欲望の獣   作:魔女っ子アルト姫

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焦凍の成長欲。

「セイヤァッ!!」

「ハァッ!!」

 

ビーストヒーロー事務所管轄、個性修練場。唯々広く単純な戦闘を行うための広大な敷地で激突しあっているのはタトバコンボのオーズとショート、雄英でも行っていた個性の限界突破修練をプロヒーローの管轄下で行っている。

 

「翔纏突っ込みが甘いぞ!!」

「簡単に言うなよなぁ!!」

「おいショートお前はお前で炎の扱いが雑だ、氷と炎は別もんだ。同じイメージで扱おうとすんな」

「くっ……はいっ!!」

 

職場体験という割にはプロヒーローに見て貰っているように見えるが、事務所ではプロヒーロー同士の鍛錬も職務の内。なのでアンクが二人の修練を見る事自体は全く問題はない、そもそもがこの為に来ているのだからやらなければ意味なんてなくなってしまう。

 

「ハァッ!!」

「喰らえっ!!」

 

地面へと突き立てられた両腕、すると地面から無数の氷柱と火柱が噴き出しながら跳躍した翔纏へと襲い掛かっていく。それは真っ直ぐと翔纏へと向かって行く―――がその途中でそれぞれの柱が激突すると水蒸気爆発が引き起こされた。低温と高温の激突によって巻き起こったそれは翔纏に襲いかかり、地面へと叩き落とした。そこへ焦凍は地面を滑りながら飛び込んでいく。

 

「せぇぇぇいっっ!!」

「グッ!!」

 

地面を凍らせながらその上を滑って加速し、その勢いを使いながら全体重を乗せた膝蹴りを翔纏へと叩きこむ。咄嗟に組まれた腕に防がれるが、防御されなければまともにその一撃と氷結によって大ダメージは必須だった。凍て付き始めた腕を大きく開きながら接近してきた焦凍を腕の力だけで投げ飛ばして体勢を立て直す。

 

「おい翔纏、お前も何時までも負担の軽いタトバに甘えてんじゃねぇ。他のコンボ使ってどんどん慣れてけ」

「分かってるよっ……!!んじゃ焦凍―――リベンジでもするか!!」

「ああっ今度こそ勝つ!!」

 

そう言いながら翔纏はタトバコンボからタジャドルコンボへとチェンジする。兄の言う事は尤もだし何時までも楽なコンボでは自分の個性が伸びる事はない―――とそれらしい事を考えているが、兄の真意は自分のメダルを使えだろう。いや、他の兄姉弟がいたら確実に自分のコンボを使えと叫ぶだろう。なので此処はこの場にいる兄のメダルにしておく事にする。

 

「さあ雄英体育祭の再現だ!!」

「今度は俺が勝つ!!」

「やってみやがれ!!」

 

 

「美味いなこの蕎麦」

「ああっ本当に美味い」

 

激闘をし続けていた二人も昼食時になれば戦いの手を休めて食事に勤しむ。事務所の食堂で共に食事を取っている、今回は焦凍の好みに合わせて蕎麦にしている。蕎麦好きの焦凍からしても味が良いのか絶賛している。

 

「本当に美味いな。家でも冬美姉さんがよく二八蕎麦*1打ってくれるけどそれより断然美味い。姉さんの蕎麦が不味いと言ってる訳じゃないが」

「分かってるよ、此処の蕎麦はウチのと同じだった筈だ。二八蕎麦じゃない筈だ、確か母さんが見つけた独自配合」

「そうなのか」

「このそばの味を知ってから、そばアレルギーじゃなくて良かったと心から思ってるよ」

「だな」

 

年末年始は基本的にこの蕎麦で年を越す、凄い時には一族総出で蕎麦の大食い大会になってとんでもない騒ぎになる。余りにも凄すぎて自分がガタキリバに変身して手伝いをしようかと思う程に壮絶な年越しになった事もあった。因みにその時は全力で止められた。

 

「しかし、お前の兄さんの指導は結構キツいな」

「まあねっ……遠慮とかしないでズバズバ言うタイプだし」

「でもその分指摘は的確だ、それに認める処は確り認めてるしな」

 

