欲望の獣   作:魔女っ子アルト姫

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欲望への警告。

「んんっ~……」

 

医務室のベッドを借りて短い休息を終えた翔纏。まだ身体の何処かにダルさこそ感じるが気にならない程度には回復している、これも焦凍がコンボ慣れに付き合ってくれたお陰だと思いつつも足を進めていく。もうすぐ自分の番が回ってくる、次の対戦相手は緑谷。身体を壊しかねない程の超パワーを秘める個性、あれをまともに受ければ幾ら自分でもただでは済まない―――だとしても幾らでもやりようはあるのだが。

 

「仮に勝ったと仮定して……残りは2試合か、出来ればコンボは控えたいけど状況によってはそう言ってられないからなぁ……」

「その通りだよ翔纏君!!」

「うわぁっ!!?」

 

唐突に響いてきた低い声にひっくり返ってしまう翔纏、背後から聞こえてきた声に振り返るとそこにはなんと鴻上会長が里中を連れながら立って居た。

 

「会長っ!!?お、驚かせないでくださいよ……ああもう心臓にわりぃ……」

「いやはや済まない済まない、我々もこの体育祭にはVIPとして招待されていたのだよ。そして君の戦いぶりを見て祝う為に来たのだよ」

「それなら前以て言ってくれたらよかったのに……」

 

マイペースに豪快な笑いを浮かべる鴻上、だがそれでもこの人が自分の活躍を見てくれているというのは嬉しい限り。尊敬し自分に生きる力を再認識させてくれた会長には幾ら感謝してもしきれない程。そんな会長は懐から小さな箱を取り出した。

 

「そんな君へプレゼントだ」

「プレゼント、ですか」

「獣王一家の動物の個性は多種多様、君に渡したメダルはまだ一部でしかないのだよ。そしてこれが先日完成したばかりの君の力を新たに引き出すメダルだ」

「新しいっメダル……!?というかまだあったんですか俺の個性って先が」

「うむっ全くもって君の個性は素晴らしぃ!!」

 

翔纏の個性は獣王一族の極地と言っていい程に一族が保有していた個性全てが集約されている、それは最早翔纏自身が宿しているのは地球という青い惑星が紡いできた歴史そのものを身体の内に秘めていると言っていい程に先が見えずに強大。

 

「正しく君の身体に刻まれているのは生命の記憶、生命が持つ欲望という進化の力、君の中に渦巻く欲望は凄まじい」

「俺の中の欲望―――」

「私はあらゆる欲望を肯定する、故にこれだけは伝えておこうと思ってね。君の個性は太古から続く力だ、それを君はメダルによってその身に纏う。だからこそ気を付けたまえ、欲望が君を喰らうのか君が欲望を喰らうのかの勝負だという事をね」

「―――分かりました」

 

何処か飄々として掴み所がない鴻上がこの時ばかりは酷く真剣かつ神妙な言葉を使いながらの警告を発した。それは純粋にお気に入りである翔纏の身を案じているのか、それとも純粋に欲望を喰らう事で制御するのかそれとも暴走して喰われるかの終着点を見たいだけなのか……何も分からないが話したい事としたい事を終えたと言わんばかりに去っていく会長を見送りながら翔纏は箱の中にあるメダルを見る。

 

「喰うか喰われるかのミッションか……だったらこのメダルもその一部か……だったら一からのスタート、変わる事なんて恐れない。俺は俺だ」

 

そんな思いを確固とした意志として胸に刻み込みながら渡されたメダルを掌の上で転がし、出場口から出てバトルフィールドへと足を進めて行く。どうやらすでに緑谷は待機していたらしく待たせてしまったらしい。

 

「悪いな緑谷、少し来客があったもんでな」

「大丈夫だよ気にしないから」

「その代わり―――お前にはこの力で相手をする、初めてのコンボだが人生はギャンブルってな!!」

 

そう言いながら鴻上会長から貰ったメダルを早速ドライバーへとセットした、このメダルが何の動物でどんなコンボなのかは全く分からないがそんな事は如何でも良い。早くこのメダルを使ってみたいという欲が自分を操るかのように動かしている、だから早速変身する。

 

「変身!!」

 

キンッ!

キンッ!

キンッ!

 

コブラ!

カメ!

ワニ!

 

ブラカ~ワニッ!!

 

新たに渡されたメダル、それは爬虫類系のメダル。翔纏の中に流れる爬虫類の力を目覚めさせ制御するメダル。頭部は死と再生のシンボルとされ、毒蛇の代名詞とも言えるコブラ、腕部はその生命力故に長寿の生き物であるカメ、脚部は神聖な動物としても崇められる事があり死を与える回転を扱うワニ。それらを一つの身に宿すブラカワニコンボとなった。

 

『おっとぉ此処で獣王又もやコンボを発動だ!!っていうかなんだありゃインド人みてぇだなおい!?』

『まだ隠し玉があったのか……』

『獣王だけあってインドの王子様ってか!?』

 

色々と好き勝手言われてるが翔纏はこのコンボを発動してその特殊能力にすぐさま気付く事が出来た、拳を強く握りながら感触を確かめているとミッドナイトと緑谷が何やら視線を向けてくる。

 

「えっと獣王君、貴方の意志を尊重するつもりだけどそのコンボって連発しちゃって大丈夫なのかしら……?」

「USJでも大変そうだったのに、大丈夫なの!?」

「ああ大丈夫です、如何やらこのコンボはそう言う奴みたいですから―――元気いっぱいですよ」

 

心配ご無用と言わんばかりにその場でバク転からのブレイクダンスを見せ付ける翔纏、USJでの疲弊ぶりを知っている緑谷からすれば驚きであった。焦凍との特訓をしている事は聞いたがそれがそこまでの効果を現すのだろうかと思うが、これはブラカワニの能力によるもの。

 

「緑谷、俺の心配をするぐらいなら自分の心配をしたらどうだ。今の俺はお前のスーパーパワーでも倒せないかもしれないぞ」

「っ……凄い自信だね」

「ああっ今なら行ける気がする、どんな道でもな」

 

全身に漲ってくる力と活力、コンボを使っているとは思えないような感覚にアドレナリンが沸騰してくる。もう加速がついて止まれない様な気がしてならない、だから今すぐに戦い始めてこれを発散したいと願っている。そしてその願いが聞き届けられたのか―――ミッドナイトは試合の開始を宣言する。

 

「行くぞぉっ緑谷ぁぁぁ!!」

「行くよっ獣王君!!」

 

 

 

『君の言う通りだよ、彼ほど君のいう存在にふさわしい者はいないだろうね』

 

―――フフフッ……そうか、やっぱりそうか……だったら応援しないとね……欲望に、ある意味での個性の究極系に取り込まれないようにね。




超再生能力:ブラカワニコンボの固有能力。ブラカワニの全身にはソーマ・ヴェノムと呼ばれる生体強化物質が全身に流れており、あらゆる傷やダメージ、更には疲労までも瞬時に再生・回復する。また、毒に熱、電気などにも強い耐性を持つ。

オーズの劇場版、将軍と21のコアメダルにて登場し、映画のラストでは再生能力をフル活用する事でオールコンボ集結という夢の光景が実現した。
因みにソーマとはインド神話に登場する神酒の事、神々や人間は霊薬として飲用されたとされる。


という訳でブラカワニ登場。結構好きなんですよねこのコンボ。というかこのコンボのデザインが賛否両論だと聞いて驚き。
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