欲望の獣   作:魔女っ子アルト姫

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欲望の変化。

自らの個性の秘密とアイテムの役目を話した翔纏、テストの内容によってはメダルを変えて動物の力を切り替える事で様々な条件下でも力を発揮する事が出来る事を証明しつつもその力強さを見せ付けて行く。握力ではゴリラの力がいかんなく発揮され―――

 

「フンッ!!」

 

―――バキャッ!!

 

「ああっ!!?すいません先生壊しちゃいました!?え、えっと弁償って御幾らですかね……?」

「安心しろ、個性によって器具が壊れるなんてよくある事で予備は幾らでもある。結果は測定可能領域の1トンを超えて尚か……無限って事にしておく」

『無限ってそれもう測定してないに等しいんですけど!?』

 

ゴリラの握力、というよりもゴリラが如く握力というのが相応しく一瞬で握力測定器具を破壊してしまう程のパワーだった。続く立ち幅跳びではバッタの跳躍力をいかんなく発揮して測定範囲を跳び越えてしまう。前に跳ぶだけでも50メートルを簡単にしまうのだから立ち幅跳びの砂場を越えるなんて簡単すぎる事。それじゃ反復横跳びでも同じ事。

 

「バッバッタの力ってそんなに万能なん!?」

「大きく跳ぶと自分の数十倍の距離を飛べるから飛蝗って結構凄いんだよ?飛蝗の脚にはレジリンってのがあってそれはバネみたいに力を蓄えられるんだよ」

「それが人間サイズで行われていると考えると獣王君の跳躍力にも説得力があるな……」

 

翔纏としても脚に使うメダルとしてはバッタが一番使いやすいと思っており、ジャンプにダッシュに隙が無い。走る事に関してはもっと上のメダルもあるのだが逆に力があり過ぎて最強であって万能ではないので使い勝手は宜しくない。そして出来ない事も同時に確りと存在しており、平凡な記録が出るテストも存在していた。

 

「あんまり伸びない~」

「獣王君もそこまで万能という訳じゃないんだな」

「上半身下半身じゃなくて腕と足だからね、その差だね。広げてみようか、グロい事になるかもしれないけど」

『いや率先的に披露しようとしないで!?』

 

長座体前屈や上体起こしなどでは自力だけで乗り切っている、あくまで能力が発現しているのが腕や脚というのが問題になっている。が、こうでもしないと制御不能に陥って大変な事になるので致し方ないのである。

 

「まあ手がないわけでもないけど……」

「(それが、入試で見せたあれか……)」

 

入学試験において獣王 翔纏は首席で入学するに相応しい成績を叩き出した。それは試験における仮想敵を倒しただけ手に入るポイントを集めだけではなく、ヒーローがヒーロー足らしめる行為、英雄的行動である人命救助なども行っていたからである。だがその規模が余りにも膨大だった、そして―――緑谷 出久と同じく唯一試験の邪魔をする0ポイントを撃破した生徒でもある。

 

「にしてもお前のメダルってカラフルだな~」

「色によって種類分けしてるんだよ、分かりやすいでしょ」

 

その時のメダルの色は緑色、昆虫の特徴を発現させつつも絶大な力を発揮した。一騎当千、この言葉が適応できるほどの力を見せ付けた。正しくは違うかもしれないが……。だがそれ故に恐ろしくもある、今の翔纏の姿は全身を拘束具で固められたような状態という事に。

 

「はぁぁぁっっ……セイヤァァァァァッッ!!!」

『ロケットパンチだぁぁぁぁぁっっ!!!!』

 

そして改めてのソフトボール投げ、此処でも翔纏は皆が驚く事をやってのける。同じようにバッタのジャンプを見せるのかと思いきや、思いっきり踏ん張りながらも力強い咆哮と共にボールをガントレットであるゴリバゴーンを射出し殴り付けるようにしてぶっ飛ばすという力技を披露。その結果飛距離はなんと7817メートルを記録した。

