欲望の獣   作:魔女っ子アルト姫

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爬虫類系の欲望。

「(獣王君のコンボはどれも強力なはず、きっとあれも相当な力を秘めてるに違いない……!!考えるんだ、それが僕に取れる最大の手!)」

 

緑谷はUSJにて二度翔纏のコンボの力を傍で目の当たりにした。一つはシャウタ、もう一つはラトラーター。その何方も途轍もない力を発揮してヴィランを一蹴出来てしまう程のパワーを秘めている。故にあのブラカワニもそのような力を秘めているに違いないと警戒しながら動きの一つ一つに注意を配りながら戦う事を選択する事にした。

 

「ゥゥッ……!!」

 

両腕を前に出すようにして構える、ボクシングのようなスタイルを取る翔纏。矢張りあの姿の最大の武器は亀の甲羅のような装備を付けているあの腕だという自分の推測は間違っていないらしい。使われたメダルもコブラにカメとワニ、翔纏の個性が動物の個性を宿すならば自分の考えは間違っていない筈……と自分から攻める。このままでは埒が明かない、ならばある程度の危険を承知で情報を引き出すしかない。

 

『緑谷が仕掛けたぁ!!』

「イメージっ……レンジの中の卵が爆発する、イメージィッ!!」

「―――っ!!」

『獣王も突っ込んだぁ!!』

 

右腕に赤い光がラインのように走っていく緑谷へと向けて翔纏が駆け出していく、彼の超パワーは知っている。だが自分の力が何処までの物なんて分からないが躊躇する理由もないし最悪の場合あの超パワー連発で終わる可能性まである。ならば―――

 

「ハァッ!!ッダァッ!!」

「うっ!!はぁぁ!!」

 

力を開放しようとする寸前に殴り込んでくる翔纏、重々しい打撃を叩き込み続けてくる。カメアームに装備されている甲羅状のシールド、ゴウラガードナーは相当に重い為打撃力を増幅させている。

 

「―――SMASH!!」

「フンッ!!」

 

受け続ける打撃の中で緑谷は遂に個性を発動させた、自分の身体を傷付けるリスキーパワーを制御した肉体許容上限の5%での一撃。それでもかなりの威力を誇る筈だが、それは的確にエネルギーを纏ったゴウラガードナーで防御されてしまう。

 

「防がれっ……うわぁっ!?」

「良いパンチだ……もっと打って来い!!」

 

確かにかなりの威力、まともに喰らえば危険だろうがそれならばまともに受けなければいいだけの話でしかない。カウンターの一撃を受けて吹き飛ばされるが何とかうまく着地して体勢を立て直すが……早くも自分の手札の一つが無くなってしまった。

 

「(何て防御力なんだ……5%じゃあのシールドを突破出来ないっだったら連続で浴びせ掛ける!!)」

 

諦める事はしない、通じないなら通じるように工夫を加えるだけでしかない。未だ5%での使用にはまだ慣れない―――だから連続で使用する。

 

「ハァッ!!SMASH!!!」

 

地面を強く蹴って跳躍、バネのように飛び跳ねた緑谷は一気に距離を詰めながらもその勢いのまま翔纏へと回し蹴りをお見舞いする。全体重を乗せた一撃は流石の翔纏も後退りしながらも盾がズレる、そして其処を見逃さないと言わんばかりに再び跳躍してがら空きになった翔纏のどてっぱらに頭突きを繰り出した。

 

『クリンヒットぉ!!緑谷渾身の連続攻撃が獣王の防御を突破したぞぉ!!』

『幾ら防御に優れていても体重が乗ったそれは技術もいる、ダメージ自体は完璧に防げているが弾かれたな』

 

「参ったな、直ぐに攻略されたか……」

 

ブラカワニコンボをまだまだ使いこなせていないのもあるがそれ以上に緑谷の学習能力には目を見張る。通じないならば次の要素を絡ませ戦略を練る、そしてそれをすぐに実行する行動力もある、味方なら頼もしいが敵にすると途端に厄介になるパターンだ。それなら―――此方も次の手を出すまでだと、腰へと手を伸ばしてそこにある何かを手に取った。

 

「緑谷、まだこのコンボは分からない事だらけだ。だから―――お前で実験させて貰う」

『何だ何だっ獣王の奴なんか笛みたいなの持ってるぞ?あれOKな裁定か?』

「個性によって出現させている感じなので許可します!!』

 

ミッドナイトのお墨付きも貰いながらも手にした笛、ブラーンギーを構える。それに警戒心を抱く緑谷、一体何が起きるのか。

 

「さてっ行こうか」

 

笛を吹き始める翔纏、不思議な音色が響き渡る中でコブラヘッドの瞳が妖しく輝くと後頭部辺りから何かが伸び始めた。それは舌を激しく動かしながら威嚇の声を上げ緑谷を鋭く睨みつけているコブラ。

 

「ヘ、ヘビッ!?」

 

音色に操られるが如く、コブラはどんどんその身体を伸ばしていき敵対者である緑谷へと迫っていく。空中を駆けるかのように伸びてくるコブラに出久は気押されながらも噛みつこうと迫ってくるそれを何とかギリギリの所で回避するが即座に切り返したコブラはその身体を鞭のように撓らせながら胸部を打ち据えた。

 

「な、なんてパワーなんだ……!!うわぁっ!!?」

 

再び迫ってきたコブラに声を上げて逃げてしまう、コブラは何度も何度も自分に噛みつこうとしてきている。しかも地面に炸裂した時に紫色の光が灯っていた、まさか毒まであるのかという予測も出来てしまったので必要以上に避けてしまう。

 

「やるしか、ないっ!!」

―――シャアアアア!!

