「当然、冗談に決まってんじゃん?」   作:にゃんこぱん

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夏合宿(サイドB):それはきっと、幸福なこと -4

 今日のメニューは珍しく早めに終わった。アケノが言っていたセカンドキャリア何ちゃらがあるので、全体的に早く終わらせる予定だったらしい。風呂に入ってから、少し時間が出来たので、珍しくジョーダンは一人で散歩をしていた。

 

 考え事がしたかった──というより、そういう気分だった。誰にも知られず、一人でただ歩きたい、ジョーダンにしては少し感傷的な理由で。

 

 海沿いを歩いていた。

 

 歩道は海の形に合わせて曲がっていて、ずっと向こうまで続いている。そのうちに、海沿いの駐車場があった。海水浴の注意事項などが書かれた、古ぼけた看板と一台も停まっていない駐車場。

 

 そこの手すりに肘をかけて、誰かが電話をしていた。

 

「はい、はいー。いや、迎えは結構ですよー。歩いて行きたい気分で……あ、時間は大丈夫です。間に合いそうなので」

 

 ウマ娘の特徴的な耳。ラフだが……若者らしくはない落ち着いた格好だ。

 

「はい、それではまた後で! それでは失礼しまーす」

 

 電話を切って、そのウマ娘は振り向いた──つい、目が合う。

 

 ──知っている。

 

 そのウマ娘を、ジョーダンは知っている。

 

「……キミ──」

 

「……」

 

 なぜだか呆気に取られてしまった。

 

「トーセンジョーダン! トーセンジョーダンでしょ、知ってる! レース見てるよ、前の大阪杯は惜しかったねー! 怪我ももういいんでしょ? 秋のシニア三冠路線も楽しみにしてるよ! ここだけの話、結構ファンなんだー、()!」

 

 現役の頃からかなり時間が経ったが、すぐに分かった。彼女は── 

 

「……トウカイ、テイオー……」

 

「っと……なんだ知ってたの? てっきり迎えに来たのかと……」

 

「迎え?」

 

「キミのとこの合宿所でお話してくれないかって頼まれてさ。知ってたんじゃないの?」

 

「ううん。あたしはただ、散歩してただけで……」

 

「えっ、グーゼンだね〜! なんか運命的なもの感じちゃう〜! こうして会うのは初めてだけどさ、なんかキミとは初めて会った気がしないんだよね〜! やっぱいつもテレビで見てるからかな?」

 

「うん──あたしも、あんたのレースをたまに見てた。名前も有名だったし。けど、それだけじゃない」

 

 おそらく20代後半ぐらいだろう。トウカイテイオーは──だと言うのに、どうしてか、懐かしさのような、奇妙な感覚がする。

 

「なんか、あんたとは……初めて会った気ぃしない。なんでかな、なんか……ずっと一緒に、走ってた気ぃするんだ。ヘンだよね、こんなの」

 

 初対面のはずなのに、ジョーダンはそんな奇妙な懐かしさに戸惑いを隠せない。しかしトウカイテイオーは、優しく微笑んだ。

 

「ううん、ヘンじゃないよ。私だって同じだからね──同じ想いを抱えて、ずっと走ってきたんでしょ? そしたら同じなんだ。私たちは、ずっと……受け継がれる想いを、繋げている。繋げていられるんだ」

 

「……そうなの?」

 

「レースってさ、どこまで行っても個人技じゃない? だから先輩も後輩もみんなライバル、それぞれに叶えたい夢があって……だけど唯一、勝ちたいって想いだけはおんなじでしょ? それで……結局みんな、走るのが好きなんだ」

 

 懐かしいものを語るように、トウカイテイオーは海を眺めている。その先に、昔のことを思い出しているのだろう。

 

 だから、それを聞いて笑ってしまった。

 

「走るのが……好き? ぷっ、何それ……ウケる。しんどくて……キッツいし。もういいじゃんって、何回も何回も……やめたくなった時が、何回あっても? 走るのが好きなんて、マジ冗談もほどほどにしとけって」

 

 それは、レースを美化しすぎている、と。

 

