様は・・・やはり・・・」

 

 無惨はこちらを見る。その体は小さく震えている。

 

 俺はそれを気にも留めず、悠然と前へと歩を進める。

 

「く、来るな!・・・・・・・・・何故再生しない!?」

 

 無惨は再び触手をけしかけようとしていたが、俺が斬った箇所が再生しない事に狼狽していた。

 

「貴様何を・・・!──────────その、刀は・・・」

 

 無惨に言われ初めて気づいたが、いつの間にか俺の刀が赫色(あかいろ)に染っていた。

 

 だけど、そんな事今の俺にはどうでもよかった。目の前の此奴を斬れるなら、なんだって。

 

 しかし、無惨は驚きの行動を取る。

 なんと、俺に背を向け逃走を始めたのだ。

 

「・・・・・・・・・なっ!?」

 

 先程までの余裕は消え失せ、なりふり構わず逃走を試みていた。

 

 ──────────ふざけるな。絶対に逃がすものか。お前が今まで積み重ねてきた罪。・・・・・・・・・そして、カナエを傷つけようとした事。絶対に許さない。

 

 敵に背を向け懸命に逃走を行っている無惨を斬るために、より一層強く刀を握り締める。

 

「・・・・・・くっ!私がこのような──────────」

 

『──────────氷の呼吸 拾ノ型 忘れ雪』

 

「──────────」

 

 奴の体が一欠片も残らないと思える程散り散りになり、やがて灰になり消滅していく。

 

 こうして、長い長い俺たちの闘いは幕を閉じた。

 

 

 


 

 

 

 そして月日は流れ。

 

 とある屋敷に誰かが走り回る音が響き渡る。

 

「・・・・・・・・・またか」

「ふふっ、あの子たち、貴方の事が大好きなのよ。私()()と同じでねっ」

「・・・・・・・・・そうか」

 

 

 俺たち()()が寛いでいる居間の戸が開かれる。

 

「父様!遊んでください!」

「ずるいわ!父様、私とも遊んでください!」

「ほらほら、二人とも。挨拶はきちんとしなさい」

 

 あの頃と変わらぬ優しい笑顔と長髪で諭すように語りかける。

 

「え?・・・あ!しのぶ叔母さん!」

「ほんとだ、しのぶ叔母さんだ!」

「ふふふ、二人ともしのぶ『叔母さん』はやめなさいと言ったでしょう?」

 

 しのぶが凶悪な笑みを浮かべて二人に迫る。

 

 しのぶさん怖い!怖いよ!二人ともめっちゃ怖がってんじゃん。こいつらあやすの大変なんだからな。

 

「女の子はいろいろあるのよ」

「・・・・・・・・・そうか」

 

 ・・・びっくりしたぁ。カナエも心読むのやめてくれ。ほんと心臓止まるかと思うから。

 

 心拍数が上がってしまった心臓を落ち着けていると。

 

「・・・ねぇ、白くん。・・・今、幸せ?」

「・・・・・・・・・ああ。二人がいて、しのぶがいて・・・カナエもいる。これで幸せじゃないなんて嘘だ」

 

 俺の答えに満足したのか、カナエは花が綻ぶように笑う。

 

 俺はそれ見て、改めてこの笑顔を守る事ができたことを誇りに思う。

 

 そして、これからも俺が守っていかなければならないものだ。あの頃より守るものの数は増えたけど、それは幸せの重みに他ならない。

 

 ──────────だから俺は戦い続けるよ。この幸せな景色を守るために。

 

 この命、尽き果てるまで・・・

 




ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
私自身、こういったジャンルの小説を描くのは初めてで苦労しましたが個人的には満足しています。
この小説を読まれた方がどう思われるかは分かりませんが、暇潰し程度にでもなれば幸いです。
それでは、またどこかで。
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