太陽の男   作:ヤマトかわいいよヤマト

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第10話

「走れ走れ」

「うおぉぉぉおお!!」

 

ヤマトが走りそれに乗る俺が木刀を振って追っ手を吹っ飛ばす。そんなことを続けてはや数十分。

かなり多くの追っ手を相手にしていたのか次第に数は減ってきていた。

 

「この調子でどんどん行くぞ」

「ああ!……ところで」

「あ?どした?」

 

走りつつ俺に話しかけてくるヤマト。

俺も俺で話半分で敵を吹っ飛ばしていた。

 

「悪魔の実はどうしたの?」

「ああ、一応持ってきてはいる。食うかどうかは何の実か調べてから考える」

「ふぅ〜ん」

 

なんて会話をしつつ懐から取り出す悪魔の実。

見た目的になにか見た事あるような、でもなにか釈然としないような、そんな感覚が生まれる。

ひとまず考えてもしょうがない。切り替えていこう。

そんなことを思いつつ懐へしまった。

 

「……カグラはさ」

 

唐突にヤマトから話しかけられた。

 

「ん?」

「海に……出るの?」

「……」

 

……まあ、でもそうなるか。ここから逃げてワノ国に戻ったとしても追われる日々はもう確定事項だしな。

 

「そう…なるかな」

「そっか」

 

ヤマトはどうするのだろうか。今ならこいつの手錠を外すことくらいならできるが。

 

「お前はどうする」

「……残…ろうかな?」

「マジィ?」

 

マジでぇ?

 

「どうせここから逃げるならどっちかが囮にならなきゃだと思うんだよね。それなら僕がする」

「おいおい」

「それに今の僕は弱いから……ここで強くなるよ」

「……」

 

覚悟はわかった。それが自分で決めた道なら俺もうだうだ言わんよ。

 

「だから、まあ……いつか迎えに来てくれ」

「あいよ」

「たまには手紙もくれよ?」

「あいよ」

 

なんだかいきなりしんみりとしちゃったな。

そう思って俺はヤマトの頭を軽く小突いた。

 

「あいた。なにすんだい」

「……強くなれよ」

「っ……うん」

 

◆◆◆

 

「見つけたぞ!」

「「っ!?」」

 

疲れていたのかのそのそとヤマトが歩いていたら見つかってしまったようだ。

 

「行くよ!」

「……」

 

ヤマトの言葉に俺は何も返さない。

それでもやまとはぐんぐん先へと逃げていった。

 

「お待ちください!ヤマト坊ちゃん!」

 

ドタドタと足音を立てヤマトを追う追っ手たち。

そして、その場に誰もいなくなった頃、俺は物陰から出た。

 

「フゥ…上手くいったか」

 

 

 

 

 

『これでよし』

『大丈夫そう?落ちない?』

『大丈夫だろ』

 

ヤマトの背中に瓦礫の塊を置きそれを縄で固定、その上から布をかぶせて隠すようにする。

 

『これで追っ手の前にわざと出ていって』

『思いっきり逃げる』

 

荷物を俺に見立てて、敵の注意を引きその間に俺はそろそろとここを出るわけだ。

ヤマトに負担をかけてマジでごめん。なるべく早く迎えに来るからね。

 

『……頑張るよ』

『……おう』

 

そう言って俺たちは拳を合わせた。

 

 

 

 

 

「さて、ヤマトの働きを無駄にしないようにせんと」

 

そう言いながらヤマトに書いてもらったこの家の見取り図を見ながら歩き出す。

 

「……こっちか」

 

そしておれの足音しか響かない廊下をひたすら走った。

 

◆◆◆

 

「フゥ、出れたか」

 

あれから数分も掛からずに屋敷から出てこれた。

追っ手がどれだけ邪魔していたのかを痛感しました。

 

「にしても足が痛すぎ。こりゃ泳いで帰るのは無理そうだな」

 

となれば、近くに停めてある船を一隻ご頂戴するしかないな。

そんなこんなで早速物色。

 

「なぁヤマト……っていねえんだった」

 

……慣れないなほんと。何気この5年間誰よりも一緒にいたからな。

別に寂しくはないし?うん。

 

「……さっさと選ぼ」

 

そんなことを呟きつつ船の具合を見ていく。

大きすぎず小さすぎず、一人旅に最適な大きさの船を選ぼう。

そんなことで数十秒ほどで選んだわけだが。

 

「うーん、海賊旗が邪魔」

 

掲げられる旗に目を向けつつそんなことを言う。

まあ、あれは後で取ろう。

早速乗り込んでさっさとここからおさらばだ。……ヤマト迎えに来て捕まって逃げるためにヤマト置き去りって今思うと俺くそじゃん。

はぁ……やべぇ、心が痛い。

 

そんなことを思って出発しようとした時。

 

「よォ……どこに行く気だ小僧ォ…」

 

マジか。

俺は恐る恐る後ろを振り返った。

そこにたっていたのはまさに鬼。そんな気配を身にまとった、カイドウだった。

 

「生きて出られると思ってねェよなって聞いた気がするんだが?」

「忘れたわ、そんなこと」

「……まあいいんだンなこたぁ。テメェ、悪魔の実は持ってるだろ」

「……」

 

あ、バレた。まあ、そらバレるわな。

どうすっかな。取り返しに来たってことだよね。それほど大事、と言うよりも強力な悪魔の実ってことか?

 

「まさか食ったわけじゃあるめェな?」

「……まさか、ちゃんとあるよ」

 

そう言って懐から取り出し、カイドウに見せる。

 

「……おめェはそれを手にしてどうする気だ」

「どうもこうも何の実かも知らねぇから調べようと思ってるだけだ」

 

そう言うと、カイドウはいきなり笑いだした。

 

「ウォロロロロ!!!その実の価値も知らねェ癖に持っていこうと来てたのか!こいつは笑えるぜ」

「……聞くがじゃあこれは何の実なんだよ」

 

笑い声だけで大気を震わせるこの男に若干ビビりながらもそんなふうに強気に聞く。

 

「そいつはどんな本にも載ってねェ、いわば都市伝説みてェな実だ。力は強大、だが、能力者自身も自滅するほどの力がその実には秘められている。おめェなんかが手を出していい代物じゃねぇんだぜ?」

「……動物系(ゾオン)か?」

「あ?何言ってやがる。そいつは自然系(ロギア)だ。自然系悪魔の実……"サンサンの実"だ」

 

サンサンの実。聞いたことも無い。

ただ、実の名前、聞いた話から察するに、

 

「『太陽』か」

「あぁ、そうだ。長年、遠征にて求め続けていた実だ。早く……寄越しやがれッ!!」

 

カイドウは十二分にブチギレている。この怒号が何よりの証拠。

だが、この悪魔の実が余程大事なのか手を出しては来ない。万に一つも潰したくないんだろう。

 

「OKわかったよ。返したら俺は生きて出られる?」

「あ?あぁ、そうだな…おめェこの国を出たいって言ってたみてェだからな縄で縛って島流しにしてやるぜ」

 

どこで聞いたよこの野郎。

まあいいやとりあえず俺の答えは決まった。

 

「カイドウ」

「あ?」

「俺ってお前のこと……嫌いなんだよね」

 

その言葉を皮切りに俺は手にしていた悪魔の実、サンサンの実に、

 

「っ!……テメェ!」

 

かじりついた。


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