「アハハ、分かるなぁー。そうだね、楽しいことばかりじゃなかったよ。キミもそうでしょ? 怪我はずっと隣り合わせだしさ。時代が少し進んでも、医療が進歩しても……まぁ仕方ないよ。自動車だって故障するんだし、生き物なら尚更ね。何キロで走ってると思ってるのさ」

 

 トウカイテイオーも、ずっと故障に悩まされてきたウマ娘だ。だからその言葉は、ジョーダンにとっては染み渡るような慰めだった。

 

 だからつい、抱えていたものを溢してしまう。

 

「……何もかも、あたしは見返したかったの。バカにされて、バカになって……惨めだった、悔しかった、苦しかった。だから一発逆転してやりたかったの。あたしの人生、変えたかった……変わりたかった。他のことは全部ダメだったけど、レースはそこそこ得意だったから」

 

 昔のこと。

 

 どうして走り出したのか──聞いて欲しかったのだろうか? きっと違う──言葉にして、受け止めたかったのだ。認めたかったのだ。苦しいだけだった過去も、全て。

 

「うん」

 

「けど……走るのは苦しいことばっかりで……楽しくなってきたと思ったら、怪我して……友達と喧嘩して、レースの世界の苦しいところ、ぶつけられて……仲直り出来たと思ったら、震災があって……」

 

 順調ではなかった。一つ終わったら、次のことが来る。常に何かがあった。

 

 だからそれはずっと、苦しいことばかりの青春。

 

「──でも、それだけじゃなかった。そうでしょ?」

 

「……うん」

 

 だからそれはずっと、楽しいことばかりの青春。

 

「楽しかった……それでも、楽しかったんだ。あたし……楽しかった、ずっと……満たされてた。足りないものなんて、なんにもなかった……」

 

 明日原が手を差し述べてくれたあの日から、全てが変わり始めた。

 

 強くなり、結果を出して……気の合う友達が増えて、ぶつかって……少しずつ、ジョーダンは自分のことを許し始めた。

 

「ホントは……シニア上がっても、ずっとここで走ってくんだって思ってた。ダスカ先輩とか、ウオッカパイセンが、引退して……同期のヤツがちらほら引退してってくのを見ても……アケノが壊れて、引退していったのを見ても、心のどっかで──あたしは違うって、思ってた……」

 

 ジョーダンは頑張った自分を、ちゃんと許して、前へ進んでいく──そのはずだった。

 

「でも、震災で……あたしは、あたしのことばっかりだって……あたしのことしか考えてなかったって……気がついて、分かった。ちゃんと終わらせないと……あたしは、ダサいまま生きてくことになるって。前へなんて、進めないって……」

 

 明日原のことは──感謝している。好きだ。あんな茶番を散々繰り返して、あんなことまでしておいて。

 

 それでも、震災の時に側に居られなかったことを、ジョーダンは今だに後悔している。

 

「前へ進みたいと思ったの。レースの先へ……ちゃんとした大人にならなきゃって……だから、ちゃんと終わらせようって思った。でも……本当は……」

 

「うん」

 

 トウカイテイオーは優しい顔で聞いている。

 

「あたし……本当は、悲しくて……寂しくて、仕方ねーの……っ!!」

 

 ──偽りない、ジョーダンの本音だ。

 

 明日原には言えない。きっと、困ったように笑うだろうから。

 

「続いて欲しい──本当は、楽しいだけの今が、ずっと続いて欲しい……っ、こんなのダメだって、分かってても……楽しかったんだ。満たされてて……っ!」

 

 涙が出る。

 

 悲しいのか? 違う──そうじゃないから、涙が流れるのだ。

 

「だから、終わるのが怖い。その先に進むのが怖いの。あたしずっとレースだけだったから……何にも残らないんじゃないかって……前に進むのが、怖い。また苦しくて、辛いことが待ってるんじゃないかって……怖くて、仕方ないの」

 

 ──トーセンジョーダンはごく普通の、少女だ。

 

 ごく普通に青春を過ごして、ごく普通に将来への不安を抱える、ただの少女だ。

 

 それを聞いて、トウカイテイオーはまた優しく笑った。昔の自分にかけるような優しさで諭すように。

 

