ようこそ享楽至上主義の教室へ 作:アネモネ
癖の強い
「どのゲームがいいか決まった〜?」
「すまん、顔の区別すらつかなくて難航している」
ククリの問いに対し正直に答えた綾小路は、そのまま床に並べてある乙女ゲームのパッケージとのにらめっこを続ける。
先ほどのギャルゲーはククリが選んだものだったので今度は綾小路が、という気遣いらしいものの……普通逆ではないのだろうか。ともかく、この美少年美青年の群れの中から攻略すべき品を選択する必要があるらしい。
「ところで、ちょっと思ったんだけどさ」
濁りのない、透き通った
「首とか頭のあたりを痛めてる人、多くない……? みんな寝違えたり
確かに攻略対象のイケメンが額や後頭部などに手をやっている姿はパッケージ上にも多く見受けられた。しかしなんとなく弁明したい思いに駆られた綾小路は懸命に言葉を絞り出す。
「見映えのいいポーズはどうしても限られてしまうんじゃないか」
「そういうもんなのかねえ」
「と思うぞ。しかしククリは乙女ゲームには詳しくないのか?」
「うん。小説に出てくるやつと違って実際は悪役令嬢が出てこないとか、そのくらいの知識だよ」
悪役令嬢とは何ぞや。綾小路は首を傾げた。
「んんー、シンデレラの義姉たち、みたいな? 『キーッ』てハンカチを噛んで悔しがるオーソドックスな
「周りの生徒にとってはいい迷惑だな」
「そのへんは突っ込んだら負けなんでしょ、たぶん」
なんといつの間にか負けたらしい。よく分からないまま話は続けられる。
「うーむ、乙女ゲームの攻略対象についてのイメージだと……お金持ちのお家だったり、社会的地位が高かったり?」
ホワイトルーム設立者であり財界にシンパも多い父を持つ綾小路はちょっと言葉に詰まった。わりと心当たりがある人物像だったのだ。
「ラッキースケベが発生したりとか」
「ラッキースケベ……」
綾小路の頭にある光景が
「お姫様抱っこも定番な気がするなあ」
綾小路の脳裏にはとある出来事が浮かぶ。無人島試験の際、伊吹との戦闘により倒れた堀北を抱き上げ運んだあれはロマンチックなものではなくただ傷病者を移送しただけに過ぎないが、横抱きであったことは間違いない。
「あとあと、ピンチの演出! 崖から一緒に落ちるとかね〜」
さらにその時意識を失っていた堀北を庇いながら傾斜のきつい崖から転がり落ちるなんてハプニングもあったし────
「膝枕をしたりとか」
その後地面に座り堀北の頭を膝の上に乗せ、彼女が楽になるよう自らの胸に抱き寄せたりもした。
「顎クイや壁ドンだと、何らかの脅迫とセットになってることも多そう!」
船上試験期間中の休日。真鍋たちから暴行を受けた軽井沢を脅し、彼女の顎を持ち上げ視線をこちらに向けさせたり、腕を掴んで船内の壁に強く押し付けたり。何なら「股を開け」とまで言い放った記憶が呼び起こされた。
なるほど、これらから導き出される答えは明明白白だ。
「ククリ」
「う、うん?」
「オレは、実は乙女ゲームの攻略対象だったのかもしれない」
「何かなそのラノベのタイトルみたいな口上は!?」
待てよ、と
「もしや麻呂君、婚約破棄するってこと? なら早めに言ってね。卒業パーティーは欠席するから」
「いや、それは無いから安心してくれ」
そもそも卒業までこの学校に居続けられるかどうかという問題はあるだろうが、婚約破棄の予定は無い。
「面倒だしデフォルトネームでいいか?」
頷くククリに、ちょっとした疑問をぶつけてみる。
「今回はカピバラじゃなくていいんだな」
「んー、なんかオスのイメージが染み付いちゃったから」
綾小路にはよく分からないが、そういうことらしい。
ついさっきやったギャルゲーと同じくこちらも平凡な高校に通う普通の女子高校生の話になっていて、しかし次々と攻略対象に遭遇するイケメンラッシュが起きている。
「ほらククリ、平田みたく優しい奴や龍園のように俺様系っぽい奴、堀北の兄貴みたいな眼鏡の奴、須藤のようにスポーツ万能な奴までいるぞ」
「むー、ギャルゲーの時の仕返しかい?」
「ま、とりあえず平田君似の優等生っぽいイケメンが気になるかな」
照れなど欠片もない様子で口にしたククリに同意し、攻略するキャラが無事に決定され──
「平田……」
「平田君……」
見事な壁ドン&脅迫のコンビネーションに2人は悲しみの声を上げた。どうやら『優等生を装っているけど実は〜』というキャラだったらしい。
