帝国主義者はパーパルディアを救いたい!   作:青短

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閑話? この素晴らしき、自由な世界

 

第一補給師団師団長のマータルは政争の渦中にいるレオナードから皇都で師団に対しての通達を伝えられた。

マータルには意味が分からなかったが、各部隊に伝えれば分かる。と押し切られて師団基地近くのデュロにまで帰ってきていた。

 

「シュサク少尉、すこし伝令を頼んでも?」

「はっ!閣下!」

 

生真面目そうな憲兵隊の部下を見つけると伝令を頼む。

何でもレオナード曰く、「通信や魔信は傍受されるかもしれん」とのことだが口頭にそこまでこだわっている理由は純粋なマータルに思い至るわけもない。

 

「して、どのような?」

「あ~確か…『もうすぐ出番だ。魔術班はいつものように全力、科学班は実地試験。憲兵は対ゲリラ演習をしろ。B班は今回は休み、C班はお披露目を行え。』だったかな?」

 

魔術班、科学班に憲兵は分かるが、B・C班は何なのか。A班はどうしたんだ?そもそもそんな部隊はうちの師団にはいないはずだ。

そう考えていた矢先だった。

 

「フフフ…では見てみますか?『次』を。『前回』も良かったですが、『次回』はそれ以上ですよ。きっと。」

「あ、あぁ…」

 

目の前の部下は突然微笑みだす。

口角を上げてどこか寒気のする笑みを浮かべながら愛おしそうに目を潤ませる彼は、少なくともマータルにとって理解できない人種の人間だと気づいたのはその時であった。

 

 

___

 

 

 

魔術班

 

「おや、シュサク少尉ではありませんか!」

「伝令に来ました。出資者(レオナード)から、『いつものごとく全力を出せ』とのことです。」

「ふん!分かっておる!…技術部だの防疫給水部だのと研究協力までしたのだぞ?きちんと、()()()()魔光砲まで作ったのだ。今回は自信作だからな…!」

 

『前回』では科学より魔術が優れているという自信から、既存兵器の焼き直し程度のものしか開発できていなかった魔術班。

しかし今回は科学側の人間とも交流を深めたようで、レオナードの求める兵器を理解できたようだ。

『死者は少なく()()()に。』

シュサクが初めて聞いたときに侮蔑して、今では最も好ましい言葉だ。

()()()()魔光砲の中身を聞いてよりその確信を深める。なんと、『人道的』とは甘美で美しい響きなのだろう…

 

 

 

科学班

 

「シュサク少尉殿!何か御用ですか?」

「伝令です。出資者(レオナード)から、『実地試験を』と。おそらく前に開発していた()()かと。」

()()かぁ…しかし今度もどうせ勝ち戦だろう?だったら使いづらいぞ?」

 

『前回』ではようやく大手を振って研究ができるということから、『水素』なる物質と『酸素』なる物質を燃やすことで大きな爆発を引き起こす爆弾を開発した科学班。

魔術班を震撼させたものの戦果はそれほどなく、そもそもコスパが悪いし保管しづらいと言われて安価な兵器を開発することにした今回の科学班は新しい兵器を開発。

レオナードはそれにゴーサインを出し、実地試験を行うことになったのだ。

 

「そうそう…シュサク君のアイデア、一応作ってみたが…」

「ほう!ありがたい!」

「…確かに()()()さ。死者は少ないだろう…しかし!「そこまでの方がいいかと。出資者(レオナード)はあなたを好ましく思っているのですから。」…あ、あぁ。何でもない。何でもないさ。」

 

そういうと彼はシュサクにそれを渡す。

レオナードからも『有効性を確認しろ』とのお達しだ。(シュサクにとって)素晴らしいその武器はレオナードからも期待されている。

 

 

 

B班

 

「…こちらは防疫給水部本部です。御用のない方は「シュサクです。伝令に来ました。」…中へどうぞ。」

 

『前回』のMVPにしてシュサクが『死者は少なく()()()に。』の真意を悟った場所である防疫給水部は神経が図太い彼にとっても長居したい場所ではない。

別に『実験』が嫌なわけではないが、被験者と万が一にも接触してしまうのは嫌だ。

眺める分には楽しいんだがそこが難点だな、とシュサクは考える。

 

「…どのようなご用件で?」

出資者(レオナード)から今回は休み、と。」

「…そうですか。」

 

そう言葉を残すと、何もなかったかのように建物の奥へと戻っていく。

きっと彼女はシュサクとはまた違った狂人なのだ。自分よりはるかに小さなものが、同じ人間をじわじわと嬲り殺しにする過程を見て眉の一つも動かさないのだから。

 

 

 

C班

 

「おやおや?シュサク少尉殿じゃあないか!今日も見学かい?」

「いえ。今日は出資者(レオナード)からの伝令です。見学は後で…」

 

『前回』。開発が間に合わず何も成果を出せなかったC班はシュサクが知る限りでも何種類かの()()()な兵器を作っている。煽りに来た魔術班も試作品を見て冷や汗を流すレベルだ。ちなみに実験見学に何十回か来ているシュサクはとっくに常連だ。…まぁ被験者が男だとすぐ帰るが。

 

「そうかぁ…で?出資者サマは何て?」

「お披露目、だそうです。」

「っしゃおらぁぁ!!」

 

喜びを隠せないC班は早速試作品などをまとめて、デュロで隠れて生産中の完成品を受け取るための準備を始める。ついに、ついに彼らの努力が陽の光を浴びるのだ。思わずシュサクもほっこりする。

 

「塩素よし!」

「二塩化カルボニルよし!」

「そして2,2'-硫化ジクロロジエチルよし!」

「「「ヨシ!」」」

 

おそらくこの場に中身と常識が分かる人間がいるとすれば、「『ヨシ!』じゃねぇよ!」というであろう。

そんなあわただしい技術部化学班をシュサクは去ってゆくのだった。

 

 

 

憲兵

 

「シュサクです!ただいま戻りました!」

「…お前また…いや、何でもねぇ…」

「あぁそうだ、憲兵隊にも伝令です。次は『対ゲリラ演習をしろ』とのことです。」

 

シュサクは知らない。憲兵隊内部では彼の性癖が上司にも部下にも同僚にも確信されていることを。

 

(リョナとか趣味わっりぃ…ああいうのは苦手なんだよなぁ…)

 

そしてそれが真実であることも、

 

(((俺も見学行ってみよっかな…拷問だけじゃ最近物足りねぇし)))

 

憲兵隊の仲間の大半がシュサクと同じ性癖であることも、知らない。

多分世界にとってはそれが一番平和だろう。たぶんおそらくきっと。

 

 

 

 

___

 

 

『人道的』な兵器

 

地球では(規制済み)なことを引き起こすから規制済みになった兵器。

でも大丈夫!安心して!この素晴らしき、自由な世界には規制なんてない!

 

ちなみにシュサクは原作キャラです。一応Web版は読んだんですが、wiki見てたら見覚えのないやつがいたから確認→名前一回しか出てきてねぇけどキャラが濃い~ってなって採用した。原作とは違ってもうちょいましな死に方するんじゃない?(適当)




ハーグもねぇ!ジュネーブもねぇ!規制がそもそもされてねぇ!
おらこんな世界いやだぁ~おらこんな世界いやだぁ~東京へ出るだ~
東京へ出たなら、支持を~集めて~国際~規制つく~る~だ~
(なお本作ではしないどころか主人公が妨害する側)
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