「……うん。ねえ、ジョーダン──みんな違う理由で、レースを走ったんだ。けどみんな同じ想いを抱えていたんだ。勝ちたい、勝ちたいって」

 

「……うん」

 

「結果じゃないんだよ。大事なのは過程なんだ。大体レースなんて、負けるウマ娘の方がずっと多いんだから」

 

 その事実をジョーダンはもう知っている。

 

「これは慰めじゃなければ負け惜しみでもないんだ。どれだけ頑張っても勝てなかったっていう呪いでもないんだよ。一生懸命努力したから、結果はどうでもいいなんて綺麗事も……まあ悪くないけどさ、そうじゃないんだ」

 

 トウカイテイオーは優しく包み込むように手を広げた。

 

「──これは祝福なんだ。自分にない何かを求めて、挑戦していくことが出来る──想いは受け継がれる。キミと同じように、足掻きながら走っていく次の世代に、繋がっている。繋がっていくんだ。ターフの上で」

 

 ──その、尊さを示すように。

 

 オルフェーヴルとウインバリアシオンの姿が瞬間的に思い出された。ジョーダンは思った──自分が、繋げていけるだろうか。

 

「キミの煌めきに魅せられた、次の世代のウマ娘がトレセンを目指す。その子はきっと、上手くいかないかもしれない。メイクデビューに負けて、怪我も負って……いや、そもそもトレーナーもつかなくて、選抜レースに挑戦し続けて、ついには失意の果てにトレセンを去るかもしれない」

 

 トウカイテイオーが語る、そのウマ娘が歩む道のりは、決して珍しいものではない。

 

「でもそれでいいんだ。苦難と挫折は、試練じゃなくて祝福なんだよ。なぜなら、ターフを去った後にも人生は続いていくから」

 

 それでもいいのだ、とトウカイテイオーは言った。上手くいかなくてもいい、と。

 

「苦難も挫折も、次に繋がる土台になる。懐かしいなー、ボクなんて4回も骨折しちゃってさ。ついには走れなくなっちゃって……まあ、けどウマ娘はいずれみんな走れなくなる日が来るからね、それがちょっと早くなっただけだったんだ」

 

 ジョーダンはハッとしたように顔を上げた。そうだ──いずれは走れなくなる。早いか遅いかだ、全ては。

 

「辛くて、悲しくて……後悔はないよ。ボクは出来る全部をやった、周りにも助けてもらった。だけど、走ることだけが全部だった……」

 

 トウカイテイオーのレース人生を知るジョーダンは、何も言えなかった、だが。

 

 

 

「けど──今の人生の、楽しいことといったら!」

 

 

 

 ぱっと咲くような笑顔を見せるトウカイテイオー。レースから離れ、その先を歩いている彼女は、こんなにも楽しそうだ。

 

 その事実が、どれほどジョーダンの救いになったかは、きっと彼女にしか分からないだろう。

 

「トーセンジョーダン! ダイジョーブだよ、心配しないで! だってキミはこんなに頑張って走ってこれたんだ! なら、これからもきっと走っていけるよ!」

 

 無責任な言葉。だが、確かになんとかなるような気がした。

 

「キミの勝ちたいって想いは、次の世代に受け継がれていく! 三冠を取れなかった悔しさは、次の世代が晴らしてくれる! だから何も心配することはないよ、後輩たちはキミと同じように苦しんで、楽しんで、喜びながら走っていく! ほら、キミのいた証は受け継がれて、繋がっていくんだ!」

 

 ──どうしてウインバリアシオンを見て嬉しくなったのか分かった。

 

 これから自分と同じ幸せを味わってくれることが、嬉しかったのだ。

 

「こんなに幸福なことはないよ。だってそうでしょ? キミはトレセンにやってきて、過ごして、そして去っていく! そして繋がっていく!」

 

 スカーレットからジョーダンに。ジョーダンからオルフェーヴルと、ウインバリアシオンに。あるいはまだ見ぬ未来のスターに、繋がっていく。

 

「キミは多くのものを得て、成長していったんだ! そしてこれから社会へ飛び出していく! ボクが保証するよ! キミはこれからも、これまでと同じように、悪戦苦闘しながら生きていくんだ!」

 

「……うん」

 

