太陽の男   作:ヤマトかわいいよヤマト

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第3話

「知らない天井だ」

 

気絶から生還した俺はそんな言葉を吐いた。

人生で一度は言ってみたいセリフ5位を言えたことに満足感を覚えながら体を起こす。

 

「うっ…」

 

左腕にズキリと痛みが走りたまらず声が出た。

そう言えばカイドウと戦ったんだっけ?よく死んでないな俺。

そんなことを思いつつ辺りを見回すと見慣れないが見たことがあるような、そんな場所にいることがわかった。

立ち上がり服に着いた土ぼこりを払う。

 

「ふぅ…」

 

一息口から零しつつ前を向くと、

 

「あ…」

「お、よぉ」

 

驚いた顔のヤマトが立っていた。

そして次の瞬間、

 

「カグラァァァァアアア!!!」

「グフ……」

 

体にタックルしてくる勢いで抱きつかれた。

俺は勢いに負けてそのまま後ろに倒れていく。

床に倒れる衝撃で左腕が痛んだがそんなこと構い無しにヤマトは離れてくれなかった。

 

「……」

「……おい」

「……」

「なんか喋れ」

「あう」

 

ただ抱きついて俺の腹に顔を埋めるヤマトの脳天にチョップをかます。

頭を擦りながら離れるヤマトの顔は渋々といった感じだった。

 

「いきなりどうした…」

 

呆れたようにそう聞くが、ヤマトは押し倒さんばかりの勢いで肩をがっしり詰め寄った。

 

「どうしたもこうしたもないよ!?君、2日も寝たきりだったんだからね!?死んだかもしれないって何度思ったことか…」

 

……あーなるほど。心配かけてたわけね。ふむふむ。

え?2日も寝てたん?マジ?

 

「あーまあ、すまんな」

「ほんとだよぉ、良かったぁ…」

 

笑いながらヘナっと体の力が抜けていってるヤマト。

そんなことより、

 

「なんか木の棒とかない?」

「え?」

「左腕、固定したいんだけど」

 

むっちゃ左腕痛い……。

 

◆◆◆

 

なぜだか地面に刺さっていた刀の刃の部分をへし折り鍔を取った持ち手だけになったそれを2本腕に挟むようにして、破った服の1部で結んで応急的な処置をした俺はヤマトから事の経緯を聞いていた。

 

「つまりカイドウは俺を殺さずこの部屋、天の岩戸にぶち込んだと?」

「うん、そうだよ」

 

なぜぇ?いや、殺されないならそれに越したことはないけど俺を生かしてどうするの?

酷いことされるの?工口同人みたいに?ひぇぇぇ…。

 

「まあ、それならしゃーないわ。なんか期限とか言われてる?」

「3ヶ月みたいだよ」

「なるほど」

 

3ヶ月か……なら、

 

「ヤマト……特訓しよか」

「……え?」

「時間ももったいない。この監禁中にお前には覇気を覚えてもらうぞ」

 

こうして俺とヤマトの特訓が始まった。

 

 

 

 

 

「はてさて、ヤマトくん。この世界には覇気というものがある。種類は3つ。分かる?」

 

痛む左腕が揺れぬよう右手で固定しながらそんなことを問う。

ヤマトはうーんと頭をひねっているが一向に答えは出てこなさそうだった。

 

「わからない!」

 

程なくしてそんなことを明るい顔で言った。

うーん、笑顔は満点だね。

 

「まあ、そらそうだわな。とりあえずヤマト、お前にゃこの3ヶ月で3つのうち2つ、見聞色の覇気と武装色の覇気を覚えてもらう」

 

そう説明する俺に対してヤマトはふんふんと相槌を打ちつつ真剣な目で俺を見ていた。

うーん、美人になっちゃってお前。

 

「ひとまず最初に見聞色の覇気から訓練してくぞ。武装色の覇気は俺の左腕が良くなってからってことで」

 

じゃなきゃ俺の左腕が死んでしまう。

 

「特訓……と言っても何をするんだ?」

 

まあ、そうだな。説明しておくか。

そんなことを思った俺はまたもや服の1部をちぎりとる。

 

「目隠し」

「え?」

「その状態で俺の攻撃をかわせ」

「……マジ?」

「マジ」

 

