「久しぶりに肉体を持ったな」
体の具合を確かめつつ、父は呟いた。
「手合わせだったか。良いぜ、やろうぜ。試運転だ」
「胸を貸してや、甚爾くん♫」
直哉さんは父と何度か戦う。
「斬魄刀や鬼道もみたい! 自分じゃ物足りんかもしれんけど、頑張るから使ってや!」
「人間相手に死んだって死神の力は振るわねーよ。……今の俺には、死神の誇りがあるんだ」
「えー! せやったら、見るだけ! 見るだけでええから! 呪霊相手やったら手加減なしやろ?」
「流石に、呪霊相手には使うが。俺の霊力だと、どこまで通用するかな……」
「恵くんは特級倒したいうたで」
「恵の霊力は桁外れなんだよ。俺は平均」
「せやったら、自分が対応できる範囲の呪霊やったらええやろ」
「そうだな」
「一応、その方向で十件ぐらいピックアップしてるよ。大好きな競馬のために頑張ろう!」
「多っ」
「頑張ろうな、甚爾君♪」
そして、直哉さんは父を眺めた。
「丸くなったなぁ、甚爾君。そういう甚爾くんもええで♪」
「いや、お前が誰だよ」
直哉さんを真希先輩はドン引きで見ている。
「あれが、平行世界の俺の父さん……」
「伏黒、甘えてくる?」
「俺とは血が繋がってないし。血が繋がっててもどうでもいい。茨、甘えてこいよ」
「今の時期の父さん、扱い難しいんだよな」
「なんで?」
「母の命日が近づくと、すごく優しくなったり自暴自棄になったりするんだ。俺の事売ろうとしたときは流石にぶん殴られてたけど。今回特に危ない感じ。とりあえず、とんでもないことしようとした時以外はそっとしておく感じで、見張ってないと」
「「「あー」」間違いない、俺の父だ……」
「意外に苦労してんのね。お、五条先生が呼んでる」
ててて、と近寄ると、街案内を兼ねて伏黒と一緒に任務に行くことを提案された。
任務と観光を重ねて、最後の日。
甚爾は直哉に問うた。
「なー、直哉。お前さ、本当に俺の事そんけーしてんの?」
「したらあかん?」
「いや。じゃー、受け入れろよ」
「はあ父さん。後で後悔するよ?」
目にも留まらぬ早業で、甚爾の斬魄刀は直哉を貫く。
「!!」
「死神の力の譲渡です。後で、鬼道を教えますね」
「ほ、ホンマに? ええの?」
直哉さんが戸惑う。
その後、嬉しそうに微笑んだ。
「甚爾くんみたいになるわ。絶対!」
「そーかよ」
「避けようとしたら死んでたんですけどね、あれ。少しずれても駄目ですから」
「ふーん。ああやって譲渡するんだ。茨、僕にもして? 真希でもいいよ!」
「力が減るんで嫌です」
「回復しないの?」
「戻すのに年単位で時間掛かるんです」
「んー。なんとかなんない?」
「いくら五条先生の頼みでも嫌です」
「恵。あー。呪術界って糞ったれだからな。少し手助けしてやれ」
父に言われて、ため息を吐く。
「悪用はしなさそうですし、ね」
仕方ないか。
帰った時、虎杖たちの任務に寄ると、魂を捻じ曲げられた人がいた。
治すのくっそ大変だったが、同級生が増えた。
父は競馬で得たお金をすべてスッテ帰っていった。
やれやれ、今年も無事に乗り切った。
しばらく弱くなってしまうので、父が死なないことを祈るのみである。