異世界転生昔話   作:EC夕張

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02_3人のお姫さま

 むかしむかしあるところに、3人のお姫さまがおりました。

 赤姫さま、青姫さま、黄姫さまと呼ばれるお姫さまたちです。

 3人は異世界からの転生者で、みな不死身でチート能力を持っています。

 

 彼女たちを転生させた神様は、3人が仲良くすることを期待しておりましたが、そう上手くはいきませんでした。

 

 お姫さまたちは、全員とても自分勝手でワガママだったのです。

 

 神様の望みに反し、3人は仲良くするどころか会うたびに周囲を巻き込んでの大暴れをする始末。

 誰か1人が自分の好きなことをしようとすると、必ず他の2人の邪魔になってしまうので、お互いにお互いのことが大嫌いだったのです。

 

 赤姫さまは、自らのチート能力で街や建物を壊すのが大好きでした。

 青姫さまは、自らのチート能力で人の心や人生を壊すのが大好きでした。

 黄姫さまは、自らの手で育てた野菜で料理を作り、みんなに振る舞うのが大好きでした。

 

 だからそれぞれのお姫さまは、自分が世界で楽しく遊ぶために他の2人をやっつけてしまおうと思っていたのです。

 

 しかしお姫さまたちは全員が不死身なので、戦っても戦っても決着はつかず、ただいたずらに世界を破壊していくだけでした。

 

 

 これはよくない、と初めに言ったのは青姫さまです。

 このままでは遊ぶ前に人間が滅んでしまうと気がついたのです。

 人間が滅んでしまえば、遊ぶことも楽しむこともできません。

 

 お姫さまたちは互いに話し合い、世界を3つに分けてお互い干渉をしないようにすることにしました。

 

 

 

 ある日いきなり3つに分けられた世界は大混乱。

 かつての国境などお構いなく好き勝手に線を引いたため、大小様々なトラブルが頻発したのです。

 トラブルの規模は日々大きくなり、ついにはお姫さまたちの意向と関係なく戦争が勃発しかねないというところまで悪化しました。

 

 赤姫さまは、これに怒りました。

 人間を傷つけたり苦しめたりしていいのは自分だけだと思っていたため、勝手に争って数を減らされることが我慢ならなかったのです。

 

 彼女は自らのチート能力を使い、世界を3つに分ける新しい国境線に沿って苛烈な爆撃を加えました。

 その破壊力は文字通り世界を割るほどで、海も大地も、大陸さえもが割れて、やがて世界が3つに分けられました。

 世界規模の大混乱に心を痛めていた3人のお姫さまは、これでもう戦争は起こらないと、たいそう安心なされました。

 

 お姫さまたちはニコニコ顔でそれぞれの国へと帰ります。

 

 

 

 赤姫さまの国では、赤姫さまが壊すための綺麗で立派な街を作ることが義務になりました。

 青姫さまの国では、青姫さまに壊されるための幸せな人生を送ることが義務になりました。

 黄姫さまの国では、黄姫さまが育てた野菜で作った手料理を食べることが義務になりました。

 

 それはお姫さまたちにとって夢のような、全てが自分のためにある理想の国でした。

 

 

 しかしそんな夢も、永遠には続きません。

 

 赤姫さまの国は、深刻な資源不足に陥りつつありました。

 作っても作ってもすぐに赤姫さまが壊してしまうので、とうとう建物を作るための材料が無くなり始めたのです。

 国民も皆疲れ果て、どうせ壊されるのだからと手抜きが増え、建築中の事故と赤姫さまの粛清により人口も減少する一方でした。

 

 青姫さまの国は、内紛一歩手前の状態にありました。

 どれだけ幸せに生きようと努力をしても、ある日突然青姫さまに全てを奪われるのです。

 国民たちは皆疑心暗鬼になり、隣の誰かが青姫さまに操られているのではないかと警戒し、裏切りと復讐の連鎖により人の数は減る一方でした。

 

 そして、3つの国の中で最も悪い状況だったのが、黄姫さまの国です。

 黄姫さまは国民に対し、彼女の手で育て作った料理以外を口にすることを禁止にしたからです。

 手料理で世界の3分の1を支えるのは到底不可能で、国民たちはみなこっそりと密造食を口にしていたのですが、黄姫さまはそれに気がつく度に癇癪を起こしその場の人を皆殺しにしていました。

