機操磁の指示に従い移動してきた先にあったのはなんの変哲もないビルだった。
「これか?ロボットは多い気がするけどプロヒーローも救助者もいなくないか?」
機操磁が指したビルの隣の屋上から観察する。やけにロボットが多い気がするが特に人影は見えない。
「うん、間違いないよ。気づいてた?スタート地点からこのビルに来るまで徐々にロボットの数が増えてたんだ。」
全然気づかなかった…
「中にいるんだよな?まずロボット倒さないとな…」
「だね、よろしく頼むよ。僕のハイジャックも効きそうになさそうだ」
パスワードかかってるとジャックできないんだっけか。
「よぉーし!いっちょやるかぁ!」
機操磁を背中からおろし筋繊維をさらに増やす。もはや肌は見えない、人というより赤い塊だ。タンクトップは機操磁に預けてあるから短パン上裸の変態になっている。
「ファイト〜。僕はドローン飛ばして中探ってみるよ」
機操磁は俺が負けるとは思っていないのか気の抜けた応援をしてくる。
その言葉に答えるように俺はビルから飛び降り大きめのロボットに拳を叩きつける。落下してただでさえスピードがかかってるのに筋肉を増やして体重をかさ増ししてるのだ。呆気なくロボットは轟音と共にぺしゃんこになった。
(ビルの周辺にいるロボットはぱっと見30体くらいか。俺の筋繊維は力を使い切ったら剥がれちまう。力を使い切る前に全部倒せるか?)
筋繊維を貼り直してる最中は無防備になる。張り替える直前にビルの屋上に飛べば安全だろう。
(てかロボット弱いな。数だけか。)
そうこう考えてるうちにすでに半数以上を殴り壊してしまっている。あまり硬い装甲にはされていなさそうだ。
ゴゴゴゴ
ビル周辺のロボットをほぼ倒し終わった瞬間、巨大なものが動くような轟音が近づいてくる。
(これはまさか…)
そう、そのまさかだ。原作で麗日お茶子を潰しかけた巨大ロボットがこちらに向かってきていた。
(逃げるか…?いや、完全に俺がターゲットだ。)
ビルの中に入って隠れるてもあるがビルに攻撃してきて救助者が怪我をしたら問題だ。倒すしかないだろう。
(原作でも100%スマッシュで倒されていた。さっきのビルから飛び降りてぶん殴る攻撃だったらそれに近しい威力が出てるはず!)
そう考え脹脛の筋肉を思いっきり肥大化、それに合わせ両腕も肥大化し筋肉で体を包み込む。この姿は緑谷の100%にも耐えうる防御力を持っている。万が一倒しきれなくても怪我を負うことはないだろう。
(視界は遮られるがこのデカブツ!方向がわかれば激突するだけでいい!)
筋肉で増強した足で思いきり地面を踏み込む。踏み込んだ箇所とその周辺に亀裂が広がる。
(そして思いっきり飛ぶ!)
衝撃で地面に小さいクレーターができるほどの力で飛んだ。
そのおかげか数十メートルはありそうな巨大ロボの5メートルほど上に上がることができた。
狙うはロボットの頂。数万層にも貼り付けた筋肉の全身鎧は防御力も攻撃力も一級品だ。
それを証明するかのように筋肉の塊と化した己の肉体をロボットの顔面に叩きつける。
凄まじい轟音と共にロボットが小刻みな爆発をしながら倒れる。
だがそれと同時に俺の筋肉も力を使い切ったのか剥がれ落ちていく。
「ハァ…割とギリギリだったな…」
この後ビル内にプロヒーローもいるのか…気が遠くなるな…
今はひとまず勝利だ。
「彼すごいですね。あのロボットをぶっ飛ばしちゃうとは」
そういった男が見るモニターには筋繊維で体を覆う青年が映っていた。
「今筋強斗、個性は筋肉増強。プロでもあそこまでのパワーを出すのは難しいのさ」
「でも周りの建物への被害を一切考えてないわね。」
事実跳躍移動やロボット戦では道路やビルに亀裂を入れたりクレーターを開けたりしていた。
「ソコハヤハリ中学生ト言ッタトコロダロウナ。」
「しかしあのパワーと機動力。単純な増強系の中では一線を画すな。」
「だがまだ試験は終わっていないのさ。戦闘力も大事だけど一番はどう救助活動をするか。」
「この試験、パワーだけじゃ乗り切ることは難しいのさ。さぁ、見せてくれよ今筋くん」
「君すごいな!強いとは思ってたけどあのでかいのぶっ倒しちゃうなんて!」
機操磁が目を輝かせながら俺に言う
「まぁ、結構ギリギリだったけどな。それより中の探索終わったか?」
「うん、大体はね。やっぱり最上階にプロヒーローと救助者がいるよ。」
「どんなプロヒーローだった?」
「最上階に入ったらすぐドローン壊されちゃったけど一応見れたよ。ヒーロー名は【アーマードコング】名前通りゴリラの異形型で近未来的なコスチュームを纏っているのが特徴さ。主な攻撃方法は肉弾戦での殴打。必殺技は胸を強く叩き周囲に爆音を撒き散らす胸音共振〈ドラミングビート〉しかしこの技を使うときは胸部分のコスチュームを外さないといけないし、その場から動けなくなるからそこが弱点だね。好きな食べ物はキャベツ。ちなみに幼い頃から個性の影響で親がなんとなくバナナを買ってきて学校で友達からもバナナを食べることをそれとなく強要されてきたせいで苦手らしい。事務所の場所は…」
「いやもういいもういい!」
「そ、そうかい?」
前半はともかく後半とか完全にいらない情報だったろ…こいつヒーローオタクだったんだな…
「パワータイプか…なら力押しでなんとかなりそうだな。」
肉弾戦ならゴリ押しでなんとかなりそうだ。
「いや。そうも行かないんじゃないかな。」
機操磁は神妙な面持ちでそう伝えてくる。
「どうして?」
「このビル。意図的だろうけど所々ヒビが入ってて崩れやすそうだ。それに一騎打ちならともかく救助者がいる部屋の扉の前にヒーローは待ち構えてる。下手に威力の高い攻撃をして救助者が怪我したりしたら本末転倒だ。」
俺の個性をフルで使ったら新品のビルですらオシャカになる。下手にブッパはできないか…
「でも下手に手加減したらパワー負けしないか?」
「だろうね。でも倒す必要はないんだ。一人がひきつけてもうひとりがその間に救助する、みたいな感じでもいいはずだよ。」
「作戦が大事ってことか…」
頭使うの得意じゃないんだよな…
「そこは任せてよ!今の所僕が役立ってるの索敵だけだからね。」
「他の受験生が来ても面倒だ。さっさとビルに入るか。」
ロボット処理に多少時間がかかったし、派手に暴れたからこの場所に気づいたやつもいるかもしれない
「だね。屋上まではなにもないから安心していいよ。アーマードコングも動く気はなさそうだしね。逆に隠れて救助もできないけど…」
「ならどっちにしろ交戦は必須。作戦、期待してるぞ」
「任せてよ」
ついにビル侵入だ。鬼が出るか蛇が出るか、いや、ゴリラか…
文に厚みが出ないですね…