「獣王お前大丈夫って何だそのデカい箱?」
「ああ、バースデイケーキ」
『今日誕生日だったの!?』
『コンボを連続使用したそうじゃないか―――素晴らしぃッ!!ハッピバァァァァァァスデイ!!!』
「という訳ですので此方会長からのケーキで御座います」
「あっはいっどうも……というか登校中に渡してくれなくても……」
「すいませんこの時間しか来れませんでして」
「という事があってね、俺の尊敬する人が俺がコンボの連続使用の記念日って事でケーキをくれたの」
「か、変わった人だな……」
「でもさっ態々ケーキを作ってくれて送ってくれてるんだろ?ケーキって結構作るの手間で大変だし毎回だとしたら本当に良い人だぞ」
「うんっお陰でお菓子関連に関して舌が肥えて困る」
USJの一件にて臨時休校となってた雄英も無事に再開され、身体も癒す事が出来た翔纏も登校するのだが……その途中で里中からケーキを渡されたので雄英まで持って来てしまった。毎回毎回ケーキワンホールを送ってくる会長も会長である、ケーキは美味しいが。
「そうじゃなくてお前身体もう大丈夫なのか!?」
「そうよっ獣王ちゃん、あの後倒れて凄く心配してたのよ」
「ああ大丈夫。単純な頑張り過ぎだから、流石にコンボの連続使用は身体に負担掛かるからね……せめてラトラーターじゃなくてサゴーゾにするべきだったかな……」
「やっぱりあの金色の
「うん、めっさキツい」
単純な変身の負担で考えればラトラーターのワントップ、固有能力を併用するのであればガタキリバのワントップになるのだが……常にエネルギーを放出しているようなラトラーターは身体に尋常じゃない負担が掛かってしまう。ほんの僅かな時間ならばまだしもシャウタの直後にあれはやり過ぎだと父と母からもきつく言われた。
「ケロッ……私達を守る為にそんな事をしてくれたのね……」
「それしか手段がなかったからね、まあ気にしないで。俺としてもコンボには慣れなきゃいけないと思ってるからさっ……」
少しばかり顔を暗くする梅雨ちゃんに気にしないでと声を掛けながら何時までもケーキを放置する訳には行かないと中身を空けてみると、そこには普段よりでかいケーキがあった。
「うぉっ何だこのケーキ!?青いぞ!!?」
「なんかアメリカのお菓子みてぇな感じだな……」
「ああこりゃバタフライピーティー*1を使って色を付けてるんだな、こっちは柑橘系で黄色を表現してる……これ作った人超一流だな」
「分かるのか砂藤?」
「おうよ。俺ってば個性の関係でお菓子作りが趣味だからな」
ケーキを見た砂藤が使われている素材を見事に言い当てる、彼の個性は砂糖を摂取する事でパワーアップするシュガードープ。その関係でお菓子作りが趣味であるとの事、そんな彼からしても会長のケーキは素晴らしいとの事。そしてケーキは折角なのでクラスの皆で分けて食べる事になった。
「(もしかして会長ってこの事を予期してこのサイズにしたのか……?)」
「皆おはよう」
『相澤先生復帰早!?』
「大した怪我じゃない、婆さんが大袈裟だから包帯を巻いてるだけだ。気にするな」
ケーキを食べ終わった頃、HRの時間となったので箱を片付けて皆が席に着いた時に教室に全身包帯だらけのミイラ男が入ってきた。が、それはなんと相澤先生であった。脳無との戦闘でそれ程までの傷を負ったという事なのだろう……それなのに即座に復帰するのは大丈夫なのだろうかという疑問を振り切るように相澤は矢継ぎ早に本題に入る。
「先日の件で色々言いたい事があるとは思うがそんな暇がない。新しい戦いが迫っている、覚悟しておけ」
そんな言葉に思わず一同は身体に力を入れてしまう。先日のUSJでのヴィラン襲撃、それがまだ続いているのかと皆に緊張が走っていく。誰もが自分達に危機が及ぶのではと緊張感を持っていた、そして相澤の口から語られる言葉に―――
「雄英体育祭が迫っている」
『クソ学校っぽいの来たあああ!!!』
大声をあげて歓喜する。どうやら危険ではなかったらしい。この言葉にクラス全員が少なからず興奮していた。雄英の体育祭と言えば学校規模のイベントというわけではない一大イベントなのだから。
「開催に否定的な意見もあるが、開催はする。雄英の管理体制や屈しない姿勢を見せつけるいいチャンスでもある。警備やらは例年の数倍、オールマイトが現役ヒーローに声をかけてくれている―――特に獣王一族の方々が警備に率先的に協力して頂ける事になった。生徒諸君は安心して体育祭に挑んでくれ」
一斉に翔纏へと向けられる視線、相澤の物言いからして体育祭の開催には獣王一族の力がかなり役に立っているようなだった。実際問題として獣王一族の多くが警備に参加する事で開催に反対派であった人間を捻じ伏せる事が出来たのは事実。と言われても翔纏はこの事を全く知らなかった。
「獣王君、君のご家族が体育祭の為に御尽力してくださっているというのは事実なのか!?」
「そうなんじゃないかな、俺知らなかったし」
「知らされていなかったのか!?」
飯田に質問をされてもそれ以上の言葉を出す事は出来ない、こんな形で関わって来るなんて知らなかった。というよりも翔纏からすれば体の良い見張りのようにしか思えない。
「俺の両親は過保護だから体裁の良い警備を受けつつ見に来るつもりなのかもな……」
「過保護なのか、だがそれだけご両親に大切にされているという事じゃないか!!」
「いやまあそうなんですけど……」
体育の開催は喜ばしいがこれは同時に自分にとってチャンスでありピンチでもある。警備をしながら自分の品定めをするつもりだと翔纏は思っている、何処まで出来てそれを維持出来るのか、そして何処まで伸ばす事が出来るのかを体育祭で見られる事になる。そして場合によっては……最悪の事も考えられる、故に手を抜く事は出来ないし自分の強化もしなければならない。
「……」
「獣王君、如何かしたか?」
「いや、唯―――ちょっと燃えて来た」
「うむっ矢張り雄英体育祭には滾る物があるものだな!!!」
「警備とは良い考えだったなぁ」
「俺達は一族の規模もデカいしヒーローとしても名が売れすぎてるからな、皆で翔纏を応援するにはこれしかないと思ってね!!」
「流石お父様、翔纏に尊敬されてないから頑張ったんですね」
「グフッ!!」
悲報、翔纏の考え全部ハズレ。