太陽の男   作:ヤマトかわいいよヤマト

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第9話

「カグラも食べるんだ……!」

「俺はやだ…!なんの能力かもわからんってのに食べれるか…!っておま、力強!」

 

俺がいつの間にか持っていた悪魔の実。

ヤマトがそれを掴み俺の口へと無理やり押し付けてくる。それを俺が掴んで止めるのをもうかれこれ10分くらいしていた。

 

「こんなことしてる暇じゃなかろうて……!」

「じゃあ早く食べて…!」

 

ぐぬぬ、ぐぬぬと2人で押し合いが続く。

その時、

 

「「ん?」」

 

なにかかすかに聞こえてくる音。

これは、

 

「足音か?」

「だね」

「「……」」

 

お互い無言になる俺たち。

出入口に目を向け、そして、

 

「ここか!」

「フッ…!」

「フンッ!」

 

扉が開かれた瞬間、間髪入れずに吹き飛ばす。打ち合わせはなかったがヤマトもそれに便乗してくれた。

 

「時間食いすぎた」

「…ごめん」

「全くだ。まあ、こうなったんならうだうだ言わんでやるしかねえべ」

「ああ」

 

背中合わせにたちながら目の前の大軍を見つめる。

 

「何秒でやれる?」

「20秒」

「なら俺は10秒だな」

 

そう言って俺は走り出した。後ろで、だったら僕は5秒だなんて声が聞こえた。

 

「撃てぇ!」

 

その合図とともに数十もの銃口を向けられる。

やがて飛んでくる銃弾の嵐。

 

「"富嶽(ふがく)"」

「っ!?」

 

木刀を構えながら足はとめない。

覇王色を纏った木刀を後ろからかち上げるように振り銃弾を撃ち落とし、そのまま縦に一回転、またもや後ろからかち上げつつ敵に衝撃波を放ち、次は上から振り下ろし、2度目の衝撃波。

 

「ぬわっ!」

 

横凪に払いつつ前方の敵を後ろへと吹っ飛ばしてまとまった敵に向かって突進。引き摺る木刀で地面を抉りながらそのまま敵に向かって上へと振るいまとめて吹き飛ばした。

 

「「「わあぁぁぁぁああ!!」」」

「"三十六景(さんじゅうろっけい)浪裏荒(なみうらすさび)"」

 

よし。上手くいった。

とある浮世絵師のある作品をイメージした技で荒れた波を剣技で再現した一連の型。放つ度に威力を上げていくこの型は本来なら1人に対して使うものだが覇王色を使えばその広範囲に攻撃が届くようになるわけだ。

ぶっつけ本番でやって見たが意外と出来て良かった。

 

「ヤマト」

「こっちも終わったよ。どうする?」

「出口に近い方に行こう」

「そうだな……なら、こっち」

 

そう言って俺たちはまたもや走り出す。

 

「それにしてもカグラって武器使えたんだ」

「お?舐めんな?大体の武器は使えるようにはしてるぞ?」

「流石カグラ」

 

そんな他愛もない会話をしつつ前へと進んでいく。が、

 

「あ」

「……チッ」

 

ヤマトが何かに気づき俺が舌打ちを打つ。

目の前に現れた3つの巨大な影。

 

「もうどこにも行かせねぇぞ」

「ガキと油断していた……」

「……フン」

「クイーン、キング、ジャック……」

 

3人の声にヤマトが反応した。

ついに大看板のお出ましだ。

 

「カイドウさんをぶっ飛ばしたのは驚いたぜ」

「だが、まだ覇気は不完全だ」

「……油断はしねぇ」

 

やだなぁ。こんなん勝てるわけないじゃないですかぁ。

 

「ヤマト」

「どうする、カグラ」

「当然逃げの一手でしょ……!」

 

そう言いつつ構え、臨戦態勢を取った。

 

「後ろからも来てるよ。逃げ場が…」

「正面突破に決まっとるでしょ」

 

そう言って俺は駆け出した。そうすると形が変わっていく目の前の3人。

相手は能力者。しかも全員動物系の古代種だ。

まずダメージなんて通すことは難しい。

ならやるべきはひとつ。

 

変身を終え、各々が技を放ってきた。

 

「"(テン)自尊(プラウ)(ドン)"!!!」

「"ブラック光火(コーヒー)"!!!」

 

キングの衝撃波、クイーンの光線がこちらへと向かってきた。

 

「フゥ……"武装・雪蹴(せっしゅう)"」

 

飛んで来る光線、衝撃波に足を添える。

光線は掠めるように足に当て、軌道を導くように。衝撃波は真正面から巻きとるように足を添えそのまま軌道を変える。

 

「「!」」

 

そのまま引くことも無く攻めていく。狙いは足。図体がでかいこの2人の下をくぐりぬけ膝裏に蹴りを見舞った。

 

「おわっ!」

「クッ!」

 

膝が崩れ落ちるところで何とか踏みとどまる2人。

 

「ヤマト!」

 

ヤマトに声をかける。どうやらヤマトはジャックと力での押し合いをしていた。

 

「ぬぐぐぐぐぅぅう!」

「……!」

 

両者のパワーは拮抗している。いや、嘘だ。若干ジャックが勝っている。

でも、

 

「今だ!」

 

そう合図するとヤマトは即座にジャックを押すのに使っていた金棒を引っ込め、膝抜きをした。

 

「っ」

 

途端にバランスが崩れるジャック。その隙に股の下をくぐってヤマトは俺のとこまで走ってきた。

 

「よし、逃げよう!」

「おう……っ!」

 

と、走り出そうとした瞬間に足に痛みが走る。

さすがに大看板2人の攻撃は無傷じゃ捌けなかったらしい。

 

「カグラ!?」

「ヨユーよ。行くぞ」

 

とは言うが多分骨にヒビが入ってるかもしれない。

変な汗が出てくるようになっていた。

 

「……大丈夫、任せてくれ」

「あ?」

 

そういうと俺のことを無理やり持ち上げるヤマト。そのまま背中のほうへ回し、

 

「……おい」

 

俺はおんぶされた。

 

「よし行くぞ!」

「待て待て待て」

 

そんな俺の声虚しく走り出すヤマト。

……まあ、いいか。楽できるし。

そんな結論を出し俺は後ろを見やる。

例に漏れず大看板の3人が体勢を立て直しこちらへ向かってきていた。

 

「このままだと追いつかれそうだな」

 

そんな言葉がつい出てきてしまった。

まあ、俺一人をおんぶして走ったらそりゃヤマトでも足は遅くなりますわ。

 

「くぅ……!」

「…やっぱり降りるか?」

「大丈夫…!」

 

そんなことを言いつつも距離はだんだんと縮まってきてるわけで。

ちらっと後ろを見る。

 

……やべぇ…すげぇ顔。こっわ…。

視線で人殺せるレベルの形相浮かべてて寒気が走った。

 

そんなことを思っているとヤマトに変化が見られてきた。

極端に前傾姿勢になったかと思うと、そのまま手を床について走り始めたのだ。

 

「「え?」」

 

2人の声が重なった。

背中に触れてみると何やらふわふわとした毛が。

これは、

 

「悪魔の実か」

「え?……えーーー!?」

「叫んでないでこのまま走れ!追いつかれっぞ!」

「あ、う、うん」

 

四足歩行になってからは速かった。

ぐんぐん後ろとの差を開きつつ、前から来る敵の間をスルスル抜けていく。

すっごいな。なんかもう気分はも〇〇け姫のサンやで。

 

そんなことを考えつつ俺とヤマト……いや、ヤマトは廊下を爆走して行った。


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