欲望の獣   作:魔女っ子アルト姫

21 / 62
獣と轟の欲望。

「こうして話すのは初か」

「でしょうね、生来獣は炎を嫌うものですから」

「こうして話すのは以前の偶然のチームアップでしたから」

 

壁に寄り掛かりジュースを口にしながらも一切目線を合わせない猛、外見だけは美しい笑みを取り繕いながら此方を見つめる幻。

 

「それでお話とは一体何でしょうか、天下のエンデヴァーが私達に何を話すというのでしょうかね」

「随分と喧嘩腰で話を進めてくれるじゃないか、別段貴様ら獣王一族と事を構えようという考えなど毛頭ないわ」

「ではどのようなお話で」

「獣王 翔纏、お前達が以前馬鹿に持ち上げていた息子についてだ―――あの個性、あれは何だ」

 

矢張りその話題かと警戒をし続ける、内容は幾つか予想していたがそれらの類のものだと思っていた。

 

「何かと言われてもあれが翔ちゃんの個性よ、としか言いようがないわ」

「そんな曖昧な言葉で引き下がるとでも思っているのか」

「思ってない、だが教える必要性がないとも思ってますよ」

 

この先分かる事でもあるだろうが教えてやる義理も無い、翔纏の大切なお友達の父親ではあるがそれでしかない。自分達は轟一家とはまともなコネクションを築いている訳でもないし良好な関係にある訳でもない。冷の事を考慮してもいいが、あれは獣王ではなく幻個人の交友関係でしかない。だが―――ある程度の餌はやる事にする。

 

「翔ちゃんの使ってるドライバー、アイテムを作ってくれたのは鴻上ファウンデーションとだけ答えておきます」

「ッ!!あの鴻上がっ、欲望馬鹿が作っただと!?」

「欲望馬鹿って……まあ間違ってないのが何ともまた」

 

鴻上ファウンデーションの規模は正しく世界規模、日本国内に限定してもその規模は全国区で、あらゆる分野でトップクラスのシェアを誇る企業。だがっヒーロー関連では直々に会長の審査が入りその御眼鏡に適わなければ専用サポートアイテムは手に入らない。その基準が欲望たった一つ、あの会長らしいと言えばらしい。そしてエンデヴァーはその審査に落ちている。

 

「翔ちゃんってば会長のお気に入りなのよ、ドライバーもメダルも私達一族が全面協力した上で完成した代物だけどそれを渡すと決めたのも私達の欲望と翔ちゃん自身の欲望を会長が認めてくれたからよ」

「……まあいい、奴が関わっているならば個性の件は納得せざるを得ないだろう」

 

何せたった一代で鴻上ファウンデーションという巨大企業を設立運営する程の化物でありエンデヴァーにそこまで言わせる程に鴻上会長こと、鴻上 光生は海千山千の怪人物。そんな会長のお気に入りならばどんな事になっていようが納得するしかない、ある種の不条理の庇護下に収まっている事になっているのである。

 

「では単刀直入に言う―――俺の娘、轟 冬美を獣王 翔纏の相手にして貰いたい」

「「却下」」

 

通常であるならば驚愕やら沈黙やらの反応をするべき所である筈なのに猛と幻はまさかの即答での拒絶である。これには流石のエンデヴァーも目を丸くして逆に沈黙せざるを得ないっというか驚いて言葉を失った。これは自分の目的に気付いているのか、それとも既にほかに―――

 

「まだ早すぎるわっ翔ちゃんにお嫁さんなんて早すぎます!!」

「そうだっまだ翔纏には早すぎる!!せめて成人するまでは恋人は早い!!」

「……お前ら、その内に息子から本気で嫌われるぞ」

 

自分が言える台詞ではないだろうがそんな事を言ってしまうエンデヴァー。真剣に考えてしまった自分が馬鹿みたいだ、これは思っていた以上の親馬鹿としか言いようがない。

 

「話だけで構わん、だが口実として此方も使わせて貰いたい」

「獣王一族の名前を利用したいと」

「ああ」

 

その言葉だけで何を狙っているのか分かる、エンデヴァーの娘という事ならばそれを狙って様々な家からの申し出もあるだろう。それを遠ざける為に獣王一族の名前を使いたいという事だろう。数多くあるヒーロー一家の中でも一族という程に大規模かつその規模に見合うだけの格がある獣王家、その一族との話があるという事ならば遠ざける事は容易という物だろう、だが……真意は別な所にあるのだろう。

 

「その話に真実味を持たせる為に数回会わせろ、とでも」

「察しが良いな」

「考えておこう、家を利用しようとすり寄ってくる馬鹿の面倒さ加減は理解している」

「感謝する」

「焦凍君にもその優しさを向けられないのは哀れね」

 

その言葉に先程まで比較的柔らかかった表情が一気に強張っていく、ヴィランを相手取るフレイムヒーロー・エンデヴァーへと変貌していく。寧ろこの漢からすればこれが本性なのだろう。

 

「自分の夢を子供に託す……いや押し付けるね、そこまでしてオールマイトを超えたい?」

「当然だろう……!!俺がどれだけそれを想いながら生きてきたと思っている……!?」

「ンなもん知るか。アンタの内情なんざぁ俺に取っちゃどうでも良いんだよ」

 

凭れ掛かるのを止めながら幻の隣に立つ猛、その瞳は何処までも鋭い王の瞳。

 

「だが、あの子は今となっちゃ俺の大切な息子の友達だ。息子の友達は既に俺が守るべきものだ、焦凍君は翔纏の笑みを作り翔纏は焦凍君の笑みを作る。それならば俺は彼を守る。例えそれが実の親からでもな」

「あいつは最高傑作だ、俺をも超える逸材、あいつにはオールマイトを超える義務がある……!!」

 

そう言いながら笑うエンデヴァーは邪悪だった、恐らく彼がオールマイトを超えようとしたそれは純粋な物だった筈だ。負けない、自分はお前に負けないと言った物だったかもしれない。だが追いかけると共に明白になっていく余りにも深く大きな溝、それでも超えようとする度に見せ付けられる差……そして何時しか唯々超える事に固執し遂に……それは醜悪な形になってしまったんだろう。

 

「ならこうしましょう、最終種目ガチバトルトーナメント。その第二回戦―――そこで翔纏は焦凍君と戦う、そこで仮に焦凍君が翔纏に勝てれば……冬美さん、でしたか……その婚約を考えてあげても良いでしょう」

「その言葉っ忘れるなよ」

「勝てればの話よ、言っておくけどウチの翔ちゃんは―――強いわよ、一族の中でもトップクラスにね」

 

 

その頃、その自慢の息子の翔纏は……

 

「―――ッッッッ!!!!??ひょっひょうとぉぉぉっっ……みじゅ、みじゅちょぉらい……」

「最初からハズレ引いたのか、ほらっ」

 

屋台で購入したロシアンたこ焼きを焦凍と仲良く食べようとしていきなり大外れを引いて、涙目になっていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。