欲望の獣   作:魔女っ子アルト姫

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明かされる欲望の正体。

―――ゥゥゥゥ……!!

 

獣、唯の獣がいた。本能がままに行動し、全てを蹴散らす王の獣がいた。そこに思考は無く、唯の一度の躊躇もない。

 

―――ゥゥゥッォォオオ!!!

 

王が歩む道、恐怖によって敷き詰められたそれらを目にする度に首を垂れる。

 

―――ゥゥゥォォッッ!!

 

だが、王が真に求める事はそのような物などではない。無双の軍勢、違う、無限の富、違う―――王が望むのは……

 

違う……こんな物などいらない……

 

お前の全てだ

 

 

「ハァッ!?」

 

荒い息のまま、意識が覚醒する。最低最悪の目覚めとも言える、これ程までに気分の悪い目覚めなんて今までになかった。本当に最悪な気分だ、一体何があったのか、何も理解出来ない、唯自分は止めどない欲望の渦に居たような感覚があった。訳も分からずとんでもない悪夢を見せ付けられていたような気分だとしか言いようがない。

 

「よぉっ起きたかよ」

「っ―――」

 

自らに声を掛けられて視線が誘導された、その先に居たのは……USJへと殴り込みをかけてヴィラン連合の首魁と目されている男、その周囲に多くのヴィランが並び立っており此方を見ている。自分の様子はというと……鎖によって両手両足を拘束され、椅子に縛り付けられている。身動きが出来ない状況、幸いなのはドライバーはそのままになっている事ぐらいだろうか―――だがメダルはそこにはない。

 

「よぉっ目が覚めたな、獣王 翔纏君」

「お前……USJに居た奴だな」

「そう、死柄木弔だ。まあ好きなように呼んでくれ」

 

気軽に声を掛けてくるそれは最早友人のそれと同じだった。ヴィランの視線を一身に受けながらも翔纏は冷静に意識を保つ事を頭に置きながら記憶を探る。此奴らの目的は紛れなく自分と爆豪だった、此処に爆豪がいない事から捕まっていないのか、それとも別の場所に捕まっているのか。仮に脱出するなら戦力が欲しい、爆豪の協力は欲しいが……いなくてもそれはそれでいい。

 

「―――随分と不用心だな、俺にドライバーを与えたままか」

「ああ、お前のそれが制御アイテムって事は知ってる。それがねぇと死ぬんだろ、死なれたら困るからな」

 

自分の事を把握している、何処まで把握しているのか分からないが情報を持っている。そして目的も分かる、死なれたら困ると言う事は―――詰まる所目的は……

 

「俺にヴィランになれとでも言うつもりか」

「流石エリートだな、話が早くて助かるぜ」

 

矢張り……自分の身柄を欲しがっているならばその力を手に入れようとする筈、だが問題は仲間に引き入れて何をさせるつもりなのかという事だ。

 

「単純な話だ、お前は俺達の側にいるべき存在だからだ」

「お門違いな上に理解出来ない、俺が何故そちら側に居なければいけないんだ」

「単純な話だ、お前の個性を世界は絶対に受け入れないからだ」

 

受け入れない……拒絶されるという事を言う死柄木、確かに自分の個性は今の社会から見ても異常とも言えるかもしれないが、それでも確りと受け入れられているだろう。ドライバーさえあれば個性の制御は出来ている、眼鏡が無ければまともに物が見えないのと同じだ。

 

「その理由については説明してやる、おいDr.真木」

「ええっ今行きます」

 

今いる場所、バーの奥から影が伸びて来た。向かってきたのは全身を黒と白で統一した服装の無表情かつ無感情な長身で眼鏡を掛けた男―――だが、それ以上に異彩を放っているのが左肩に同じく無表情の人形を乗せている事だった。ドクターと呼ばれた男は此方を見る事無く、人形を見ながら言葉を掛けた。

 

「初めまして獣王 翔纏君、私は真木 終清(しゅうせい)。Dr.真木と呼ばれています、好きなように呼んでください」

「……何、俺に言ってんのこの人。だったらせめてこっち見ろ」

「そいつは誰かと話す時に人形に向けてじゃないと会話できない変人だ、諦めろ」

 

