ホグワーツ卒業の翌年。
新しい魔法大臣であるキングズリー氏の改革で、
ディメンターがアズカバンから去ることが決定した。
他にも抜本的な改革を行うとのこと。
思っていた以上に動きが早い。
こちらも急がなきゃ。
ぼくはホグワーツ卒業後、何でも屋を開設した。
主な顧客は魔法が苦手な人や魔法使いと結婚したマグルだ。
彼らは主に携帯電話でぼくに連絡をしてくる。
ここ数年で急速に普及した便利な道具だ。
これなら電話線を引く必要がないので魔法界でも使えるのだ。
魔法省とかでは無理だけど。
ぼくは日々の仕事をこなしつつ、何でも屋の備品としてマグルの道具を多数入手していた。
そして作戦の準備をしていたのだ。
ホグワーツに入ってから魔法の勉強しかしてこなかったので、
組立や整備に手間取ったが、何とか間に合った。
ぼくは準備した装備を持って、姿くらましを行った。
流石に直接は無理だが、3回ほどで近くの海岸に問題なく到着。
適当に船を盗み、道案内の魔法と加速の魔法をかけて近くへ。
面倒だが、直接は行けないようになっているので仕方ない。
蝙蝠に変身して中に入った。
今はまだ警備の魔法使いがいない。
しかし、何人か見たことある顔があった。
さてここはどこでしょう?
はい正解。
アズカバンです。
ぼくは守護霊の呪文が使えないので蝙蝠のまま行動する。
ここには主に元死喰い人や魔法省がヴォルデモートに乗っ取られた時に、
喜々として協力した者たちがいる。
そこにはアンブリッジの顔もあった。
彼女を恨んでいる人は多い。
あと、ぼくが殺した女の夫もいた。
新聞で顔は知っている。
どうやらヴォルデモート関連で捕まった人間とそれ以外の監獄は分けられているようだった。
よかったよかった。
シリウスみたいに冤罪で捕まってる人とかいたら可哀そうだもんね。
ちなみに皆一様に暗い表情でふさぎ込んでいる。
ここでぼくを認識して警戒するような強者は戦争で死んだ。
ゆえに仕事がしやすい。
ぼくは人間に戻ってブツを設置し、吸魂鬼が群がる前に蝙蝠になって逃げる、を繰り返した。
チョコレートの貯蔵は沢山ある。
問題ない。
予定通り設置が終わり、ぼくは外に止めておいた船に乗り、アズカバンを後にした。
10分ほど経った頃、背後で爆発音が聞こえた。
はい、粛清完了。
翌日。
日刊預言者新聞からアズカバン襲撃の報道が飛んだ。
元死喰い人と先の戦争で罪を犯した者を収容した場所が建物ごと粉砕したとのこと。
生存者はなし。
日刊預言者新聞はディメンターの反乱だとか、
死喰い人に恨みを持つ魔法大臣の陰謀だとか好き勝手書いていた。
相変わらず適当なメディアだ。
戦争の時のあれこれを何も反省していないらしい。
とはいえこれで目的は達成。
将来の危険は排除した。
死喰い人、ひいては純血主義を憎むものがいるということも魔法界に伝わっただろう。
当然これで終わりじゃない。
これだけじゃあ、犯罪者が死んだだけだ。
犯罪を犯していない純血主義者にとっては対岸の火事ともいえる。
従って、唯一の生き残りを処罰する必要がある。
元死喰い人でありながら直前で逃げたという理由で何故か許されている一族。
マルフォイ家だ。
ルシウスは長らくヴォルデモートに仕えた幹部だ。
ドラコは脅迫を受けていたようだが、根深い純血思想をもっている。
今後の魔法界の為に犠牲になってもらわなくては。
ぼくはマルフォイ家前に姿現しをした。
全員殺して、適当に煽ったマグル生まれの生徒の親に自首させて終わりである。
ちょっと気の毒だが、今後の魔法界のためだ。
仕方ない。
というわけで執行。
……のはずだったんだけど。
マルフォイ一家は見当たらず。
代わりに居たのはキングスリー魔法大臣とマクゴナガル校長先生、
ニンファドーラ・トンクス、リーマス・ルーピンの4名だった。
「どうしてここにいるんですか?魔法大臣。
あと、マクゴナガル先生も」
ぼくはいつも通り柔和に問いかける。
しかし内心はかなり焦っていた。
負ける気はしないが、このメンバーと戦いたいわけじゃない。
というか何でバレた?
