帝国主義者はパーパルディアを救いたい!   作:青短

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第一話 科学との邂逅

中央歴1582年。

レオナードは順調にエリート街道を歩み第一外務局の局員となっていた。

前世では一国の宰相として動いていたため、外交の汚いところまで熟知しているレオナードは軍を動かすより舌を動かすほうが得意なのだ。

 

(しかし、皇国を祖国のようにしないためには地位が、権力が足りない。)

 

もちろん自らが裏から動かせる派閥はいくつか作っているものの未だ年齢は23歳。

列強第二位のムーとの窓口係として課長ではあるが、それも年齢にしては、の但し書きがつく程度。

そんな中だった。第二文明圏の列強たるムー帝国で大規模な内戦『南北戦争』が発生したのは。

 

 

 

_____

 

「…と、いうわけでムーへの駐在武官団に第一外務局を代表して参加させていただきたく。」

 

「まぁ、いいだろう。一応派遣は行うつもりではあったしな。腐っても列強、ムーとの窓口として向こうの戦力を見ておくべきだろう。」

 

裏から手をまわし駐在武官団に参加することとなったレオナードだが、本当の狙いはムーの戦力評価ではない。

そもそも南北戦争は専制体制への復古を目指す陸軍中心の反動派と隣国、マギカライヒの共産体制に感化された若手中心の改革派、そして現状維持を望む政治家・海軍中心の立憲派の三つ巴の政局が崩壊したことが始まりなのだ。

三すくみの中、反動派の政府転覆計画とされるものが暴露され、それに立憲派が食いつき反動派の一斉検挙。

陸軍が弱ったところで蜂起した改革派青年将校団のことを考えると、全て改革派の陰謀だったのだろう。

だから上層部が粛清され統制の取れていない正規軍も、反逆者ということで士気の低い反乱軍も見る価値はない。

彼が見に来たのは…

 

「あ~外交官殿、本当に前線で見るんですか?」

 

「もちろん!そのためにわざわざ本国から来たんだぞ?」

(『科学』がなければ共産主義者ども(薄汚いアカ)を見に行く必要もなかったのだがな!)

 

ムー南部で蜂起した改革派は、正規軍と首都オタハイト近郊で交戦状態に突入。

本国にその情報が伝わってすぐに来たわけでもないからムー到着時には戦線は南部に移っているようだった。

 

(しかし、レイフォルを中心とした周辺国の越境にアカどもの焦土作戦。ムーはだいぶんきつい戦後になりそうだな…)

 

ちなみに、レオナードは個人的に正規軍を応援している。

 

 

 

閑話休題。

レオナードは前線でムーの科学の片鱗をつかんで帰りたいのだ。

そのためならば南側の兵士の死体からでもあさる覚悟をしてきているが、ここはファンタジー世界とはいえ技術レベルは地球でいうWW1にも至っていない。

つまり、つまりだ。

 

「これは…」

 

整然と並ぶ野戦病院。そして、そこからはみ出すほどの戦病者。

戦死者の死因の大半が疫病。いまだそんな時代である。

 

「こっちに包帯を!」

「隔離しろ!赤痢だ!」

 

前線よりも阿鼻叫喚のまさに地獄。

 

「うっ…」

「…外交官殿。やはり後方で…」

 

大軍での長期戦に、同等の相手に慣れていないからこそ凄惨な戦場に慣れていない駐在武官たち。

しかし、レオナードには既知のものだ。

 

「何を言っている?前線に行かなくては貴君らの仕事になるまい。…それに、後方より前線のほうがましに決まっている。」

 

かつての祖国は国家全体が、国民全員が()()だったのだ。

何も躊躇することはない。

 

 

 

_____

 

最前線から2㎞地点。

正規軍火砲陣地には陣営問わず大量の死体が積み重なっている。

しかし、生きて怨嗟の声を漏らす後方の負傷者と比べると、いかに内臓が飛び出て頭蓋が砕けていようとただのモノに等しい。

心なしか駐在武官らも生気を取り戻しているようだった。

 

「なっ!反乱側に的中させているだと!」

「なんだあの連射性能は!」

「さすがは列強第二位…か」

 

小声で互いにささやきあっているところを見る限り皇国陸軍としてのプライドの危機のおかげで気にする余裕がなくなった、といったところか。

とりあえず名もなき兵士が遺したであろう撮影機や純科学製の銃、もちろん火砲も含めてパーパルディアに輸入、改良をしよう。

レンズのさきの撤退していく南軍をにらみつつレオナードは思索にふける。

パーパルディアをかつての祖国のように強く、自らの理想のように素晴らしい国とするために。

 

 

 

 

ーーー

 

『南北戦争』

 

中央歴1582年にムーで勃発した大規模な内戦。

しかし列強第二位であるものの魔法文明ではなく科学文明を主軸とした国家であるムー帝国に駐在武官を派遣した国は少なく、しかも文明圏内国家で駐在武官を派遣した国の多くは熾烈な総力戦の片鱗を垣間見た後すぐに本国に帰還。

最前線まで観戦を行った国はパーパルディアのみであったというが定かではない。

余談だが、その後勝利した立憲派のムー正規軍の武器在庫や南軍部隊の装備が国外に流出したが流出先は特定されていない。

 

 




各国を隔てているのが大体海だから陸軍が海軍ほど発達していない。

海軍がWW1ぐらいなら陸軍は日清・日露レベル。

戦死者のほとんどが戦病死

それに列強同士の世界大戦が起こってないので、列強が中小国いじめて蹂躙する戦争しかしてないなら、殺し殺されの戦争を見たら吐きそうという作者の偏見です。

…まぁあの世界の列強で中小国相手に辛く苦しい耐久戦してたらクビだと思いません?
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