元ヒトのインクリング : 旧   作:ノリと勢い

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最後のざまぁは、せつない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前世の親もクズだったけど、今世の親も大概クズだ。………まぁ、前世よりは断然マシだ。

 

 

 

 

 

私は血の繋がっていない"(ニセモノ)"だ。

 

 

 

元々私がこの家にやってきたのは、どうやっても子供ができなかった両親が、取引先が何匹か持っていた奴隷から格安の割に賢いのを買ったのが始まりだ。

 

 

"後継ぎ"として私を買った後、その取引先に騙されていた事を両親が悟ったのは無駄にでかい屋敷に戻ってからだったらしい。

 

 

仮にも貴族な癖に、取引先にも使い捨てで利用されるとは、よほど信用も期待も感じなかったのだろう。本当に哀れな両親……いや、カス共だ。

ざまぁとしか思わない。

 

その騙されたという内容は、『男として買った奴隷が女だった』という、実にくだらない後継ぎの固定概念によるものだった。

 

 

 

……はぁ…………

 

 

 

 

………目に見えて扱いが悪くなったのは、

"(ホンモノ)"が生まれた時からだろうか。

 

 

…記憶が曖昧であまり思い出せない。

思い出す度に精神が弱っていく事を、本能とやらは分かっているのかもしれない。

 

だが。それでも。

今、思い出さなければならない。

 

 

 

後継ぎのためか、本能から来る汚らしい欲求のためか。審議は定かにならないけれど、獣の様に毎晩毎晩貪り合い、ついにその願いとやらが形を成したらしい。

 

 

 

 

弟が生まれた時、親はどう思ったのだろうか。

 

達成感、希望、愛。

そんな浮いた言葉を、弟へ送っていた。

 

 

 

……なら、私には?

 

おそらくは、以前からあった私への悪意がさらに膨れ上がったのだろう。

 

 

 

 

暗く、どす黒く染まった瞳が。

 

 

私の頬へ伸びてくる腕が。

 

 

三日月状に歪む口元が。

 

 

 

………そう語っていたのを、理解してしまった。

 

 

 

 

 

 

最初はささいな事。

無視したり、物を与えなかったり。

本当に軽い暴力をしてきたり。

 

ここまではまだ良い方だと思う。

 

前世の親もやっていた事だったから。

 

 

外聞から己の身を守るための"(子供)"という役割を残すために、外側に残る、服で覆われない部分への害は成さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

………………慣れて、いたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"奴隷"から上がっただけの私にそんな容赦など無く、どんどんと罰という名の八つ当たりが酷くなっていった。

 

胴体を殴られ、踏まれ、蹴られ、

乳房を切り裂かれ、下腹部を炙られる。

 

 

四肢と顔を避けた部分を徹底的に痛めつけられる。それでも"見てもらう部分"を着飾って、好きでも繋がりも無い家族なんて塊のため外面を取り繕い、ただひたすらに祈り、呪い、胸中で叫ぶ。

 

 

『神は平等では無い』と。

 

『助けろ』と。

 

『救いを寄越せ』と。

 

『"罰"とは何だ』と。

 

 

 

 

『奴らを決して許さない』と。

 

 

 

 

道徳とやらの崇高な物をかなぐり捨て、外道に落ちた畜生共に慈悲なんて物はない。

 

私の顔の"痣"なんかよりももっと醜い印を刻み込んだ、醜い下衆共になんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

そして随分と呆気なく、私の不運な十数年の元凶に対面し、即決着がついた。

 

 

結論から言えば、一瞬で捕獲し拷問に掛ける事ができた。……考えれば当たり前だ。

 

自らを鍛えもせず、他人を利用し尽くし食っちゃ寝をしてきた奴らなんぞに、"最強の英雄(ヒーロー)"と、少ないとはいえその方に稽古を付けてもらった私が負けるわけが無い。

 

 

 

 

「…あ…う"…っ…お"…ま"え"ぇ"…ッ…!」

 

 

 

 

良い声だ…この声が、ずっと聞きたかった。

 

あぁ………っ!!!

今までの私の人生が、馬鹿みたいだ…!!!

 

見たことか!罰が下った!お前らへの罰だ!私は間違っていなかった!苦しめ!苦しめ!苦しめぇ!!あははは!!!

 

 

 

「い"た"い"…いた"い"ぃ"…っ!」

 

「あ"…や"ま"…る"か"ら"…ァ"ァ"…ッ…」

 

 

 

 

「あ"ははははははははははぁ"っ"♡!!!」

 

 

 

本当に……ッ!とても清々しい気分だ!!!!

もっと喚いて!喚いて!!

 

 

 

 

キィッ……

 

 

 

 

………?……あ、イサキさん?

 

どうですか、これ。

私がやったんですよ。やれたんですよ。

復讐、果たせましたよ。貴方のおかげで。

恩返ししたいです。何が良いですかね。

貴方が願うなら金も私もこの世の命も全部掛けますから。捧げますから。どうか何か目標をください。命令してください。導いてください。もっとこいつらを痛めつけたら喜んでくれますかね?そうか!これなら私も嬉しくて一石二鳥ですね!流石です!じゃあ爪は全部やっちゃいましたし、次は皮を剥ぎますね!…あれ、何を使って剥ぐんだろう。包丁で良いかな。

 

えいっ♡

 

 

「痛い"痛い"痛い"痛い"痛い"ぃ"ぃ"ぃ"!!」

 

 

うわぁ…!沢山血が出たね!!

私の怨返しをくらえ!嬉しい?ねぇ!嬉しい?