閉心術は完璧なはずだ。
「今でも信じたくありません!
あなたのことは息子も同然に思っていました……」
マクゴナガル先生が震えながら言う。
この感じ、アズカバンの件がバレているな。
なぜだ?
「もういいマクゴナガル。
私も信じられない。
君の人となりはよく知らないが、成人して間もない君にあんな真似が可能だとは。
しかも、ハッフルパフ生だ。
正直、そこが一番衝撃だよ」
「ちょっと、油断しすぎじゃない?
ダンブルドアに聞いてるでしょ?
グレイバックの頭を吹っ飛ばして多くの死喰い人を焼き殺して、
あのベラトリックスを串刺しにしたのが、彼だってことを」
トンクスの言葉で理解した。
というか忘れてた。
校長室にダンブルドアの肖像画があるんだった。
そうか、そうだな。
あの人はぼくの行動を見抜いていた。
アズカバンの件からぼくを疑うのは当然か。
いやー失敗失敗。
いくらなんでもボケすぎだ。
自分の実力に酔っていたのかなあ。
恥ずかしい。
「できれば見逃して欲しいんですが?」
「無理に決まっているだろう」
「だって、ぼくが殺したのは死喰い人やマグル生まれを迫害した純血主義者ですよ?」
殺した、の部分でマクゴナガル先生の肩がビクリと震えた。
ぼくの口から自供の言葉が出てショックなのだろう。
だが、もう今までみたいに彼女に気を使う余裕はない。
申し訳ないが無視だ。
「あれらがまた脱獄したらどうなると思います?
もしかしたらヴォルデモートがまた復活するかもしれないんですよ?
監獄なんかに入れずに処刑するべきですよ。
マルフォイ家だってそうだ。
無罪放免は軽すぎる。
もしや、あなた達もマグル生まれより純血の魔法使いの方が尊いと思っているのですか?」
こんな感じかな。
ヴォルデモート復活の可能性根絶。
良いんじゃないか?
「言いたいことは分かる。
だが、君のしたことは許されることではない。
犯罪者の処罰は法で定められている。
私刑は許されない。
大人しく降伏してもらおう」
キングスリー氏が杖を向けてくる。
うーむ、正論。
「まあ仕方ないかな」
ぼくは無言呪文で騒音対策の魔法(発端は吠えメール)をかけた。
そして懐からスタングレネード取り出し、ピンを抜いて落とした。
魔法使いというのは基本的に魔法しか警戒しない。
だから姿くらましは対策しているだろう。
しかし、銃はともかくスタングレネードは知らないはずだ。
一旦これで逃げよう。
と、思ったら。
「■■■」
キングズリー氏が何か言って杖を振り(呪文の効果で聞こえなかった)、
スタングレネードを無力化した。
まじでか。
「君は私がマグルの首相を警護していたことを知らないようだな。
マグルの兵器については一通り知っている。
だから戦争の時もマグルの兵器が使われていることには気づいていたが、
まさか君のような少年だったとはね」
「あー、ちょっとびっくり。
ちなみにマルフォイ家の人達はどこに?」
「開心術を使っているな、だが無駄だ。
場所は私たちも知らない」
……うーむ、これはまずいぞ。
こうなったら、真っ向勝負をしなきゃいけないじゃないか。
まあでも仕方ないね。
ぼくはアイアンメイデンを非殺ver(先端を丸めただけ)で使用して4人を倒した。
姿くらまし対策が仇となったね。
反撃の魔法も打たれたが、プロテゴ・バブルで全て防いだ。
あっけない。
2ノ手3ノ手も準備してたのに。
しかし次はこうはいかないだろうな。
正面切った戦闘はなるべく避けなくては。
まったくもう、これで警戒されずに事を運ぶのは不可能になってしまった。
完全に予定外だ。
しかもこれで身代わりに出頭してもらっても無駄になった。
あーあ。
この先も魔法界で生きるつもりだったのに。
無理になっちゃったな。
まあ仕方ない。
ぼくが始めたことを完遂して海外逃亡するか。
こんなに簡単に決めれるのが魔法使いのいいところだよね。
手に職というか、身に着けた技術は無駄じゃない。
何だってできるのだ。
マルフォイ家の人達が頼る先は少ない。
戦争でほとんどの人脈は枯れたはずだ。
しかもキングスリー氏がこの場に来ていることから、恐らく魔法省。
(ホグワーツは子供に危険が及ぶから無いだろう)
というわけで、少し準備してから魔法省へ向けて出発した。
魔法省に到着。
おかしなところは無いように感じるが、道案内の魔法を使う。
標的はルシウス・マルフォイ。
いた。
僕はすでに敵認定されてるので蝙蝠に姿を変えて侵入する。
動物もどきを申請してなくて本当によかった。
道案内の魔法の通りに進むと、魔法省から少し離れた場所に到着した。
倉庫のようにも見えるが、中には何が、いや誰がいるのかな?