 きっとそうなるだろうな、と思った。

 

 だから安心した。これからも一緒だ。これまでと同じように、頑張っていけばいいだけだ。

 

「……だから、ちゃんと燃やし尽くして、出し切って行きなよ。レースのこと、全部を。……終わらせるって、決めたんでしょ?」

 

「……うん。うん……そうする──あたし、ちゃんと走り切る。みんなが、そうしたように」

 

 散っていった無数の同期たち。咲く前に散った花も無数にある。だから、ロジユニヴァースのように。

 

「……ねぇ。ありがとう、テイオー。あたしね、幸せだ……あたし、幸せだ──何もかも、満たされてる」

 

 こんなにも──溢れて止まらない。欲しかったものは全て手に入れていた。望みは全て叶えた。そのことに気が付かず、うじうじしていたのも、実に自分らしいとジョーダンは思った。

 

 腹が決まった。

 

 将来のことは、もう知らない。今は──ただ、走りたいと、そう思った。

 

 

 

 

-

 

 

 

 少しだけ息を吸って、ジョーダンは明日原の部屋の扉を叩いた。

 

「あっすー。いーい?」

 

「はい」

 

 見慣れた明日原の顔だ。どうしようもないほど仕事人間で、レースが大好きで仕方のないトレーナーだった。

 

「話。きーて」

 

「分かりました。……そうですね、場所を変えましょうか」

 

 とっ散らかったトレーナー部屋は話すのに適しているとは言えない。あと普通に壁が薄い。

 

「アイスでも買いに行きましょう。こうも暑くては参ります」

 

「ん」

 

 コンビニまでの道すがら、話すことにした。外に出る。

 

「しかし、ここは星が良く見えますね。空気も澄んでいる。将来住むなら、こういうところがいいと思っています」

 

「えー。あたしはヤダなー、電車もねーし。山と海しかねーし、遊べるとこなんもねーし。最寄り駅まで車で30分とかありえねーんですけど」

 

「はは。まぁ──君ならそう言うだろうと思いました」

 

「ん、分かってんじゃん。そだよ、あたしは映えるとこじゃなきゃヤだし、遊ぶの大好きだし。田舎はカンベン……けど、まあたまにはいいかな。こーゆーとこも」

 

「はい」

 

 足音が二人分。

 

「……ね、あと夏合宿ってどんくらい?」

 

「4日です。最終日は、恒例の夏祭りがありますが」

 

「そっか。じゃ、もう終わりか。なんか……すぐ終わったなー。あたしの夏、これで終わりかぁ」

 

「物足りないと?」

 

「……、どーだろ。ちゃんと頑張ったし、夜はあのバカたちと遊んで、楽しかったし……物足りなくは、ない」

 

「……そうですか。しかし、本番はここからです」

 

「うん。……ね、あっすー」

 

 ジョーダンは足を止めて、口を開いた。

 

「一年のさ、有馬の後。覚えてる?」

 

「はい」

 

「……あは。思い出すと恥ずー。あの時はあたしも若くてさー、ほんと何やってたんだって、思い出して恥ずくなんの」

 

 クスリ、と笑った。ジョーダンらしくない笑い方だが、なぜだか似合っていた。

 

「──けど、忘れたことはないよ。あたし」

 

「……ええ。契約ですからね」

 

「いつだっけなー。あたしが走るのは、あたしがそうしたいからじゃなきゃダメだって……皐月賞だっけ。言ったじゃん」

 

「はい。今も、その言葉に変わりはありません」

 

「ん。あのさ、聞かせてよ。なんであっすーはさ、あんなヘンなこと言うの? あれやれこれやれとか言えばいーじゃん」

 

「……少し歩きましょう。あのベンチまで」

 

 コツ、コツ、コツ。

 

 踏み込んだことのない明日原の原点。トレーナーをしている根源的な動機に、ようやくジョーダンは踏み込んで、明日原はそれに応えた。

 

 子供達の遊び場だろう。砂場、ジャングルジム、塗装の剥げたシーソー。街灯に群がる虫。夏の終わりだと、なぜだか思う。

 

「僕はね、傍観者なんです」

 

「……? どゆこと?」

 

