太陽の男 作:ヤマトかわいいよヤマト
「テメェ…!」
「へ…へへへ…!」
睨みつけてくるカイドウに不敵な笑みを返すが今俺は猛烈にサンサンの実を食べたことを後悔していた。
まず第1にクソ熱い。
自身の体から漏れ出てくるように溢れてくる赤いオーラのようなもの。炎が立ち昇るというよりもドライアイスの白い冷気のような感じで辺りに広がっていくようなそんな熱を放ち続けていた。
「っ……ふぅ」
体がピリピリと熱に焦がされるように痛む。
自分の能力のくせにして火力が高すぎて自分の体すら焼く。これがカイドウの言っていた"能力者自身も自滅するほどの力"ってやつなのかね。
それにこの感じ、多分ヤミヤミの実みたいな感じかもしれない。
自然系悪魔の実のくせして実体がちゃんとある。確かに太陽は天体で形は存在するからな。そうであっても不思議じゃない。
その代わりの圧倒的火力というわけか。
「……ウォロロロ…苦しそうじゃねェか」
「はぁ…はぁ……、余裕だよ」
そうは言うが漏れ出る熱気を抑えることが出来ない。それどころかその熱量は増していく。
今俺ははたから見たらどんな感じなんだろうな。赤いオーラ身にまとったかっこいい厨二病みたいな感じかな。なんてアホなことを考えてなきゃやってられん。
「そうかよ……!まあいい食ったんなら殺すだけだ」
そう言って目の前のカイドウは形を変え始めた。
本気ってわけね。
そうして形を変えたカイドウ。目の前には巨大な龍が佇んでいた。
「ウォロロロ!!!おめェみてェな小僧に本気を出さなきゃいけねェってのは癪に障るが……こっからは本気でやってやるよ…!」
まずいな。能力を手にしたとしても練度が低すぎる。制御もできやしない。このまま戦ってもまず勝てない。
「そうかよ。なら俺もやってやんよ」
そう言って俺は思いっきり能力を発動した。
「っ!」
抑えられないなら解放だ。体が焼ける痛みは酷くなるがそれでもジリ貧で戦っても突破口はない。なら一か八かで今できる全力を出すしかない。
「くっ…!」
あっついなぁほんと。
ただこのままだと辺り一体の被害は凄まじくなる。中にはヤマトだっている。
抑制が無理なら、この熱を操る。ゾーンに入ってる今なら出来るかもしれん。
熱を操作。手足のような感覚がある。ちゃんと動かせてるのが分かる。
形を作ってまとめて凝縮させて、
「……フゥ…"
そうして俺は白い巨大な虎を身に纏った。
「……ますます部下に欲しくなる才能持ちやがるな」
太陽というのは水素の塊だ。
水素同士をぶつけることで核融合を起こしそれによって生まれたエネルギーが光や熱となるわけだ。
その副産物として起きる水素原子が原子核と電子に分かれることによって生まれるプラズマ。それがコロナだ。
そのコロナを作り出し形を作りまとめて生み出した白い虎。
この現象を理解してないと出来なかったな。前世の知識様々だ。
ただ、本物の太陽レベルの熱量はない。当たり前だね。そんなんなってたらこの世界終わる。てか俺の体も死ぬ。
「最終決戦てやつだな、カイドウ」
「……ああ、そうだな。おめェみてェな小僧が俺と同じ土俵に立ててるってことは認めてやるよ」
そう言ってカイドウの口から巨大な熱を感じとった。
慌てて俺も口の中でコロナを圧縮。
「"コロナ"……」
その言葉と共に口の中から眩いほどの光が漏れる。
「"
「"
超高音のブレスとビームがぶつかりあい大爆発が起きた。
威力はだいたい同格。俺の練度が上がれば押せるって感じか。能力は強いが活かしきれてない。
制御は出来ないが自分の限界ギリギリの火力までで無意識にセーブできてるのかもしれないな。
爆発による煙が晴れ、見えてくるカイドウの姿。ただ、そのカイドウはとぐろを巻き回転しながら天に向かって吠えた。