ぼくは人間の姿に戻って倉庫のドアを開けた。
すると、不意打ちのように武装解除の呪文が3つ飛んできた。
勿論防御呪文を使っていたので防げている。
飛んできた方向を見ると、
ハリーポッター
ハーマイオニーグレンジャー
ロンウィーズリー
がいた。
奥にはマルフォイ一家とアーサーウィーズリーも居た。
開心術対策の少数精鋭といったところか。
キングスリー氏はずいぶんハリーポッターを買っているようだが、
正直さっき倒した4人組の方が厄介だ。
お喋りしちゃう余裕だってある。
「まさかあなた達がマルフォイ家を助けるなんて、
ちょっと予想外でした」
「マクゴナガル先生たちはどうした!?」
「生きてますよ。
殺すのは彼らで最後ですから」
ぼくの言葉にナルシッサマルフォイがビクリと震える。
怖がらせるのが目的じゃないんだけどな。
寝ている間に済ませてあげたかった。
「一応言いますね。
そこをどいてください。
ヴォルデモート亡き今、マルフォイ家は純血主義の最後の砦です。
彼らをマグル生まれであるぼくが殺すことで、
マグルを排斥すれば復讐されると示すことができます」
「確かにマルフォイは嫌なやつらだけどさ、
殺すのはやりすぎだろ?
ルシウス……さんはヴォルデモートを裏切ったし、ドラコだって家族を人質に取られてたんだ」
「ずいぶん甘いですね?
あなたの妹、ジニーウィーズリーに呪われた日記を渡して秘密の部屋を開かせたのは、
そこにいるルシウスマルフォイなんですよ?
運よく死人こそ出ませんでしたが、あの事件では多くの子供が犠牲になりました。
特にマグル生まれが。
ねえ?グレンジャー先輩」
「……確かにそうね。
でも、わたしたちは話合うことができるわ。
差別をなくすことは大切だけど、だからといって片方を根絶やしにしようなんて、
やってることがヴォルデモートと一緒じゃない!」
「え?