「ふーむ、二面性のあるタイプか」
愛嬌のある笑みを
「ククリもよく教師の手伝いなんかをしているところを見かけるが、まさか──」
「うんにゃ、楽しんでやってますから。先生たちと色々お喋りもできてわりと面白いよ」
是非是非やってみれば?と提案されるも、担任の茶柱や自分の実力を疑ってるらしき星之宮と良好な関係を築いているとも築きたいとも言えない身の上である以上、微かに顎を動かすにとどめた。
「麻呂君はもし実際こ〜んな風に遭遇したりしちゃったらどう思う?」
そうだな、と綾小路は思料する。こういうやり取りが
「裏側まで知れたほうが考えてることを想像しやすくなって絡みやすくなりそうだし、そもそもその人の努力には敬意を表したい。むしろ表向きの態度より居心地が良いかもしれないな」
彼女が堀北と自分を嫌っている以上はありえないことだし、
「うむうむ、じゃあ2個目の選択肢?」
「そうなるか」
押すと、画面が
どうやらあまりお気に召さない回答になってしまったらしい。
「
「ガードが固いねえ」
疑り深いところも櫛田に似ているといえば似ている。そして、詰めが甘いところも。
彼女が
堀北と櫛田の不和の原因は、2人の心の内にどんな感情が渦巻いているのかは不明だ。双方に非があると考えるのが自然だろうが、ともかくそれを理由に船上試験では龍園と手を組み──これからも櫛田はクラスを裏切ることが予想される。
だが、他クラスとの協力関係がいつまでも続くはずもない。いずれ彼女の本性の暴露というカードは効果的な場面で切られる羽目になるだろう。口封じしようと試みても、龍園は櫛田が敵う相手ではない。おそらくは、今綾小路の眼の前にいる少女もまた────
「さっきの質問、ククリの場合はどうなんだ?」
「んっんー、めんどっちいからとりま距離を置くかな」
人の観察は比較的得意なつもりの綾小路でも、穏やかに明るく微笑む彼女の真意は読み切れない。強い光は他を覆い隠すように、
少なくとも、攻略対象に関わらないことにはゲームが進まないのは間違いなかった。
映し出されているのは床ドンのスチル。女主人公がコケてしまったのを助けようとした結果、押し倒す状況になってしまうというハプニングが発生中であった。
「いや、この体勢になった時点で君もあんまし動けてないでしょうに」
「まぁ、何がどうなってこうなったのかは謎だよな」
冷静な意見交換をしているうちに、シーンが移り変わっていく。
「鈍感系主人公みたいなことやってる……」
何と言うか、ドキドキというかトキメキの足りない感想である。イケメンとのラブロマンスでキャーキャーするために乙女ゲームというものがあるんではないのだろうか。
と、ここで、綾小路は堀北などに対して同じようなことを悪意たっぷりに仕出かしそうな存在を思い出した。
「やっぱ龍園が近くにいるとこの程度日常茶飯なのか?」
「そんな、麻呂君──まるで龍園君を
そこまでは言ってない。セクハラ多いよな、くらいには考えているが。
「うーん、あいにく彼の女性関係については知らんのだよ。ベッドの下に春本隠してたりしないか探そうかと思ったこともあるけど、結局実行に移してないし」
「ベッドの下?」
「うん、定番だから興味をそそられてさ」
「……山内たちのあれはそういうことだったのか」
以前自分の部屋を探索した彼らは何も発見できずがっかりしていたが、果たしてどんなブツが眠っていると想像していたのやら。クラス内での自らのイメージが少し心配になる綾小路をよそに、ゲーム内ではこれまた定番の場面が訪れていた。
「お姫様抱っこかあ。麻呂君はされたことある?」
「普通そこは逆の経験を聞くと思うんだが」
「むー。だって私、やる側が多いんだもん」
彼女の身体機能を思えばそう不自然ではない話だ。
無人島の砂浜で水着姿のククリを抱き留めた時──これも一応ラッキースケベに含まれるのかもしれない──推し量ったところでは、少なくとも成人男性一人を軽々と持ち上げるくらいの力はありそうだった。
「中学では代々伝わる『お姫様抱っこ術』を教わったからね。たくさん試したし、そんじょそこらの人には負けない自信があるよ!」
「変わった学校だな」
通っている人間が風変わりなのか、一風変わった学校にいたからそうなったのか。鶏が先か卵が先か、まぁ考えても答えは出ないものだろう。