 

…皮、飽きたな。

 

う〜ん、なら、お母さんは目玉……?

 

 

 

「………流石にそこらへんにしとけ。跡が残ったらお飾りとしても使えなくなるから。」

 

「……どういう事ですか?」

 

「えぇ…?………仮にも貴族なんだろ?

なら、領民やらの反発とか………」

 

「んな慕われる外面なんてこいつらにある訳無いじゃないですか。何も出せないタコから臓器は出せるだろってぶっ殺して売り払った奴ですよ?」

 

「…少しも外面取り繕ってないのか?」

 

「はい。取り繕ってませんよ。最終的に表舞台に出る役を私に押し付けて引きこもってましたし本当に庇い様のないクズですよ。」

 

「なら良い…か。」

 

 

 

「お"ま"え"ぇ"ぇ"…な"に"も"の"た"ァ…」

 

「……あ、俺?」

 

 

は?無礼すぎだろこの(アマ)

〆たろかな……

 

 

「『お前』だと……? 殺そっかなこいつ……」

 

「ッ…ひ…」

 

「いやまだ早いだろ……殺すの。

というかこんな状態でまだ喋れるんか。

 

…やぁやぁ、どうもお初にお目に掛かります。

通称0号として活動中のヒーローです。」

 

「私のお婿でございますのよ?」

 

「それは違……わない。」

 

「えっ、どういう風の吹き回しです…?」

 

「その方が多分奴ら自身をより惨めに感じさせられるだろうし。

というかそれを狙ったんじゃ」「ねっ、狙いました!狙いました!」

 

 

「お"まえ"ごと"き"がア"ァ"ァ"ア"ァ"…… お"ま"え"ご"と"き"が"ア"ア"ァ"ァ"!!!

 

 

「………それしか言えないのか…」

 

「まぁ馬鹿ですし。」

 

 

 

 

「………」

 

「………」

 

 

「部屋、一旦出よう。」

 

「はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お前これからどうするん?」

 

「…え?」

 

「『え?』って………

一生の、たった一つの目標を達成したんだろ?

次はどうするのかって。」

 

「………わっ…私は……貴方の側に……」

 

「いや居るのは別に否定しないけど。ただ、何も目標が無いままなんとなく幸せみたいなのを享受してると………死んでも死にきれないからな。」

 

「…………イサキさんの、前世ですか?」

 

「おう、前世。餅で死んだのほんと解せない。」

 

「あははっ!………すいません、ちょっと……その話聞くと……なんかツボっちゃって……っ!」

 

「笑ってくれて構わんよ。…ってかむしろ笑ってくれ。自分ですら笑えてくるし。」

 

「なんか、笑えって言われると笑えないですね」

 

「お前さぁ……………んで、答えは?」

 

「勿論………貴方の"もの"になる事ですよ。」

 

「…あのな、毎度毎度言ってるが、自分の命を軽々しく物みたいに言うなって」

 

「そう言える貴方だから"もの"になりたいんですよ。乙女心を分かってくれます?」

 

「乙女心がどうとかでは絶対ないと思うんだが」

 

「まっさかー!

 ………私、どうせ行き場所とか、帰る場所とか無いんですし。…イサキさん、"もの"を丁寧に扱ってくれるから、私も、そうなりたいなって。」

 

「"物"は、な。お前は人げ……タコだし。

帰る場所はもうあるだろ。」

 

「………イサキさんの家ですか?」

 

「そうだが?」

 

「っあ"〜〜〜〜」

 

 

そういう所が……い"い"…

あー顔あっつ。

 

 

「……まぁ、…はい……分かりました……」

 

「ヨシ。じゃああいつらの始末考えるか。身柄は家に返すとして、領民…?とかってどうするんだ?……お前の言葉を信じたからやったとはいえ、本当に反感やらは無いんだな?」

 

「はい。なんならイサキさんがここ治めてみますか?良い貴族になりそうですよ?」

 

「やめとく。家は広すぎると落ち着かないし豪邸には無駄な物が多すぎる。しかも維持費も高い。」

 

「そうですか………なら、この辺りの土地の下っ端から1人引っこ抜いてそいつを立てます?」

 

「あー、じゃあそれで良いか。交渉やらは俺がやっとくから、とりあえず寝てて良いよ。終わったら呼ぶわ。」

 

「……私も………」「駄目だ。寝てろ。休め。」

 

 

「……………はぁい……」

 

 

 

 

……………私も役に……立ちたい……

何もできない私に、価値はないのに。

 

なんで貴方はそう優しくするの?

 

"対価"が無ければ好かれないんじゃないの?

 

"利益"が無ければ協力されないんじゃないの?

 

 

……分かってる。あの人()優しいんだ。

害を成すなら切り捨てる冷徹さを持っているけれど、裏を返せば害を成さない相手には優しくすることができる。

 

優しいから、私の相手もできるのだろう。

 

………そうに決まっているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

──『お前は無価値だから。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ……

 

 

 

 

「………イサキさんっ!」

 

 

 

「…?…………どうした?なんか必要か?」

 

 

 

 

────っ…本当に。

 

 

 

 

「………いえ………出る前に、1つ………」

 

 

「……………ん?」

 

 

 

 

 

 

 

…喉まで、出ているのに。

 

 

 

 

 

 

「………がんばって、くださいね。」

 

 

「あぁ、んな事か。分かったよ。」

 

 

 

 

 

 

 

『私を愛して欲しい』と言えない自分が。

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、後で。」

 

「はい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

憎たらしくてしょうがない

 

 

 

 

 

 

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