そんなことを言いつつヤマトの目元を塞ぐようにちぎりとった服を結びつける。

ちょ、ちょっと待って。なんて声をあげているが無視だ無視。

 

「と言ってもハナから攻撃を躱せられるとは思ってない訳だ。てなわけで俺がどこに立ってるか気配で察知してその方向に体を向けろ。誤差は45度まで、間違ったら脳天チョップ、はいスタート」

「え?え!?」

 

そして俺は足音を立てずに移動。ヤマトはオロオロしていた。

 

「……こっちだ」

「あたっ!」

 

◆◆◆

 

あれから約5時間。

 

「そこ!」

「せーかい。次」

 

 

 

「そっちだ!」

「丸。次」

 

 

 

「ここ?」

「ピンポーン。よし、だいぶ当てられてきたな」

 

平面的じゃなく天井にぶらさがったりとかしてたけどそれもちゃんと当てられるようになってきていた。流石ヤマト。さすやま。

まあ、微かな音を頼りに当ててる節があるかもだけどそれを考慮してもだいぶいい。なんてったって誤差がもうほぼない。

 

「よし、んじゃ次は耳も塞ごう」

「え?」

「完全な気配だけで捉えられるようにするぞ」

「わ、わかった」

 

ここまでで1000発以上は脳天にチョップをしたがそれはもうほぼ序盤だけ。ここまでできたなら耳塞いでもいけるかも。

そんなことを思っていると、ヤマトは自分の指で耳を塞いでいた。

 

「これでいい!?」

「おっけ、聞こえる?」

「……?」

 

聞こえてないみたいだな。よしじゃあ移動しよう。

そうして歩き始めた途端、

 

「カグラ、今移動した?ん?してる最中かな?」

 

……驚いた。これは素直にビビる。流石だ。さすやまだ。

 

「もういいぞ」

 

そう言いながら耳に指を当ててる腕を引く。

 

「あ、もういい?」

「おう。とりあえず今日はもう終わり。目隠しはそのままで過ごしてみ」

「分かった」

 

まあ、過ごしてみと言ってもここには特に何も無いけど。そんな苦労もしないでしょう。

とりあえず俺は痛みが酷いし、体が重い。

 

「俺は一旦寝る。お前も休んどけ」

「そうするよ」

 

そうして俺たちは眠りについた。

 

◆◆◆

 

俺たちは今とてつもない問題を抱えていた。

俺の対面に座るヤマトも目隠しを外し俺とヤマトで挟まれたいちに置いてあるとあるものを見ていた。

 

「ヤマト」

「カグラ」

「「ジャンケンポン!」」

 

俺はグー、ヤマトはチョキ。

これは、

 

「俺の勝ち。じゃ、ヤマトが食えな」

「くうぅぅぅぅ……」

 

そうしてそのあるものを差し出す。

 

「武士はお腹空かないのに…!」

 

そのとあるものとはご飯。

白米、味噌汁、水、焼き魚に漬物とフルセット1人前の食料。

どうやら3日に1回だけ一人前だけよこすみたいだ。

眠りから覚めたら置いてあってびっくりしたものです。

多分刀が置かれていたのは殺しあって飯を奪い合えてきな?それで俺とヤマトの仲を引き裂く的な?そんな目論見があったんだろうけど、俺たちは別の角度で争っていた。

 

それはご飯の押し付け合い。

ヤマトは、『武士はお腹など空かぬものだ』と言って食わんし、俺は俺で『断食修行には慣れてるしいい機会だから食わん』ということで食べる気は特になかった。

はっきりいって俺は水さえあれば生きてける。余裕だ。断食には慣れてる。

故にジャンケン。それで決めることにした。

お互い食べなきゃいい?おいおい食物作った人達に申し訳ないでしょうが。

 

「ほれ食え、ほれ食え」

「ぐぬぬぬぬ…!」

 

唸っていたヤマトだったが、ガバッと手に取り胃の中へと流し込んでいく。いい食べっぷりだァ。

俺も水をクイッと1口。うむ、喉が潤う。

 

「ご馳走様でした!」

「お粗末でしたぁ〜」

 

そうして食器を片付ける。

さてと、

 

「今日も特訓してこか」

「何でも来い!」


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