中央歴1589年 パーパルディア皇国国境付近。
「た、隊列を組めー!」
「マルタ軍が壊滅!アルーク軍が撤退しています!」
「パーパルディア軍の地龍だ!焼き殺されるぞ!」
降り注ぐ魔導砲に、側面からの地龍による火炎放射。12か国連合軍は指揮も取れないほどに混乱していた。
彼らは知る由もないが、パーパルディア『皇国』の国境沿いにはすでに高度な魔導砲陣地が三日もかからずに展開できるように整えられており、地龍を主力とした機動部隊兼輸送部隊によって、略奪をしながら遅々として行軍していた十二か国連合軍の進軍先は数分で地獄と化すことは運命づけられていたのだ。
…しかし、皇国軍の主力はあくまで歩兵である。
「こ、後方から大量の敵軍が…」
「…もう無理だ。」
クーズ王国軍が隊旗を左旋回に振り始めたのを皮切りに、12か国連合軍は続々と投降。
この敗北によってパーパルディア皇国と戦争状態にあった29か国の内、主力となっていた12か国連合の戦力がほぼ消滅。そして皇国はここぞとばかりに講和会議の開催を宣言し、皇国を含めた30か国の『南部フィルアデス戦争』の全交戦国の使節団がデュロに到着。のちに『パーパルディア史上最も
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「…ゆえにパーパルディア皇国としてはこのような講和条件を提示したい。まぁ拒否するのであれば我々は全力をもって
エドリン王国の全権大使は滔滔と語るレオナードという男を心の中で睨みつけた。
エドリン王国とパーパルディアとの国力差は絶望的。ゆえに他の共戦国の顔色を伺いながら提示された講和条件を見ると…
「なっ!」
・おおよそエドリンの国家予算半年分の賠償金。
・3年間の軍備制限
・アルーニ防衛条約への調印、批准。
目を疑うほど
賠償金は常識的な数字で、軍備制限も第三項があるため他国に襲われることはない。
しかも、アルーニ防衛条約はパーパルディアの従属国になるようなものではなく、
・加盟国間での技術共有、開発援助
・加盟国の自主的な出資によるアルーニ防衛条約機構軍の設立および、防衛請負費の条約機構基金に対する支払い
・加盟国へのアルーニ防衛条約機構軍駐屯
など、一切不平等な内容など含まれていない内容だ。
しかも、出資が多い国ほど発言権も強いため下手をすれば皇国を盟主の座から引きずり下ろすこともできる。
…周りの使節たちからも、ちらほらと『本当にこんなぬるい条件で…?』『いや、皇国も疲弊しているのでは…』というような意見が聞こえてくる。
「…今、この場で返答願いたい。我々の軍は
「…我が国は、調印させてもらう。」
エドリンの全権大使は講和条約への調印を行った。
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(7か国…少し多いがまぁいいだろう。)
レオナードとしては、ここで全権大使を出してくる国など2,3か国程度でそのほかの国は一度持ち帰ると思っていたのだが、いささか読み違えたようだった。
「あぁ、マータル君か。近々君の師団の一部が前線に投入されるが…いや、指揮を執る必要はない。これが終われば昇進は確実だろう。」
マータルに対しての通信を終えたレオナードは通信を陸軍の別部署にかけなおす。
「『防疫給水部本部』は出撃だ。実験の成果が見られると期待しておこう…あぁ、『C』は流石に無理だと思っていたが『B』はもう最終実験か。派手に使うがいい。」
通信を終えたレオナードは、転生してこの方祈ったことなどない神に今更ながら祈りをささげるのだった。
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中央歴1600年 神聖ミリシアル帝国 カルトアルパス
「次のニュースです。昨年に始まった『南部フィルアデス戦争』における最後の交戦国カナーラ共和国が降伏し、講和条約が締結されました。これに伴い準列強であった皇国の列強昇格が今年の先進十一か国会議で正式に承認される見通しで…」
酒場で流されるニュースに訳知り顔で酔っ払いたちは頷く。
「まぁ当たり前だな。パーパルディアがいくら属国を解放するほど弱ってるからと言って、腐っても準列強だ。」
「いや…一回武器を売りに行ったことがあるんだが、どうも皇国の連中は外交方針を転換したらしい。今回の講和でもほとんど併合された国は無いようだし…」
「あのプライドの塊がか?!そいつはすごいな!」
ざわめきが広まる酒場には、その次のニュースを注意しながら聞くものなどいない。
「…また、フィルアデス大陸では昨年より、ムーの風土病であった『赤痢』の感染がみられており、カナーラやクーズ、アルークへの渡航には十分な注意をもって…」
そして、酒場の話題は次の明るいニュースへと移っていった。
「…ムー帝国において先日開発された『航空機』ですが、我が国においても『天の浮船』の開発に成功し…」
「へっ!ムーの奴らが帝国に勝とうなんざ百年早いってんだ!」
「ミリシアルの魔術がムーの科学程度に負けるわきゃねぇよ!」
酔っ払いたちの宴は夜通し続く。
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南部フィルアデス戦争
パーパルディア皇国に対して最終的に29か国が宣戦、敗北した戦争。
第一次デュロ講和会議において7か国が、第二次デュロ講和会議では18か国が講和条約に調印したために、事実上第二次デュロ講和会議によって終戦したとみなされている。
なお、第二次デュロ講和会議では第一次講和会議よりも厳しい講和条件が提示されたが、国内における伝染病の蔓延によって講和に応じるしかない国が大半であった。
…ちなみに第二次デュロ講和会議における講和条件は、
・おおよそ国家予算2年分の賠償金
・半永久的な軍備制限
・アルーニ防衛条約および、パーパルディア連邦条約への調印
であり、最初の条件は甘くするが二度目以降はさらに厳しく、という外交方針への転換の始まりと他の列強諸国からはみなされているため、プライドの塊で聞く耳を持たなかった皇国の方針転換としておおむね好意的に受け止められている。
近隣諸国にやさしいパーパルディア()でした。
そんなわけねえんだよなぁ…
今回パーパルディアが何をやらかしたかは、『防疫給水部本部』で調べればわかると思います。
なぜだ!なぜ日本国ブチギレフラグがどんどん立っていくんだ!
…ん?『B』だけじゃなく『C』も製作途中らしいぞ?(日本国ブチギレフラグ)