帝国主義者はパーパルディアを救いたい!   作:青短

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第五話 『同盟国』の開発と周辺国の陰謀

中央歴1613年 アルーク王国

 

「重税反対!」

「国王を引きずりおろせ!」

 

「…なぜだ!なぜこんなことに?!」

 

南部フィルアデス戦争後のデュロ講和会議において講和を吞んだ七か国の内の一国、アルーク王国は崩壊の危機に瀕している。

ことの発端は24年前の講和から始まっていた…

 

___

 

中央歴1589年 アルーク王国

 

「…このようにアルーク王国に教育機関を設置し、国民全体が高度な教育を受けられるように…」

「す、素晴らしい!…しかし、いいのですかな?」

 

アルーク国王は、アルーニ防衛条約機構関連の外交を担当する第二外務局局長レオナードから開発計画の説明を受けていた。

 

「教育、都市開発、それに疫病からの対策まで…何か裏があるか勘繰りたくなりまして」

 

そう。これほどの開発をパーパルディアが格安の価格で請け負うのだ。

軍備制限がなされ、軍事費を用意する必要のないアルークには治安維持と内政ぐらいしかすることがないため、内政まで請け負われたアルークの国家予算は限界まで切り詰めても余る始末。裏があるか勘繰りたくなるのは道理だろう。

 

「いえいえ!我々の外交指針は転換されたのですよ!…それに疫病からの対策に関しては、伝染病の研究のための費用をアルーニ防衛条約機構からも引っ張ってきているそうですから…」

「何はともあれ、ご安心を。パーパルディア皇国は責任をもって、あなた方をお守りしますよ。」

 

そして、レオナードは心の中でつぶやくのだった。

 

(この関係はwin-win…いや、()()()も考えるなら我々の一人勝ちの関係だがな。)

 

もちろん、うまい話には裏がある。

伝染病なんざ第一補給師団の『防疫給水部』の研究とムーに潜らせた諜報局からの情報で適切な治療法は確立させているし、そもそも伝染病が指定された地域からは出ないように細心の注意は払っているから、その地域から遠いアルークに赤痢が来ることはない。

 

(それに、国民に教育や良き生活を提供するのは()()()()()()()()()()()()。この意味をあの国王はいつか知るだろうさ。)

 

アルーク王国は余った金を何処につぎ込むのか?

アルーニ防衛条約機構しかない。パーパルディア勢力圏に少しでも影響力を高めるためにも正しい選択だろう。

そして、その金は巡り巡ってアルークの開発費用となる。そういう仕組みだ。

しかも、伝染病の感染が拡大しているということにしてパーパルディア勢力圏の交易は皇国資本を仲介しなければほとんどできないようになっている。

 

(まあ、いずれはアルークに内政や軍事関連の権限は返還する。それが()()()()()()()()()()()()()()()。せいぜい20年も持てばいいほうだろう。そこから先は皇国にすべてを任せていて何もできなくなった無能な政府が、皇国に国を切り売りして借金するしかないのだから…)

 

…しかし、もちろんだがこの政策にも欠点はある。

アルーニ防衛条約機構だけの資金ではこの政策は回らない。ゆえに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。もちろん、レオナードはその金を皇国から出させるつもりは毛頭ない。

そもそもこの政策が認可されたのは皇国からは金を出さずに済むからなのだ。

 

___

 

中央歴1613年 クーズ公国

 

南部フィルアデス戦争後の第二次デュロ講和会議において講和を結んだクーズ公国はパーパルディアの属国と化していた。

パーパルディア連邦条約もまた、遅効性の毒薬のようなものだったのだ。

パーパルディア人の()()()()が実権を掌握した政府は、唯々諾々と苛烈な統治をおこなわされ国民の不満はクーズ政府に集中した。

さらに、パーパルディア人は経済を掌握しゆっくりと、それでいて着実にクーズ国民にパーパルディアとの同化政策を教育や報道の面から刷り込む。

気づけばかつてのクーズ王国のような反パーパルディア精神は、『我々はけしてパーパルディア皇国の国民ではないが、()()()()()()()()()の国民だ。』というようなものに換骨奪胎された。

 

「…国は富み滅ぼされることはない…案外、今がクーズにとって良き時代なのかもしれないな…」

 

しかし、それもすべて過去の話。すでに政治はパーパルディアと同化したクーズ人がパーパルディア人の監督のもと善政を敷いている。

正史におけるような王族皆殺しや、国民の奴隷扱いはない。クーズに艱難辛苦の時代は訪れなかったのだ。

牙を抜かれたからと言って、国がなくなったわけではないのだ。いつかはクーズも独立志向を取り戻すかもしれないが、それまでは安寧の日々を送るのも悪くはないだろう…

 

「パーパルディアにも世継ぎの方が生まれたか…『ルディアス』か。」

 

クーズ公は気だるげに祝福の手紙をしたためた。

 

___

 

時を同じくしてリーム王国、王都ヒルキガ。

 

「どうです、バンクス王。我々で手を組みませんか?」

「…ふむ。」

 

ヒルキガにやってきたパンドーラ大魔法公国の使者は甘い言葉でバンクスを誘う。

確かにそのやり方ならば忌々しいパーパルディアの鼻を明かすことができるだろう。

しかし、()()()()()()()。何か、とても大切な何かだ。

 

「パーパルディアの出す出資より多くの金を出せば我々がアルーニ防衛条約機構の主導権を握れるのです!一国ではかなわないでしょうが、我々が手を組めばどうでしょう?パーパルディアは軍縮を行っているという話もあります!今乗っ取れば、パーパルディアは文句も言えず列強の地位を去るでしょう!…リームが乗らないというのならばマオ王国にでもこの話は持っていくとしましょう。」

 

返事が待ちきれないようなパンドーラの使者はリームが常日頃から見下すマオ王国の生で持ち込んで説得を試みる。そこまで言われるとリームも乗らざるを得ないだろうという計算の上ではあるが、それを決め手としてバンクスは答えた。

 

「いいだろう。…しかし、この計画がうまくいった場合の主導権はこちらに渡してもらおうか。」

 

そして、パンドーラ大魔法公国とリーム王国までもが加盟したことでアルーニ防衛条約機構にはそれを脅威と見たマオ王国やマール王国が加盟。パーパルディアの勢力圏は第三文明圏全体に広がったが、そうして加盟した国はパーパルディアに臣従している国家ではない。

パーパルディアは勢力の拡大とともに、内側に大きな爆弾を抱えたのだった。

 

___

 

パーパルディア連邦条約

 

心優しいパ皇がアルーニ防衛条約機構よりもおんぶにだっこで国家運営を請け負ってくれる条約…ともいえる。

内実はパーパルディアに完全敗北した国か、皇国への借金で首が回らなくなった国を皇国の一部に同化させるための条約。

外交権や徴税権、司法権までパ皇がガッチリ握っており、国防もアルーニ防衛条約機構軍にお任せ。

教育や報道もパ皇資本が握っているため、時がたてばたつほどパーパルディア連邦国民としての意識がわいてくる。お前もパーパルディア(連邦)人にならないか?

元ネタはもしかしなくてもソビエト連邦帝国連邦のはず。…というか主人公の元ネタ大英帝国なのに、大日本とか赤い帝国みたいなことしかしてねぇ…

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