ようこそ享楽至上主義の教室へ 作:アネモネ
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
5月2日からのゴールデンウィークも明けた日の朝。私と南雲会長は応接室に呼び出された。
「来ましたか」
呼び出し人は月城理事長代理。いつも通りの柔和な笑顔で私たちを出迎えてくれる。
「朝早くからすみません。しかし、こういうことは早くに済ませておいたほうがいいと思いましてねぇ」
「こういうこと、ですか?」
「はい。綾小路清隆の退学特別試験についてですが、中止とさせていただきます」
「ちゅ、中止!? そ、そんな、どうしてでしょうか」
私はおったまげた。既に椿ちゃんや宇都宮君たちとの協力を取り付けたのに、それらがパァになるではないか!
「宝泉くんが刃物を使用したためです。そこまで許可した記憶はありませんからね」
「あー」
「ん? ククリ、何か知っているのか?」
「いえ、宝泉君ならやりそうだなと」
ふぅ、誤魔化せた。危ない危ない。
「怪我人は出ていないんですよね?」
「ええ。そして君たちへの報酬の10万プライベートポイントはすぐに送信しましょう」
10万か。十分大金だけど、2000万ポイントの後だと色あせて見えるなあ。
「それで、1年生たちへの説明を行うということですか」
「理解が早くて助かります。昼休みに生徒会室へ呼び出しておいたので、中止の通達をお願いします」
「分かりました」
失礼しました、と応接室を後にする私たち。そこで、ちょっと話しかけてみることにした。
「いいんですか、あんなにあっさり」
「巡り合わせが悪かったってことだろ。仕方ないさ」
「でもでも、南雲会長なら特別試験を引き継ぐことも出来るのでは?」
2000万ポイントを使って綾小路退学試験を続けることだって十分可能だろう。しかし南雲会長は苦笑する。
「綾小路はどこまですべき相手か、見極めている最中なのさ。その意味で1年生を試金石に使える今回の試験は都合が良かったが、それだけだ」
じゃあなククリ、と頭をポンポン撫でられる。くっ、イケメンにしか許されないムーブ……! 南雲会長の姿が視界から消えるまで見送った私はクルッとUターン。応接室に戻る。
コンコンとノックをすれば「どうぞ」との声。やはり、月城理事長代理は私を待っていたらしい。
「それで
「宝泉君が刃物を持ち出した件、誰から聞いたんですか?」
私、八神君、宝泉君、天沢さん、リンリンに須藤某はありえないだろう。残るは2人。カピバラ麻呂か、七瀬さんか。おそらくはカピバラ麻呂だろうが……。
「誰でもいいでしょう、とはあなたを誤魔化せませんね。お察しの通りです。綾小路くんから聞いたのですよ」
「綾小路清隆退学試験の取り止めもその会話が関わってくるのでしょうか」
「流石、鋭いですねぇ。その通りです。私と彼は賭けのようなことをしていましてね。それに彼が半分勝ったので、譲歩したまでです」
「賭けというのは?」
「『来年入学する1年生160名。その中に存在するホワイトルーム生が誰であるかを4月の内に突き止めることが出来たら、私は身を引いても構いませんよ』と申し上げました」
「ああぁぁあああ〜」
私は膝から崩れ落ちた。カピバラ麻呂退学試験が中止になったの、私のせいじゃん! どっからどう見ても私のせいじゃん!!
