太陽の男   作:ヤマトかわいいよヤマト

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第8話

「お前さん、私の事……好き?」

 

マジかよぉ…!

目の前に座る巨大な女を見ながらそんなことを愚痴る。

原作だと8M越えだった気がするけど幾分か小さいか?まあ、原作と比べて時系列がだいぶ過去だ。成長途中って感じか?

 

俺が今10歳ならこいつは……14?

それで6m越え?おいおい最近身長の伸びが悪い俺へのあてつけか?

 

「ごめんカグラ。僕自身もここら辺はあんまり来たこと無かった、と言うよりここの区画は入れさせて貰えなかったから……ミスったぁ」

「……言って欲しかったな」

 

トホホのホだ。

だが、幼いヤマトをこの遊郭エリアに入れなかったというのは、なんだかカイドウの親の部分のようで少し気持ち悪いと思ってしまった。

 

「おやおや、私の問いには答えてくれないのかい?ツンデレ……と言うやつかしら?可愛い男の子ね」

「……そんな歳離れてねぇやろが」

 

ちょっとムカついた。何が男の子や。背が高いからって調子乗んな。

 

「あら、フフ。口の悪い子……私は好きよ」

「あっそ。俺は……」

 

ふむ、だがこう見るとあれだな。

 

「見てくれはええな」

「あら、そう。ウフフ、なら……私がお前さんを飼ってあげるわ……!」

「そいつは御遠慮」

 

そんな言葉を吐いたデカ女は指先から糸を出してきた。

もう、悪魔の実食ってるんか。

 

「ヤマト」

 

糸を避けつつ隣のヤマトに声をかける。

 

「彼女はブラックマリア。あんまり面識はないけど、ちょこちょこクソ親父と話してるのを見た事あるよ」

「飛び六胞か?」

「いや、飛び六胞入りはしてない。ただ、飛び六胞に1番近しい実力はあるらしい。と言うよりもう、今の飛び六胞より強いと思うよ」

「そいつぁハッピーだなおい……!」

 

この歳で飛び六胞レベルか。いやだね全く。

カイドウの攻撃に対処できるなら余裕でしょと思うかもだが、この女の強みはその搦手の数だ。

 

"クモクモの実"、モデル『ロサミガレ・グラウボゲリィ』

聞きなれない種類の蜘蛛だがそれもそう。大昔に生きていたとされる蜘蛛だ。

動物系古代種。希少価値の高い悪魔の実って訳だ。

それにしても、

 

「糸が邪魔すぎる…」

 

体をひねりつつ避け続けるがそれでも糸は張り巡らされていくわけで。

やがて逃げ場も少なくなってくる。

さらに1度触れると離れなくなるほどの粘着性。面倒がすぎる。

 

「いつまで逃げられるかねぇ!さっさと捕まってあたしのものになりな!」

 

そう言って振り下ろしてくる長い得物。

 

「どでけぇ薙刀…」

 

手にしていたのは白ひげが持っていたような巨大な薙刀。

原作の輪入道のあれはまだないのか。

そんなことを思いつつ腰を落とし構える。

手首を柔らかく刃の横の部分に手を添え軌道をずらす。

 

「ヤマト!何か使えるもんないか!?」

「一応金棒取りに行ったついでに木刀なら持ってきてるけど使うかい!?」

「くれ!」

 

そう言うと木刀を投げつけてくるヤマト。

 

「サンキュ!」

 

手を後ろに構えた状態で木刀をキャッチ。

その構えのまま武装色、そして、覇王色を発動。問題なく木刀へと纏うことが出来た。

 

「ヤマト合わせろ!狙いは糸だ!」

「ああ!」

 

そしてヤマトはバッティングの構えをとった。

途端にヤマトの体の前に見えてくる黒い火花。

 

俺もあれにチャレンジしよう。原作でも1回しか出てきてない技。

オリジナルには遠く及ばないが覇王色を飛ばすなんてイメージはあれしか湧かない。今はただ糸を一掃出来ればそれでいい。

 

「行くぞ!」

 

そんな俺の声を合図に2人で技を放った。

 

「"鳴鏑(なりかぶら)"ッ!!!」

「"神避(かむさり)"!!!」

 

2人の放った衝撃波はブラックマリア自体にはダメージは入らなかったものの糸を一掃するには十分、更には後ろの壁も破壊し道もつくることに成功した。

 

「なっ!?」

 

驚くブラックマリアを他所に横を通り抜け穴へと向かう。ヤマトも俺の動きを見て着いてきてくれていた。

 

「は!お前さん!ちょいと待ちな!」

「悪いね。俺って教養のない女はタイプじゃないんだ。見てくれ良くても中身が腹黒いならお断り。教養身につけたら貰われてやってもいいぞ。じゃあな」

 

そんなセリフを残しつつヤマトと二人並んで先へ進んだ。

 

 

 

 

 

「なあヤマト」

 

しばらくして隣を走るヤマトに声をかける。

 

「……なに」

「なんか怒ってる?」

「……別に」

 

その声はちょっと不機嫌。

うーん、あれかな。

 

「ブラックマリアか?」

「……」

「……嫉妬?」

 

そう言った瞬間に頭をはたかれた。めちゃめちゃ痛い……。

 

◆◆◆

 

「とりあえず腹減ったな」

「確かにそうだね」

 

どこかの部屋に逃げ込んだ俺たち。追っ手の足音も聞こえてこない。一時的に撒けているようだった。

 

「それにしてもここは?」

「宴会場だね」

 

辺りを見回すと目に入ってくる色んな食べ物たち。

 

「果物もあるのか」

 

あんな屈強なヤツらが食べるとは思えないな。

そんなことを思いつつ料理を少しつまみ取り口に運ぶ。

その時、

 

「おえ!なんだこれ!?」

 

ヤマトも何かを食べていたのだろう。ただ口に合わなかったようだ。

 

「どうしたよヤマ…ト……」

 

そちらに目を向けるとヤマトが手にしていたのは。

 

「おま…」

「?カグラどうしたの?」

「それ、悪魔の実…」

「え?」

 

見てると目がおかしくなってくるような模様。そんな皮に包まれた不思議な気配を放つ果物。

悪魔の実だった。

 

「……ゴックンしたの?」

「……」

 

そう聞くと静かに頷くヤマト。

……まさかこのタイミングで食うのかお前。

 

「か、カグラ」

「…どした」

「吐けるかな?」

「…無理でしょ」

 

そういうとうわあーーー!と崩れ落ちるヤマト。

なんでこんなとこに悪魔の実が。と思ってヤマトの近くのテーブルに目を向けると無駄な装飾を施された箱が置いてあった。

なるほど、悪魔の実をゲットしたということで祝いの宴でもしていた感じかな。これはカイドウの管理不足。ヤマトに食べられてもグチグチ言えませんね。

 

「はぁ…」

 

項垂れるヤマトは何とか立ち上がりつつもため息をこぼしていた。

 

「まあ、しゃーない。切り替えよ」

「うん」

 

そう言って骨付き肉を手に取りかじりつく。

腹ごしらえはしとかんと。動けなくなったら終いだ。

 

「ところで」

 

ヤマトが弱々しい声で声をかけてきた。

 

「なんだ?」

「カグラの手に持ってるそれって?」

 

と言って指を指してくる。

目で追っていくとそれはどうやら俺の右手で、そこには。

 

「あ」

 

オレンジの不思議模様の果物が握られていた。


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