「ただコツを継ぎ足し継ぎ足し次代へと繋げているだけさ」
「どこの秘伝のタレだ」
やはり通っている人間が変なだけなのではと綾小路は意を
試金石のように、一般的な女子が好みそうな話題を振ってみる。
「憧れたりするもんなのか、こういうのって」
「そうだね、やると喜ばれることが多いけど……自分がとなるとどうだろ。ファイヤーマンズキャリーのほうがいいかも。そっちのが安定感ありそうだし、お姫様抱っこだとたぶん私のほうが上手いし」
ファイヤーマンズキャリー:相手をうつ伏せの状態にして肩で担ぎ上げるという、消防士が傷病者を搬送する際に用いる手段の一つ。
おそらくお姫様抱っこに比べると乙女チックさでは減点を喰らってしまうであろうやり方だと綾小路は思う。長距離であれば無論こちらに軍配が上がるだろうが、羽のように軽いとまではいかずとも堀北を運ぶくらいならどちらでも楽々出来るのだ。無人島ではヘリが出動して他クラスにも生徒のリタイアを察知されてしまえば困るような状況だったのだし、綾小路が彼女を抱きかかえて移動したのも間違えでは無かった、はずだろう。
「あと、運ぶなら普通に2人以上でやったほうがお互い楽なんじゃあないかな」
「伝授されたわりには否定的すぎるんじゃないか……?」
「そりゃ練習してる人とぶっつけ本番では当然違ってくるよ」
習熟度の差だね、と付け加えられるとぐうの音も出なかった。攻略対象たちも画面外で訓練したりしているのだろう、きっと。もしかしたら互いを練習台にしているのかもしれない。そうなると、マヌケというかシュールな絵面になりそうな気もするが。
帰り道、相合傘というベタな展開。しとしととした
「難聴系主人公! むー、ちゃんと聞いてる選択肢も出して欲しいぜよ。なんか重要っぽいのに」
「車のせいで思いっきり水かぶってるし、仕方なさそうではあるが」
風呂を借りてシャワーを浴びた主人公の前に、選択肢がまた現れる。
「エプロン選んだら裸エプロンのイラストが出てくるのか、ちょっと気になるな……そういや麻呂君もエプロンって持ってる?」
「あるけど、普通に自分用だぞ」
寮生活である以上多少包丁を扱う程度のことはするし、黒無地のシンプルなエプロンくらいは綾小路も所持している。
「でもエプロンの意味が全くないというか、うん、あれを考えた人はある種の天才かもしれんな。フェティシズムというか、エロティシズムというか、そういう点で」
「エロスやエロティックは芸術方面で古くから重要視されているな」
露骨すぎるのよりチラリズムのほうが、というべきか、見えそうで見えない、そんなところが好まれているのだろう。他意はない、本当に他意はないが、学術的な面で綾小路としても興味はある。
ただ、結局気恥ずかしくなってTシャツを選択したが、これはこれで──
沈黙が場を支配する。男女2人が部屋にという部分では、
襲う? いいえ、滅相もないことでございます。
面白がるようなククリの視線に対し、綾小路はぶんぶん首を振って必死に否定する。
たとえ彼女から告白されようと、受け入れることはないだろう。0に0をかけても0だ。教本には、なり得ない。
「ちなみに、もし万が一、億万一こんなこと言われたらどう返すんだ?」
「くふふ、それは勿論『ヒャッハー! 返り討ちにしてやるぜ』とか『耳の穴から指突っ込んで奥歯ガタガタいわせたろか』とかだよ」
ラブロマンスのラの字もない、世紀末っぽい回答だった。そんな返事が来たら相手側は泣いていい。綾小路はまだ見ぬ、現れるかも分からない
「これで幕切れか」
「大団円!って感じだね」
少女漫画なら背景に大輪の花が咲き誇っているような、ふんわりとした笑みだった。
ありきたりな台詞でも口
船上試験でも兎グループに一之瀬がいなければ仕切り役はククリとなっていたに違いない。付け加えると、あの場を俯瞰している度合いでいえば彼女のほうが勝っていた。
一之瀬の提案したトランプでの遊びには、メンバーの性格を推察し対話につなげ、優待者の情報を得るという心理戦的な意図もあっただろう。しかしククリはそこに主眼を置いてはいなかった。
気づいた理由はやや不自然なカードの持ち方だ。自身の背後を警戒するような伏せ具合は、ゲーム非参加者に手札を覗かれるのを防ぐ役割を果たしていた。そして考えがそれに至ったならば実行も可能ということを示す。ククリは、他の参加者のカードを伊吹に探らせサインを送らせるイカサマをしていた。