 

「お前っロケットパンチまで打てるとかスーパーロボットかよ!?」

「すげぇパワーをヒシヒシ感じたぜおい!!もしかしてもっと強いパワー出せたりするんじゃねえの!?」

「正しく荒ぶる神がごとし……」

「いやぁそれ程でも」

 

と男子から鼻息を荒くしつつも大興奮の好評を貰えた、何時の時代も男子はロケットパンチという物に心を擽られるのである。そして戻ってきたゴリバゴーンを腕に収めつつも元の姿、基本フォームとしているタカ、トラ、バッタの組み合わせへと戻る。

 

「しかし獣王君、そのドライバーは凄い音、いや歌だな」

「分かりやすさ重視だよ、焦ってる時なんてメダルの入れ間違いも起こるかもしれないから音で俺が認識する為。これなら間違えていれてもそれに気付けるし戦法を間違える事も無い、だから俺の安全にも繋がるんだよ」

「成程っ!!それ程までに合理的な理由があったのか……!!」

 

メダルによって制御されている自分の個性、だが逆に言えばメダルが無ければ個性の発動さえも儘ならない。その為に言われている言葉もある

 

 

―――遠慮する事無くガンガン使いたまえ!!使えば使う程に君の個性は肉体と同調していき、何時か辿り着く明日にはメダルなしで個性が使えるようになる!!

 

 

本当にそんな明日が来るのかと不安に思うし疑問に思うが、そうなったら本当に楽しそうだと思ってしまう。次の自分の欲望はメダルなしで個性の制御を成し遂げて思いっきり動き回る事にしようと思う中で、爆発的な空気が自分の身体を包んだ。そこには指を腫らしながらも歯を食いしばって痛みに耐えながらも相澤に向けてまだやれると宣言している緑谷の姿があった。

 

「あれが、緑谷君の本当の力か……0ポイントヴィランを倒したのも納得の力だな」

「えっ緑谷君もなの?」

「何っまさかその物言い、獣王君もか!?」

 

話を聞く限り、緑谷のそれは超パワーによる一撃粉砕らしい。自分のそれとは大きく異なるがそれでも同じように倒したのは事実であるらしい、だがそのパワーの影響か彼の指は内出血を起こし腫れている。自分のように個性の制御が出来ない類なのかと思うと同時に翔纏は笑みを作った。

 

「獣王君?」

素晴らしぃッ!!!

『ッ!!?』

 

と突然の大声を張り上げた翔纏に周囲の皆が驚愕した、そして前に出ながら緑谷の元へと歩き出し手を差し出した。

 

「え、えっと獣王君……?」

「いや本当に素晴らしい!!それだけの超パワー、肉体すら滅ぼしかねない出力!!恐らく使えるように肉体が成長するまで身体がリミッターを掛けて使えなかったんじゃない?」

「えっえっとそ、そうなんだ!!ずっと無個性だと思ってんだけど、ある時に雄英行くぞ!!って一念発起して鍛えまくったらなんか使えようになったんだよね!!?」

「ほほうっ!!」

 

目を輝かせながらその話に興味津々と言わんばかりの翔纏に緑谷は冷や汗をかきまくっていた。特別な事情があるので個性について話す事は出来ない、なのでこれも真実であって真実ではない。だがそれでもかまわないと言わんばかりに翔纏は祝福した。

 

「そう、それだよ!!緑谷君、君は夢を忘れずにいたからこそ今此処にいるんだ!!夢、ひいては欲望が君を此処に導いたんだよ!!」

「よっ欲望……?」

そうっ欲望だよ!!欲望こそ生きるエネルギー、素晴らしぃっ!!故に祝福しようっハッピィバァァアスディ!!今日が君の雄英での生誕祭だよ!!

