イサキのメンタルがいかに丈夫か。
"もう壊れてるから壊れないだけ"かもだけど。
私の母は、子供を簡単に殴る様な屑だった。
働きはするが父より稼ぎは少なく、
そのくせ家事もせず酒も飲んでばかりだった。
私の父は、母と比べればちゃんとしていた。
暴力は振らないし稼ぎもまあまあある。
なぜ母と結婚したのか分からない位には屑じゃ
なかった。
後に、ギャンブル狂いとなったが。
………それが、私の両親だった。
私の兄は、とても良くできた人だった。
自分は優しくなんてないと言いながら、
人助けを平然とする様な馬鹿だった。
いつも妹の私を気にかけてくれていた。
どんな不運が起こっても、
『まあいいか』で済ますような人だった。
能天気で、楽観的で、とても馬鹿な人。
学校の成績だけで言えば私に負けているけど、
人付き合いが得意で沢山の人に好かれていた。
私がどんな事を言っても、
笑ってくれる様な馬鹿で。
"屑"達からも常に守ってくれていた。
いつも感謝していた。
お礼を…言いたかった。
でも、この自分の口は開いてくれなくて。
いつも罵倒しかできなくて。
心に無いことも言ってしまった。
そんな馬鹿だった。
兄の事すらも、完全には信じられていなかった。
屑と比べるなんておこがましい程の────
善人だったのに。
兄はこんな私を『それもまた良し!』
…なんて言葉で評価した。
何が良いんだ。こんな妹が。
ある日。
"近づかないで"
なんて言ってしまった。
言われた時は笑って流してくれていた。
でも、その日からどんどん距離が遠くなった。
今思えば私の事を考えてくれたのだろう。
あの優しい人だ。
……いや、
本当に嫌いになったのかも…しれない。
いずれ話すことも無くなっていった。
長い時が経った。
いつかは忘れたが、母は捕まった。
兄が数年間の証拠を揃えて提出したらしい。
子供にしては異常に機転が効く人だった。
父はギャンブルの沼へと嵌り、今も行方不明だ。
どこに居るかは知らないが、知った事じゃ無い。
育ててくれたのは感謝しているが、
正直関わるのすら御免だ。
両親が居なくなった後、
私達2人は祖父母に預かられた。
それからしばらくは静かに暮らせていたのだが、年金以外に収入が無い祖父母に養われるには子供2人は多すぎたらしい。
兄は自分から出ていくと言い、"当てがあるから"と言って気付けば居なくなっていた。
それでも連絡はついていたので、
暮らせはしていたらしい。
だが、ある日訃報が入った。
……兄は、死んでいた。
喉に餅を詰まらせて、一人暮らしの部屋で。
どうやら、不運にも70億分の3000を引いてしまったらしい。……………不運な人だ。
お礼を言いたかったのに、もう逝ってしまった。
…………なんて事を考えてしまう。
私もやっと15歳になった。
……まあ、もう中学校生活の終わりなのだが。
少し遠くの学校へと進学する事が決まり、折角テストに合格したのにドブに捨てるのも嫌なので、学校の近くへと引っ越して来た。
友人にはあまり良い思い出は無かった。
兄が逝ってからは話してすらいない。
引っ越すにあたって友人が居なかったのは最後の挨拶なども要らなくて楽だが、はたしてそれは幸か不幸か。神のみぞ知るだろう。
遠くへ行くなら、と祖父母から段ボールを渡された。どうやら兄の死亡時に所有していた物が大体入っている様だ。
調べてみると、懐かしい気持ちになる。中には下着から歯ブラシまで本当にいろいろな物が入っている。
……ぇ、えっちな物は入っていなかったけど。
……本当に、欲が無いのかあの人は…
内容物を整理していると、ふと目についた物があった。確か、WiiUとかいう古のゲーム機だ。
そういえば私が小さなときにも兄がやっていた様な気がする。あの人がかなりやりこんでいた……
………やってみるか…
幼い頃の、兄と過ごした朧げな記憶を探りながら起動方法を思い出す。本体の電源を付けると、既視感のあるソフトアイコンが表示された。
カーソルを"Splatoon"の所へと移動させボタンを押すと、リズミカルな音楽と共にゲームが始まる。
「…………確か、こうだっけ。」
目の前にある巨大な塔へ入り、開いた自動ドアの中へとアバターを歩かせて入場する。
服…"ギア"という物と"ブキ"を装備した
"インクリング"というキャラが表示され、参加するバトルの選択画面が映る。
……少しの興味からバトルを始めた。
このゲームをしていると、あっという間に夕方だ。時間が溶けてゆく。
発売からかなり経っているせいか猛者だらけで、戦績は決していい方だとは言えないが、無限にやっていられるような物だった。
だがやはり時間が過ぎるのが早すぎるので、自分のためにも今日はやめる事にする。
…風呂は………外出てないし、まあいいか。
部屋の中で組み立てたベッドへと倒れ込み、今日の出来事を反芻するようにして静かに眠る。
「……………寂しい。」
ふと、そんな言葉が口を突いて出る。
今更言ったってどうしようも無いのに。
理解して、自分で納得した筈だ。
自分はもう、誰も頼れないって。
母は獄中。
父は行方不明。
兄は死亡。
祖父母は離れた地に居る。
友人と呼べる人間は居ない。
……分かってる。
「ッ───…………!」
枕へ顔をうずめて涙を消す。
…………できるなら。
自分を守護ってくれた、あの
もう一度会いたかった。
愉悦。それは良い物だ。
だが、それはそれとして、だ。
泣いている少女を、
BAD ENDのままにして良い訳が無いだろう?
という事でHAPPY ENDへ向けて書いてゆく。
駄文だが目を開いてとくと見ろ。
俺が書きたい物語を。
なんて大層なこと言ったけど、
正直泣き顔も好きだしまあいいかなって(殴
泣き顔も良いけどやっぱ笑い顔が一番だ。
ということでHAPPY ENDにする。
オ・ルボワール。