雄英演習場、トレーニングの台所ランド通称TDL。
体育祭が迫る中、演習場を生徒が使用して個性強化を図る事は珍しい事ではない。雄英の敷地内ならば大規模な個性使用も認められるし出来ない事も多い。故に此処で特訓をする者は多い―――だが、その中でもTDLでは最も激しい特訓が行われ続けていた。
「ッ―――!!」
「ウオオオオオオオオオオッッ!!!」
激しい閃光が迫りくる氷河を砕くように融解させるが次々へと新しいものが迫ってくる、その勢いはまるで津波を連想させる程のスピードと規模。そして時間が経つ程に氷の密度と勢いが増していくのに呼応して閃光の強さも増していく。
「まだまだ、上げる!!!」
更にギアを上げる、アンダースローのような動作と共に地面から飛び出していく氷柱。氷河を掻き分けて飛び出していく氷柱によって流れは複雑化して閃光の効き目が一定ではなくなっていく。
「負けるかぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
閃光が一際強くなった、パワーアップしたそれに対抗するような意地の張り合いに近いそれだが増していく光。そして直後に光と氷が限界に達したかのような猛烈な爆風が巻き起こり双方が消し飛んでしまい、それを行っていた両者―――翔纏と焦凍は地面に倒れこんでしまった。
「ハァハァハァッ……すげぇな翔纏、そのコンボえっと……ラタトラー……」
「ラトラーター」
「そうっそれだ」
思わず称賛の言葉を送らずにいられなかった焦凍は素直な気持ちを向けた、その先では変身を解除して疲労を溜息にして外に吐き出している翔纏がいた。お互いの個性強化訓練、即ち限界突破を目的にした特訓。その激しさは日に日に増していき監督役としてそれを見ている教師のセメントスも驚かずにはいられなかった。
「特訓開始三日目……漸くラトラーターの負担にも少し慣れたぞぉ……でもきっちぃ……」
「俺も多少強くなった気はするが……まだ敵わねぇな」
「いやっ轟君も凄くなってるからね……?」
思わず口を挟まずにはいられないセメントス。焦凍の個性、半冷半燃。右で凍らせて左で燃やす、だが焦凍は炎を使う気はなく氷だけの個性となっている。しかしその強さは三日前と比べて明確に大きくなっている。それは氷を融かすだけの熱量を持つ光を放射するラトラーターの固有能力、
「にしてもこんままでいいのか、唯氷のパワーを上げるだけで俺はあいつを超えられるのか……?」
「ならっどうするべきだと思う?」
「……今、俺にない物を俺の物にする」
「その欲望、正解」
悪い顔をしながらも肯定する、ハッキリ言って焦凍の個性はとんでもない力押しなのである。親の資質を受け継いでいる為か個性の出力が尋常じゃない程に高い。シンプルな力押し。ビル一つを丸ごと凍結させる力、それだけで大抵の相手を倒す事も出来るがヒーローではそれでは不足。ヒーローはヴィランを倒すのではなく確保し人を救う存在。それが力押し一辺倒では不味いので焦凍の
「最後にやってた地面からの氷柱、あれを伸ばしてみたらどうかな。不意も突けるからかなり汎用性は高い」
「そうか……良し練習してみる」
早速氷柱の練習に入る友達を見つつ少し休息に入る、負担に慣れてきたとはいえそれでも休みは必要になる。そんな自分にセメントスがスポーツドリンクを差し出してくれた。
「有難う御座います先生」
「いや俺も見てて結構楽しいよ、しかし焦凍君の成長振りも著しいけど君も凄いね」
「俺は唯コンボに身体を慣らしているだけですよ」
過保護な家族がいる家ではコンボの使用は基本的に禁止され続けてきた、そしてたった一人で出来る事は限られるので自分の慣れも焦凍の協力があるからこそ出来る事。その時、天井に何かがぶっ刺さった。無数の大小様々な太さの氷柱が地面から生えており、その前には無表情に見えるがキラついている顔をしている焦凍が自慢気に立っていた。
「翔纏如何だろ、氷柱ってこんな感じで良いのか」