そうですよ?」
あれ?伝わってなかったのか。
みんな驚いた顔をしている。
「マグル生まれに味方するヴォルデモートが居なかったので、
公平を期すためにぼくがその役目を買って出たわけです。
まあ彼ほど難易度は高くないですけどね。
ぼくが行動を起こす時点で、すでに純血主義は死にかけていたわけですから」
本当は見つかる予定もなかったんだけどね。
まあ過ぎたことは仕方ない。
ぼくは合図を送った。
破裂音と共に、アーサーウィーズリーが吹っ飛んだ。
「パパ!?」
驚いて振り返ったロンウィーズリーも吹っ飛んだ。
ハリーポッターもハーマイオニーグレンジャーも、吹っ飛んで気絶した。
暴徒鎮圧用のゴム弾を装填した銃だ。
ゴーレムに銃を持たせて侵入させ、撃たせたのだ。
魔法使いは杖しか警戒しないからダメだね。
先程とは違い準備する時間が有ったのだから警戒しなきゃ。
グレンジャー先輩なら防ぐかな?と思ったが、過大評価だったようだ。
でも、次は通用しないだろうな。
どんどん手法がバレていく。
早く終わらせないと。
「アバダ「無駄」」
ルシウス氏の杖をエクスペリア―ムスで吹っ飛ばす。
遅い、遅すぎる。
「くそっ!」
「……やめなさい、ドラコ」
杖を構えたドラコをルシウス氏が制する。
そしてルシウス氏は両手を上げた。
「降伏する。
わたしは大人しく君に殺されよう。
だが、妻と息子は見逃してくれ」
「父上!?」
「勝ち目は無いのは分かるだろう?ドラコ。
杖を捨てなさい。ナルシッサ、君もだ。
すでに勝負はついた。
これからは交渉の時間だ」
ルシウス氏の言葉に俯いて、ナルシッサとドラコは杖を捨てた。
別に見逃すなんて言ってないけど?
「駄目だと言ったら?」
「妻と息子に破れぬ誓いを結ばせよう。
今後、純血主義とは決別する、と。
そうすれば問題ないだろう?」
「……あー」
なるほど、なのか?
言いくるめられてる?
「確かに私は死喰い人として活動していた。
だが妻は死喰い人ではないし、息子も脅迫されて加入しただけだ。
その活動の中で重大な罪を犯したわけでもない」
「ダンブルドア校長の件は?」
「あれは奴の策に乗せられただけだ。
知っているだろう?」
確かに。
ぼくはその事実を知っている。
ダンブルドア校長に念を押されたからだ。
ドラコに罪はないから危害を加えないで欲しい、と。
しかし、将来の魔法界のために純血主義を根絶するために殺すことを決めた。
だが、ルシウス氏の提案でそれも解決された。
今のぼくにドラコとナルシッサを殺す理由は無い。
「……分かった。
しかし、ここではいつ襲撃を受けるか分からない。
場所を変えても?」
「構わん」
ぼくはマルフォイ家の3人を連れて姿くらましで移動した。
なるべく遠くへ。
「……よもや3人を連れてここまで遠くに来るとはな。
やはり、勝ち目などなかったか」
「仲介人は?」
「わたしがやろう」
ルシウス氏がドラコとナルシッサの間に立つ。
ぼくはルシウス氏に杖を渡した。
「ちょっと待てよ!
父上も破れぬ誓いをやれば死ななくても良いじゃないか!
そうですよね母上?」
「そうよ!
あなたが死ぬ必要はないわ!」
「無駄だドラコ、ナルシッサ。
こいつは私が純血主義の旗頭になることを恐れているのだ。
私が殺されて、妻と息子は尻込みして純血主義を捨てた。
そういうシナリオでないと、こいつがお前たちを見逃すことはない」
流石は元死喰い人筆頭。
そしてうまく立ち回りお家根絶を避けただけのことはある。
ぼくの思考は完全に読まれているようだ。
「こうなっては仕方あるまい。
なに、癇癪を起さないだけヴォルデモート卿より有情だ。
そう悲観するほどでもないさ」
ふっふっふ、と笑うルシウス氏。
かっこいいじゃん。
ちょっと手が震えているのは見なかったことにしてあげるよ。
その言葉でドラコとナルシッサは諦めたのか、破れぬ誓いを結び、
ぼくはそれを見届けた。
「君が妻と子を殺さないという誓いもお願いしたいのだが?」
誓いが終わったと認識し、ルシウス氏に杖を向けた時、そう提案してきた。
すでに純血主義を捨てさせたので殺す必要はない。
それに、ぼくが約束を反故することを警戒するのも理解できる。
ぼくは頷いた。
「もちろん、構わないよ」
ナルシッサに仲介してもらいぼくとルシウスは誓いを結んだ。
念の為、防御呪文は張らせてもらっていたので、不意打ちを食らうことはなかった。
「もういいかな?
