太陽の男   作:ヤマトかわいいよヤマト

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第15話

ある日の事だった。

その場所は賑やかだった。世界中のありとあらゆる場所から集まった海兵たち。海軍本部マリンフォード、食堂。

昼時ということもあり下っ端海兵を始め、中将達数名も利用していてかなりの人数がひしめき合っていた。

そんな中にスモーカーやヒナの姿も見える。

 

そうして海兵達が互いに親睦を深め合う空間。

次の瞬間、食堂の壁が盛り上がり、ヒビが入り、そして、弾け飛んだ。

 

「「「「っ!?」」」」

「て、敵襲か!?」

「構えろ!」

 

そこは歴戦の戦士。

予想外の展開に即座に指示を出す中将。

しかし、砂埃が晴れたその先にいたのは、

 

「あ、あのジジイ………やってくれんじゃねーか」

 

頭を抑えるカグラがそこにはいた。

 

◆◆◆

 

今日はなんか大事な報告会議ってことで本部の方にやってきてるわけなんだが、暇だ。

そんなことを思いつつ建物内の廊下を散歩がてらに歩いていた時だった。

 

「おぉ!カグラ、来とったか!」

 

せんべい片手にガハハと登場した1人の巨漢。

 

「ガープ…」

「久しぶりじゃの!どうだ、調子の方は」

 

ガープ。俺が海軍入りたての頃に興味を持たれて半ば無理やり特訓という名のしごきをさせられた仲だ。

 

「……ボチボチ」

「……悪くなければ良し!どうじゃ?久方ぶりに特訓でもしてくか?」

「ずぇっ…………たいに嫌だ」

「なんじゃ、連れんなぁ…」

 

そんな会話をしながら2人並んで廊下を歩く。

片や巨漢の老人、片や小柄な子供となかなかに凄まじい構図になってるなという思いは胸にしまっておく。

 

「てか何かあったのか?」

「?どうした急に?」

「いや、みんな慌ただしそうだなって。今日の報告会議?も急遽らしいじゃん?」

「あぁ、あれじゃ。マリージョアにフィッシャータイガーが乗り込んだんじゃよ」

 

ああ、あれか。

確かに原作15年前くらいの出来事だったし……そうか。

 

「天竜人、ざまぁ」

「なんじゃカグラ、お前天竜人は嫌いか?」

「でぇ〜〜っ嫌いだね」

「そうか、ワシもだ」

 

知ってる。

まあでももうそんな時期なんだな。

物語が徐々に動いていってるのはなんだか少し感動する。

 

「さて……」

 

そんなことを言いつつガープが食べ終わったせんべいの空き袋をポケットにしまい拳を鳴らした。

 

「行くぞ、カグラァ!」

「……は?」

 

そんな叫びとともに眼前に迫る大きな拳。

呆けた顔をしつつも反射で体は動いていた。

腕を間に滑り込ませつつ拳の軌道をずらす。耳に風切り音が聞こえてきた。

 

「……今の直撃したら危なかったでしょ」

「そうじゃな。だから……降りかかる火の粉は払わんとなぁ…」

「脳筋ジジイがよ…!」

 

笑うガープに思わず苦い顔になる。

掠っただけ痺れる腕。

背中に嫌な汗を感じた。

 

◆◆◆

 

「あ、あのジジイ……やってくれるじゃねーか」

 

思わず溢れる言葉。頭をおさえ立ち上がる。

目の前のぶっ壊れた壁そこに浮かぶ大きなひとつの影。

 

「なんじゃ、ピンピンしとるのぉ」

「舐めんな」

 

砂埃を払いながらやがて出てきたガープを睨みながら構える。

 

「が、ガープ中将……」

「……中将と戦ってるあのちびは誰だ?」

「あれだろ、モモンガさんが連れてきた新人」

「あぁ、あのガキか」

「なんでそんな子供がガープさんと?」

 

聞こえてるわボケェ。ガキガキ子供子供うるさいねん。そんなん俺が聞きたいわ。

 

「何やってんだあのガキは」

「………私は何も見てない。ヒナ無視」

 

助けにくらい来いよ、同期共。

 

「よそを気にしとる場合か」

「っ!」

 

そんな言葉に反射的に体を動かしその場から離脱する。

陥没する地面。その中心に拳をめり込ませたガープがいた。

 

「ほれほれ、どんどん行くぞ!」

 

そんな叫びとともに向かってくるガープ。

一度二度と振られる拳は1発でも直撃すれば瀕死に持ってかれる威力があった。

 

それを紙一重で避けつつ、たまに腕を添わせて軌道をずらし、見聞色の覇気を使いつつ捌いていった。

 

「お、おぉ……すげぇなあの新人」

「ああ、よくやる」

 

お褒めの言葉ありがとう。

でもごめんね。そっちに目も向けれないし声もかけられない。そんなんしてたら死んじゃう。

と、その時だった。

 

足で何かを踏む感覚。次の瞬間、そこが一気に滑り体勢を崩した。

 

「「「「「「あ」」」」」」

 

自分の声と周りの声が重なった。

感触的にはバナナの皮。食堂だもんね。そんなこともある。

 

なんて言ってる場合でもない。体勢崩しててさらに目の前には隕石のごとく迫る拳。

不味い。

 

「歯を食いしばれぃ!カグラ!」

 

そんな声が耳に入り、ガープの拳が顔面に突き刺さった。

が、次の瞬間。拳は顔を逸れ、俺の掌打がガープの顎に入っていた。

 

「ヌグッ!?」

「……ぅし」

 

呆けるガープの懐に潜り込みそのまま掌底の一撃を腹へとぶち込む。

 