「SMASH!!!」

 

今までにない速度で迫ってくるコブラに対して緑谷は加減をする事を止めながら個性を発動、そしてデコピンのように指を構えながらコブラへと空気を弾いた。空気と言ってもそれは爆弾と相違ない威力を持ってコブラを捉えた、コブラは大ダメージを受けたように動きを止める。それを見た翔纏はすぐさまブラーンギーを吹くのをやめてコブラを収める。

 

「ぐっぁぁぁっ……!!後ッ9発……!!」

 

激痛に耐えながらも睨みつける緑谷、その鬼気迫った表情に喉を鳴らしてしまう。もうこれから緑谷は個性の加減をやめるだろう、ブラーンギーを使われたら自分が一方的に不利になる、だから大火力で一気に攻め落とそうとする。そうだと言わんばかりに緑谷は無事な指を新たな弾丸にするように構えている。

 

「そこまでするか……素晴らしぃ!!お前の勝利へと渇望、欲望、正しくエネルギーそのものだよっ!!これだから欲望とは素晴らしぃ!!!だが欲望で俺が負ける訳には行かない、勝負だ緑谷ぁ!!!」

 

真正面から突撃する翔纏、避ける事で激痛と指の消費を促す消耗戦という選択も無くはないがあんな欲望を見せられてそんなつまらない選択をする程野暮ではない。

 

「ゥゥゥッっ――――SMAAAAASH!!!」

 

此処で切り札を切ると言わんばかりに激痛に耐えながらも連続で空気を弾いた、同時に指が染まっていくがそんな事など気にしなかった。そして弾かれた爆弾のような空気弾、それが迫ってくる中で翔纏は脚へとエネルギーを集めた。ワニの脚、それがどんな意味なのか思い知らせてやる……!!と思いながらも迫ってくる攻撃へと向けて連続で回し蹴りを放つ。

 

「セェイッ!!!ハァッデェイヤ!!」

 

放たれてくる空気弾、それを蹴る際にエネルギーのワニの口のような物が同時に喰らいつく。真横と上下からのインパクトに空気弾は耐えきる事が出来ずに完全に蹴り砕かれる。それを見た緑谷はならばと言わんばかりに腕を引こうとするがそれよりも先に翔纏が動く。

 

「させるかよ!!」

 

スキャニングチャージ!!

 

指の次は腕での一撃、流石にそれは規模が違い過ぎるので防御も出来ないし相殺も出来ないだろう。だったらやられる前にやる!!と言わんばかりに駆け出した翔纏はそのままの勢いで地面をスライディング。だがスピードはどんどん増していきながらも光のリングを潜っていく。それを緑谷は捉えようとするが―――まるでヘビのように蛇行する為に全く狙いが付けられない。カウンターしかないッ!!と理解するが遅すぎた。

 

「セイヤァァァァァァァ!!!!」

 

跳び上がった翔纏はそのまま緑谷へと蹴り込んだ、同時に翔纏の両脚は巨大なワニの顎のように変貌し思いっきり喰らいついた。そしてそのままデスロールを思わせるような高速回転を行いながら緑谷を投げ飛ばしてしまう。抵抗する事も出来ずに投げ飛ばされた緑谷は地面を抉るように吹き飛ばされてしまった。

 

「緑谷君場外!!獣王君の勝ち!!!」

 

勝利を刻みつけた翔纏は変身を解除しながら緑谷の下へと行くが身体に全く疲れがない事に気付いた、ブラカワニはそれ程までに負担が軽いという訳でもない。タトバでも疲労感はある、恐らくブラカワニの固有能力は回復にあると理解しながらも倒れこんだ緑谷へと手を貸す。

 

「凄いねっ……獣王、君は……」

「翔纏でいいよ、俺のコンボ慣れみたいに緑谷のそれだってきっと慣れるさ。ほら医務室まで連れてくよ」

 

そう言いながら傷だらけになった彼を担ぎ上げながら医務室へと向かうが、その時にミッドナイトが超好みぃ!!と叫んでいたりした。

 

 

 

『矢張り、私の理想に彼は必要不可欠な存在……究極系はそのまま終わらせるべき―――』

 

―――フフフッもっと先を見てみたい気もするが……確かにそうだねぇ……。

 

『獣王 翔纏……君に、良き終末を』




さて、本格的に出してないのがガタキリバぐらいになったぞ……。いやまだ未来系コンボもあるけどさ……う~ん……ブレンチシェイドに拘り過ぎかな。

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