ルシウスマルフォイ」
「ああ」
「じゃあさようなら」
ぼくはルシウス氏にアバダケダブラと唱えた。
何気にこの呪文で殺すのは初めてだな。
ぼくが殺すと死体がちょっとグロテスクになってしまうから、
あまりに綺麗な死体をしげしげと眺めてしまった。
そんなぼくに、ドラコマルフォイが涙を流し、震えながら宣言する。
「制約通り、僕は純血主義を捨てる。
だけどお前個人を恨むことは問題ないよな?」
「そうだね」
問題ない。
矛先がぼく個人だというのなら、それを咎める理由がなかった。
「覚悟しろ、いつか必ず殺してやる」
そう言ってドラコは呆然とするナルシッサとルシウス氏の亡骸を連れて帰っていった。
ミッションコンプリート。
さて、海外逃亡開始だ。
あれから10年。
逃亡はしたが、イギリス魔法界の情報は集めていた。
あの後、ぼくは指名手配され、純血主義を殺す者として恐れらた。
日刊預言者新聞はグリンデルバルド、ヴォルデモートに続く、
第三の災厄としてぼくを取り上げた。
2人に比べると、やったことの規模も実力もかなり劣るけどね。
まあ恐れられることが目的なわけだし都合良いけど。
あと、グレンジャー先輩が魔法省で出世しているようだ。
次の魔法大臣候補らしい。
マグル生まれを侮辱するような風潮は終わったことの象徴とも言えるだろう。
素晴らしいことだ。
そしてぼくだが。
絶賛、絶体絶命であった。
ここ3年ほどドラコマルフォイと追いかけっこをした結果、
とうとう追い詰められたという訳だ。
まさか彼がマグルの傭兵を使うとはね。
ちゃんと姿くらましを妨害している。
蝙蝠に変身しようにも、動物もどきも妨害されている。
結構速い段階でバレてしまったからな。
仕方ない。
じゃあ直接対決して気絶させよう、と思っても、
勝てないことを理解しているのか、姿を見せない。
前回開発した反射魔法でドラコと闇払い十数人を追い返したせいで、
今回は物量に任せて追い詰めてきた。
そりゃぼくは強いが、500人も兵士を向けられて勝てるわけがなかった。
まったく、いくら使ったんだか。
逃げ道もちゃんと封鎖されている。
所謂詰み、というわけだ。
ぼくは勤勉だった。
使える呪文は誰よりも多いはずだ。
ぼくは献身的だった。
ホグワーツのために、マグル生まれのために頑張った。
ぼくは忍耐強かった。
目立たないようにしつつ、勉強を怠ることもなく、
何度呪文の練習で失敗してもくじけることはなかった。
未だに、守護霊の呪文は使えないが。
ぼくは忠義に篤かった。
実質親無しだったぼくはホグワーツには世話になった。
だから命の危険を冒してでも戦争に参加した。
ぼくは公平だった。
マグル生まれが不利なので、傾いた天秤を水平にしたかった。
そして例え殺される危険があっても、ルシウスの理論が正かったのでドラコは見逃した。
その結果、
ダンブルドア並みの才能が有るはずのぼくは、
アメリカの片田舎で傭兵部隊に殺されようとしている。
ぼくは失敗したのだろうか?
それともぼくが失敗だったのだろうか?
