太陽の男   作:ヤマトかわいいよヤマト

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第5話

耳に入って来る3つの足音。

俺とヤマト、そして先導して歩くカイドウの部下。

廊下を歩く俺たちは今気まずい雰囲気が包み込んでいた。

 

「……」

「……」

 

俺とヤマトはお互い無言。

俺は無表情でただ前を、ヤマトはそっぽを向いた状態で俺の方なんて一瞥もしない。

天の岩戸での頼み事のせいだろう。少し怒っているような様子だった。

 

「…フ」

 

前を歩くカイドウの部下が軽く笑った。

 

「……」

 

隣のヤマトは無反応。手首に繋がれた手錠からぶら下がる鎖がジャラジャラと音を上げていた。

 

「ここです。しばしお待ちを」

 

ぼーっとしているとどうやら目的の部屋に着いたみたいだ。

案内してくれたカイドウの部下は一言そう言うと中へと入っていった。

……いまなら逃げれるくね?…いや無理か。

この廊下の端の方に気配がある。包囲されてる。用意周到だね。当たり前か。

そんなことを考えていると、

 

「では、ヤマト坊ちゃん入ってきてください。……あとお前もな」

 

扉を開け手で侵入を促す案内人。

あと、俺の扱いやさしくして?あなた達の坊ちゃんのお友達ですよ?

 

そんな愚痴を心に留めつつ足を前へと進めていく。

中はとんでもなく広い宴会場のような場所。その奥の方にドッシリと座り込んでいるのはカイドウ。

酒が入ってるであろうバカでかい瓢箪を片手に俺たちを睨みつけていた。

 

「来たか」

「ああ、来てやった。けど僕は用はない。だからもう行く」

 

カイドウの言葉にそんな返しをするヤマト。

 

「ウォロロロロッ!!生意気なクソ息子が!」

「……僕はお前も嫌いだし、それにこいつ(▪▪▪)の隣にもいたくない」

 

そんな捨てセリフを吐きつつ入ってきた扉を戻って出ていってしまった。

案内人の部下さんが坊ちゃん!と言って追いかけて行った。

 

「なんだ小僧。随分とうちの倅に嫌われたみてェじゃねぇか」

 

そう言うカイドウの顔はうっすらと笑みを浮かべていた。

 

「まあいい。あの部屋で何があったのかさして興味もねェ。俺がお前をここに呼んだのは聞きてェことがあっただけだ」

「……」

 

グビっと1口、瓢箪を傾け酒を飲むカイドウ。飲んだそれをダンっ!と大きな音を響かせながら地面に置き、こちらを睨みつけ、

 

「おめェ、うちの船に乗れ」

 

そんなことを言った。

 

「……聞きたいことと言うより命令だね」

「ウォロロロロ!おめェの強さは新世界全体で見てもその歳で中の上、上の下くれェだ。1,2年も経つ頃にゃうちの大看板並みの強さにはなれるだろうよ。ムカつくガキだが筋はある。俺の下に入れるのも一興だ。まあ別にいいんだ断ってくれてもよォ」

 

そう言うカイドウの顔は暗に、あの日実力の差がどれだけあるか思い知ったろう?断るわけないよな?とそんなことを言っているように思えた。

 

「……なるほど」

「あぁ、で?どうするよ、小僧」

 

それならもう答えは決まってる。

簡単だ。

 

「一昨日来やがれ」

 

一切の躊躇なく中指を立てて堂々と。

それを見ていた周りに控えていたカイドウの部下たちがどよめき出した。

これでいい。たとえ腰低くしてご機嫌とって生き残ったとしても、それじゃあ俺はあいつに顔向けできん。

 

「……よし、分かった。なら殺すぜ?」

 

笑顔から一転、額に青筋を立てたカイドウが金棒を片手にのそりと立ち上がった。

濃密な殺気。耐性がない人はそれだけで泡吹いて倒れるだろう。

 

俺自身前世の頃から恐怖心というものはあまり感じず、と言うよりも目付きがどうやら悪かったらしく色んな危ない人から絡まれることも多く、おかげで恐怖心をあまり持つことが無くなった。

 

それが今世に活きてるのかは定かじゃないがカイドウの圧じゃビビることは無い。格上相手の圧に臆することの無い精神というのは意外と大事だ。恐怖で体が固まるということは無いからね。

 

「……」

「……」

 

無言で近づいてくるカイドウ。

俺は次の挙動を逃さないように注意深く意識を研ぎ澄ませカイドウを見ていた。

そして、

 

「━━━っ」

「"雷鳴八卦"!!!」

 

避けた。避けられた。今度は掠りもしなかった。

未来が読めた?わけじゃない。

嬉しさ……よりもなんだか説明できない疑問が頭にあった。

それの答えを求めるのはだいぶ遅かった。

 

「"金剛鏑"!!!」

「あ……」

 

体をひねりその勢いでそのまま技を放ってくるカイドウ。

雷鳴八卦はおそらく囮。空中に飛んで避けさせた俺を確実に仕留めるための次の技への布石だったわけだ。

 

そんなことを考えているうちに俺はその衝撃波に飲み込まれた。

 

「ガフッ……!」

 

何度か地面をバウンドして転がっていく。バウンドする度に吹き出る血が床を濡らして行った。

 

ようやく止まった時、全身に走るのは激しい痛み。だがその痛みのおかげで意識は何とか保たせることは出来ていた。

ただ体は全くと言っていいほど動かない。

あの時とは違う酔ってない状態の技は一味違った。体の芯に響いてくるようなそんな感じだ。しかも、全力で攻撃されてない。多分遊ばれてる。それでこれとはね。

まずいなこれは。

 

「ウォロロロロッ!!!血濡れの小僧…男前が上がったんじゃねェのか!?」

「ケッ!あたぼうよ。血の滴るいい男目指しとんねんこちとら」

 

カイドウの皮肉にそんなおちゃらける返しをするが大分キツい。せめて30秒間休ませてくれれば何とか動く事は出来る。が、

 

「そうかよ!なら、おめェの臓物でも派手に飛び散らせてやろうか!?」

 

そんな暇は無さそうだ。

金棒を振り上げその単純なパワーで叩き潰そうとしてくる。

 

「……」

 

でも、あまり不安はなかった。だって俺にはあいつがいるしね。

そんなことを思った同時に俺のすぐ横の壁が豪快な音を立てて弾け飛んだ。そして、そのままカイドウの金棒に何かが当たる金属音に似た爆発音。

土煙でよく見えないがその衝撃で晴れた先にいたのは、

 

「カグラ!!」

「……ちょっと遅いぞヤマト」

 

俺の頼れる親友だった。


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