「私が綾小路君に八神君の正体をバラしちゃったからですね……」
「いえ、そもそも私は『身を引いても
わぉ、大人ってずるい。
「ですから、特別試験を中止としたのは私の裁量。
それより、と月城理事長代理が続ける。
「もう一人のホワイトルーム生の正体を明かさなかったのは何故でしょうか」
「本人からNGが出ていまして。自分で正体をバラしたいそうです」
そうなんだよね。他に何人いるかは知らないが、あともう1人だけ私はホワイトルーム生の正体を知っている。だけど言っちゃ駄目っていうことなので従ってる形だ。
「お人好しですねぇ、あなたも。そんな言葉、無視してもいいでしょうに」
「好きな子の言葉を優先するのは当然でしょう?」
好感度ランキングは八神君が1番目、その子が2番目。カピバラ麻呂は3番手にランクダウンだ。
八神君曰く、その子はカピバラ麻呂に傾倒しているらしい。『崇拝』にまでいってないのがポイントで、綾小路清隆を崇拝していた人間はホワイトルームを脱落していったらしいんだけど……私からみれば、どうにもその子はカピバラ麻呂を崇拝しているように感じる。気のせいかもだけどね。
「なるほど。君はホワイトルームについてどれほど知っていますか?」
「作られたのは約20年前。施設の最終目標は全ての人間を等しく優秀に育て上げること。人間の限界は遺伝で決まるわけではなく、環境で決まることの証明を目指している。初年度の1期生から1年ごとに新しいグループが作られ教育されていき、綾小路君は4期生で唯一の生き残り、八神君は5期生のトップ、その子が2番手ですね」
「その通りです。よくご存じだ」
「八神君たちから直接聞きましたから。それで、脱落した子たちはどうしてるんです? そこだけは彼らも知らなかったんですよね」
「子どもたちは立派に成長し、社会に貢献できている──といったことがあれば、まだ救いもあったのですが。これまで施設で育った子の大半は問題を抱えているケースが多く、使いものにならないのですよ。あの環境に耐えられず心が壊れてしまうのでしょうね」
壊れたものは壊れたままに、ということなのだろう。ホワイトルームからの脱落に救いは無いらしい。ま、月城理事長代理のことだ、これも嘘かもしれないけど。
「しかしそこまで八神くんたちの心を掴んでいるようで安心しました。他の1年生たちを排除しても問題はないでしょう。次の特別試験では、君たちの働きに期待していますよ」
「綾小路清隆退学に向けて、全力で頑張る所存です。なので、サポートはお願いしますね」
ええ、という声を背に私は退室する。いくらか歩いてから気づいた。
「あれ? カピバラ麻呂退学派になったって、私月城理事長代理に伝えたっけ……?」
何で知っていたんだろうという疑問。しかしそれはすぐに解消される。この学校には今、あの男がいるのだ。『京楽』が。
「あの男は何処にでもいて、誰にでもなれる」
だからこそ、どこかで私の言葉を聞いていたのだろう。探っていたのだろう。
「気持ち悪い話だ」
でも、それが私とあの男の日常である。
昼休みになると、前と同じメンバーが集められた。1年Aクラスからは石上君と高橋君、Bクラスからは八神君、Cクラスからは宇都宮君、Dクラスからは宝泉君と七瀬さん。
南雲会長は単刀直入に切り出す。
「綾小路退学特別試験についてだが、中止とする。理由は分かるな宝泉」
「あいにくとさっぱりだ」
「刃物の使用。そこまでやれとは言ってねえだろ宝泉。よって中止だ中止。ったく、怪我人が出てなくて幸いだぜ」
うわあとドン引きする1年生たち。そりゃ刃物を持ち出したんだ、無理もない。
「本当にやったのかよ和臣」
みんな仲良くが信条の高橋君が、やってないなら弁明しろよと優しく話しかける。
「
しかし世は無常。さらっと殺すぞ宣言がなされる。っておい、刃物取り出したヤツが言うと冗談に聞こえないぞ……?
「ハッ、綾小路パイセンの仕業だな? 中止にまで追い込むとは恐れ入ったぜ」
半分くらい私のせいだけど、まあ半分くらいはカピバラ麻呂のせいである。うん、妥当妥当。
「俺の判断だ。綾小路は関係ない」
「そうかよ。報酬があろうがなかろうが関係ねえな。俺はあいつを潰す、それだけだ」
乱雑に開かれる扉。ペコリと会釈をした七瀬さんとともに宝泉君は去っていく。超絶悪い空気の中残された私たち。
「でも、僕にとっては良かったです。誰かを陥れることで得られる報酬には興味が持てませんでしたから」
こう話す八神君だが、カピバラ麻呂への憎悪は人一倍。だから私もカピバラ麻呂退学に力を貸すことにしたんだけどね。
「俺も良かったと思っています。1年生へ悪影響を与える可能性も否めませんでしたし」
「おいおい八神、石上。それは俺を批判してるのか?」
「いえ、そういうわけでは」
しれっと答えた石上君は、ずっと抱いていたのであろう疑問を口にした。
「1年生を退学の標的にした特別試験は行っていない。以前おっしゃっていた通りですよね?」
「ああ、俺の知る限りではな」
「それを聞いて安心しました」
どうも石上君は仲間意識が強いみたいだ。
「でもでも、退学者が出ないとうちの学年みたいに『クラス内投票』が開催されちゃうかもだよ〜?」
「その『クラス内投票』とは?」
