帝国主義者はパーパルディアを救いたい!   作:青短

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第七話 皇国代表堂々退場す!

中央歴1630年。

その年はパーパルディア史において苦難の年であったと記録されている。

皇帝の死により若くして皇位に就くこととなった皇太子ルディアスと、先代皇帝の時代から権勢を誇ってきたレオナードの権力闘争。

本来であればルディアスが圧倒的に不利なはずだが、外交を握るレオナードに対して、内政を握るルパーサを圧倒的なカリスマで味方につけたルディアスは互角以上に渡り合い、ほぼルディアスの勝利といっても過言ではない情勢になっていた。

 

…しかし、こんな大きな隙を周辺国が見逃すはずもない。

アルーニ防衛条約機構加盟国会議で、負担金割合2位のパンドーラ大魔法公国と3位のリーム王国が条約機構軍の軍権をパーパルディアから剝奪することを提案。

レオナードが本国で政争を行っていることで代わりに皇国代表となっていたバルコは顔を青くして否決しようとするものの、アルーニ防衛条約機構への負担金支出割合が年々減っているパーパルディアに見切りをつけたのかマオ王国やマール王国なども提案に賛成。結果として皇国から条約機構軍の軍権は剥奪されてしまう。

もちろんこれを不服としたバルコだったが、議論も拒否されると顔を赤くして条約機構からの離脱を表明。

リーム王国とパンドーラ大魔法公国の代表が深い笑みを浮かべる中、彼は席をけって議場から出ていくのだった。

 

 

___

 

 

 

「…そうか。もう少し早いと思っていたんだがな。」

 

豪奢な執務室で老人はつぶやく。

4()0()()()()()()()()()。花開くのはもう少し早くしてほしかった。

老人に第二外務局は今回の責任をとり第四外務局と改名し、規模も大幅に縮小せよ。という勅令…つまりは実質上の左遷命令…を伝えに来た男は答える。

 

「遅すぎだ。私がどれだけ肩身が狭い思いをしたことか…」

 

感慨深げに語りあう二人の名前は、レオナードとルパーサという。

 

「ルディアス殿下…いや、陛下は綺麗好き過ぎるきらいがある。そのあたりは頼むぞ?」

「わかっているさ。兎にも角にもまずは片づけ、だろう?」

 

ルパーサが見つめる机の上の地図上。

そこには『アルーニ防衛条約機構』という文字がでかでかと記されていた。

 

 

___

 

 

レオナードの計画はアルーニ防衛条約機構からのパーパルディアの実質的追放までをも含むものであった。

ルディアスとの政争などのハプニングもあったが、先代皇帝との御前会議の出席者で計画を知るルパーサと共謀し自然な形でリーム王国やパンドーラ大魔法公国をはめることができた。

レオナードの陰謀は緻密とはとても言い難いものではあるが、ルディアスとの一件では咄嗟のアドリブが利きやすいようにわざと荒く組んだのが功を奏したといえるので逆に良かったのかもしれない。

 

南部フィルアデス戦争で敗北を強要させて顔に泥を塗った軍部、かなり無茶な財政運営をさせてしまった財務局、それに権限を連邦条約によって大幅に縮小された臣民統治機構。

それ以外にも多くの方面から恨みをかっているレオナードが退き、『綺麗な』ルディアスが実権を握るべきだろう。

実をいうとそう考えていたレオナードにとってルディアスから仕掛けられた政争は好機でもあった。

 

「…引退、か。」

 

政界を引退し、第四外務局とかいう外務局の片隅で隠居生活を送るのも悪くはない。

 

「その前に、最後の一仕事だけは終わらせるとしよう。」

 

軍部、財務局、臣民統治機構…彼らもきっと喜ぶだろう。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

…ことが終われば何と言われるだろうか。

詐欺まがいの悪辣な謀略だ。ミリシアムやムーに詳細が伝わらないようにしておくか…

国家戦略局、情報局、第一外務局…

様々な伝手を思い浮かべながらレオナードが最後の詰めを行う。

 

数日後には、彼が人生を賭した政治的芸術が全貌を明らかにする。

そのとき初めてパーパルディアは列強としての地位を完全なものとし、植民地帝国への道を歩みだせるのだ。

新たなるパーパルディアの日の出が近いことをレオナードは確信していた。

 

 

___

 

 

「うまくいった、か。」

 

リーム王国国王バンクスはアルーニ防衛条約機構からパーパルディアが離脱したという報告を聞いて安堵のため息をついた。

パーパルディアの戦力は防衛条約機構に加盟したときに調査済みだ。

最近になって軍拡を始めても陸海合わせて45万程度の常備軍しかいない皇国に対し、こちらはパンドーラと合わせて70万を既に超している。しかも、条約機構軍の500万を含めればどう考えても勝てる戦争だ。

パーパルディアを降伏させればパンドーラとの主導権争いが始まることも考えれば、戦力はこちらも向こうも出すまい。ならばクーズ公国らが主力となる条約機構軍を皇国にぶつけ、目の上のたん瘤のマオ王国もついでにすり減らさせるのが最上か…

そんな戦後を見据えた政策を考えていたバンクスだったが、外交官からの宣戦布告の報を受けると悠々と立ち上がり条約機構への支援要請を通達させる。

 

「さぁ、列強の歴史に幕を閉じさせるとしようか。」

 

中央歴1630年1月28日。パーパルディア、リーム王国に対して宣戦布告。

同日アルーニ防衛条約の相互防衛条項に基づきパンドーラ大魔法公国含む7か国が参戦。

後世には『史上最悪の殲滅戦』、『パーパルディアの兵器博覧会』と呼ばれることとなる第二次南部フィルアデス戦争が幕を開けることとなる。

 

 

 

 

___

 

 

 

ルパーサ

 

原作では優れた先見性を持つ内政・外交全体を管理できるレベルの有能な皇帝相談役。

しかし本作では外交をレオナードが担当していたため内政ガチ勢である。

作者が存在を忘れていたから慌てて出したなんてことはない。ないったらない。

ちなみに政争で皇帝側に付いたのはレオナードの権力が大きすぎたため、バランス調整のためという点もあった。

レオナードが失脚したから第二次南部フィルアデス戦争とかいう置き土産を頑張って処理することになる。

 




勝利を確信しているレオナード vs 勝利を確信しているバンクス
ファイッ!(片方失脚中)
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