答えは分からない。
だが、自分の人生に恥じるべきことなどない。
後悔はあるが、正しいことだった。
しかし、正しいだけでは駄目なんだなと気づかされた。
ぼくはマルフォイを殺すべきだった。
自分の命の危機より他人の正しさを選ぶべきではない。
それができないのであれば、粛清などするべきではなかった。
十数年かかると分かっていたのだから、十数年かければよかったのだ。
ヴォルデモートとの戦争で大きな成果を上げ、過信してしまった。
ため息をつき、煙草をふかした。
まあ、もう仕方ない。
後悔しても遅いのだから。
沢山殺したんだ。
殺されもするだろう。
そう納得した時、
爆音と共に意識は消えた。
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2010年5月10日
日刊預言者新聞 1面(一部抜粋)
ヴォルデモート卿の起こした戦争後、一番の大事件を起こした魔法使い、
オリヴァー・スミスの死亡はイギリス魔法界を揺らした。
彼の所業で純潔の魔法使いとマグル生まれの確執は広がったと言う者も居れば、
マグルに対する認識が改まったと言う者もいる。
事実、彼の起こした事件以降、マグルの戦闘能力に関する本が多く出版され、
学校で教えるマグル学の内容が大きく一新された。
そして魔法の秘匿がより重要視されるようにもなった。
また、彼の開発した防御魔法は闇払いにとって必須の魔法となり、
彼の開発した反射魔法は、発見したドラコマルフォイ氏の提案により禁呪扱いとなった。
(とはいえ、その難易度から、使える魔法使いは現状存在しない)
彼によって、良くも悪くも魔法界は大きく変わったと言えるだろう。
当社記者がこれまでに行った彼の知人へのインタビューを下記へまとめた。
(インタビューを行った記者は友人であるリータ・スキーター氏が死喰い人に殺された過去があるので、
彼に賛同するような記事を選んでいたことを予めご理解いただきたい)
ホグワーツ同級生(ハッフルパフ)
「無口だけど良いやつだったよ。成績もよかったし、真面目だった。
よく呪文の使い方を教えてもらったよ。
あと、今思えばマグル生まれに優しかったな。
同級生や後輩のマグル生まれがスリザリン生に虐められていたら率先して助けてた。
“生まれつきの魔法使いと最近魔法を知ったマグル生まれには明確な差がある。
それは不公平だ”
みたいなことをよく言ってたかな、確か」
ホグワーツ同級生(レイブンクロー)
「凄いやつだったよ。あいつはレイブンクローの方が合ってるんじゃなかってほど呪文に詳しかった。
オリジナルの呪文で死喰い人をやっつけたんだろ?
どんな呪文なんだろ。気になるなあ」
ホグワーツ同級生(グリフィンドール)
「あんまり印象ないなあ。
ガリ勉だなあって感じ?
まさかハッフルパフ生があんなことやるなんてね。
ちょっと衝撃だよ」
ホグワーツ同級生(スリザリン)
「………変わったやつだったよ。
前にグリフィンドール生と決闘になった時、
通りすがりのあいつは、相手が上の学年だからという理由で腹下しの呪いをかけたんだ。
そのしないと公平じゃない、とか言ってさ。
結局怒ったグリフィンドール生があいつに襲いかかって返り討ちにあってたな。
スリザリンに味方する他寮のやつなんて珍しいからよく覚えてる。
まあ、次の週には似たようなシチュエーションでスリザリン生の先輩に呪いをかけてたけどな」
マクゴナガル校長
「彼は優しすぎたのです。
ヴォルデモートに対する危機感であのような凶行に……。
わたしがもっと寄り添っていれば、あるいは。
もう彼のような悲しい存在を生み出してはいけません!
ホグワーツではあらゆる差別に対して重大な罰を与えます!
それがわたしの出来る償いです」
元不死鳥の騎士団
「えーと、そうだね。
神様みたいだったかな。
え?神様みたいな良い人だったかって?
違うよ。
というか神様って良い人なの?
うーん、イメージと違うなあ。
あたし考えだと神様って現象的というか公式みたいなもので……、え?違う?
オリヴァーをどう思うかって?
さっき言ったもン。
まさか同じ質問されると思わないじゃん。
だから、神様だよ?
あたしの知ってるオリヴァーは、
勉強熱心で、面倒見良くて、努力家で、ホグワーツが好きで、
そして、
神様みたいに公平だったよ」
という訳で終わりです。
人間失格みたいな感じで何か書きたいなあと思ってハリーポッターを選びました。
なんか変な奴になっちゃいましたね。
タイトルは戯言シリーズから。
人間失格のニアイコールといえば欠陥製品ですよね!
後半出てきた反射魔法はアクセラレータ的なやつです。
ほぼ無敵ですが、魔力を消費するので物量には負けます。
自分>恩人>親しい人>その他
という比較的真っ当な価値観を持っていましたが、
自身の力を過信して、神のように他者へ罰を与え、
魔法界を平和にしようとした結果早死にしました。
何かが違えば魔法界の英雄になれたかもしれないのに、残念です。