 そんなことを繰り返していたため、黄姫さまの国はあっという間に人が居なくなり、いつの間にか黄姫さまの好きなことは出来なくなってしまいました。

 

 

 

 困ってしまった黄姫さまは、人間を補充しようと青姫さまのところへ行きました。

 青姫さまの国の人口が最も多く、建物も壊れておらず、一見普通のように見えたからです。

 

 たくさんの人間を持っているのだから、少しくらい分けてもらえるだろうと黄姫さまは考えていました。

 

「それは協定違反です」

 

 青姫さま言いました。

 3人で決めたルールは互いに不干渉。

 手持ちの人間が全滅したから貰いに行くというのは、禁止されていることです。

 

 青姫さまは約束に則り、赤姫さまを呼びました。

 違反者が出れば、残りの2人で心が折れるまで袋叩きにすると決めていたからです。

 

「貴女は約束を守れないと思っていたわ」

 

 欲求不満気味だった赤姫さまは喜々として駆けつけました。

 黄姫さまは何か言おうと口を開きかけますが、その前に赤姫さまと青姫さまにより強制的に黄姫さまの国へと転移させられます。

 無人になったこの国ならば、人間を減らす心配をすることなく暴れることができるということですね。

 

 

 

 そうして始まった3人のお姫様たちによる戦いは三日三晩続き、やがて興奮した赤姫さまによって放たれた強力な一撃で、黄姫さま国は海の底へと沈んでしまいました。

 

 これに危機感を覚えたのは、3人を異世界転生させた神様です。

 神様は、異世界転生者に丸焼きにされた別の世界の神様の話を聞いていたので、このままでは自分も同じ目に遭ってしまうと怯えました。

 

 3人が一箇所に集まる瞬間を狙い、神様は自らの持てる全ての力を集中させます。

 赤姫さま青姫さまが黄姫さまへと殺到し、3人の座標が近くなった瞬間、神様は渾身の奇跡を起こしました。

 遠くへ。できる限り遠くへ。お姫さまたちが戻ってこられないくらい遠くへと飛ばす、極超長距離転移です。

 

 これにより3人のお姫様は宇宙の彼方、100光年先へと転移します。

 お姫さまたちの転移の最大距離は10光年なので、元の世界を見つけて戻ることはまず不可能な距離と言えるでしょう。

 

 

 突然宇宙へと放り出されたお姫さまたちはびっくりして、争いを止めました。

 周囲には何もなく、ただポッカリと空間に黒い穴が空いているだけ。

 3人は100万倍もの重力に惹かれながら、遠く光る星々を見て、自分たちがどれほど遠いところに来たのかを知り、なんだか可笑しくなってきました。

 

 宇宙はこんなにも広いのに、なぜ自分たちは一つの世界(惑星)にこだわっていたのか。

 1つの星を3人で分ける必要などなかったのです。

 

 同時にそう気がついたお姫さまたちは、3人で力を合わせると、手始めに自分たちを引き寄せるブラックホールを破壊しました。

 そして、それが別れの合図であるかのように、バラバラの方向へと知的生命体の住む星を探して飛んでいきます。

 

 こうしてお姫さまたちは、1人に1つ、自分だけの世界を手に入れたのでした。

 

 

 

 それから何百年もが経過し、最初に星の知的生命体を絶滅させたのは、黄姫さまでした。

 黄姫さまは昔と変わらず、自分の手料理のみが食べられる世界を作ろうとしましたが、不可能なものは不可能です。

 世界中の人が1人の手料理だけを食べて生きていくなどできるはずがありません。

 大きさが世界1つとなったので、人口の減る速度は昔の黄姫さまの国よりも緩やかでしたが、繰り返し繰り返し癇癪を起こす黄姫さまにより徐々に人々は数を減らします。

 

 最終的に、黄姫さまの世界では誰一人生き残ることができませんでした。

 彼女はまた新しい世界を探そうかと考えますが、宇宙は広く、次の知的生命体が見つかるのがいつになるのかわかりません。

 

