職場体験も終わり、雄英高校には普段通りの日常が戻ってきた。それぞれがプロの現場を体験した事で更に大きく成長しこれからの糧とする事が出来た。教室では皆が自分の体験先ではこんな事をしたという事を語り、それを羨んだり逆に自分の体験を自慢したりもしている。
「「ギャハハハハハッマジか爆豪!!」」
「笑ってんじゃねぇクセになって戻んねぇんだよ……殺すぞぉ……!!」
「やってみろや8:2坊やぁぁ!!」
爆豪が爆発寸前なのに笑い続けられる胆力は見習うべきなのだろうか、それとも他人に起きている変化を笑うのはいけないと注意するべきなのだろうか……そんな事を思いながらも翔纏は席に着き、何度も何度も拳を作ったり崩したりを繰り返していた。
「ケロッどうしたの獣王ちゃん」
「ああいや……ちょっと試したい事が上手く行かなくてね」
「そうっ……でも焦りは禁物よ、焦ったら実るものも実らなくなっちゃうわ」
「ありがと梅雨ちゃん」
職場体験が終わってから翔纏はある事に挑戦していた、それはステインとの戦いで出現させたという斧を自らの意志で出現させる事だった。行事が終わってから鴻上ファウンデーションへと訪れて尋ねてみると―――そこで聞かされたのは驚きの事だった。
『いや私はそんな事は指示していないが……そもそも君の持つメダル自身も君の個性を固定化させるだけでしかない、それが身体の中に入る……兎も角一度精密検査を行おう』
自分に入ってきた5枚のメダルに会長は全く関与していなかったという事だった、つまりあれは第三者によるもの……ならばそれは何を求めて自分にメダルを埋め込んだのか……精密検査を受けたがそこでもメダルは確認出来ずに個性の出力の幅が増している事だけが判明した。メダルが個性と融合した、としか表現出来ないような事になっている。
『私からは何とも言えない、だが翔纏君。その力をコントロールするのは君の欲望だ、ならばその力を強く望みたまえ!!そしてそれを完全に制御するのだ!!』
というアドバイスを貰ったので翔纏は唯只管に自分の中に芽生えた新しい力を望む事をし続けた。自らの欲望が引き金になるのならば、今の自分の欲望はその力を手中に収めて制御する事。しかし幾ら望んでもその力が表面化する事はなく時間の浪費だけで終わってしまっている。
「(あの時の俺は如何してあんな力を引き出せたんだ……そもそもどういった力なのかも分からない、個性の力なら多分動物の力なんだろうけど……何の動物なんだ……?)」
自分の個性に刻まれている動物、そのどれとも性質が異なっているように感じてならない。故にどのようにすれば力を使えるのかも分からない手探り状態。
「(そう言えば、何で俺意識を失ったんだっけ……確か個性が少し、怖いと思った直後だった気がするけど……)」
漸く紡ぎ直す事が出来た記憶の断片、意識を失う直前自分はメダジャリバーを含めて自分の個性への恐怖を覚えていた気がする。元から理解していた自分の個性の凄まじさ、だがそれを別の形で認識した事でそれが強く頭に焼き付いていたあの時の自分。そして抱いた恐怖……もしも、それが切っ掛けとなっていたとしたら―――
「それは一体何なんだ……?」
言い表せない不安が胸を過った時、その瞳が輝いた。それは不吉な色であった事は誰も気づかなく、それが表面化し始めたのは―――期末試験における実技試験中であった。
期末試験。学生にとって大きな試練になる事は確実なそれだが、雄英生にとっては更に大きな意味合いを持つ物になっている。単純な筆記試験だけではなく、実技試験も存在している。しかもそれは最近のヴィランによる事件発生率の上昇を考慮した結果、生徒達の実力向上を図る為により実戦に近づける為にプロヒーローでもある教師との戦いへと変更された。
「獣王、お前は特例だ。お前は一人でこの試験に挑んでもらう」
他のクラスメイトが二人一組や三人一組という中で唯一一人での実技試験である事を言い渡された翔纏、だがこれにも確りとした理由があった。翔纏の個性の強みはその汎用性、故に更に対応力の向上を図る為に一人で臨めという物だった。そして翔纏の相手となるのが―――
「君の相手は僕がするよ、全力で掛かっておいで!!」
「校長先生が相手……!?」
翔纏の相手となるのは雄英の校長である根津であった。一体どんな試験が待ち受けているのかと翔纏は緊張した面持ちを作りつつも試験会場へと向かって行く。そして其処で目にしたのは―――視界を埋め尽くすほどの群となって待ち構えていたロボヴィランだった。
「多っ!!?」
数日前。学校の一室では教師らが集まりA組の演習試験によるペアの検討が行われていた。その際に翔纏一人で試験を受けさせることは決まり、その相手は根津が担当する事に決まったのだが……どんな内容でするのか、教師全員が気になっていた。
「ちなみに根津校長、どのように獣王君の対応力を見るのですか?」
「簡単さ。純粋な数で攻めるよ、丁度試験で使う予定だったロボヴィランが余っているからね」
と笑顔で応える根津、戦いは数という言葉もあるように数の多さは直接的に勝利に直結する。翔纏が分身出来る事は知っているが、ならばそれよりも遥かに多い数で攻め続けてみようと考えたのである。
「勿論、そのままだと突破されちゃうから僕が制御するよ。それに加えてパワーローダー、ロボの改良を頼むよ」
「お任せを、その様子だと徹底的にやってもいいので?」
「力を振るってくれて構わないよ」
「んじゃついでに発目にもやらせます、きっと校長も満足しますよ」
こうして翔纏の試験にはパワーローダーとサポート科の発目 明が全面協力した事で誕生した高性能化が図られたロボヴィランが大量投入される事が決定された。それに加えてそれらを根津が統率、制御するので最早とんでもない戦闘力を秘めたロボット軍となった。
『さあさあさあっ獣王君、これが君の試験内容さ!!さあ如何する、立ち向かうかい。それとも撤退かな!?どちらを選択したとしてもそう簡単には行かないと思うけど―――Plus Ultraさ!!』
スピーカーから聞こえてくる根津の声に簡単に言ってくれると思いつつも―――ドライバーにメダルを装填する翔纏は変身を持って返答した。
「上等ッ……全力で立ち向かう!!変身!!!」
獣王 翔纏の期末実技試験。ロボインフェルノ・レギオン。
パワーローダーと発目によって強化改修されたロボヴィラン多数を切り抜けて脱出するか、司令塔である根津を確保するかを強いられる。