「グッ…!」

 

踏ん張るガープを他所に、そのままバックステップで距離をとる。

"流した"のに顔が痛い。さすが拳骨さんだな。

 

「ぬぅ……相変わらず手痛いカウンターだのう…」

 

顎をさすりながらそういう。

嘘こけ、全然聞いてないくせに。

 

「な、なんだ?新人は何をしたんだ?」

「わ、わからん」

「……ガープ中将の拳の威力を流しながらそのまま自身の掌底に乗せて一撃を返したという感じか。上手いな」

「え?い、いきなりどうしたお前?」

 

格闘技ファンの海兵がいるのか。よくわかったな。

 

「よし、ちと本気を出していくとするか」

「……やめて?」

 

羽織っていた"正義"と書かれた羽織と、更には上着も1枚脱ぎ青いTシャツ姿となる。

オイオイ、死んだわ俺。

 

「行くぞ━━っ!?」

「シッ!」

 

踏み込もうとするガープに逆に踏み込んでいき、裏拳を顎へと走らせる。

攻めてこられるのに黙ってウケに待ってるのはバカ。歩き出しは隙が多い。そこを攻めていくが、

 

「……と、危ないのぉ」

 

体勢を後ろへと倒し余裕で避けられた。体幹と反応速度が良すぎだろ。

となれば、

 

「ぬっ!」

 

そのまま脇下の袖をつかみ腕をくぐりガープの体へと密着。

もう片手で手首をつかみそのままの勢いでその巨体を投げた。

 

「ほう、やりおるわい」

「フッ!」

 

落ちてくる首元に向かって足刀を走らせるがすぐさま手を着きそこを軸に回転しながら回避。体勢を建て直しそのまま息もつかずに突進してきた。

 

このジジイ、体格とパワーのゴリ押しできやがった。

タックルされたらもう終わる。この馬鹿力から逃げる術が今のとこない。

となれば、

 

「っ!?」

 

驚くガープの顔。

そんなガープに背中を向けそのまま回し後ろ蹴りの勢いで踵をガープの顎に目掛けて下から上へ走らせる。

 

かなり大きな音が鳴り響きガープの体が仰け反る形で吹っ飛んだ。が、顎じゃない。そこに腕を差し込んでダメージを抑えていた。

でもそれでいい。そのがら空きになった腹に向かって右肘を前に突き出しそのまま体当たりでガープを吹っ飛ばした。

 

「「「「「おぉぉぉぉ!」」」」」

 

周りからの歓声が気持ちいい。ありがとう。

 

「な、なんかよくわからんけどすげぇ!」

「あの巨体をあの小さな体でよく…」

「全体重を乗せた踵のカチ上げで体勢を崩し、ガラ空きになった胴へ右外門頂肘で人体急所の肝臓を的確に撃ち抜いていた。ガープ中将のような全身筋肉の塊のような人じゃなければまず立てないだろうな」

「よ、よく分からねーが解説ありがとう」

 

そんな会話を耳にしながら息を吐く。

さすがに疲れた。体力というよりあのガープとの戦闘という気疲れみたいな感じだ。

 

そんなことを思いつつガープの飛んで言った先を見る。

そして、

 

「ぬあぁぁぁぁあ!!!」

「っ!」

 

びっくりした。

叫びながら出てきたガープ。

 

「いやー、久々にいいの貰ったわい」

 

そう言ってガハハと笑った。

口の端から血がチョロっと垂れてるだけ。他に目立った怪我はない。

化け物かな?化け物だわ。

 

「それじゃ、体もだいぶ温まったことだしこっからが本番じゃな」

 

バカタレが。

こっちは全力で"入れ"に行ってはいないけど本気で"入れ"てたわ。

それでもピンピンしてるとか自信なくすぞ。

でも、

 

拳を鳴らすガープを見て嫌な汗を背中に感じながら笑うしか無かった。

 

「おうよ。やろうじゃん」

「その意気じゃ!」

 

そうしてお互いが拳を引き、距離が縮まり、周りが生唾を飲む音が聞こえてきた次の瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガァァァァァァァァァァプッッッ!!!カグラァァァァァァァァッッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

「「!?」」

 

あ、この声は。

そう思いつつ俺たちが壊して入ってきた壁の穴に目を向けた。

そこには、

 

「これはどういうことだッ!貴様らッ!」

 

センゴクのおっちゃんがいた。

……やべー、おっかねー。鬼だぜ鬼。仏はどこぞ?

 

「食堂で乱闘しおってッ!どういうつもりだッ!」

 

おっちゃんの言葉に俺とガープは同時に互いを指さして、

 

「「コイツが悪い」」

「〜〜〜っ!バッカもんがぁぁぁあ!!!

 

そこから始まるおっちゃんの説教。

俺たちはそっぽを向きながら地面に散らばった食いもんを口に運ばせながら右から左に聞いていた。

 

それにしても長い。

こうなったら、

 

「おいジジイ」

「なんじゃ?」

 

センゴクに聞こえないように小声でガープに話しかける。

 

「俺が隙を作る。そしたら、一気に逃げるぞ」

「分かった」

 

そんな打ち合わせをし、咳払いをひとつ。

 

「おっちゃん!」

「……なんだ?」

「スモーカーがここでやってもいいって言ってました!」

 

その言葉におっちゃん含めた食堂内の視線が一気にスモーカーへと向いた。

 

「・・・は?…………はぁ!!??」

 

よし今だ。

 

「ガープ!」

「よし来た!」

「な!?待たんか貴様ら!」

 

そうして俺とガープは壁を破壊しながらその場を後にした。


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