太陽の男 作:ヤマトかわいいよヤマト
「カイドウ、ぶん殴りてえ」
たまらず溢れる言葉。ルーティンワークと化したトレーニングを終わらせ木に寄りかかりながら復興する町の様子を見ていた時に出た言葉だった。
「おや?おやおや?君の口からそんな物騒な言葉が出るなんてね。珍しい」
あと何故か当たり前のようにいるヤマト。
「いや、腹立つし。まあ、勝てんでしょうけども。あとなんでここにいる」
くそ、特訓場所を変えたってのになぜバレた。
また変えなければ。
「君のことで僕が知らないことなんてあるはずないだろ?」
怖いね最近の女は。ストーカーがデフォかよ。
世も末。
なら場所変えても意味は無いと。ふむ、詰みやね。
「つか、お前久々に見たな。頬も赤いし、どしたよ」
うんまあ何となく理由はわかるけどね。転生者だからね。うん。
ただちゃんと聞いておきましょうね。
「え?あ、あはは…ちょっとね…」
「カイドウか」
「え…あー、えー…あ、あはは」
そんな感じで苦笑するヤマト。その反応だけでわかるぞ。わかり易すぎやしないかヤマトよ。
なんだろうか。カイドウに対して怒りが湧きます。
別にヤマトのためとかじゃないし?ただムカつくだけだようん。…ホントダヨ。
「…今はまだ。最低でもあと1年は必要だな」
「え?」
「なんでも?こっちの話」
それを聞いたヤマトは不思議そうに俺を見ていた。
それからというものヤマトが次第に俺の横で俺のトレーニングを見様見真似でやるようになった。
しまいには腕立てとか俺より早く終わらせて、『次は何するんだい?』なんて聞いてくる始末。おいおい、落ち着け。
そんなこんなで俺が10歳、ヤマトが13歳の時である。
パタリとあいつが姿を見せなくなった。
◆◆◆
「……見張りは…無しと」
そんなセリフを物陰から吐きつつそろりそろりと進んでいく。
今俺が来ているのは鬼ヶ島という場所。カイドウの本拠地みたいなとこだ。
ここまでちょいと海があったけど泳いだ。そう、泳いだの。しかも潜水。船で行くとバレそうだからね。…まじで体力お化けになっちったな。
なぜここに来たか。それはヤマトだ。
あいつを見なくなってもう半年も経つ。心配とかじゃないよ?ただ元気かなーって見に来ただけだよ。ホントダヨ。
「……にしてもうるさいな」
どうやら離れの部屋で宴会でもやってるみたいだ。うるさい声が耳に入ってくる。
しかし、そうなればチャンスだ。みなが宴会に夢中の間にヤマトを探す。いや、まああいつも参加してたらオワオワリなんだけどね。
「ヤマトー、いるかー」
大声ではなく、だがちゃんと聞こえるような声で呼びかける。しかし、返事はない。
「ふむ」
となるとどこだろう。あの
ならそれらしきところを虱潰しで探そう。
「……待っとけぇ」
その場で『剃』を使い移動した。
「あれっぽいな」
時間にして約30分。それらしきところを見つけた。
そこは部屋じゃない。大きな岩だった。
大きな岩の前に少し小さな岩を置かれ縄を巻かれている。何かを封印するように鎮座するそれは異様な雰囲気だった。
俺はそれに早速近づいた。
岩の前まで来てコンコンとノック。ちゃんと挨拶はしなきゃね。
「雪だるま作ろー、ドアを開けてー」
そういうと中からガタッと音が聞こえてきた。
『か、カグラ!?な、なんでここに…』
「なんとなくだ」
驚く声を上げるヤマト。その声は若干鼻声のように聞こえた。
「何してたんだ?ほら早く出てきて雪だるま作りに行くぞ」
『か、帰って…』
「……カイドウか?」
たまらずそう声をかけてしまう。こんなヤマトの弱々しい声なんて聞いていられない。
俺の言葉に中から唾を飲む音が聞こえてきた……ような気がする。
「カイドウなんだな」
『……』
「オッケ分かった。お前今出口塞いでる岩の前いるだろ。そうだな……7歩下がって」
『……』
返事はないがなんとなく後ろの方に後ずさりしたような気配は感じれた。これも見聞色?特訓の成果だね。
とりあえず俺は右手を引き絞り、左手を前に狙いは岩のど真ん中。左手を軽く当て、狙いはずらさない。
右手の握りこぶしに力を込め、鎧を着せるイメージを持つ。すると右手が黒く変色しだした。
よし行けた。最近の武装色の成功率95超えたな。
そんなことを思いつつ体をひねり左手を引き右手を前へ。
ド派手な音と共に右手は岩の中へとめり込んだ。そこから連鎖して拡がるヒビ。拡がりきったところで岩は弾け飛んだ。
「よお」
「あ、え…」
「酷い顔してんな。ほら行くぞ」
そう言いながら手を差し出す。恐る恐る手を伸ばしてきたヤマトは途中で手を止めてしまった。が、強引に掴みあげ引っ張りあげる。
「おわっ!」
「うし、逃げんぞー」
そうしてヤマトの手を引きながら俺たちは走り出した。
「んで?何があったのかをどうぞ」
「……」
疑問を投げかけるが返ってくるのは無返答。いや、言おうかどうかを悩んでるって感じだろうか。
「……君に会うなって」
「ほう」
「僕はそれを拒否したんだ。"嫌だ"って。そしたら殴られてあそこに入れられた」
「だから泣いてたん?」
「……違う」
ん?この期に及んで泣いてないと申すか?それはさすがに無理があろうと思われます。
「殴られたりされるのはもう慣れた。この野郎って思うしいつかやり返してやるって、今ならそんな感じで気持ちを強く持てる。でも……」
そこまで言ったヤマトは言葉を詰まらせながらもその先を口にした。
「君に…もう…会えなくなるのかなって思ったら…!」
泣いてはない。ただ、悔しさをかみ締めてるようなそんな苦しい声でそう呟いた。
……思ってたよりも俺も思われてたのかとちょっと心がポカポカしたのは内緒だ。……別に嬉しいとは思ってないよ?ホントダヨ。
「そっか…じゃあ安心した?」
「……少しね」
照れたようにぶっきらぼうに呟くヤマト。
「……可愛くねーな」
そんなことを言う俺の口角は上がってたと思う。
そんな時、
「いたぞ!ヤマト坊ちゃんと侵入者だ!」
やべ。岩ぶっ壊した音でバレてたのかもう追っ手が来た。
「ヤマト」
「え?」
「どうしよっか?」
「……何も考えてなかったの!?」
だってしゃーないじゃん。様子見よって思ってきたら泣いてて監禁されてるんだもん。そりゃ無理やり連れ出したくなるよね。
「ちょっと失礼」
「え?おわ!」
ヤマトの膝裏と両肩を抱えるように持つ。所謂お姫様抱っこでヤマトを抱え持つ。
「走るぞー。捕まっとけよ」
「う、うん」
「『剃』」
その場から一瞬で移動。追っ手を振り切ろうとした……その時、
「!?」
急に立ち止まり、横へと跳ぶ。と、同時に振り落ちてきた巨大な金棒。
危ねー。たまたま見聞色発動してくれたけど、なかったらぺしゃんこなってたな。
そして、金棒を持つ巨大な影に目を向ける。
俺はこの日二度目の生で初の大きな壁にぶち当たった。