 仕方なく黄姫さまは、自分の畑で料理を作り、自分で食べ、ゆっくりと生きる異世界スローライフを始めることにしました。

 

 

 次に滅んだのは、赤姫さまの世界です。

 赤姫さまの見つけた世界は十分なサイズと人口が有り、赤姫さまの欲望を受け止めてなお余裕のある世界でした。

 しばらくの間は赤姫さまも大満足で楽しい毎日を過ごしていたのですが、そんなことを繰り返していると徐々に、1つの街を破壊する程度では満足できなくなってきてしまいました。

 破壊の規模が複数の街になり、州になり、ついには国1つを壊しましたが、赤姫さまは満足できません。

 

 彼女が思い出すのは、昔黄姫さまの国を沈めたときのことや、3人でブラックホールを破壊したときのことです。

 あのときの気持ちよさを、生命の住む場所でやってみたい。

 そんな欲望が抑えきれなくなり、ついに赤姫さまは、せっかく手に入れた自分の世界を壊してしまいました。

 

 赤姫さまは満足しましたが、すぐに後悔します。

 知的生命体の住む星を探すのは、簡単なことではないのですから。

 ですが、帰る場所も無くなってしまったので、探さないわけにもいきません。

 

 仕方なく赤姫さまは、また次の星を探してゆっくりと異世界探検生活を始めるのでした。

 

 

 最後に滅んだのが、青姫さまの世界です。

 青姫さまは世界規模で人々の心を操り、充実した日々を送っていました。

 他の2人と比べるとかなり長くの間世界は平穏だったのですが、長年に渡る青姫さまの干渉の結果、ついに世界規模の大恐慌が発生しました。

 世界中でバラバラに発生する戦争を青姫さまは止めようとしましたが、1人に対し広すぎる世界はそれを許してはくれませんでした。

 

 次々と広がる戦火。増え続ける死者。

 困ってしまった青姫さまは、最後の手段を使います。

 

 その日世界は、平和になりました。

 

 青姫さまのチート能力により、一瞬にして世界中の人々が青姫さまの支配下に収められたのです。

 しかしそれは、全員が青姫さまの人形になったということでもありました。

 これでは何も楽しくないですし、仮に元に戻したとしてもまた戦争が起こるだけです。

 

 悩んだ末に青姫さまは全員を自害させ、自分は地下深くに引きこもって眠ることにしました。

 じっくりと次の知的生命体の発生を待つことにしたのです。

 

 こうして青姫さまの世界も滅び、青姫さまは仕方なく異世界引きこもり生活を始めることになったのです。

 

 

 

 さて、お姫様たちがそんな風に過ごしている中、お姫さまたちの居なくなった最初の世界はお祭り騒ぎでした。

 3人が消えた日は世界統一の祝日となり、自由を手に入れた日として盛大にお祝いされています。

 

「あれが赤姫星。その隣が青姫星。ちょっと離れたのが、黄姫星」

 

 3人のお姫さまたちは、この世界に飽きて星の世界に行ったと言われています。

 

 赤く輝く赤姫星は、赤姫さまに燃やされて赤く光り。

 青く輝く青姫星は、青姫さまに虐められて流した涙で青く光り。

 黄色く輝く黄姫星は、黄姫さまの我儘で黄色く光らされているのだそうです。

 

「乱暴な子、意地悪な子、我儘な子は、退屈したお姫さまに連れ去られちゃうんだよ」

 

 この世界の子どもたちは、そんなことを聞かされながら育ちます。

 そのおかげかはわかりませんが、お姫さまたちの居なくなった世界は、いい子が多く争いの少ない素晴らしい世界になっているのだとか。

 

 めでたし。めでたし。

 

 




神様
百合が見たかった惑星の意思。
仲良くできるよう最初に捕まえた魂に似た魂を選んだらこうなった。

赤姫さま
物理特化。
次の獲物を探して宇宙を漂流中。

青姫さま
精神特化。
次の文明が育つまで冬眠中。

黄姫さま
防御特化。
退屈なのでそろそろ宇宙に飛び出すかもしれない。

ブラックホール
お姫さまたちの経験値になった。

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