「……流石の力というかなんというか……もう氷柱の出し方マスターしてるっぽい」
「修得、早すぎませんかね」
「まだなんだ」
何処がだよっと言いたいのをセメントスと共に抑え込みながら課題を見つけたらしいので聞いてみる事にした。
「氷柱だけを作ろうとしたけど駄目だった、だから一旦地面を凍らせてからそこから氷柱を生み出す事にしたんだ」
「まだまだ力押しで納得いかないと」
「ああ。セメントス先生、如何思います?」
「そうだね……」
プロヒーローとして経験も豊富なセメントスに意見を求める、それに対して真剣な眼差しで氷柱―――ではなく氷柱が生えている氷の大地を見つめた。
「氷柱を生やすだけが目的なら氷が厚すぎるね、もっと薄くした方が消耗も少なく済む。多人数を拘束しつつ攻撃するなら今のままでもいいかもしれないけど、目指すのが持っていない精密性ならピンポイントを目指すべきだね」
「薄く、ピンポイント……」
「そうそう、俺がこれから手本を見せてあげよう」
そう言いながら地面に手を置いたセメントス。すると床のセメントがまるで生きているかのように脈動して焦凍が行ったように無数の棘が飛び出した。しかもそのどれもが極めて細い、そして最後に壁や天井にもセメントを這わせるとその全ての方向から棘を伸ばしてその切っ先を中央で揃えるという神業を披露した。寸分の違いも無く、中央部で棘が揃う光景に焦凍は喉を鳴らす。
「すげぇっ……!!」
「俺の場合は個性の関係でセメントがある場所じゃないと出来ない、だけど轟君は自分で氷を出せるから様々な場所でこれが出来る。練習あるのみ、だよ」
「―――はいっ!!」
それでは……とセメントを戻そうとするのをあと少し見せて欲しいと止める焦凍、その光景を必死に目に焼き付けて自分が目指すべき物としてコントロール特訓を頑張る事を決める。
「翔纏、どうすればいいと思う」
「え~っと……んじゃまずは覆うじゃなくて氷の道を作ってそこに氷柱を作るのは如何かな。それなら精密性を鍛えられるんじゃないか」
「成程……!!」
意見を出し合いながらの検討、その結果を見てからの試行錯誤、失敗の悔しさと成功の嬉しさの一喜一憂。それを身を持って体験している翔纏と焦凍に思わずセメントスは笑みを作ってしまった。なんて素晴らしい関係なんだろうか。
「うんうんっこれぞ青春だねぇ……」
「ええっもう……ああいう青臭さ大好物!!」
「ハハハッ確かに好ましく―――ってぇミッドナイト何時の間にぃ!!?」
唐突に登場したのは同じく教員のミッドナイト、同僚としてあまり言うべきではないのだろうが……正直、彼女のコスチューム姿は青少年の教育に悪い。18禁ヒーローとも言われる程の姿、ヒーローというか最早SM嬢……これでもコスチュームは変えているのだから困った物である。
「それで如何したんですか」
「体育祭の主審として副審に確認したい事があったのよ、そしたらンもう大好物な光景に興奮しちゃって……!!」
「あのミッドナイト、本当に抑えてくださいね……?」
「氷の道―――ぐぬぅ……難しいな」
「まあ今までが面での発動だったからな、それをいきなり線にしたら難しいさ」
「もっもう一回だ、次こそ成功させるから見ててくれっ……!!」
「分かってる」
「セメントス、これからの監督役私に変わってくれないかしら。多分これからもあの青春続くわよね、もっと見ていたいわ」
「自重してください。後俺でないと轟くんの手本出来ませんから無理です」
熱線放射:ラトラーターコンボの固有能力。全身から放つ熱線、ライオディアスを放つ事が出来る。その威力は焦凍の全力の氷を融かす程の熱量を持つ。
仮面ライダーオーズでは初登場時、川の水を瞬時に蒸発させるというMAP兵器めいた威力を見せ付けながら水棲系グリードのメズールに大ダメージを与えた。
過去のオーズ、800年前のオーズはこの能力で進軍の障害となる湖を蒸発させて進軍スピードを上げるという荒業を行った事らしい。