「あのね、────」
こうして昼休みは過ぎていった。
§§§
5月も中旬に入った、放課後。ここ、生徒会室には1人の来客が予定されていた。
「リンリンってば〜、どんな用件なんでしょうね。ワクワク」
堀北鈴音。彼女は茶柱先生を通してアポイントを取ってきたのだという。
「リンリンって呼んでるのかよ……」
「はい。でも本人の前ではしーっですよ。たぶん気に入ってもらえないと思うので」
リンリンなんて可愛いあだ名、まず本人的にはNGだろう。ククリちゃんは空気の読める子。
「ところで
「そいつは俺も気になるな桐山」
八神君と波田野君の1年生コンビは仲良くなったらしく一緒に来ていた。そしてめでたくというか当然というか、見事合格。生徒会に入ることになったわけだが、その時には副会長の桐山先輩は同席してくれなかったんだよね。可愛い1年生の勇姿だったのに。クスン。
まあたぶん今回来たのは『南雲降ろし』のことでリンリンが余計なことを言わないためだと思うけど……ちょっとあえて聞いてみると、桐山先輩は面白いほどに動揺した。
「堀北先輩の妹という点が気になっただけだ。それより京楽、八神と交際を始めたというのは本当か?」
声が少し上ずっているが、そこはツッコまずに答える。
「はい、本当ですよ〜。情熱的な告白を受けまして」
キャーと頬に手をやって顔を赤らめると、なんだか生ぬるい視線を向けられた。そんな目をしても八神君はあげませんよ!
「情熱的な告白、ねえ。そんなタマには見えなかったが」
「人は見かけによらないものですよ、南雲会長」
とはいえチャラい外見で中身もチャラい南雲会長と、真面目そうな外見で中身も真面目な桐山副会長には言っても無駄かもしれないけどね。
そこで、ノック音が響いた。
「失礼します」
現れたのは待ち人のリンリン──と、そしてカピバラ麻呂だ。
へえ、なるほどね。そう来たか。
「堀北さんに麻呂君。ようこそ我らがアジト、生徒会室へ! 歓迎するぜ。あ、お茶でも飲む?」
「アジトって悪の秘密結社かよ……」
手慣れた様子でツッコむカピバラ麻呂に、私はフフンと胸を張る。
「アジト、元々は労働争議なんかの秘密指令所を言うんだぜ? つまりは革命運動……!」
「物騒なことを言うな、ククリ」
ファイルでペシッとはたかれる。そんな南雲会長はというと、足を組んで生徒会長の席に堂々と座っている。そんな姿はさながら王様、あるいは秘密結社のボス……! 革命革命言ってるし、アジトでもあながち間違いじゃないんじゃないだろうか。
「お茶は結構よ、京楽さん。でもありがとう」
今までのリンリンなら出なかったであろう『ありがとう』という言葉に感動しつつ、私は下っ端らしくどうぞどうぞと2人に椅子を勧める。
両人が座ったところで、話が切り出された。
「俺に話があるんだって?」
「はい。お時間を頂きありがとうございます」
「気にするな、今はわりと暇してる時期だからな」
カピバラ麻呂もリンリンも2000万争奪☆カピバラ麻呂退学合戦のことがあるからだろう、どことなく観察されている雰囲気だ。あれ、無くなっちゃったから気にしなくていいのに。グスン。
「それで俺に話っていうのは? 単に雑談しに来たってわけじゃないんだろ?」
「貴重なお時間かと思いますので単刀直入に。私は生徒会入りを希望します」
あー、そういや前もそんな話あったなーという感じの私だったけど、南雲会長と桐山副会長は驚いている様子。そこまでびっくりすることかな。
「生徒会入りを希望?」
南雲会長の顔は驚きから期待へと変わる。少しだけ、だけど。面白くなってきたぜとか思ってるのかもしれない。
「それはまたどういう風の吹き回しだ? 素直にイエスと言いたくない気分だ」
「つまり歓迎はして頂けないということでしょうか」
「そうじゃない。俺は基本的に来るもの拒まずのスタンスだ。生徒会に入りたいって人間がいれば空きが許す限りは入れてやる。志望理由にも興味はない。OAAのためでも、のちの就職のためでも、正義感なんてものでも自由だ」
あ、南雲会長は人数制限撤廃したのに空きが許す限りっていうのは、先生方からちょっと言われたらしい。全生徒生徒会入り計画とかそういうのは無しで、一応一般的な範疇の人数にしてねとお願いされたんだとか。あと、任期についても撤廃したものの後続のためにある程度は譲歩してとも言われてるらしい。まあ当然っちゃあ当然だね。
「けどな、おまえは特別だ堀北鈴音。生徒会に入る条件を1つだけ付けさせてもらおう」
「その条件とは何でしょうか」
「どうしてこのタイミングで生徒会入りを希望したのか、その理由を教えてもらおうか」
ほほう。まあ私も気になるなあ、その話。
「私は兄との確執を抱えていました。その確執を無くすため飛び込んできたのがこの学校です。ですが、入学してからも私と兄の関係が変わることはありませんでした」
堀北元会長とリンリンには確かに確執があった。うんうんと頷く。
「何一つ成長していなかった私を認めてくれるはずもなかったんです。結局、兄が卒業する間近まで満足に話すこともできない1年間を送りました」
ということは、卒業する間近には満足に話せたんだろうか。そして、兄の卒業が長かった髪を切るきっかけだったり?