口が悪いだけで指導は的確なアンク、そのお陰もあってか焦凍の炎のコントロールは成長の兆しが見え始めている。氷と同じように精密性を上げようとしていたのだが、固体として質量を持つ氷とプラズマである炎は全く感覚が異なる。それを同一のもので制御しようなんて事が間違っているという指摘を受けてより集中した制御を心掛けるようにしている。

 

「一先ず、放射は出来るんだから今度は火球にして飛ばすのを目標にする?」

「ありだな」

「それじゃあ……炎と氷があるんだから目指すはメドローアだな!!」

「メドローア……なんか必殺技っぽいけど何なんだそれ」

 

如何やら焦凍は余りゲームや漫画は嗜まないタイプなようである意味で炎と氷の究極系とも言えるそれについては全く知らなかった。なので折角なので教えてみると酷く興味深そうに聞き耳を立てながらも両手を強く握りしめていた。

 

「炎と氷を純粋な対消滅エネルギーにして放つ……かなり難しそうだが、目指す価値はあるな」

「というかある意味、体育祭で激突した時のあれがそうだよね」

 

焦凍が必殺技として検討している氷炎一体の必殺技、名前はタジャドルのプロミネンスドロップに肖ってアブソリュートドロップにしたとの事。それ自体も絶対零度の右足と絶対熱の左足の同時攻撃、これも一種のメドローアに近い性質と言えるかもしれない。

 

「まずはそっちを煮詰めてみる?飛ばすのは難易度高いだろうし」

「ああ、出来る事を一つ一つこなすのが先だな」

 

―――随分と面白そうな話をしているな。

 

後ろを見てみるとそこには一人の男が此方を好奇の目で見つめていた、緑色の服を着こなした茶髪の男に焦凍は誰だと思うが翔纏は若干嫌な顔をした。

 

「ゲッ……閃兄……」

「よぉっ翔纏、俺のコンボのお陰で体育祭には勝てたらしいな、感謝しろよ」

 

そこに立つのは翔纏の兄であるインセクトビースト・ヒーロー・ウヴァ。昆虫の個性を持っており、アンクが炎を操るならばウヴァは電撃攻撃を得意としている。そしてアンクがタジャドルを自分のコンボというように、彼もガタキリバを自身のコンボと呼んで誇りにしている。

 

「いやまあそうだろうけどさ……前から言ってるけど俺のコンボとみんなの個性は大分違うから」

「ンな事は関係ない。重要なのはお前が、俺達兄弟の個性を使っているような事だからな。あいつらも同じ事を言うぞ」

「でしょうね……容易に想像出来るよ」

 

そんなやり取りをしている二人を見つつ焦凍は此方を見た閃蟲に頭を下げる。

 

「お前か……翔纏のダチっていうのは。フンッあいつと同じ炎って言うのは気に喰わんが……まあいいだろう、お前はお前であいつとは別だ」

「ハァッ……」

「ああ、閃兄は鳥命兄さんと仲が良くないんだよ。お互い敵視してるっていうかなんて言うか……」

「ああ成程」

 

閃蟲の言うあいつとは紛れもなく鳥命の事、折り合いが悪く基本的に喧嘩をする。そして互いに自分の方が強いという意見を絶対に曲げない上に、自分がどちらのコンボを大切にしているかでも競い合っている。

 

「翔纏、お前はもっとガタキリバを使え。一々分身などせんでも戦力にはなるだろう」

「いやまあそうだけど使うなら使うでフルスペックで使いたいじゃん」

「だからお前は半人前なんだ、使える物は適切な状況と力で使うのが当然だ。お前は一般道で高速道路並で爆走する馬鹿か、合わせれば良いんだよ」

 

そんな事を言い残してその場を去っていく。口は悪いが兄として弟を確りと気にしているいい人だと焦凍は思うのであった。

 

「ああそうだ、猫殖が帰って来てる。重踏と一緒に相手してやれ」

「分かったよ」

「誰の事だ?」

「俺の弟だよ、今度紹介する」

*1
小麦粉を2、そば粉を8の割合で作る蕎麦




皆大好きウヴァさん登場。やっぱり名前が一番苦労する。

後、他のご家族も近々登場。名前から察せれると思うけど、弟さんです。
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