欲望の獣   作:魔女っ子アルト姫

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欲望の熱狂。

遂に訪れた体育祭当日。開催までの時間を各自が使って今日まで備えてきた。その結果が今日明らかにされようとしている。

 

雄英の体育祭には通常の体育祭とは比べ物にならない規模の人間が集ってくる、正しくオリンピックに代わるイベントとして純粋に楽しむ為に、それを成立させる為の警備に、未来のヒーローへのスカウトと全てがバラバラ。全てを含めたならば数千では効かなくなるような人数だ。事件を受けてヴィランへの警戒を強める為に、雄英が様々なヒーローに呼びかけを行った結果として多くのヒーローが警備として参加してくれている。当然獣王一族もその中に含まれている。正しく過去最大の大規模、その中で行われるのだから生徒たちの緊張も一入だろう。

 

「その時は此処をこうして回り込んで、ザクっと」

「ザクっと。ここで放射しつつ距離を詰めると見せかけしてドンは駄目なのか?」

「いやいやいやそれだと無駄に相手に警戒させるだけで逆に長引くだけ」

「そっか」

 

控室、本来は間もなく迫る体育祭に緊張し呼吸を乱して震える者と武者震いを起こし戦意を高める者と別れるのだが……A組の翔纏と焦凍はノートを広げながら何やら話し込み続けていた。

 

「獣王ちゃんと轟ちゃん、何をお話しているの?」

「大した事じゃないよ、今日まで一緒に特訓してたからその延長線で戦術研究」

「お前ら最近ずっと一緒だと思ったら一緒にやってたのかよ特訓!?」

「ああ」

「切磋琢磨していたのだな、獣王君と轟君は!!」

 

非常に健全で正しい時間を過ごしていたと感心する飯田だが、それ以外ではあの二人が特訓していたとすればどれだけ強くなっているのだろうか……と戦々恐々としているものが大多数だった。

 

「体育祭に向けてそんなに特訓していたのね」

「俺はそうだけど、焦凍は体育祭に向けてというか……なあ」

「ああ、俺は俺の欲望の為だ」

「よっ欲望って轟、アンタ獣王の口癖移ってない?」

 

言われて気付いたらしい焦凍だが余り気にしていないらしい、今日まで共に訓練をしたからというだけではなく友人となったからだろうか。それとも欲望が力になるという事に実感を得ているからだろうか。

 

「轟君の欲望って……一体何なの?」

「大した事じゃねぇ」

 

翔纏からあまり話さない方が良いと言われたからか、適当に濁しを入れておく。実際問題堂々と話すような物でもない、下手にマスコミに聞かれてしまうととんでもない事になりかねない。焦凍も認めたくはないがエンデヴァーがヒーロー界を支えている存在なのは認めている、その力が今無くなるとヴィランが大活性化する恐れがある。その一助はしたくない。

 

『全開にして刮目しろオーディエンス!群がれマスメディア!今年もおまえらが大好きな高校生たちの青春暴れ馬…雄英体育祭が始まディエビバディアァユウレディ!!?』

 

解説席から聞こえてくるプレゼント・マイクの声、それが知らしめるのは開始の合図。起爆剤となり観客たちの熱狂を増していく。同時に出場生徒の間に一気に緊張が走って行く。マイクの言葉と共に入場が行われるが矢張りと言わんばかりに視線と歓声が集中しているのはA組だ。まだ未熟な身でありながらヴィランに襲撃されながらも生き延びたクラスに注目が集まるのは必然。大観衆が声援を上げて出迎えてくる。それをプレゼント・マイクの気合の篭った実況が更に加速させていく。それらの勢いに飲まれそうになる生徒、物ともしない生徒に分かれる中で全1年が集結した時、一人の教師が鞭の音と共に声を張り上げた。

 

「選手宣誓!!」

 

1年の部の主審を務めるミッドナイトが選手宣誓の開始を宣言する、18禁ヒーローの登場に会場の男衆が沸き立つ。何時の時代もエロは強いという奴だろうか、そもそも18禁が高校の教師でいいのだろうかという疑問もわく。因みに担当科目は近代ヒーロー美術史、コスチュームの歴史などを身を持って教えている。

 

「選手代表、獣王 翔纏!!」

「はいっ」

 