「あっ有難う御座いますっ!!?」

『人格がっ変わった!?』

 

そう思われても致し方ないレベルの変貌、目の前の緑谷もその勢いに押し切られて思わずお礼の言葉を返してしまう程だった。

 

「あっごめん緑谷君、俺このドライバーをくれた人の事尊敬しててつい同じ言い回ししちゃった」

「い、いやいいよなんか凄い僕嬉しかったし……有難う獣王君」

「翔纏でいいよ、それじゃあ緑谷君の家に俺名義でケーキ送らせて貰うね」

「それ本当の誕生日になりかねないんですけど!?」

 

「チッ!!」

 

そんなやり取りを見つつもひとりの生徒、爆豪が舌打ちをした。彼は緑谷の幼馴染で昔から良く知っている身、故に無個性であった筈の彼が個性を使える事は可笑しいと問い詰めるつもりだったのに削がれてしまった。そして自分よりも好成績を叩き出す翔纏が気に入らなかった。

 

「1500メートル走か……良しこれなら使えるな!!」

 

キンッ!

キンッ!

キンッ!

 

タカ!

トラ!

チーター!

 

 

最後のテストとなった1500メートル走。そこで翔纏はバッタのメダルからチーターのメダルへとチェンジした。緑色の脚から黄色のチーターを思わせる脚へと変化させて1500メートルへと望むのだが、その隣には個性の創造によって作り出したバイクに跨っている女子、八百万 百がいた。個性ならば問題はないと相澤が一蹴する中で余裕な顔をしている、如何やらバイクならば楽勝とでも思っているのだろう。ならば……

 

「はいっスタート」

「―――振り切るぜ!!」

「えっえええっ!!?」

 

思わず驚愕の声がアクセルを回したと同時に響き渡った。何故ならばアクセルを回し一気に速度を上げた筈のバイクを振り切るように加速していく翔纏の姿がそこにあったのだから。脹脛辺りから放熱を行いながらもとんでもない速度で駆け抜けていく姿に八百万は驚かずにはいられなかった。そしてそれに全く追い付く何処か迫る事も出来ないまま翔纏はゴールする。

 

「ふんにゅううううううぅぅぅぅぅぅっっっっ!!!良し止まった!!」

「おい獣王、お前今のなんだ」

 

ゴールを切る前に腕部のツメ、トラクローを展開して地面へと突き刺した翔纏は一気に減速しそのまま勢いを殺しきれないままゴールした。そんな姿に思わず相澤が声をかけてしまった。

 

「ブレーキです」

「……普通に止まれないのか」

「無理ですブレーキ必須です。言っておきますけどこれでもトップスピードには程遠いですから」

「……マジか」

「マジです」

 

そんな圧倒的な速度を見せ付けた翔纏、それでまた注目を集めるのだが相澤が個性把握テストの結果発表を行われるのだがその際に放たれた言葉は思わず全員が驚愕してしまった。

 

「あっ因みに除籍は嘘だから、君たちの最大限を引き出す合理的虚偽」

『……はぁっ~!?』

 

このテストで最下位を取ったものは除籍されると脅しを掛けられていたのだが相澤はあっさりと嘘だと白状した。確かにそんな脅しを掛けられたら全力で臨もうと必死になるだろう、合理的と言えば合理的だが……何とも人が悪い。因みに翔纏は2位、平凡な記録だった上体起こしや長座体前屈が足を引っ張っていた模様。

 

「まあいいさ、上を目指せる。それもまた欲望だ―――生きるエネルギー、素晴らしぃ!!」

『口癖なのかそれ』




翔纏はドライバーをくれた人、某会長の事を心から尊敬しつつ憧れているからか同じような言い方や言い回しを多用する。特に素晴らしぃ!は口癖。

因みに元祖、オーズのチーターレッグの最高速度は100mを0.222秒、なんとマッハ1.32である。アクセルのトライアルフォームよりも速いどころかドライブのフォーミュラフォームの100mを0.2秒とほぼ同等という凄まじさ。

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