「君たちウマ娘が、自分の意思で何かを成そうと努力する。そして走って、結果が出る……その全てを、可能な限り近くで見たい。僕がトレーナーになった理由です」

 

 変なヤツ、とジョーダンは思った。

 

「変なヤツ、と思うでしょう。……昔話でも聞いてもらいましょうか。いつぞや、オフサイドトラップというウマ娘の話をしましたね。あの天皇賞・秋が、僕の全てを決めました」

 

 黙って聞く。

 

「まあ──分からなかったんです、彼女のことが。どうして、どうしてと、何度も考えては、答えなど出るはずもなく……忘れられないんです」

 

 少し曖昧になるのは、話したくないからだろうか? いや……明日原自身も、よく分かっていないのだろう。

 

「笑えるでしょう。僕はもう一度、あの天皇賞・秋を見たいのですよ」

 

 言葉にすればそれだけ。しかしそのために明日原は全てを捧げた。それがどれほど大きなものなのか、ジョーダンにはきっと分からない。

 

「……けど、ムリじゃね? そんなのさ」

 

「ええ、不可能です。しかし……忘れられない。あの日の記憶が残って……だから、それを上書きするようなレースを見たいという望みで、妥協しています。それでもまだ、見たことはありませんが」

 

「んー……それならさ、トレーナーにならなくても良かったんじゃね?」

 

「まあ、そうですね。けど、僕はそれを最も近くで見たかったんです。誰かが……僕の望みを叶えてくれると信じて……しかしスカーレットの物語を見届けても、結局僕は解放されませんでした。彼女ではなかったんです」

 

 解放という言葉の示す通り、これは──呪いだ。明日原はもう、そのことしか考えられない。トレーナーになるしかなかった。

 

 それはもうそういうものだ。

 

「僕の見たいものは君たちウマ娘自身の内から生じる、強い想いから生まれるレースなのだろうと思います。少なくとも、彼女はきっとトレーナーに命じられて走ったわけではない……それだけは、分かったんです」

 

「ふーん……」

 

「傍観者と言ったのはそういう意味です。君にあのレースを走れとか言うのは簡単ですし、きっと君は応えてくれると思いますが、それでは意味がないんです──それでは、想いは生まれない」

 

 少し考えて、ジョーダンは言う。

 

「……ううん。違うよ」

 

「……ジョーダン?」

 

 ジョーダンは立ち上がる。

 

「ねぇあっすー。あんたのために、走ってあげる」

 

「……僕のために? いや、気持ちは嬉しいですが、それでは……」

 

 いつになく──決意に溢れた、ジョーダンの表情を見て、明日原は口を閉じた。

 

「もう一回見たいんでしょ? けど同じのはムリ、だから──もっとすげーので、上書きしてやる」

 

 悪戯げに笑うジョーダンは月光に照らされて綺麗だった。

 

「──ジョーダン、君の……君のことを、信じてみても、いいのでしょうか?」

 

 まるでいつだかの焼き直し。

 

「……契約したろ? ちゃんと輝くよ、明日原。あんたが見たいものを全部見せてあげる。あんたが欲しいものは全部あげる」

 

 手を差し出した。いつだったか、そうしてくれたように。

 

「だから、最後の、最後の……最後まで、あたしのこと、見ててね」

 

 ひまわりのような笑顔──

 

「……ええ。契約、ですからね──ちゃんと果たしてください。見ていますよ、君の物語を」

 

「もち。……あっすー!」

 

「はい」

 

「秋天! やるぞーっ!」

 

「……おーっ!!」

 

 ごつ。グータッチに込められた意思は固く、道は見えた。

 

 そして彼女たちは走っていく。夏を越え、決戦の季節へ。

 

 




この夏合宿サイドBを描くのに2年近くかかりました マジで何してんねん
サイドBはマジで色々考えてたんですけど……やっぱ王道が1番やな

・トウカイテイオー
 史実に照らせば30代後半ですが不思議な力で若々しいテイオーに。
 サイドBは生霊と化したテイオーがジョーダンにとり憑く構想もありました(マジです)

ここからや……ようやく書きたかったものが書ける……長かった……
マジで長すぎな マジで
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