ようこそ享楽至上主義の教室へ 作:アネモネ
▦▩(SS:3倍返しの日)▦▩
「ジンジンジンジン ジンギスカン」
ククリは自室で何となく歌を口ずさんでいた。
「ジンジン ジンギスカン」
妙に耳に残る音楽を胸に、ふと思う。ジンギスカンキャラメルは賛否両論を巻き起こした──「意外とイケる」「口が地獄だった」「キャラメルだと思わなければいい」「食への
ケヤキモールで北海道フェアをやるなんてことはない。となると通販で取り寄せたということになるが……。
「ああ、そっか」
ポンと手を叩く。ピコーンと頭上で豆電球を
「桐山副会長。桐山
ククリは生徒会メンバー全員にバレンタインチョコを配っていた。男子勢からはホワイトデーにお返しをもらっており、桐山よりキャラメルを贈られたのである。
美味しかったので他の味も、と色々とキャラメルを調べているうちに「まずい」をモットーに作ったという非常に攻めた商品のジンギスカンキャラメルまで行き着いたのだ。
つまり桐山副会長のせいだな、とククリは適当に責任転嫁した。どう考えても冤罪である。
「しっかしホワイトデーかあ。すごかったよな」
一般的にホワイトデーは3倍返しが基本とされる。由来はよくわかっていないこの言葉は非常に達成が難しいものだ。なんせバレンタインには手作りのお菓子をプレゼントされることも多い。原材料費や手間賃を正確に計算するのは不可能だろう。
上手い返し方としては何か高そうなやつを贈るか、自分も手作りのものを贈るか。生徒会役員は前者であり、後者の典型例はアルベルトだった。
「バーティの女子力には勝てない自信があるよ……」
可愛らしい、色とりどりのマカロンはその見た目通りとても美味しくて、もらってすぐペロリと平らげてしまったくらいだ。
「今度マカロンタワーでも作ってくれないかな。いや、お菓子の家も捨てがたい」
お菓子作りの時間がなかったのか、経験がないのかはわからないが、他の人々からの贈り物は既製品だった。綾小路はポストにクッキーを投函してくれていたし、金田は紅茶をくれた。
坂上先生からはノートを、石崎からは赤ペンと消しゴムをもらっている。しばらくククリは文具には困らなそうだった。
龍園は何も寄越さなかったものの、まあ別にはじめから期待などしていない。葛城の歓迎会等の費用を出してくれただけで十分だろう。
「来年のバレンタインはもっとパーッと派手にやりたいなあ」
ポイントの徴収さえなければ、と呟くククリの浮かべる怪しい笑みを見れば、龍園がまたバレンタイン付近でポイントの没収を図りそうなことは想像に難くなかった。
この学校の図書館にいる大人=司書教諭資格と司書資格の両方を持ってる人々と仮定してます。ククリは直接呼ぶときは先生と、こうして雑談の時とかは司書さんと呼んでいる感じです。
(西欧では炭酸水源が多いこと、硬水でも飲みやすいことなどから炭酸水の普及率が高い)
「カピバラ麻呂。私はとっても怒っています」
「……正直心当たりはないんだが」
「私、炭酸系はちびちび飲むタイプなんだけど。炭酸水って味気なくてあんま好きじゃないから余計に。それを見た龍園君に『お子ちゃまだな、お前』と煽られました。奴はその後、私の目の前でぐびぐびと炭酸水を飲んでいました」
「それオレ全く関係なくないか? まあ炭酸の好き嫌いには個人差があるよな」
「むー、こうなったら量より質。天然炭酸水と人工炭酸水とか、水の硬度とか当てる
「どんなイメージだそれは。よしんばオレに利き水が出来たところで、教えられるようなものでもないだろ」
「うみぃ。じゃあ自分で習得するしかないってことか」
「そもそも、炭酸を飲めるかなんてのにこだわるほうが子どもっぽいと思うぞ?」
「なるほど、確かに! ありがと、今度言われたらそう返すか。エッグクリームでも飲みながら」
「ニューヨーカーだな」
「うむ。ミルク、炭酸、シロップで作るのに “Egg cream” な〜んて不思議な飲み物だよねえ」
「さっぱりめとはいえ龍園もそんな甘いやつを飲むのか?」
「どうだろ。前にグラブジャムン食わせた時は『クソ甘ったるい』って感想だったけど」
「 “世界一甘いお菓子” を口にすれば、そりゃな……」
エッグクリーム:ニューヨークブルックリン生まれとされている飲料。卵やクリームは入っていない。
グラブジャムン:インドのお菓子。すごく甘い。シロップ漬けの丸いドーナツという感じで、見た目はサーターアンダギーに似てる。