「オール・フォー・ワン貴様ぁ……獣王少年に何を……!!!」
「君もしつこいねオールマイト、僕は何もしていないさ。言うなれば―――彼自身が招いた事さ」
「あり得ん!!獣王少年は心優しく、勇敢で、誰かの為に全力を出せる少年だ!!それがあのような事をっする筈が無い!!!」
「オウラァッ!!」
「ゥゥゥォォォ!!!」
翼を広げ火炎弾を連射するアンク、それを凄まじい速度で猛追しつつ雄たけびを上げながら迫る翔纏。身体に当たる火炎弾など完全な無視、ノーガード戦法なんて生ぬるいという程に気にも留めずに迫り、手にした大剣を振り被りながら襲いかかっている。
「しょうがない、本気で相手してやる!!怪我しても文句言うなよ翔纏ァ!!ウオオオオオオオオッッ!!!」
腕だけに個性を発動させていたアンクだが、本気の力を出す為に個性を全開で発動させる。そして迫りくる翔纏の一撃を紙一重の所で回避しながらも顔面に一撃を叩きこむ―――が、小揺るぎもせずに殴り返してくる。
「おい翔纏っお前……!!」
「オオオオッッ!!」
冷気を纏った拳が迫ってくる、それを咄嗟に爆炎を纏った蹴りで相殺する。完全に相殺している筈なのに身体が軋むような衝撃波が襲いかかってくる、
「何だこのパワー……!?思うように、力が出せない、だと……!?」
「ヴォォォォオ!!!」
「ガァッ……!!?」
一歩、深く踏み込んできた翔纏は拳をアンクの肉体へと炸裂させると手にしていた大剣で腹部を薙ぎ払った。それを諸に受けたアンクは瓦礫の残骸へと叩きつけられてしまう、そしてその身体が部分的に個性が解除されるかのように生身が見えている。ノイズが走り個性が不安定になっている。
「俺の個性が……!?」
「そうっこれが翔纏君の個性さ」
「貴様ぁっ!!!」
オールマイトの一撃を回避しながらプトティラコンボの傍へと立った。だが翔纏はオール・フォー・ワンへは全く攻撃を加えようとはせずに静止している。
「彼の個性は無の欲望、彼にとっての欲望とは個性の源。無の欲望は他者の個性へと干渉する、アンク、君は咄嗟に後ろに飛んだことでクリティカルヒットにならず済んだようだね、だからこそその程度で済んだのさ。だが―――まともに受ければ個性は消滅する」
「個性が、消滅……まさかテメェ……―――、―――。俺達が翔纏を見捨てるとでも吹き込みやがったのかぁ!!!」
ほんの僅かな情報しかない状況でアンクは真相へと辿り着いた、その頭の回転の速さにはオール・フォー・ワンも感嘆の息を漏らした。
「今の言葉だけで良くもそこまで辿り着けたものだ、驚嘆に値するよヒーローアンク。だがそれを如何すれば否定出来る?今の彼は超人社会が最も恐れる物だ、嘗て個性によって起きた超常黎明期、それにも匹敵いやそれ以上の恐慌を生み出しかねない存在を―――この世界が何故生かす保証がある?」
「個性を破壊する個性、まさかそんな力が獣王少年に……そうか、少年はご家族に捨てられるかもしれないという恐怖に駆られているのか……!!」
暴走に近い今の翔纏、だがそれはそれだけ翔纏が恐れている物の大きさにある。愛を注いでくれた家族から捨てられる、それに対する強い恐怖。世界全てから拒絶されるという未曾有の恐怖は想像も出来ない程に悍ましい。
「幾ら君達が力のある家だとしても、その力など高が知れている。国、世界という力に対抗など出来ない。世界の秩序とも言える程に膨れ上がった個性を破壊する力、それを消す為なら世界はヒーローを総動員、いや核兵器を用いてでも彼を消そうとする。なんて惨い事だろうか、だから僕が迎え入れるのさ、家族としてね」
「何が家族だ!!貴様は少年の力を利用する事だけを考えているだけだろう!!!」
「そうだよ、それの何が悪い」
改めてオールマイトとの戦闘を再開しながらオール・フォー・ワンは語る。
「彼にとって大切なのは信用に値する理由だ、僕達はその個性を壊す力を利用する代わりに盾と矛を務める。世界という枠組みから恐れられる彼が頼れるのはもう僕達しかないのさ」
「たとえ彼が世界から恐れられる存在であろうと、彼が自分を受け止めてくれる器を欲しているならば私がそれを務めてみせる!!絶対に彼を傷付けさせる物かぁ!!」
「出来ない事を軽々しく言うもんじゃないオールマイト」
「翔纏お前っ……俺達がそんな事をするって本気で思ってるのか……!?」
「ゥゥゥゥゥッッ……!!」
大剣を構えながらも一歩、また一歩と近づいてくる翔纏へとアンクは痛みに耐えながら言葉を掛け続けていく。何処までも彼の中にあるのは家族への想いだ、単純に自分が捨てられるという恐怖だけではない筈だとアンクは確信している。
「俺たち家族が、どんだけお前の事を馬鹿みてぇに愛してると思ってんだ……舐めんな、世界だろうが何だろうがンなもん跳ね除けてやるに決まってんだろうが……俺はお前の兄貴、兄貴が可愛い可愛い弟を捨てる訳ねぇだろうが大馬鹿野郎が!!!」
「―――どこにっそんな確信があるっていうんだぁぁぁぁぁ!!!!」
明白になった理性が叫ぶ恐怖、何も分からない怖い、未来が怖い、だからこそ翔纏は無を受け入れようとしてしまっている。欲望に呑まれ掛けている、だから今此処で救い上げてやらないと全てを飲み込む欲望の器と成り果ててしまう。そう思った時だった―――突然翔纏の足元が凍て付いた。
「何ッ……!?がっ―――!?」
その氷に取られた一瞬の隙を突いて、何かが途轍もない速度で翔纏へと体当たりした。そしてそのまま伸びた氷はジャンプ台のように空へと伸びた、そのまま翔纏は空へと打ち上げられて行く。
「行けっ良い所は譲ってやる―――!!」
「翔纏君っ!!!助けに来た!!!」
「獣王、林間合宿での借りを返しに来た……!!」
「翔纏馬鹿なことしてんじゃねぇ!!」
「委員長として、君を正しに来た!!」
「翔纏っ―――今度は私達がアンタを助ける……!!」
自分の身体を拘束していたのは―――雄英の友人達だった。