と何故か焼け爛れたように変色した全身に、皮膚移植をしたような姿のヴィランに窘められた。

 

「貴方の個性が受け入れられない理由、それは貴方の個性が世界を終末へと導く美しい物だからです」

「終末、美しい……?」

「ドクターの話は半分で聞いとけ、ドクターは如何しようもない破滅主義者だからな」

「ええっ……色物集団過ぎないお前ら」

「ヒーローに言われたくはねえな」

 

まあ其れについては否定しないでおくが……一先ず話の方向性を元に戻す事にする。自分の個性についてだ。

 

「君は自らの個性に恐怖、または強い否定的な感情を抱いた事はありませんか」

「恐怖、否定的……あっ」

 

その質問で想起されるのは保須での出来事、あの時自分はメダジャリバーの尋常ではない威力に恐怖を抱いた事があった。それだけではない、ステインとの戦いで出現させたメダガブリューにも恐怖を覚えた事があった。

 

「矢張りありましたか、それこそが貴方へと入ったメダルを紫の欲望で染め上げたのです」

「それは……!!」

 

そう言いながら真木は懐からあるものを取り出した、そこにはケースに収められている5枚の紫のメダル。それを目にした時に翔纏の胸の内で何かが疼いた、強い鼓動のような物が発せられている。

 

「私は元々、鴻上ファウンデーションにて研究職に就いていました。貴方のドライバーを開発したのも私なのです」

「えっ……マジ?」

「はい」

「……ある意味会長が原因という読みは当たってたのかぁ……」

 

何ちゅう人を雇っているんだよとツッコミを入れたい気分は山々だが、自分の命があるのはこのDr.真木が作ったドライバーのおかげ。それが無ければ今頃死んでいるかもしれない事を考えると本当に複雑な感情だと言わざるを得ない。

 

「貴方の中にあるメダル、それは私が貴方の個性を解析しその本質を再現した物―――そしてそのメダルが真に求める者を探していましたが、矢張り貴方だったという事です」

「あの時のメダル……!!」

 

保須にて唐突に飛来してきたメダル、あれはこの真木が投げた物。そしてそれは翔纏に強く惹かれていて、瞬時に同化してしまった。何故ならば、大本は翔纏の個性から生まれた存在なのだから。

 

「そしてメダルは貴方の中にある欲望と共鳴し、力を形成した」

「欲望……?」

「そう。自らの個性に殺されるかもしれないという強い恐怖、個性への否定心、猜疑心、存在の否定、無の肯定……それらに共鳴したメダルは個性の中で眠り続けていた貴方の命の記憶を読み取り―――既にこの世に存在せぬ、つまり死んでいる存在の力を具現化した。それがこの紫のメダル、恐竜メダルという訳です」

「俺の……恐怖が、欲望が……」

 

その言葉が真実なのかどうかを疑う事もする事もなく受け入れていた、本能的に分かった、事実だと。

 

「そして恐竜メダルが生むコンボ、プトティラコンボとも言うべきコンボの真の力」

 

やめろ、それ以上言うな。

 

「それこそ、この世界を終末へと導く力」

 

駄目だ、聞くな。理解してはいけない、もう駄目だ―――

 

「貴方の欲望、無欲の力を宿している。即ち―――個性を完全に破壊する個性となった」

 

―――……ああっ確かに……俺は世界に拒絶される存在だ……。




個性破壊:翔纏の中にあった個性に対する恐怖、否定、無の欲望が引き金となって生まれてプトティラコンボ、紫のメダルの真の能力。無への欲望によって生み出された物は様々な物を無となる。これは相澤の抹消のように一時的に個性を消すのではなく、個性を完全に破壊してしまうという最恐最悪の能力。

しかも、紫のメダルが体内に直接存在しており、メダガブリューをプトティラコンボでもない状態でも出せてしまっているので他の形態でも個性の破壊は可能であるとDr.真木は推測している。
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