勿論、目的はゲームでの勝利ではない。イカサマを悟る人間がいるかどうか。ある種の遊びであり、他クラスの人材を吟味していたのだろう。綾小路の見立てでは誰かがイカサマに気づく様子も、綾小路が気づいたことを誰かに気づかれた様子もなかった。
「一つ、失念してたや」
途端、頭に指先の感触が降ってくる。子をあやすような手つきだった。よしよし、と金平糖みたいに甘い声が掌の熱とともにすっと全身に溶けていく。
ギギギと油をさしていない機械のようにぎこちなく首を動かし目線を合わせてみるも、にこりと微笑まれるだけに終わり、綾小路はされるがままでいることにした。
羽なし扇風機の生み出す風が綺麗に髪を
「乙ゲー始める前の話に戻るけど、攻略対象って、頭を撫でるなんてのもよくありそうな気がする」
「そこは分かるが。何故実行した?」
「ん〜、なんとなく!」
じんわりと広がる温かさが確かに教えてくれる。こうしたスキンシップで「愛情ホルモン」や「幸せホルモン」などと呼ばれるオキシトシンが分泌されるのだという。それ以上でもそれ以下でもない。互いに、何の
似通った面はあるのだろう。だが、他者を道具として見る人間と、道具とすら見ない人間は、どこか異なる。
「ん?」
しゃがむようジェスチャーすると、ククリはきょとんと首を傾げつつも従ってくれた。反対にこちらは腰を上げる。
「麻呂君てわりかし背大きいよね。何センチ?」
「入学前に測った時は176センチだったな」
「おー、高いねえ」
記憶では龍園のほうが少し高かったと思うのだが────ともかく。綾小路はお返しとばかりに、くしゃりとその
§§§
外へと一歩足を踏み出しただけで、別世界みたいだった。じめじめとした蒸し暑さに、
二宮金次郎像のように歩き読みするわけにもいかない。はやく部屋に帰りたいと、せいいっぱい急ぐ彼女は、しかしその歩みを緩めた。
「今日はお一人なんですね」
男は緩慢な動きでこちらを向いた。
「お前こそ。鞄持ちは不在か」
「ククリちゃんでしたら、寮で過ごしているんじゃないでしょうか」
そのあたりのことなら、クラスのリーダーである彼……龍園のほうが詳しそうなものだが。
最近はククリへの愛が高じてアルバムを作らせただとか、美術部の金田に肖像画を描かせただとか、愉快な──本人たちが耳にすれば「
ひよりの目から見ても、龍園がククリを意識していることは疑う余地がないと思う。恋愛感情とかそういう次元ではなくて、もっと単純で、そのくせ複雑な心情というか。
「よくあんなのと『お友達』が出来るもんだ」
言われてみれば、とひよりは思索する。
幼少期から一人でいることが多く、友人も
そうならなかったのは──────
「自分より人間味の薄い人に初めて会ったのだと。だからなんだと、思います」
別に出会った時から品定めじみたことをしていたわけではないが、今考えてみるとこれが一番しっくりくる。
よくチューニングされた機械人形のような。自分の言動が周囲にどのような影響を与えているか、静かに計算して観測しているような。時折、ククリからはそんな匂いを感じるのだ。
他山の石、人の振り見て我が振り直せ、
もちろん、これはただのひよりの主観だ。ククリが何を思っているかなんて、彼女しか知らないに違いない。つまり。あくまでもきっかけを貰ったのだと、ひよりはそう捉えている。
「人間味、なぁ」
「はい。ですがククリちゃんは魅力的な子と評判ですよ? 一部では『宝石みたいに可愛い』だとか」
何を
「屈折率が高い点はそっくりだろうよ」
宝石というのは、自ら光り輝いているわけではない。屈折率が高いことにより、差し込んだ光が内部で折れ曲がり複雑に反射して鮮烈な輝きを放つのだということと、素直でない彼女の性根を重ねて
「どちらかと言うと龍園くんのほうが屈折した想いを抱いているような……それに、あれでククリちゃんは真面目ですし。日記やお小遣い帳もつけていたり」
流石にこの2つはククリの趣味だろう。何かの計画とするには意味がなさ過ぎる。
「どうだかな。いずれにしろ──俺は『京楽菊理』を壊すだけだ。
「敗北させる、ではないのですね」
「それくらいしねえとイコールにならねえんだよ」
既にククリを倒そうと試したような口振りだった。
