「おおっ~随分と早かったじゃん、予想よりもずっと早い」
そんな風に呟きながら笑っているピクシーボブの視線の先には森の木々の間から、姿を現してくる1組の生徒達の姿があった。皆無理矢理身体を動かしているような目で分かる様な疲労を携えている。3時間以内に突破出来なければ昼飯抜きと言われて皆は全力で魔獣の森の突破を試みたのだが……無尽蔵に現れてくる魔獣魔獣魔獣の嵐に揉まれ続ける事になってしまった。3時間もあれば突破できるとマンダレイが語っていた道のりを更に時間を掛けて突破した頃には5時近くになっていた。
「何が3時間ですかぁぁぁ……滅茶苦茶時間かかったじゃないですかぁ……」
「ごめんねあれは私ならって意味♪」
「実力差の自慢の為かよ……」
「あ~あるある……実力自慢の為にワザと自分の最高記録をあたかも平均見たくいう奴……」
「翔纏なんか妙になれてる感じに溢れてんな……」
「兄さんにやられた」
流石の翔纏も疲れ切っていた、時々ブラカワニにチェンジして回復しながらカバーに回ったりはしていたがそれでもクラス全体のフォローアップとなるとブラカワニの姿を維持する事は難しいので他のコンボも多用し続けた。なので翔纏も疲労困憊状態、思わず座り込んでしまったがその時に相澤がその手に持っている斧に目を落とした。
「獣王、お前それなんだ。お前のサポートアイテムになかった筈だが」
「ああこれですか、なんか突然地面が光ったと思ったらそこから引き抜けたんです」
「何だそれ」
軽く聞いても意味が分からないが本当にそのような経緯で出て来たのだから困る。なのでステインの時もそうやって自分が引き抜いたらしい事を伝えると相澤は少しだけ考えこむ仕草をする、これまでも翔纏はメダルによって固有武器のような物を生み出している。なのでその系列に属し、個性と肉体のバランスがとれ始めた事で発現した新しい物なのではないか……と思っていると斧が地面へと溶けるように消えていく。
「ああっまた消えてった……こんな感じでして……取り敢えずサポートアイテムのメダジャリバーに合わせてメダガブリューって名前にしました。なんか恐竜の頭っぽくありませんでした?」
「まあ言われてみたらティラノっぽくはあったな……分かった、それについてはそれでいい。お前もバスから荷物を降ろせ」
「はい分かりました……」
フラフラとした足取りのまま変身解除しながらもバスへと向かって行く。これから始まる林間合宿、今日のこんな疲労では済まなくなる。そんな生徒達に内心でエールを送りながら自分は明日からの合宿に備え準備するのであった。
翌日。疲れ切った身体を満たす食事や癒す湯舟によって体力をフル回復した面々は林間合宿へと取り組む事になった。何処か眠そうな所もあるが、これから始まる合宿を楽しみにしていたからか全員士気も高い。手始めとして身体能力把握テストにて行われたハンドボール投げを爆豪が行う事になった。入学から3か月、USJやら体育祭やら職場体験などで自分達も成長している、さぞかしとんでもない記録が出るんだろうと皆が期待する中で爆豪が叩き出したのは709.6m、ハッキリ言って期待外れに近い結果。
「確かに君達は成長したことだろう、3ヶ月間様々な事を経験して成長しているのは確かな事だろう。だがそれは主に精神面や技術面、後は体力面が少々と言った所で個性そのものは今の通りで成長の幅は狭い。今日から君達の個性を伸ばす、死ぬほどキツいが……くれぐれも死なないように―――……」
其処までにきつい事がこれから先に待っている、という事に全員が思わず喉を鳴らした。死なないように気を付けなければいけない訓練がこれから待っている……。
「それじゃあ早速始めるぞ」
と相澤が言葉を切った途端にその隣に4つの影が降り立ってきた、一糸乱れぬ動きで降り立った影に思わず全員が身構えた。現れたのは……。
「煌めく眼でロックオン!!」
「猫の手、手助けやって来る!!」
「何処からともなくやってくる……!!!」
「キュートにキャットにスティンガー!!」
『ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!!』
と先日マンダレイとピクシーボブが行ったポーズに二人を加えた本来のフルバージョン、ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツの本来の状態とも言える。一人だけ、女性たちの中に屈強な男性である虎が混ざっている事については恐らく突っ込んではいけないのだろう、多分きっと恐らく……。
「それでは詳しく説明する。筋肉は負荷をかけて壊し、超再生させる事で大きくなるように個性も同じように強くなる。故に林間合宿ではそれぞれが個性の限界を突破する事で更なる個性の強化を図る。限界を超えて鍛えるんだ。それでは皆さん、宜しくお願いします」
そして開始される事になる合宿、それぞれにメニューが組まれて行われる事になるこの合宿。それは当然翔纏も同じくである。
「獣王一応確認しておく、お前のコンボは身体に大きく負担が掛かる、特にガタキリバがトップで合ってるか」
「そうですね、固有能力を使うっていう前提だとガタキリバがワントップですね。使わずだとラトラーターです」
一応メニューの中だとガタキリバの分身を活用してそれぞれが別々の事をする事で合理的で効率的な訓練をする事も検討されていたらしいのだが、ガタキリバの負担の大きさを聞いた相澤が顔を歪めた。
「最悪の場合は人格の破綻か……」
「はい……だから爆豪の時の4人も相当に無理してました。極短時間でやる事を一つに絞ればなんとかなりますが」
「……分かった、お前は基本的に時間を分ける。そしてその時間中は指定されたコンボのみを使って土魔獣と戦い続けろ、そして体力回復の場合にのみブラカワニを許可する」
「よ、予想してましたけど相当にキッツいメニューだ……特にラトラーターとか絶対に地獄だ……」
「それじゃあピクシーボブお願いします」
「はいは~い!!それじゃあ行くわよ翔纏君っ!!」
そう言いながら背後に無数の巨大土魔獣を控えさせているピクシーボブが笑顔を向けてくるのに恐怖を感じる、色んな意味で。
「最初はあれね、アタシたちと同じ猫系の奴!」
「いっいきなりラトラーターですか!?ああもう分かりましたっそれじゃあ存分にお願いします!!」
「良しお姉さんが可愛がってあげるから!」
「それはウチの姉さんで十分です!!変身!!」
獣王 翔纏。
時間別にコンボをチェンジしながらそのまま全力戦闘!!コンボによる負担に慣れる為の特訓!!
尚、ガタキリバの分身は基本二人までにすること!!必殺技の瞬間のみ最大人数はアリ!!