「ォォォォォオオオオッ!!デアアアセイヤァァァァ!!!」
周囲を囲み続けてくる土魔獣、大地だけではなく空からも襲い来る魔獣たち。それらの攻撃を捌きながらも頭部や腹部に一撃を加え、その場を能力を発動させながら脱出していく。如何に頑強な壁だろうがシャウタコンボの液状化には意味は無く突破されてしまう。
「グオオオオッッ!!」
「寝てろぉ!!オラァァァ!!」
空から襲い来る魔獣の頭部をウナギウィップで絡めとると走り迫る魔獣へと叩き落としてダブルダウンさせる、加えて鞭からは強烈な電撃が迸っており捕縛された土魔獣諸共、電撃によって生じた熱によって崩れ去っていく。
「ハァァァッセイヤァァァァァ!!!」
鞭を伸ばしたまま下半身を液状化させ、高速で回転させていく。竜巻のような勢いで回転していきながらその速度を得た鞭は雷撃に等しい電撃を纏ったまま周囲の土魔獣へと炸裂していく。加速した鞭は剃刀のように相手を削ぐと言われるが直撃した瞬間に肉体を引き千切るかの如く奪い去りながらも電撃で焼き潰していく。恐ろしい攻撃に空から土魔獣が殺到するのだが、周囲へと向けて高圧の水が噴射されて土魔獣はその圧力に耐えきれずに崩れていく。
「うひょぉ~凄い凄い!!成長したわねぇそれじゃあこの超大型は如何かしらぁ!!?」
今までより強く地面を触ると回転を止めた翔纏の目の前に30メートル級の超大型土魔獣が出現した、それは龍を模しているのか強靭な爪を差し向けて此方を殺そうとするかのごとく迫って来るが、咄嗟に液状化しながら回避する。
「加減無しかよ!!」
お返しと言わんばかりに両手を合わせるようにして、水の放射口を狭めるようにしながら高圧の水を発射する。まるで刃のように飛来する水を魔獣は真っ向から受け止める。直撃の瞬間に僅かに表面が傷ついているが、それでも擦り傷程度で即席のウォーターカッターは効果がない―――訳でもないと翔纏はそれを待っていたと言わんばかりに笑った。
「引っかかった!!」
能力を開放しながらも液状化し、土魔獣の攻撃を回避しながらもその身体を伝いながら特大のジャンプをする。そしてウナギウィップと完全に同化した両腕を撓らせて土魔獣へと放ち最大電圧の電撃を放ちながらその身体を拘束する。あの巨体では電撃は通じにくいかもしれないがびしょ濡れの状態、土魔獣は土故に内部まで水は浸透する、それによって電撃は内部まで伝わる。
「グォオオオオ!!」
「セイヤアアアアアアアアアア!!!!」
内部を貫く電光が溢れ出る中に翔纏は
「よしっ合格よ翔纏君!!」
「―――ッハァハァハァハァハァ……」
荒々しい息を吐き続けながらも倒れこむように座りながら変身を解除する。連続したコンボでの戦闘、その最後となったシャウタコンボ。既に夕暮れも近くなってきている時間帯になって漸く最後のメニューが終了した、一旦休憩に入って他の皆のメニューの終わり待ちだと言われるが翔纏は疲れでもうそれ所ではなかった。全身に重くのしかかってくる異常なまでの疲労、時々ブラカワニで回復していたがそれでも抜けきらない疲労。
「焦凍との特訓で慣れたと思ってたけど、全然だなこりゃ……ブラカワニでも一定数の疲労は残るって思ってた方が良いな……」
これはいい教訓にもなったと思える。ブラカワニに頼り切る事は危険だという事への警鐘、益々コンボに慣れないといけないという意識が強くなると同時にこの合宿は自分にとっていい経験になる……そう思いながらもいきなりラトラーターで2時間戦闘はきつ過ぎると愚痴を零す。
「ねぇっアンタ本当に凄いね……」
「んっ……」
顔を上げてみるとそこには自分と同じように酷く草臥れた顔をしながらも無理矢理に笑みを作って笑いかけてくる女子がいた、オレンジ色のサイドテールに見覚えがあるのか翔纏は彼女を知っていた。というか別の意味で有名だから知っていた。
「拳藤さん、だよね」
「知ってるんだ、体育祭優勝者に知っててもらえると光栄だね」
「いや物間って奴のストッパーで凄いって聞いてたから」
「ああ……あいつには本当にね……」
ちょっと失礼と言いながらも翔纏の隣、木の下に腰掛け疲れを露わにしながら気の幹に寄り掛かった。
「アタシもさ、土魔獣とずっと連戦だったんだよ。流石にキッツいよね……」
「いやホント……地上戦力だけじゃなくて空、地中からも出てくるから気が抜けないんだよね……」
「ホントだよね……しかも意地悪く狙い所を圧縮した土で防御上げてたりするんだよね」
「そうそうっ腹とか頭とかね、しかもそこを使って攻撃してくる」
「そうそう!!」
と互いにメニューに対する愚痴が炸裂してしまった、どれだけメニューがきつかったかを共感出来る相手がどれほどまでに欲しかったのかが表れていた瞬間であった。絶え間ない土魔獣との攻防は精神を擦り減らしながらもやめる事が許されない、許されるのは限界寸前か失格レベルのポカをした際に立て直しの時間として与えられる休憩のみ。
「でも獣王の戦いぶりも凄かったよ、姿が変わるとあそこまでバトルスタイル変わるって結構大変じゃない?」
「まあ大変だね、でもなれる位に戦ってきたからね。後翔纏でいいよ」
「ハハッそりゃ凄いね、あのサゴーゾだっけ、あの戦いぶり私も参考にしたいなぁと思ってるんだよね」
拳藤の個性は大拳。自身の両拳を巨大化させる事が出来る個性、巨大化した拳の一撃は金属製の盾を粉砕した上で後ろに居た人間をぶっ飛ばすのも容易との事。
「手が大きくなるとバランス悪くなるでしょ、だからアタシ体幹中心に鍛えてるんだよね。下半身の筋力強化もしてるからさ、ずっしりとしながらパワーファイト出来るサゴーゾは参考に出来る部分多いと思うんだよね」
「成程……命中の瞬間に巨大化させるだけでもかなり強そうだね、相手の不意も突けるし」
「あっ超いいアイデア!!」
そんな風に語り合っていると何時の間にかほかのメンバーのメニューが終わったのか集合が掛けられた。それに応えるようにし翔纏は立ち上がって向かおうとするのだが、拳藤の方は疲労が酷いのか上手く立ち上がれないらしい。
「手を貸すよ」
「悪いね」
そう言いながら翔纏の手を借りて立ちあがった拳藤は改めて感謝をしながら一緒に向かう事にした。
「翔纏、アタシの事も一佳でいいよ。アタシが名前なのに翔纏が名字って言うのも可笑しいでしょ」
「そうかな、俺はそういうの多いけどな」