何を以て勝利とするかというのは難しい。負けることすらも楽しみそうな享楽主義者に対してであれば、尚更。
「ならば、もっと身軽な立場のほうが動きやすかったのではありませんか? 矢面に立つのではなく」
意表を突かれ変化した表情に、つい含み笑いをしてしまう。リーダーにならないという選択肢など思い浮かびもしなかったと顔に書いてあるようだった。
しかし、
「テメエら問題児どもの力を引き出してやれるのは俺くらいなものだろ」
「……そう、ですね」
今度はこちらが虚をつかれる番になった。こういう発言をこともなげにするのだから、彼は
不器用な配慮というべきか、彼も彼なりにクラスのことを考えているのだと。ついつい頬が緩み、口が
「もし何か困ったことがあったら連絡してください」
それが、ひよりなりの譲歩だった。
龍園は皮肉げに唇を吊り上げるも、
「やっほー、ご両人。どうしたの、こんなとこでとぐろを巻いて」
買い物帰りなのかエコバッグを
「少しお話をしていたんですよ」
「ほほう。あー、話といえば丁度いいや。私もたっつーに言っときたいことあるんだけど」
早急に立ち去ろうとしていた龍園は仕方なく足を止める。じゃじゃーんと紙束を掲げたククリが、ふにゃふにゃ笑いながら続けた。
「2学期からの龍園君は、『
クラスをどこぞの軍隊みたいにしたいらしい。グイグイと会話パターンの資料を押し付けられ「おい、今まさに困ってるように見えないか?」とひよりへ視線を送った龍園だったが、にこっと黙殺された。
こいつら図太いな、と伊吹を含めた3人の共通項を改めて感じる。良く言えば勇ましいとかになるんだろうが、龍園からしてみればそうとしか思えなかった。
とりあえずグラニュ糖を思わせるさらさらした肌を容赦なくつまむと、「みゅー」という
いくら頬を引っ張ろうが痛くも
「こ〜んなにもいたいけでいじらしいククリちゃんになんて仕打ちを……むー、もっとちゃんと普通にちやほやすべき」
目頭を押さえわざとらしく泣き真似をするククリの腕に、ひよりはそっと自らの腕を絡めた。鬼教官や訓練など特に興味もなく、どちらかといえば龍園に賛成する側なものの、それはそれというやつだ。
ひよりん大好き、とひっしと抱きしめられる。あからさまな茶番だが、こういうのも嫌いではない。それに、ちょっとでも彼女の心の
「そうだ、見て欲しい紙があってね。頑張って自作したけど、たぶんひよりんならすぐわかっちゃうかな────」
手をつないで帰路につく2人の後ろを、龍園は呆れた顔で歩く。
蝉が、夏の終わりを奏でていた。
これは、君と綴る恋の物語────
国立の名門校である高度育成高等学校に入学したあなた。しかし喜びもつかの間、そこでは波乱万丈な日々待ち受けていて……!?
◆主人公、攻略対象、サポートキャラの性別が選べます
※サポートキャラは攻略不可
◆ミニゲームもあるよ!
※画面は開発中のものです
ゲームタイトル部分の特殊タグについてはID:214127 ウボァー様の「遊戯王二次創作用特殊タグ」を参考にさせていただきました。
一応違うゲームということで出来る限り前回と違う印象になるよう作ったんですが、今回の吹き出し何かに似てるなと思ったらどう森シリーズの吹き出しかと分かりました。あつ森だと下記みたいな感じだと思うのですが、もこもこしててかわいいですよね。
コミカライズやノベライズを読んだこととかはあるんですがギャルゲーも乙ゲーもやったことなく……でもよう実のお二人の作品はいつかプレイしたいなとは思っています。
個人的にアニメ1期ビジュアルの綾小路と龍園は首が痛いポーズしてるよなと思ってるので、綾小路が弁明したのはそのせいです。
ククリの学生証はきっとこんな感じかなと。画像はPicrew「ちり子式 ふわ髪女の子メーカー」様を利用させていただいています。画像表示なし設定の場合はおそらくただの特殊タグしか見えないっぽい感じになってるかと思います。
ギャルゲーと乙女ゲームで遊ぶお話というアイデアは『月刊少女野崎くん』からいただいたのですが、ゲームプレイを面白く書く難しさを実感しました。
でも特殊タグをふんだんに使えたので満足です。一応、本編ではあまり本文に使用しないよう自重しているので……おまけのコンセプトは真逆で、基本『みんな特殊タグ見て!使おう!』というだけです。