「それで、和解は出来たのか?」
「はい。最後の最後ではありますが和解することが出来ました。そこで初めて兄が学校生活を捧げた生徒会に興味を持つことが出来たんです。随分と遠回りしてしまいましたが、兄が通った道を私も通りたくなったんです」
んー、嘘はあまり言ってない。でも本当のところがある、かなあこの調子だと。何よりカピバラ麻呂が同行した意味がわからない。
「兄が通った道か。大層立派な話だな」
真相は……いや、直感で語るのは野暮かなあ。
「それはつまり、いずれは生徒会長になる意思があると思っていいのか?」
「いえ、それは迷っています。京楽さんや一之瀬さんに欠点らしい欠点もありませんから」
私にはちょい成績が悪いという欠点があるが、そこには目をつむってくれるらしい。ありがとうリンリン。
「なるほど」
そこでクイと南雲会長はこっちに向けて顎を上げた。私の推測を話せ、ということかな?
「リン……堀北さんが麻呂君と来た理由」
トントン、と頭を叩く。
「堀北さんが生徒会に入るのは本当は麻呂君の指示。ならば従う理由は?」
むむ、と顎に手をやる。
「麻呂君の数学の満点。あれは、数学の点数勝負をしていたとしたら?」
リンリンに一瞬走る狼狽。それを南雲会長は見逃さない。……いや、元からわかっていたんだろう、大体。
「堀北さんが麻呂君と勝負して、負けて、お願いされて生徒会に入った。その理由は──」
「やめろ京楽、それ以上は失礼だ」
南雲会長の監視、と言おうとしたところで桐山副会長に止められる。
「そうだね、ごめんなさい2人とも。憶測でべらべら喋っちゃった」
「京楽さん、あなたは──いえ、気にしていないわ。大丈夫よ」
さて、これで南雲会長の沙汰はどうなるか……というところで。
くっくっく、と堪えきれない笑い声が漏れていた。南雲会長からだ。
「意識してもらえているようで嬉しいぜ、綾小路」
「誤解ですよ」
「何ならおまえも生徒会に入るか?」
「遠慮しておきます。生徒会って柄じゃないので。それより、おまえもということは堀北の生徒会入りはご許可頂けたんでしょうか」
ああ、と首肯する南雲会長は席を立つ。
「堀北、と呼ぶには少し抵抗がある。何度かもう呼んでるかもしれないが、改めて今日から鈴音と呼ばせてもらうぜ?」
「好きになさってください」
席を立ったリンリンに左手が差し伸べられる。それを彼女は迷いなく握った。
左手の握手は敵意を表すとされる。にゃにゃ、仲良くはなれないのかなあ。
「ようこそ生徒会へ。今日からは遠慮なく役員として働いてもらうぜ鈴音」
「勿論です」
「生徒会入りを祝して面白いことを教えてやる。歴代の生徒会長は皆、必ずAクラスで卒業しているって事実だ。そのことを覚えた上で高みを目指すんだな」
「私以外が生徒会長になれば、そのジンクスが崩れてしまうかもしれませんね」
「口だけじゃないことを証明して見せてくれよ?」
長い握手を終え、桐山副会長とも握手したリンリンはこちらへ向き直る。
「よろしくね、堀北さん」
「ええ、よろしく」
無難に右手で握手した私たちは笑顔を浮かべ合う。おお、リンリンの表情も随分とやわらかくなってきたなあ。
「それじゃあ鈴音、早速だが手続きついでに他の生徒会メンバーも紹介したいと思う。ここに残ってくれ」
「分かりました」
「では、オレはこれで」
立ち去るカピバラ麻呂。しばらくすると代わって
互いに自己紹介を終えると、3年の先輩たちはリンリンの生徒会入りの手続きを行ってくださっていた。つまり場で話すのが1,2年生だけになる。
「いや〜こんな
「おや、波田野君。私と
フッフッフ、ついに一之瀬さん呼びは卒業し、帆波ちゃん呼びとなったのだ。
「そりゃ別嬪さん勢揃いです、怖いくらいですわ」
私の疑問に答える波田野君。彼はこう見えて?学力Aを持つ優秀な生徒。そして関西人はたこ焼き器を一番に買うを実証してくれた人でもある。ケヤキモールでかなりまけさせたらしい。流石、関西人……!
