先……輩………?
「ン?アァ、ナンデアノラリーボールガフットンデッタノカッテ?カンタンダ、ローラーデウチカエシタダケダカラナ。」
先輩の右手を見ると、
確かにローラーを握っている。
「…せ、先輩…?どうして、倒す邪魔をするんですか…?ほら、早く倒して帰りましょうよ…」
「ッハァ………"コノトオリ"ッツッタダロ。マダワカラネェノカ。ナラモウメンドウダ……
コノバデタタキツブス。」
嫌に機械音声の様になった先輩の声から全て感情が読み取れなくなった瞬間、先輩がこちらへ向かってくる。
半ば条件反射で、先輩が振り下ろしてきたローラーを自分のヒーローシューターで防ぐ。
「っ…なんでそんな洗脳なんかに掛かってるんですか!!戻ってくださいよ先輩っ!」
「ハイジョ……」
「……ッ…………!!」
先輩が目元に付けている仮面の隙間から、彼の目が見える。ハイライトが無くなったような虚ろな目をしている。
……僕が………、
僕が、ちゃんと警戒していれば……
この人は助かっていたのだろうか……
〚0号!そんな奴に操られちゃ駄目だよ!!元に戻って……………〛
〚……0号!!〛
………いや、まだどうとでもなる筈だ。
精神を、意思を強く持て。ロクロ。
俺が暗いままじゃ、先輩だって喜ばない。
諦めたら、そこで試合終了だって………
安西先生も言ってたし。
辛いときこそ笑うんだ。
この世界は…
幸い、操られているからなのかは分からないが、操られる前の先輩よりも力も速さも大幅に欠けている。この状態なら……十分戦える。
まともに受け止めればひとたまりも無いため、振られるローラーを素早くゆるやかに受け流す。
〚………仕方ない、か……………
3号に告ぐ!!!!〛
「はいっ!」
〚任務!0号を倒せ!!!〛
「はいッ!!!!」
絶対に勝つ。
勝って助ける。
次は僕が恩を返す番だ。
…はは……今思えば、ほとんど役に立つことしか言ってないな、この人。哲学じみた問題だとか、スマ○ラの勝利法だとか。
性癖はただ聞きたかっただけとか言ってたけど。
ちゃんとシリアスな場面で言ってくれてたら、
素直に尊敬できたんだけどなぁ………
…………おっし。やってやろう。
3号の名に賭けて。
僕がそう決意を抱いた瞬間、先程よりも少し早い速度で先輩が向かってきた。構え方からして横薙ぎだと思…いや、左手を逆手にして持っているため振り下ろしか。
半歩右前に屈みながら踏み出すと、自分の読みどおりに振り下ろされたローラーが地面へと当たり罅が入っていた。
この隙に肩の当たりへ銃口を向けトリガーを引いた…のだが、前転で躱された。
…やはり、
こいつにあるのはせいぜい技術だけだ。最も、その技術も逸脱してるのだが。あの人は。
そして、あの人の戦闘時の癖はほぼ全て知っている。本人から教えられたものもあれば、自分で考察したのもある。
今まで勝てなかったのは身体能力の埋まらない差のせいだ。技術の差もあれど絶対的な違いはそれだ。その"強み"が無いなら…勝てる。
自分の力を疑うな。
先輩が駆け出そうとした瞬間を見定め、進行方向に置き撃ちをする。ッ…!すると、瞬きをする間に方向転換しこちらへ切り返してきた。
下から切り上げられたローラーを、上半身を反らして躱す。目線は絶対に外さない。外せば視認する間も無く押し切られる。
さっき、振る前にローラーの持ち方を逆にした…
なら、切り上げた後にまた振り下ろして来る筈。
ズドン。
重低音の音を立てながら振り落とされたローラーが地面へとめり込む。やはり動きはとても読みやすい。
頭へと撃ち出した弾はローラーで弾かれたが、本命はそちらでは無い。
「!」
ボムコロ。
上へと意識を向けさせた隙にスプラッシュボムを先輩の足元へと転がしたのだ。
ボムを視認した瞬間に跳ぼうとした先輩を、自らの手足を使い抑え込む。
「ギィッ……」
「絶対に逃しませんよォ……ッ!!」
そして、僕と先輩はボムの爆発へと巻き込まれた…が、同色のインクなので当然僕は無傷だ。反対に、先輩はデスしてはいないが気を失っているようだ。
………勝てた。本当に。
操られていたとはいえ、あの先輩に。
自分の"夢"に、やっと少しだけ近付けた気がしてとても嬉しい。だが………体の力が抜けていく。いや待て僕。まだタコワサが残っているのに……
駄目だ……………ッ!倒さない…と…………
〚ッ!3号!!3号!!!聞こえる?!〛
「アオリか。」
〚?! じいちゃん!無事だったの?!〛
「ウム。じゃあ、今から0号と3号を連れて帰るからちぃと待っとくれ。」
〚…また攫われたりしないでよ?〛
「分かっとる。」
〚……………なら、早く帰ってきてね。〛
〚アオリちゃん寂しくて泣いとったからね〜〛
〚ちょっ!ホタルちゃん〜………〛
〚早く帰ってきてね、おじいちゃん。〛
「ウム。では、また後での。」
〚またね〜〛〚ばいばーい〛