「"
そう言うと同時に竜巻とそれに纏うようにしてかまいたちが複数出現。
リアルで見るとまさに天災だな。
そんなことを思いつつ俺は駆け出した。
台風を避けつつ、かまいたちは触れた瞬間にコロナの熱によって消滅。
そのまま上空に飛び上がり、
「"
回転しながらカイドウへ体当たりする。
「グッ……、グオォォォオッ…!」
その衝撃で辺り一面に熱が広がる。
そのままカイドウの体を押さえつけながら噛み付いた。
「ぬグゥ…!」
「はぁ…はぁ…」
く、熱に体力が持ってかれるな。体も火傷で痛い。全身重症レベルじゃないにしてもじわじわと焼かれるのはなかなかに思考を常に持ってかれる。
そんなことを思っているとカイドウの身動ぎで拘束を外された。
落下する俺とは相反してカイドウは上空へ、
「"熱息"!!!」
そうして超高温のブレスが迫ってくる。
だが、
「"
その合図とともにカイドウの周りに散りばめられた熱がバチバチと火花を上げ大爆発が引き起こされた。
カイドウに攻撃は当たったが俺もブレスに直撃。
熱いは熱いが俺自身それ以上の熱に身を焼かれてることもあってそこまでのダメージはなかった。
そんなことを思ってるうちに俺は背中から地面に激突。
痛みはなかった。上を見てみると苦しむカイドウの周りに煙が出来ていた。
しめた、今のうちにここを離れよう。
何となくでわかるがこのあと数分で俺の能力は強制的に消える。というのも無理に出力上げてたこともあって限界が近い。
そうなったらもう勝算もなにもあったもんじゃない。
幸い虎の手足から爆発させることで空を翔けることは可能だ。何とかこれで撒きたいもんだな。
そんなことを思いながら俺は海の方へ飛び出した。
◆◆◆
「ケッホ、ケッホ……はぁ、くそ」
何とかあそこから離脱した俺は木によりかかりながら森の中を歩いていた。やはりというか予想通りという鬼ヶ島がある海を越えたあたりで俺の体は元に戻れた。ただ、
「痛てぇ…」
そう言いつつ手を抑える。
俺は両手にかなりの火傷を負っていた。
まさに自滅する力。扱いきれてない能力であそこまでカイドウと戦えたのはさすがという他ないが、その代償がこれとはな。
かなり体力消耗したしゾーンも切れかけだ。覇王色の覇気も使えてあと1回か。
そんな分析しつつ足を進めると開けた場所にでてきた。
どうやらここは崖。この国の一番端に来たらしい。
下を覗いてみると、
「うわぁ…」
海が荒れ狂っている。
さて、どう下に行こうか。能力者にもなったし泳ぐのももう不可能だ。
そんなことを思っていると、
「アッパレだぜ小僧。いや、カグラ」
「……まだ来んのかよ」
後ろに立っていた、カイドウが。
後ろを振り返りつつ睨みつける。
その姿は人でもなく龍でもなく、2つを融合した、
「人獣型…」
「ああ、おめェを確実に殺すために使ってやるよ」
「俺はここを出る」
「させねェよ」
とは言うが俺ももう足は限界。戦う気力も残ってない。
そうやって立っているとカイドウはおもむろに手にしていた金棒を回しながら空へと飛び上がった。
まじかよ、あれが来んのか。
「"
俺は腰を落とし、そして最後の覇気を使った。
「フゥ……"震脚"」
踏み込みと同時に没落する地面。もう、やるしかない。
「"
そうして振り下ろされる金棒。
狙われた顔をずらし武装色をまとった手と肩で何とか受け止める。
「ぬぐッ……!」
それでさらに没落する地面。
なおも押し込め続けるカイドウ。
もう少しだ。もう少し耐えろ。
そして地面が割れた。
「っ!」
「へっ」
割れたところに立っていた俺は当然下へと落ちることになる。
目を見開いたカイドウの顔を最後に浮遊感を感じながら俺は意識を落とした。