「ありがとう。へへっ、嬉しいな」
1年Aクラスの阿賀君、Bクラスの八神君、Cクラスの波田野君とクラスがいい感じにバラけている。まあそれは私たち2年生も同様か。リンリンの加入によってAクラス以外が揃う形となった。あと1年生は男子のみ、2年生は女子のみでそこも特徴的かな。
「随分と仲が良いのね、京楽さん」
「んー、そうだね。でも堀北さんもククリ呼びしていいんだよ、ほら」
「遠慮しておくわ」
冷たい、グスン。
「ククリ先輩は社交的な方ですからね」
「そう言う八神くんは……ククリちゃんと付き合ってる、んだよね?」
「はい」
帆波ちゃんの言葉に頬を赤らめて頷く八神君。うお、可愛い。男子に言うのは間違ってるだろうけど。
「わわっ、生徒会カップルの誕生か〜。結構珍しいんじゃないかな?」
「そうだね、堀北元会長と橘先輩とか怪しかったけど」
「兄さんに彼女なんていないわ」
否定がはやいっ。リンリンは俗に言うブラコンというやつか、もしや。
「あとは帆波ちゃんと南雲会長もちょっと噂されてたりしたけど」
そう、南雲会長のほうを見るとパチンと綺麗なウィンクを返された。ナイスアシストといったところだろう。私も何となく綺麗なウィンクを返す。
「私なんかが南雲先輩と、釣り合わないよ」
「そんなこと無いですよ、一之瀬先輩は1年生からも人気で。聖母ってかマドンナってか、そんな感じです」
阿賀君のフォローに、にゃははと頬を掻く帆波ちゃん。
「ともかく、驚きだなぁ。ククリちゃんって色恋とかあんまり興味なさそうだったし」
「そこは僕から熱烈にアプローチしまして。なにせ、中学時代からククリ先輩を見続けて来ましたから」
中学の時に電車通学だった私と八神君は、車内でたびたび顔を合わせているという設定。私たち2人の関係性をスムーズに説明するためのものだ。短期間で一目惚れした、とかよりわかりやすいだろう。ま、宝泉君みたいな例もあるけどね。
「わ〜、あっつあつだね」
「しっかし、意外やったのは龍園先輩が出てこないことですねぇ」
「龍園くん? 何故かしら」
「1年の間でも龍園先輩とククリ先輩が付き合ぉてんちゃうかって噂でしたもん」
「あー、俺も聞いてた、それ」
波田野君と阿賀君の口撃に私は対抗する。
「小学校が同じだったってだけだよ、もぉ」
ぷくりとフグのように頬を膨らませる私に、皆はそうだったねと納得した様子。宝泉君&七瀬さんの2年生フロア来訪事件は結構騒ぎになってたからね、私たちの話の内容も広まっているんだろう。
「だとしても、相手からはそうは思われてへんかも」
「何にせよ、僕がお守りするだけですよ」
男前な八神君の発言におお〜と感嘆の声が上がる。うんうん、この調子だと次の次の生徒会長は八神君かな?
ま、次の生徒会長は私。そこは帆波ちゃんにもリンリンにも、誰にも譲る気は無いんだけどねっ。
三が日は毎日更新する予定です。といっても余談とかにあげていたものですが……。
評価、ご感想、ここすき、お気に入り、誤字報告等、誠にありがとうございます。