「翔纏、如何だった」
「素直に疲れた」
「今の状況がか」
「エンデヴァーについていくのがだよ」
エンデヴァーの同伴者という立場……ではなく完全にサイドキックとして扱われ続けていた翔纏。その日一日はずっとヴィラン相手に戦い続けていたので流石に疲れてしまっていた。仮免すらない身なのに此処まで暴れて良いのかと思ったが、エンデヴァーが個性使用許可を出している事と結果を出してしまっているので全く問題になっていないらしい。あると言えば……
「大変だったわねっ今日はお姉ちゃんが守るからね♪」
「あんのクソ野郎……職場体験の意味知らねぇだろう……!!」
「下卑た目で翔纏を見やがって……!!」
「ああうん有難う」
エンデヴァーによって一日中酷使された事によって焦凍を連れてパトロールをしていた姉と兄達に囲まれている事ぐらいだろうか……翔纏としては最高峰のヒーローの活動を見られたどころか隣に並び立てた事は十二分糧になったのだが……家族はそう思っていない模様。
「んで焦凍の方は?」
「俺の方はボチボチだった。ヴィランの活動もあったがアンクさん達が対処してた、良い参考になった」
焦凍の方は目的であったアンクの炎の扱い方を見る事が出来て満足気。加速術、炎を扱った格闘や放射などなど……既に多くのインスピレーションを受けておりその鍛錬も考えていて翔纏に手伝ってほしい事だらけだと語る顔は明るい。
「それで翔纏の方はヒーロー殺しの痕跡は見つけた?」
「いいや……探してはいたけど全然。それよりも他のヴィランばっかり」
「こっちも似たような状況よ、隠れ方が上手いのか……それとも」
「「「誰かが匿っている」」」
アンク、ウヴァ、メズールの声が重なる。全く同一の意見に二人は目を丸くしつつも此処まで捜索しているのに見つからないとなるとその線を模索するべきなのかとも思い始めてしまう。
「匿うって……誰がそんな事を」
「ヒーロー殺しは名前ではそうだけど、ヴィランも襲ってる。ヴィランがそいつを囲むとは思えない」
「正解よ二人とも、だったら匿う事で利が生まれる個人または集団を考えましょう」
ヒーロー殺し、ヒーローを殺す事を目的とし副次的にヴィランをも襲う凶悪犯。それを匿う事で利が生まれる人間……そんなのが居るのだろうか。
「いるとしたらヒーローもヴィランも嫌いな奴か?でもそれって……」
「いるのかなぁ……いないとも言えないけどそれだったらヒーロー殺しだってターゲティングされそうだし……」
「「う~ん……」」
考えてみるが二人は簡単に煮詰まって纏まらない、だが筋は悪くはない。もう少し思考を増やす事が出来ればいい。
「ヒーロー殺しの活動自体が利、じゃなくてそれを利用しているっていうのは如何かしら」
「利用……ってそれってつまりヴィラン?」
「ヒーロー殺しが目的じゃなくて……それを利用する……何かを企ててステインはその起爆剤……?」
結局の所そこまでしか分からない、ヒーロー殺しの根本的な欲望が明らかにならなければ分からない事柄だろう。だが何者かが利用している事は明白だろうと兄達は断言して見せた。それを止める為にも一刻も早い確保が望ましい事も明言された。
「焦凍っお前は俺とだ、お前にヒーローという物を見せてやる」
「如何でもいいからお前の炎の技術だけ見せろ、お前のヒーローの姿は如何でも良い」
「っ―――!!おい貴様ら焦凍に何を吹き込んだ」
「「「何も」」」
「(2回言っちゃった、重要な事だから……)」
今まで以上にド辛辣になってきている息子に思わず先日同行していた3人に目を向ける。実際の所其方は何もしてない、何方かと言えば影響を与えたのは翔纏自身なので物を言うべきは其方。
「そうだ、おい翔纏此奴を渡しとく」
アンクから渡されたのは何やら細長い箱、ご丁寧にリボンが巻かれておりそこにはメッセージカードも挟まっていた。
「なんか多いな、プレゼント」
「まあこんな事をする人は―――」
『ハッピバァァァァスディ!!翔纏君、これはオーズという一人のヒーローの誕生を祝うプレゼントだ!!』
「まあ会長しかないよね」
予想のど真ん中を貫くようなメッセージに若干呆れている翔纏、会長からのプレゼントを開けてみる。そこに入っていたのは―――メカニカルな外観をした片刃の大型剣。刀身の中腹には何やらメダルを入れられるような投入口とスロットが完備されていた。そして箱には灰色のメダルも一緒に入っていた。
「このメダルって何だ、初めて見るな……」
「あっセルメダル……そう言えばライドベンダー以外で全然使ってなかったな」
セルメダル、それは翔纏専用のサポートアイテムとも言える存在。翔纏の個性が発生させるエネルギーを解析し物質化したメダル。ライドベンダーもこのセルメダルを燃料としており、翔纏にとってはある種必要不可欠なメダルである。
「えっと……この剣、メダジャリバーにセルメダルを入れて使いたまえ。そうすればきっと君は君の欲望が生み出すエネルギーに感動し更なる欲望を持つ事になるだろう……ハッピバァァァァスディ!!!か、メダジャリバーって言うんだこれ……カッコいぃ~!!」
カマキリソードなども剣に分類できるだろうが、あれは何方かと言えば剣というよりもカマキリの鎌という認識があるのでこうした分かりやすく剣というアイテムにはやはり男の子心が擽られてしまうという物なのである。目を輝かせながら構えを取って演舞のような事をする翔纏に周囲は暖かい視線を作る。
「フッセイヤァッ!!このメダジャリバーに切れぬ物など……多分ない!!」
「そこは自信持って言えよ」
「だってまだ使い心地分からないんだもんっ~!!」
と漏らす翔纏だが、この後―――それを無理矢理にでも確かめる事になってしまった。
「なっなんだぁっ!!?」
「キィアアアアアアア!!!」
それは突然に出現した。ビルの一角を崩しながらも出現した理不尽は無差別に暴れ回りながらも丁度その場にいたオーズへと襲いかかった。咄嗟にメダジャリバーで応戦するが―――それを見た時、思わず翔纏の思考は停止した。
「こいつっまさかっ……USJの時の同類!!?」
襲いかかってきた存在は脳が剥き出しとなりながらも人語を返さずに迫り続ける。兎も角翔纏は戦うしかない、目の前の脅威を。
「君しかありえませんね。では……この欲望は君に差し上げます。さあ行きなさい、終末を導く者の下へ」
そして、背後に潜む脅威が、翔纏へと迫り何かを行う。