今年の入試首席だった翔纏に宣誓の役目が回ってきた、一応事前に話はあった。相澤曰く無難で良い、ミッドナイト曰く熱い物が良い、曰く曰く……教員室で聞いた時様々な意見を貰ったが取り敢えず確りその務めを果たす事だけを考える事にする。壇上に上がると生徒だけではない、観客に警備の視線までもが突き刺さってくる。しかし―――気を落ち着けてマイクに向けて言葉を放つ。

 

「宣誓―――ッ!!我ら此処に集うのは誇りある雄英の生徒。この場に立つ以上、我らは等しく同じ土俵、同じスタート、そして等しくライバルである。身体一つの我を張って、己以外の全てを相手をする覚悟を持って此処に立つ!!それが挑戦するという行いの全て。そして我らが目指すが常に高み、それが我らの夢、即ち欲望!!!我らが欲望の全てを、今此処で見せつけるものこそが我々雄英生の夢―――欲望!!それこそが今を生きるエネルギー、その素晴らしさをご照覧あれ!!!」

 

何処までも我を通し、何処まで高みへと走り切り、何処までも胸を張る。己の心情、欲望こそが全てという事を隠さずに言い切った翔纏、宣誓としては型破りで聞いた事も無い言い方だが―――密度が高く、純度の高いエネルギーに満ち溢れているそれに誰もが聞きほれ、それは拍手へと変わり、次第に熱狂へと変貌する。

 

『カァァァァァァッ!!!欲望かぁっ!!そうだ、確かにそうだ!!!そうだ、欲望は生きる源だぁ!!!雄英生一同、欲望全開で行けぇやぁぁ!!!』

「ンもう最っっっ高よ獣王君!!そう言うの超好みっ!!!さあこの熱さを残したまま第一競技行くわよぉ!!!」

 

熱を逃がさぬように即座に開始される体育祭、そして行われる第一種目の説明。最初は―――障害物競走。

 

「第一種目はいわゆる予選、毎年ここで多くの者がティアドリンク!!さて運命の第一種目は一学年の全クラスによる総当たりレース、コースはこのスタジアムの外周で距離は約4㎞よ!!コースを守れば何でもあり!!個性を全開にしちゃってOKよ!!!」

 

障害物競走。会場の周りをぐるりと一周すると言えば聞こえはいいがどんな障害物が待っているかは分からない。そしてスタートのゲート前には凄まじい人数がすし詰めのようになっておりスタートしたとしても本当に走れるのかと思うほどである。誰もが自分に有利な場所へと陣取ろうと動き出していく。矢張り皆スタート地点ギリギリの場所へと進んでいくので満員電車状態と化していく。その中で、鳴り響く開始のゴング。

 

「スタァァアアアトォォオオッッッ!!!!」

 

遂一気に全員がゲートから走りだそうと前へと進む、誰よりも先にこのスタジアムから出る為に。スタートは宛ら満員電車状態―――と言いたい所なのだが、誰もスタジアムの出口であるゲートに辿り着けていないのである。

 

『おいおいもうスタートは鳴ってるって……うおおおおおおっっっ!!!?』

「何だこれ動けねぇ!?」

「こ、氷!?足が氷に覆われてる!?」

 

思わず煽りをしようと思ったマイクだがそれに気づいた。なんと前へと進もうとしていた生徒ほぼ全ての足が氷に覆われ動きが取れなくなっている、それだけではなくゲートには無数に伸びた氷柱がスタートを邪魔するかのように生えていた。それを一足先に突破するように駆けるのは―――焦凍だった。

 

「悪い。先行くぞ」

『先頭で飛び出したのはA組の轟だぁぁぁぁぁ!!!早速独走状態かぁ!!?』

『よく見ろ、後ろから来てる』

 

ほぼ強制的に解説席に座らされている相澤、それが指摘したようにゲートを突破して焦凍の隣に立った者がいた。それは包まれていた光から飛び出しながらアイススケートのように地面を部分的に凍らせながら滑っていく彼と並走していた翔纏。

 

タ・ト・バ!バ!タ・ト・バ!!!

 

「特訓、生きたな!!」

「感謝してる―――だから翔纏」

「ああ焦凍」

「「勝負だ!!!」」

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